女性と肛門癌

 

肛門癌は、注意が必要な病気です。

 

肛門癌と呼ばれる場合、大きく分けて、3つの場合があります。

@  直腸癌が肛門に及んでおり、便宜上、肛門癌と呼ばれるもの。

A  肛門管の上皮から発生している、本当の肛門癌

B  痔ろうから発生した痔ろう癌

 

@  の肛門癌は、実は、直腸癌ですから、直腸癌と同様の治療をする必要があります。これは、手術を中心とした治療です。

A  の肛門癌は、消化器の癌というよりも皮膚がんの一種です。扁平重層上皮癌という名前の癌細胞です。これは、手術による治療と放射線化学療法という手術をしない治療との成績が、全く差がないとされていますので、手術をして人工肛門になる必要のない放射線化学療法の方が優れているとされています。しかし、この病気は、一般の医者にとっては、非常に珍しい病気ですので、@と同じように、手術をされてしまうことがよくあります。私のもとへは、そういう患者さんが年に何人も来られます。困ったことですが、事実です。

B  の肛門癌は、@より悪性度が高いと考えられています。というか、進行して見つかることが多いのです。手術が治療の基本です。長年放置され、治りがわるい痔ろうでは、疑わなければならない病気です。

 

女性特有の癌というわけではありませんが、Aの本物の肛門癌は、女性で多くみられるような印象です。私の経験したこのAの患者さんも、1人を除いて、みな女性でした。それも比較的若い女性に多い印象があります。

この肛門癌は、子宮頸がんの細胞と同じ仲間の扁平重層上皮がんですので、あるいは、その原因は、同じところにあるのかもしれません。

子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルスという病原体です。10代後半に性感染症としてそのヒトパピローマウイルスに感染すると、20歳代で早期癌になり、30代で進行癌に、40歳で再発という経過をたどることが知られています。

海外の研究によれば、Aの肛門癌で、ヒトパピローマウイルスの感染率が非常に高く、このウイルスと肛門癌との関係が議論されているところです。

確かに、抗がん剤が効きやすいという点は、ウイルスが関係した癌の印象を強くうけます。

しかし、私の経験では、肛門癌と子宮頸がんとが同じ人に発生した例をまだ知りません。ですから、必ずしも、同じウイルスが原因ということではないのかもしれません。とはいっても、その二つの癌では、そもそも発生率が違いますから、同じようには論じられないのかもしれません。

この10年で、日本では、子宮頸がんの発生年齢が10歳以上若返ったように、ヒトパピローマウイルスの性感染の若年化現象が起こっているわけですから、今後、日本人女性の肛門癌の発生にも変化があるかもしれませんね。





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