
大腸内視鏡検査と聞くと、あの痛い検査ですね、という方が非常に多いのは残念なことです。
大腸内視鏡検査をしなければ見つからないような病気があるのは事実ですし、この検査を施行しないで、それ以外の方法で、大腸癌が診断されるのを待っていたのでは、直せる癌は、世の中に存在しなくなります。
ですから、大腸癌の疑いのある方には、必ず、大腸内視鏡検査を薦めることになるのですが、それは、部分的には正しい考え方で、正しい医療の進め方ではあります。が、部分的にしか正しくない医療の進め方とも言えるのです。
たった一度の大腸内視鏡検査で、死ぬほどの痛みを味わった患者さんは、たとえ、それが安全に行われて、その時、大腸癌がなかったという幸運に恵まれたとしても、その後、大腸内視鏡検査をすることに、強い拒否感を持ってしまいます。そのような患者さんの多くは、それ以後の本当に大切な時に、大腸内視鏡検査をする機会を逸して、治る大腸癌を治らない大腸癌にしてしまうことがよくあるのです。
われわれの日常の中で、他人から痛みを味合わされる、などということは、ほとんどありません。あるとしたら、それは自分の人間性を踏みにじられるときです。
誰が、死ぬほどの痛みを感じる検査を2度と受けるものでしょうか。
これは、医療の進め方としては、失敗と言わざるをえません。
前医の、部分的には正しかった医療行為が、その患者さんの人生全体からみると、医療から利益を受けるチャンスを結局は失わせることになってしまって、全体的には正しい医療行為とはならなかったといえるのです。
大腸内視鏡検査の痛みは、単に、患者さんに苦痛を与えたというにとどまらず、その患者さんの人生全体から考えれば、大腸内視鏡検査の目的を達成することができなかったという、大腸内視鏡検査の失敗をも意味するのです。
安全であっても、痛みのある大腸内視鏡検査ならば、検査をしない方が患者さんのためかもしれないのです。
さて、女性の場合、子宮の手術の後や生理痛の強い場合は、大腸内視鏡が、直腸からS字状結腸を抜けるとき、どうしても痛みを感じることが多くなります。
もちろん、その痛みの多くは、内視鏡を安全に施行するというだけの立場からいえば、無視できるほどの痛みではあります。しかし、そのような、無視できる痛みであるとしても、患者さん全体の人生にとって、大きな損害を与える、痛みであるのかもしれません。
痛みは、正しい検査を正しくない検査に変えてしまいます。
検査の痛みは、結局、検査の失敗を意味します。
大腸癌を専門とする者にとって、教訓。
一つは、大腸内視鏡検査に熟達することです。これは、当たり前のことで、すべてのスタートのなることです。
もう一つは、熟達した内視鏡技術に過信することなく、麻酔をかけることではないでしょうか。
麻酔なしでも、大腸内視鏡検査は十分可能です。私も、かつては全例、無麻酔で施行していました。
しかし、体の中で、内視鏡が動くこと自体が、やはり、不快です。可能ならば、寝ている間に、いやなことは済ませてほしい、というのが、本当ではないでしょうか。それを可能にする薬が、いまは、何種類もあるのですから。
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