女性と肛門

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女性にも男性にも肛門はあります。あたりまえですね。

しかし、異なっている点に気づいている人はどのくらいいるでしょうか。

 

まず、肛門とは何か、という哲学的な問いから始めましょう。

肛門とは、生物の進化から考えれば、いかに固形物を効率よく体外に排出するか、という命題を解決するために発達してきた臓器であるといえます。

 

体から液体を排出する臓器はたくさんあります。

尿もそうですし、唾液も膵液も胆汁もそうです。体外に排出されるもののほとんどは、液体なのです。

唯一の例外が、便という固形物です。このことを考えるだけで、生物にとって、固形物を排出するということは、いかに大変なことなのかと想像がつくでしょう。

 

肛門は、いかに効率よく固形物を体外に排出するかという大問題を解決するために進化発達してきたと言っても、過言ではないのです。

 

動物園に行くとわかります。

象やキリンやラクダや牛や馬や豚は、のべつまくなく、便を出しています。サルでさえ、そうです。肛門とは、出すための臓器です。

 

しかし、ヒトの場合は、どうでしょうか。ヒトの場合は、肛門の役割は、一見、正反対の臓器のように考えられます。人間にとっては、肛門とは、便やおならを出してはいけない場所と時間に、便やおならを出さないように、コントロールする役割を担った最終かつ最強の臓器です。

生物学上、ヒトあるいは人間になって初めて、肛門に、便を出さない働きが課せられたのです。

 

肛門にとって、便を出すことと出さないことは、どちらが大切な働きでしょうか。

ヒトだって生物ですから、ヒトだけが、特別だと考えるのは、誤りなのですね。

ですから、ヒトの場合でも、肛門の第1の働きは、便を出すことなのです。そして、その上に、便をコントロールする社会的働きが加わったと、考えるのがよいと思うのです。

 

しかし、ここのところを勘違いされている方が、多くいます。患者さんでも医師でも。

 

ですから、肛門機能が不良になると、便の排出も障害を受けます。排出障害と便のコントロール不全は、表裏一体なのです。

 

そこで、ようやく、女性の肛門についての話ですが、男性の肛門と比較し、まず、大きく異なるのは、肛門管の長さが短いことです。

肛門管の長さは、私のデータでは、日本人男性では4.5cmで、女性では、3.0cmほどです。
これは、体の大小の比率から考えると、差が大きすぎます。

検査すると、女性では、肛門の前方で括約筋が欠損しているように見えるときがあります。これは、膣と肛門の間で括約筋が欠損する方がいるということです。妊娠の経験のない女性でもそのような方がいますので、おそらく、先天的な変化(出産とは無関係な変化)でしょう。
このために、女性は、男性よりも、肛門管が短くなっているものと考えられます。

さらに、男性に比べて、肛門管の内圧も低い、ということが挙げられます。

女性の肛門は、男性に比較して、このように華奢に作られているのですが、その一方で、便秘の方が多いという特徴があります。

これは、なぜでしょうか。

肛門が、便の排出と便のコントロールの両方を担っているという、さっきの哲学的な話から考えてください。そうです、女性では、肛門が華奢なことが便秘の多い理由の一つでもあるのだろうと思われます。

でも、なぜ、肛門が華奢だと便が出にくいのでしょうか。

肛門とは、まだまだ、謎に包まれた、臓器です。
私が、肛門管を構成する筋肉の一つ一つの神経伝導速度と筋の興奮時間を測定していたとき、それぞれの筋肉の間に、神経伝導速度の微妙なずれがあることに、気づきました。
そのずれが、あたかも、肛門管の上部から下部に向かって、徐々に、筋肉の収縮が起こるように、時間のずれが存在したのです。
それは、牛の乳しぼりをするときに、人差指からしめはじめて、徐々に中指、薬指、小指へと、力をこめて、ミルクをしぼりだしますが、まるで熟練した乳しぼりの手のように、肛門管の周囲で括約筋の収縮時間の遅れが見られたのです。

この新しい発見は、肛門括約筋の働きが、便をストップさせる働きではなく、便を、乳しぼりのように、肛門管から、外へ排出するように働くことを意味していると私は考えました。
私は、アメリカの医学雑誌に、この現象をミルキング理論と名付けて、発表しましたが、その時、レフリーから興味ある理論だと評価されました。

女性の場合、括約筋の発達が男性に比べて不十分ですので、このミルキング現象がうまく働かずに、便秘になるとも言うことができます。
もちろん、このミルキング理論だけで、すべてが説明つくわけではありませんが、こんなことも、女性の肛門の特徴ではあるのです。



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