議論のレッスン    福沢一吉   生活人新書

議論について学ぶと良い点
1 議論のあり方を考え、知ることにより、刺激的な知的興奮を得られる。
  知的会話などが、より分析的に把握できる。
2 議論を通して「自分を知るチャンス」が得られる
3 時と場合、内容と程度に合わせて適切な「議論レベル」を選択できるようになる。

「日常の議論」から「よりフォーマルな議論」へ
「論証」としての議論
・自分が一番言いたいこと・・・「主張」(または結論)
・主張と対になって提示される理由・・・「根拠」『ある種の証拠』

【論証】
・自分の言いたい主張とか結論を、なんらかの根拠(証拠)によって裏づけようとする行為、
またはどうしてこれこれしかじかの主張、結論になるかの理由を述べること。

【議論】
・なんらかの根拠(証拠)に基づいてなんらかの主張(または結論)を導くような言語行動
・論証プロセスを経て結論にいたるような言動のこと


【 日常の議論】
・「根拠の適切性」「根拠から主張への飛躍の程度の吟味」および「隠された根拠の明示」が
要求されないもの
【よりフォーマルな議論】
・一方これらの内容の明示が必要である

議論に強くなれ
@発言者の主張が明示されている
A発言者の主張がなぜ主張として成り立つかを示す根拠なり証拠なりを提示している。

仮定の質問に答えられる実力が必要

議論スキル
@発言者の主張が明示されている
A発言者の主張がなぜ主張として成り立つかを示す根拠なり証拠なりを提示している。
B隠された根拠に関する言及があるか。
C主張への飛躍のしすぎはないか(論証が正しく行われているか。)
D質疑応答において、聞かれていることに答えているか。

・質疑について
・まず自分の質問に対して正当な答えを得ているかどうかの確認をし、
納得できる答えが返ってきていないのであればもう一度ただすべきである。


議論のルール
「生産性のある議論をしようとするならルールがあったほうがいい」

相手に告げていない「隠れた根拠」

議論のルールとしての「トゥールミン・モデル」
「隠れた根拠」→「論拠」

事実で答える習慣
一郎:「彼女はどうして会議に来なかった?」(理由を聞いている)
花子:「風邪だそうです」(事実で答えている)・・・このような根拠「データ」と呼んでいる

※問題にしたいこと
・「理由が聞かれている」にもかかわらずその答えとして「事実」が提示され、
理由として成立しているように「感じること」

暗黙の仮定=「論拠」
「暗黙に伏せられている根拠」
例:人間は健康であるほうがよい
 :病気は治すべきである
 :病気は安静にしておいたほうが治りやすい
 :安静にするとは身体を必要以上に動かさないことである等

論拠の共有が必要な場合とは
・主張が成立するにはなんらかの事実が必要である。
しかしその事実を単独で提示しても議論としては不十分である


議論の3つの主役
「主張」「根拠」「論拠」

・「根拠」を出すことは
「あなたの主張にはなにか具体的な証拠はありますか?」という質問に対する答えを出すことと同じ
・根拠と主張を結合させる「議論(理由づけ)」が必要

・「論拠」を出すことは「あなたが提示した根拠がどうしてあなたの主張と関連づけられるのですか?」という
質問に答えることと同じ事

「主張」とはなにか
・主張=「自分と異なる先行意見に対して発せられる反論」・・・自分の主張は誰かへの反論になっている

・自分の意見は誰かから必ず反論される対象となっている

・「誰かからの反論を十分に許すだけの議論構造をあらかじめ用意しているから主張する」が議論の順番

・自分が主張する前にはそれなりの議論の下準備が必要
・自分の主張は論証を経ているか、根拠が提示されているか、その時の根拠に偏りはないか、
根拠は主張を指示するのに適切か、根拠から主張への飛躍は適切か、論拠は明示されているか、
必要に応じて論拠を提示できるか等

飛躍をともなわない意見は主張ではない

・吟味するまでもなく意味内容が絶対に真理となるような表現内容を、「トートロジー」とか「同語反復」という

【飛躍をともなわない意見は主張にはなりえない】

・「前提から結論へのジャンプの幅があまり小さいと、その論証は生産力を失う。
他方、そのジャンプの幅があまりに大きいと、論証は説得力を失う。」

主張の正当性
・「その主張がどの程度厳密な論証を重ねた末に導かれたか」
・主張の正当性は論証のプロセスの正しさに依存している

「根拠」と「経験的事実(データ)」との使い分け
・主張と同じレベルのもう一つの根拠を出しても効果がない
・根拠が効果をもつのは、それが主張よりも相手に受け入れられやすい内容であり、
かつ主張と同じレベルのものでないとき

経験的事実(データ)・・・「誰にでも確認できる対象、または事実」のこと

・「より多くの人に」確認されるためには「実証」が必要

「実証」とは?

・証拠は主張する人間にとってだけでなく、
その主張を受け入れるかどうかを判断しようとしている側の人間にとってもはっきりしている必要があります

議論の3つの名脇役
「裏づけ」「限定語」「反証」

注意すべき点
@議論をする際に論拠についてはそれを支持する裏づけを明記すること
A論拠の確かさの程度を示す限定語をつけること
B論拠の効力に関する保留条件としての反証を提示すること

「限定語」
・「おそらく、たぶん、5分5分で、きっと」などの程度を示す

「反証」
・「これこれしかじかのことが起きていない限りにおいては」

論拠が分かれば議論が分かる
・主張を支持するためには、まず「根拠・経験的事実(データ)」が必要
・示された根拠がどうして主張と結びつくかを示すために「論拠」が登場する

◎論拠は「論証する必要のないもの」として忍び込んでいる
◎論拠に相当するものは議論という思考プロセスの最も早い時期にすでに登場している。
◎再び考える必要すらないほどに「当然で、あたりまえのもの」になっていると言える

「論拠」が経験的事実(データ)に意味づけをする

●後づけならばどんな経験的事実(データ)でも最も特異な部分を見つけて、
そこだけに都合の良い統計的検定を施し、自由に数値上の差を作り出せること
●後づけで 経験的事実(データ)を解釈すると偶然の要因を正しく評価できない
●意味を付与するのが論拠の役目

論拠と「やはり」の潜在パワー
・「やはり」の構造・・・日本語における「やはり」の使い方
・論拠の存在を隠蔽する役目を持つキーワード

●「議論における論拠について自分自身も気がついていないし、
論拠を形成している仮定についてもよく分からないときに、
自分と相手がともに『論証の必要性がない』と認めあえる基本原理を暗黙の了解のうちに用意し、
自分の主張と根拠の組み合わせの整合性はその暗黙に了解された原理(諸仮定を含む)に立脚すれば
了解可能であろう」と発話者が考える場合に「やはり」が用いられる

●議論の中で「やはり」をもとに導出される主張があれば、それについてもうそれ以上、
推論・論証プロセスに関する批判、吟味はできない・・というように聞こえる

●議論の終焉を意味する
●議論における「やはり」の使用は
、私たちがある事象をうまく説明できないときに「偶然」、「無意識」、「直感」といった便利な概念を持ちだし、
それによって事象を説明した気になるのと似ています。
これらの言葉は「もうこれ以上分析は不可能なんだ」というときに登場する(ゴミ箱語)
●なにかわけの分からないものはすべてこれらの用語を使用することにより、ゴミ箱へ捨ててしまうように、
解決してしまおうというわけ

◎しかし、一見これ以上分析不可能に見える論拠の内容も、さらなる分析は可能です。




分析のための下準備
@議論における論証の構造をつかむ=主張(結論)、およびそれに関連する根拠を探す
A根拠が経験的事実(データ)として提示されているか検討する
B可能な範囲で明示されていない根拠(論拠)を推定する
C書き換え案を提示する場合にはパラグラフ構造を書き方の基準とする
D根拠を経験的事実(データ)として提示するための工夫を提示する
E主張はなんらかの反論の形式になっているか検討する