富  野  ア  ニ  メ  の  「  歩  き  方  」

 
 〜 Guide of Animation works directed by YOSHIYUKI TOMINO 〜




  
−はじめに−


  一口に「富野アニメ」といってもどんなものがあるのかわからない、あるいは、数が多すぎて
  どれから見たらいいものかわからない、といった方も結構多いのではないでしょうか。
  ガンダム以外にもいろいろとある名作富野アニメ、せっかくですから多くの方に見てもらいたいものです。
  そこで富野アニメを見るに際しての、指針というか、目安みたいなものが作れないだろうかと思い、
  少し考えてみました。

  もちろん、見方なんて人それぞれ、好きなものを好きなように見るのが一番です。
  あくまで一ファンが勝手に考えた目安、ひとつの意見に過ぎないということをご了承ください。
  かなり「余計なお世話」的なことをしているとは思いますが、まあ話半分に見てもらえればこれ幸いです。
  これから「富野アニメでも見ようかな」と思っている方のお役に立てれば嬉しい限りです。
  また、このページを見て富野アニメに興味を持って頂ければ、なお嬉しい限りです。





  
STEP 1 富野アニメにはどのようなものがあるのか?


  意外とたくさんある富野アニメ。まずは富野作品にはどのようなものがあるのか、
  とりあえず年代ごとに順を追って、主な富野アニメ各作品をご紹介したいと思います。
  紹介といいつつ基本的なデータよりも筆者の意見や感想の方が多かったりもしますが、
  そこはまあそれとして、適当に流して見てやってください。
  また「富野指数」も筆者が思いつきで適当につけたものです。悪しからず。


  

主な富野アニメの極めて大雑把な紹介に筆者の感想を少々 (年代順)



 
1972 海のトリトン

 富野喜幸の実質的初監督作品。原作は手塚治虫の漫画だが、アニメはほぼオリジナルストーリー。
 善悪の相対化や勧善懲悪の排除など、随所に富野アニメならではの要素が垣間見える。
 (残念ながら筆者未見。紹介文は「富野由悠季全仕事」を参考。)

 富野指数:測定不能(未見なもので。)

 


 
1975 勇者ライディーン

 富野喜幸が初めて手がけた巨大ロボットアニメ。前半2クールのチーフディレクターを担当。
 オカルト的な要素が局の意向にそぐわず、後半は長浜忠夫監督に交代。
 キャラクターデザイン・作画監督は後にファーストガンダムでも手を組む安彦良和。
 わりと普通の、いわゆる昔のロボットアニメ。富野アニメらしさは少し感じられるくらい。

 富野指数:60パーセント(富野アニメを熟知していると時折感じられる程度。)

 


 
1977 無敵超人ザンボット3

 サンライズ初の自社制作オリジナルロボット作品でもあり、リアルロボットものの礎といってもいい作品。
 スーパーロボットスタイルではあるが、攻撃を受けた後の被害の様相などがリアリティを持って描かれる。
 善悪逆転や終盤キャラが大量に死ぬ様子など、後に何度も繰り返し描かれることになる
 富野アニメの要素がふんだんに盛り込まれている。
 特に友人たちが人間爆弾にされてしまう描写は凄まじいものがあった。
 個人的には富野アニメではイデオンと同じくらい、いや、それ以上にこのザンボットを見てもらいたい。
 アニメーター金田伊功の作画も見どころのひとつ。

 富野指数:90パーセント(これぞ間違いなく富野リアル系の原点。)

 


 
1978 無敵鋼人ダイターン3

 前年のザンボットとは打って変わって明るい、ユーモアたっぷりのロボットアクションアニメ。
 コンセプトは「巨大ロボットを操る和製007」。こちらもザンボット同様に金田アクション全開。
 (この作品も残念ながら筆者は1、2回しか見たことありません。でも凄く見たい。
 紹介文はトリトンと同じく「富野由悠季全仕事」を参考。)

 富野指数:測定不能(でも強引につけるなら75パーセントくらいか。)

 


 
1979 機動戦士ガンダム

 言うまでもなくアニメ史上腐朽の名作にしてリアルロボットアニメの金字塔。通称、ファーストガンダム。
 「富野由悠季」の名は知らなくとも「ガンダム」は知っている、という人も多いはず。
 あまりに有名作なので言うことは何もないのだが(逆に語るとなるといろいろありすぎて困る)、
 とりあえずTVシリーズと劇場版三部作の二種類がある。
 ストーリーを把握する、ガンダムがどのような作品なのかを知るのなら劇場版でも十分。
 しかしやはりここはTVシリーズも押さえて欲しいところ。
 端折られたエピソードにもいい話は多く、TV一話分ごとに追ってみても間違いなく面白い。
 劇場版でストーリーを押さえる→TVシリーズでファーストの全貌を堪能する、という流れをお薦めする。
 富野アニメの中では意外と富野らしさはそれほど濃くなく、至極真っ当なわかりやすい作品。

 富野指数:85パーセント(わりと“走り過ぎないように”作ってると思う。)

 


 
1980 伝説巨神イデオン

 最も富野アニメらしさが出た作品。そして富野アニメの中でも最も業の深い作品。
 メカ・キャラともに感情移入を拒絶したデザインではあるが、間違いなくストーリーは面白い(はず)。
 エゴを剥き出しにしたキャラクターに戸惑うことは必至かもしれない(事実筆者もそうでした)。
 しかし我慢して見れば、絶対に価値のある作品だと思う。
 打ち切りとなった部分は劇場版で完結。接触篇がTV総集編で、発動篇が完結編。
 接触篇は見ても見なくてどっちでもいいので(笑・でも本当にそう思います)、
 とにかくTVシリーズ→発動篇と見て、その壮絶なストーリー展開をしっかと見届けて欲しい。

 富野指数:100パーセント(これを富野アニメと呼ばずしてなんと呼ぼう。濃度100。)

 


 
1982 戦闘メカ ザブングル

 イデオンとは打って変わって明るく元気な物語。
 およそ美形とは言えない主役や2号メカなど、パターン破りやセルフパロディが
 目一杯に散りばめられた、かなり意欲的な作品。
 キャラクターたちがみな活力に溢れていて、とにかくみんな走る走る。
 中盤で少し話がだるくなったり、シリアス方面にトーンダウンする部分もあったが、
 基本的には明るくて、楽しいストーリーだと思う。
 特にアーサーが出てくる終盤の突き抜けた感じは富野アニメにしてはかなり異色。
 ちなみにこのザブングルより富野監督は名前を「喜幸」から「由悠季」に改名した。
 劇場版の「ザブングルグラフィティ」もあるが、物語を追う再編集とは少し違うものになっている。

 富野指数:80パーセント(あくまで他と比べると富野濃度は低めということで。)

 


 
1983 聖戦士ダンバイン

 富野監督が小説等でも描いたバイストン・ウェルを舞台にした作品。
 ストーリー展開はイデオンなどに近いタイプの、シリアス調に仕上がっている。
 後半は異世界バイストン・ウェルから地上の現実世界へと舞台が変わる。
 剣と魔法と妖精のファンタジーものではあるが、この作品も紛れもなく富野アニメ。
 特に親と子の軋轢はこのダンバインが最も色濃く出ていたかもしれない。
 「内に篭る構造」とは監督の弁だが、個人的には結構骨太なストーリーだと思う。

 富野指数:95パーセント(監督自身がバイストン・ウェルに引きずられてしまった感がある。)

 


 
1984 重戦機エルガイム

 富野アニメではあるものの、それ以上にキャラ・メカ両方のデザインを担当した
 永野護の個性が前面に押し出されているという、富野アニメの中では異色の作品。
 それはこのエルガイムが後々永野の代表作「ファイブスター物語」に昇華されることからも明らかだろう。
 とはいえ多くの登場人物たちの思惑が錯綜するストーリー展開はこれまた紛れもなく富野アニメ。
 富野作品の特徴の一つ、個性的で主張の強い女性キャラが多数登場する、というのは
 この作品が最も顕著かもしれない。
 雰囲気は、ザブングルほどではないにしても、中盤くらいまでは結構明るい。
 後半どうしてもシリアスにトーンダウンしてしまうのは、もはや富野アニメの特徴と言ってもいいかも。
 絵的な永野護のセンスは次のZガンダムにも一部受け継がれることになる。

 富野指数:75パーセント(むしろ永野護代表作品と言ってもいいと思う。)

 


 
1985 機動戦士Zガンダム

 「初代」ファーストガンダムの正統な続編。
 しかしファーストがアムロの成長譚として結構わかりやすいストーリーだったのに対し、
 Zはイデオン〜エルガイムの流れを汲んだ、いわゆるシリアス路線のいかにも富野アニメらしい
 作品に仕上がっており、ファーストよりは少し複雑かもしれない。
 放送当時は受けがイマイチだったらしいが、現在は世代的にZから入ったファンも多い。
 暗い暗いとよく言われるけど、絵の雰囲気とか、結構明るいと筆者は思うのだが。
 このZ以降、ガンダムサーガが脈々と語り継がれてゆくこととなる。

 富野指数:95パーセント(ファースト以上に富野くさい作品となった。)

 


 
1986 機動戦士ガンダムZZ

 Zガンダムに直結する続編として引き続き放映されたシリーズ第3弾。
 ストーリー的にもZの最終話からそのまま続いている。
 前作とは打って変わって(富野アニメはこういうのが多いな・笑)明るく、特に序盤はザブングルも
 かくやというほどのコメディタッチである。
 とはいえ物語後半はいつも通りの富野アニメらしいシリアスな展開となってゆく。
 序盤が明るかった分、余計にトーンダウンが強調されてしまった感もある。
 しかしこの今までにない「明るいガンダム」路線も、戸惑う人は多いらしいけど筆者は嫌いじゃないのだが。

 富野指数:80パーセント(ZをイデオンとするならZZがザブングルかな。)

 


 
1988 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア

 アムロとシャアの物語に終止符を打つべく制作された初の劇場用オリジナルガンダム。
 と同時に、富野監督にとっても初の劇場用オリジナル作品となった。
 真の意味での劇場用オリジナル富野作品は、もしかしたらこれ1本かもしれない。
 その証拠になるかどうかはわからないが、他の富野アニメに比べるとキャラの数が大幅に絞られている。
 とにかく密度が濃く、富野監督の「映画」を堪能するに十二分な出来に仕上がっている。
 ただ結構劇場作品ならではのエンターテインメント要素に気を配って作られているので、
 富野アニメらしさということでは他のTVシリーズに比べると若干大人しめかも。あくまで若干だけど。
 しかし、印象的な富野ゼリフが多数登場するという点ではやはりこてこての富野アニメだろう。
 第一期ガンダムサーガ最終章とも言えるが、筆者はブライトストーリー最終章だと思っている(笑)。

 富野指数:90パーセント(言いたいことは言ってるけど、ちゃんと抑えが効いてると思う。)

 


 
1991 機動戦士ガンダムF91

 逆シャアから30年後の世界を描いた劇場用オリジナルガンダム。
 とはいえ、本来はTVシリーズ化を想定して作られたものなので、設定自体はTVシリーズ作品並。
 富野由悠季・安彦良和・大河原邦男という、ファーストガンダムのオリジナルスタッフが再結集
 したというのもポイントのひとつだろう。
 設定はいかにも富野アニメらしい複雑な構造だが、ストーリー自体はわりとわかりやすい
 親子の物語なのではないかと思う。
 ただ、どうにも物足りなく感じるのはやはりプロローグとしてだけで終ってしまったからか。
 個人的にはこのF91までがいわゆる「昔ながらのガンダム」という印象がある。

 富野指数:85パーセント(これも主張は出てるけど、逆シャアより少し大人しい感じ。)

 


 
1993 機動戦士Vガンダム

 富野監督7年ぶりのガンダムTVシリーズ。
 F91からさらに30年後の世界を舞台に、旧シリーズとの関連を絶って構築された独立したストーリー。
 シリアスなストーリー展開、凄惨かつハードな描写、多彩な女性キャラ等々、これまでのガンダムの中でも
 最も富野アニメらしさが表れたと言ってもよい作品であろう。はっきり言ってZの比ではない。
 その「容赦のない」描き方に、富野監督の病的な部分すら窺えてしまうかもしれないが、
 ストーリーの威力(いろんな意味で)という点では間違いなく富野アニメ最高峰だろう。
 それでもどこか暖かみを感じられるのは、作品を覆う大きなテーマに「母性」があるからなのかもしれない。
 アムロやシャアも出てこなければ、タイヤ付きの戦艦が地上を蹂躙するような作品だが、
 当時の富野監督のガンダムに対する考え方など、様々なものも垣間見られて、間違いなく面白いと思う。

 富野指数:95パーセント(ガンダムとしても、富野アニメとしても、かなり濃い目。)

 


 
1996 ガーゼィの翼

 ダンバインと同じくバイストン・ウェルを舞台にしたオリジナルストーリー。
 富野監督初のOVA用作品にして、20数年ぶり久々の非ロボット作品。
 富野由悠季は原作・監督・脚本・絵コンテを全て担当した。
 (この作品も残念ながら筆者未見。紹介文はトリトン・ダイターンと同様に「富野由悠季全仕事」を参考。)

 富野指数:測定不能(これも未見のため。申し訳ない。)

 


 
1998 ブレンパワード

 エルガイム以来14年ぶりの完全新作オリジナルロボット作品。
 WOWOWスクランブルの有料放送というこれまでとは違った形で放送された。
 富野監督自身「リハビリとなった作品」と言っているとおり、スタイルはこれまでの富野アニメで
 ありながら、これまでの富野作品とは違う何か新しいものを求めている様子が窺える。
 複雑な設定や愛憎渦巻く人間関係といった、いわゆる富野作品定番の要素は詰まっているが、
 全体的に見ると、どこかあっけらかんとした、清清しさ、瑞々しさの感じられる物語に仕上がっている。
 この傾向は次の∀ガンダムになるとより顕著となり、富野監督がどのような方向性を
 求めていたのかがより一層明確になる。
 音楽に菅野よう子を起用したことも大きなファクターと言えよう。
 ∀以降の、今の富野監督のスタイルを知るうえでもとても重要な、富野アニメ過渡期的作品。

 富野指数:90パーセント(新旧富野アニメ両方の要素を合わせ持った作品だと思う。)

 


 
1999 ∀ガンダム

 Vガンダム以来6年ぶり、誕生20周年記念の意味合いも多少含まれつつ制作された新作富野ガンダム。
 「全てのガンダムを肯定する」をコンセプトに、非富野ガンダムの設定すら飲み込んでしまう豪胆さと
 牧畜や畑仕事、野戦病院、地元のお祭りといった細かい描写にも気を配る繊細さを合わせ持った作品。
 前作ブレンパワードにもニュアンスとして盛り込まれていた「暖かさ、優しさ」といった感覚が
 「癒し」として明確に、そして前面に打ち出されている。
 それは主人公ロラン・セアックの優しい人物像に最もよく表れているだろう。
 彼は今までの富野アニメの主人公像に比べるとかなり異色なキャラクターである。
 ヒゲガンダムやらガンダム名作劇場などと(半ば愛情を持って)揶揄されることもあったが、
 少し間の抜けた顔のヒゲガンダムだからこそ、あのようなほのぼのとした物語になったと思うし、
 名作劇場に登場するような人々が宇宙に上がる、というシチュエーションだからこそ面白かったのだと思う。
 ブレン同様、菅野ミュージックも物語の雰囲気作りや展開にまで大きく貢献している。
 今までの富野アニメとは決定的に違う「何か」を手に入れつつも、なお「富野アニメ」であり続けた、
 しかもそれをガンダムの冠でやってしまう辺りに、当時の(現在とも言える)富野監督の勢いが感じられよう。
 ダイジェストの劇場版・地球光と月光蝶があるが、できればまずはTVシリーズを十分に味わい、
 ストーリーを把握してから見た方が、より一層劇場版を堪能できると思う。

 富野指数:85パーセント(富野度的には結構バランスの取れた、ちゃんとした「お話」になっている作品。)

 


 
2002 OVERMAN キングゲイナー

 この秋から放送開始した完全オリジナル新作の富野アニメ。
 ブレンパワードと同様の、WOWOWスクランブル有料放送という形態。
 評判はかなり上々の様子だが、残念ながら筆者は見ることが出来ない。羨ましい限りである(笑)。
 「おバカなストーリー」を目指すということらしいのだが、一体どのようなものを見せてくれるだろうか。
 期待は高まるばかりである。

 富野指数:測定不能(早くみたい。無料先行放送の第一話は80パーセントかな。)

 



  ざっと流しただけでもこれだけの数の富野アニメが存在します。
  上記の他にも、「しあわせの王子」(74年の教育映画)や「ラ・セーヌの星」(75年TV、ラスト1クール監督)
  「闇夜の時代劇 正体を見る」(95年TVスペシャル)といった、非SF系の監督作もあります。
  富野アニメにどのようなものがあるのか、だいたいわかっていただけましたでしょうか。





  
−STEP 2 富野アニメならではの面白さとはどのようなものなのか?−


  富野作品には富野アニメならではの独特の面白さがあり、そして独特の「変さ」があります(笑)。
  富野アニメにどのような作品があるのかがわかったところで、それでは次に富野アニメのどこが
  面白いのか、どこが富野アニメならではなのかという点について少しご紹介したいと思います。


  富野アニメによく出てくるものというと、物語終盤のキャラ大量虐殺や善悪の相対化、勧善懲悪の排除、
  アクの強い女性キャラ、情けないライバルキャラ、メカの戦闘中画面にキャラが割り込んで入ってくる
  カットイン描写、複雑で一筋縄ではいかない人間関係等々、いろいろと挙げられると思います。
  ロボット物としての共通の特徴などもありますが、ここではひとまず簡単にわかるものを中心に。


  とりあえず富野アニメならではと言えば、まずはなんといってもこれ、「富野ゼリフ」です。
  富野アニメのキャラクターたちは、皆が皆不思議な言い回しを多用してきます。
  そんなちょっと面白くて、そして見てる私たちに強烈な印象を残してくれるセリフの数々は
  愛情(愛憎?)を込めて、「富野ゼリフ」と呼ばれています。
  富野作品ではどんなに脚本家が変わろうとも、基本的には富野ゼリフが出てきます(笑)。
  そんな愛すべき富野ゼリフについて少しご説明を…と思ったのですが、実は既に先達として
  
「富野セリフの作り方」という素晴らしいページもございますし、また評論家・氷川竜介氏による
  富野ゼリフの分析(「世紀末アニメ熱論」キネマ旬報社)もありますので、それらを参考にしつつ、
  自分なりに富野ゼリフについて簡単に説明したいと思います。


  富野ゼリフには、やたらと
芝居がかった、印象的なセリフが多いです。
  例えば氷川さんもおっしゃってますが、ファーストガンダムの第1話、ラストのシャアのセリフ、

  
「認めたくないものだな…、自分自身の、若さゆえの過ちというものを」

  などはその最たるものです。
  ファーストの第1話でこれですから、ガンダムを始めとする富野アニメに出てくる名ゼリフの
  ほとんどがこのような芝居がかった富野ゼリフだと言っても過言ではないでしょう。他には

  
「そうよ、みんな、星になってしまえー!」(イデオン イムホフ・カーシャ)

  
「こんなところで朽ち果てる己の身を呪うがいい」(Zガンダム ハマーン・カーン)

  「戦士たるものの生き様を後世に伝えい、女たちよ!」
(∀ガンダム コレン・ナンダー)

  などといった名ゼリフも、このタイプと言っていいんじゃないでしょうか。


  また、わかりやすいのは
「女性的な言い回し」の多様です。
  
「〜〜なのよね」「〜〜でしょ!?」「何やってんの!」などが挙げられます。
  特に最初の「〜〜のよね」は富野監督本人もよくインタビューなどで使われています。
  これが出てきたら間違いなく富野ゼリフですね。


  不思議に放たれる
自問自答も富野アニメに顕著なセリフです。
  
「〜〜だというのか!?だがしかし!」とか、「まだ来る?いや違う!」といった感じです。
  「〜〜だと!?」という言い回しが出てくると、「ああ、富野アニメだ」と安心しますね(笑)。
  特にシャアはこのタイプの独り言をよく口にします。
  妙な独り言がしょっちゅう出てくるのも富野作品ならでは。


  さらに、富野アニメはロボットものが大多数のため、
戦闘中の絶叫も名物のひとつです。
  
「やらせるか!?」「まだ墜ちるわけにはっ!」「やるな!しかし!」などなど、
  独り言の進化型と言ってもいいかもしれませんね。
  
  
  また、富野アニメならではの、ちょっと
ギスギスした雰囲気がセリフに強く反映されて
  しまうこともあり、よく出てくるのがこんなセリフ。

  
「〜〜してくれよ!」「やってるだろ!」(例えば整備とか、戦闘の援護とか)

  この「やってるだろ!」という反応にいかにも気が立っている様子が表れています。
  そんな怒らなくたって…もうちょっと、なんかこう優しく言ってくれてもいいんじゃないの?とか
  思ってしまいます(笑)。


  簡単に挙げられるのはこんなところでしょうか。
  他にもたくさん「ああ、これは富野ゼリフだ」と思わせる言い回しは数多くあるのですが、
  いちいち挙げてたらキリがないほどですのでこれくらいで。
  でもなんなので、私が思う「これは富野ゼリフ」的なものを適当に並べてみたいと思います。

  
「〜〜だというのか?」 「やれるのか?」 「やるしかあるまい」 「知りませんよ!」
  「〜〜だと言うが…」 「そうさせてもらう!」 「やらせるわけにはっ!」 「だからって…」
  「だから〜〜だと言うのです」 「そうなのか?」 「もちろんそうです」


  …なんとなく雰囲気は伝わったでしょうか?(笑)



  キャラのセリフの面白さもさることながら、行動・仕草の奇怪さも富野アニメならではです。
  特に多いのがやはりイデオン(つくづく富野指数100パーセントアニメだと思いますよ…)。

  第1話、イデオンのメカを遺跡だと主張するシェリルに対するベスの嘲笑っぷりは
  はっきりいって「変」です。そこまで笑うか!というくらいに笑い転げます。
  それも、明らかに相手を小馬鹿にした感じで、失笑どころの話ではありません。

  また、敵バッフクランから寝返ろうとソロシップに潜んでいたギジェに対する
  カララ(この人も元はバッフクラン)の平手打ちもイデオンにおける忘れられない
  エキセントリックなシーンです。
  何発叩けば気が済むんだ?というくらいに執拗に叩き続けます。
  そういえばカララはシェリルとも平手打ちし合ってましたね。

  ずーっと何かスナック菓子を食べ続けながら話をするバッフクランのハンニバルや
  明らかに怪しげな発信機がついているのに一向に気付かないソロシップの面々など、
  イデオンにはツッコミどころが満載です(笑)。そこもまた魅力なんですけどね。


  そんな行動の奇怪さ、イデオンではややネガティブな方向に働いていますが、
  これが∀ガンダムになると、今度は作風と同様にポジティブに「変」になります。

  コレン・ナンダー軍曹初登場時の凄まじいポウジングや、レット隊のお月見シーン、
  劇場版で追加されたロランの「ユニバース!」などなど、ちょっと変だけど
  見ていて微笑ましい、そんな描写が∀には多かったように思います。
  
  あるいはブレンパワードならカナンの豪快なバイクの乗り方とか(一見に如かず!)
  ザブングルのファットマンなどにも富野アニメらしい「変」さが出ていると思います。
  そんな面白さが今はキングゲイナーOPアニメに表れているのでしょう(笑)。
  筆者はあまり見たことありませんが、きっとダイターン3はこういった一風変わったユーモアに
  溢れているのではないでしょうか。


  他にも富野アニメならではというか、富野アニメの法則みたいなものもありますね。
  普段地味だったキャラにいきなりスポットが当たると、たぶんその人はもうすぐ死ぬとか(苦笑)。



  冒頭にいくつか挙げた魅力もありますが、やはり富野アニメならではというのは、
  これらの「変な面白さ」なのではないかと思います。
  富野指数が高い作品ほど、「アク」とも言える変な面白さに満ち溢れていると言ってもいいでしょう。
  この面白さ、人によっては受け付けないという方もいらっしゃるとは思われますが、
  富野アニメらしさが出てきたら、軽く笑いながら見るくらいがいいんじゃないかと思います。
  (実は筆者もイデオン最初はきつかったですが、いつしか爆笑しながら見てました・笑)

  「うわ出た、また富野ゼリフだ!」とか、「あれ?この人急に目立ち始めてきたな。」などと
  適当なことを思いながら見ると、意外と面白いのではないかと思われます、たぶん(笑)。
  もちろん、真面目に見ても富野作品は当然の如く楽しめるわけなんですが。
  ま、これもまた富野アニメを楽しむひとつの例ということで。





  
−STEP 3 富野アニメ、どれから見ればいいのか?−


  さて富野アニメがどのようなものなのかについては大分わかって頂けたんじゃないでしょうか。
  しかし、富野アニメにもいろいろとあるということはわかっても、それではどこから手をつければ
  いいのか悩んでしまうかもしれません。

  先ほども書いたように、好きなものを好きなように見る、または手近なもの(レンタルできるもの)から
  見るというのが最良だと思いますが、それでは何なのでここでひとつ筆者の超独善的判断による
  富野アニメ重要度をこれまたかなり大雑把に採点してみました。
  これも先ほど書きましたが、あくまで富野作品を見るときの目安になればいいかと思います。
  あと、「トリトン」と「ガーゼィの翼」は判断できないのでちょっと外させてください。すみません。


  
筆者の独断と偏見による富野アニメ重要度ランク表



 
特A級  ザンボット3 ファーストガンダム イデオン Zガンダム 逆シャア ∀ガンダム

 
A級    ダイターン3 ダンバイン Vガンダム ブレンパワード

 
準A級  ライディーン ザブングル エルガイム ZZガンダム F91

 



  …全部A級じゃねえかっ!ってツッコミはご遠慮ください(笑)。
  特A級ですら6つもありますね…。とりあえずザンボット・ファースト・イデオンは必見だと思います。
  ∀も最新の(完結した)富野アニメということもありますが、それ以上に作品自体が素晴らしいので
  これも是非見て頂きたいところです。
  Zと逆シャアは少々個人的意見が強く反映されちゃったかな。でもどちらも富野指数は高いです。

  ダイターンは自分でも見てみたいというのもありますが(笑)、富野ユーモアの先駆けということで、
  ダンバインはバイストン・ウェルサーガの原点ということで、Vガンダムとブレンは富野監督の気分が
  どう作品に反映されるかを見ることができるということで、それぞれA級にしてみました。

  ザブングルやF91も富野指数は高いのですが、どうしても先に、ということもないと思ったので準A級に。
  エルガイムやZZも同様。私は好きなんですけど他の作品と比べると、ちょっと富野アニメとしてなら
  後回しでもいいかなと。ライディーンは本当に最後でいいと思います。

  とはいえ、富野指数が低いからといって別に見なくていい、というわけではないんですけどね(苦笑)。
  でもとにかく富野らしさを実感するのなら、やはりイデオンやZガンダムといった、血中富野濃度(笑)の
  高い作品を先に見た方が手っ取り早いし、よくわかると思ってこのようにランク付けしてみました。
  一応、A級、準A級の中にも特A級とは違った見どころ、魅力があることをお忘れなきよう(笑)。





 
 −STEP 4 富野アニメの歩き方 ルートガイドいろいろ−


  前章で重要度を簡単につけてみましたが、それだけでは何なので(←なんかこればっか)、
  さらにもう少し踏み込んで筆者の考えた富野アニメおすすめルートをご紹介したいと思います。
  これも筆者が「こんなもんかな」と適当に考えながら思いつきも混ぜつつ作ったものなので
  せいぜい参考程度に見てください。



 ルート1 筆者の考えたおすすめルート

 ファースト→Z→ZZ→逆シャア→イデオン→ザブングル→ダンバイン→エルガイム→

           ザンボット3→ブレンパワード→F91→V→∀→ダイターン3→ライディーン


 



  まずはやはり「富野アニメといえばガンダム」、ということでファーストガンダムからいってみましょう。
  次にガンダムサーガが如何にして流れゆくのかを味わうべく、Zガンダム、そして逆襲のシャア。
  Zに続いてZZを見ておくと、より逆シャアを楽しめるかもしれません(本当に「かもしれない」程度)が、
  別に後回しにしても問題はないでしょう。ZZは独立して後で見ても楽しめると思います。


  とりあえず富野ガンダムがどういったものなのかが理解できたところで、次にイデオンからザブングル、
  ダンバイン、エルガイムと、80年代の非ガンダム作品を年代順に流してみるのはいかがでしょうか。
  この辺りは作品ごとに雰囲気が大きく異なるのであまり飽きることはないと思われます。
  イデオンのTVシリーズと劇場版の発動篇という流れで見て富野アニメの深遠に圧倒され、
  続くザブングルの明るい雰囲気、活力溢れるキャラクター、そして清清しいラストを堪能する。
  次のダンバインはイデオン・Zガンダムに近いいわゆる「業の深い富野アニメ」タイプですが、
  もう富野作品の「アク」にも慣れた頃だと思うので富野シリアス路線も十分楽しめることでしょう。
  エルガイムは富野アニメでありつつ永野護ものでもあり、イデオン・ダンバインのようないかにもな
  富野アニメらしさはかなり薄められていますが、その分イデオン以降の非ガンダムオリジナル
  四部作の最終作品としてやファーストからZへの過渡期的作品としてなど、いろいろな楽しみ方が
  出来る作品だと思います。絵の面でもエルガイムを見るとZガンダムまでの道のりがよくわかりますね。


  富野リアルロボット路線を十分に堪能したところで、ここで時代を遡ってザンボット3をお薦めします。
  一見スーパーロボットもので、これまで見てきたリアル系とはかなり異なる雰囲気ですが、
  このザンボットこそ後の富野アニメの原点と言っても過言ではない作品です。
  ガンダム・イデオンに連なるリアル路線のルーツを探ることが出来ると思われます。
  続いてお薦めなのが富野監督自身をして「第二の処女作かも」と言わしめたブレンパワード。
  20年という年月とガンダムの名に縛られない新旧の富野監督の勢いが垣間見られます。


  ブレンパワードに続いてそのまま∀という流れもいいのですが、ここはひとつ
  「疲弊しきった混迷期の富野監督」を知っておくために、先にVガンダムをお薦めしたいです。
  Vガンダムの前後にF91を入れてもいいかもしれませんが、F91もわりと独立して楽しめる
  作品だと思うので、後回しにしても構わないでしょう。


  ブレンパワードとVガンダムとで「何かが違う」のをほのかに感じ取ったところで∀ガンダムです。
  今まで見てきた富野アニメとは明らかに違うけれども、しかし富野アニメであることに間違いないという
  ∀の作風がより一層際立つことと思われます。∀ガンダムはいきなり見るよりも、
  それまでの富野アニメをある程度見てからの方がより一層楽しめるはずです。イデオンや
  ダンバインを作った富野監督がこの20年を経てどのように変わったのか、よくわかることでしょう。


  ∀ガンダムの制作を終えた富野監督が今現在取り掛かっている作品が、キングゲイナーです。
  しかしこちらはまだ完結してませんのでとりあえずラインナップからは外させてください。(2002年10月現在)
  そこで、キングゲイナーと同様に富野監督のユーモアを楽しめるということで、次にダイターン3は
  いかがでしょうか。と言いつつ、実はこの作品も筆者はまだ1、2回しか見たことがないのですが(汗)。
  ダイターンもまた他の富野アニメとは一線を画した作品らしいので、20年間で大きく変わったとはいえ
  富野監督の「幅」は昔からあったということを認識することが出来るのではないでしょうか。


  ライディーンは前半26話分を富野監督が担当、後半を故・長浜忠夫監督が担当しました。
  これもわりと独立して見られると思いますが、できれば富野アニメをある程度見てからの方が
  富野アニメらしさを感じ取ることが出来るのではないかと思います。


  さて、いかがだったでしょうか。ただこうして見てみると、直感で並べてみたとはいえ、ガンダム作品と
  非ガンダム作品がかなり固まって並んでしまいましたね。ガンダムばっかじゃ飽きてしまう、
  そんな方もいらっしゃるかもしれません。それではこのようなルートはいかがでしょうか。



 ルート2 ガンダム作品と非ガンダム作品を交互に見てみるルート

 ファースト→イデオン→∀→ザンボット3→Z→ダンバイン→逆シャア→

           ブレンパワード→V→ザブングル→F91→ダイターン3→ZZ→エルガイム


 



  ガンダム作品と非ガンダム作品を交互に並べてみました。
  全体的に先ほどの「重要度」に沿った順番になりましたが、いかがでしょうか。
  ちょっと難点なのは、結構ヘビーな内容の作品が連続してしまったりするという可能性が
  無きにしも非ずというところでしょうか。なかなか難しいですね。

  ということで、他にもこのような見方も出来るかと思います。



 ルート3 明るい作品とハードな作品を交互に見てみるルート

 ファースト→∀→イデオン→ブレンパワード→逆シャア→ザブングル→

          ザンボット3→F91→Z→ダイターン3→ダンバイン→ZZ→V→エルガイム


 



  比較的明るくコミカルなものと、ハードな展開の作品を交互に並べてみました。
  ただ、一概に明るいとか暗いとか決め付けるのは我ながら不毛かな、とも思います。
  順番的にもなんだか取り留めがなさすぎて、イマイチぱっとしませんね(苦笑)。
  まあちょっとハードな展開すぎて疲れちゃったら次に楽しそうなものを選んでみるというのも
  ひとつの見方だと覚えておいてもらえれば、と思います。
  例えば、Vガンダム見て疲れちゃったらザブングルとか∀、ZZ辺りを見てみるとか。

  そして最後に王道といえば王道な、こんなルート。



 ルート4 年代順に追ってみるルート

 ザンボット3→ダイターン3→ファースト→イデオン→ザブングル→ダンバイン→

               エルガイム→Z→ZZ→逆シャア→F91→V→ブレンパワード→∀


 



  年代ごとに追ってみることで、時代の流れ、アニメの歴史、富野監督の気分の波など、
  様々なものがよく見えてくるという点ではいいと思います。
  特にV〜ブレン〜∀あたりの、富野アニメの雰囲気の変化や監督のスタンスの違いが
  明確に実感できるんじゃないでしょうか。
  ただ、年ごとに追っていくと、あまりに先が長いような気がして途中でめんどくさくなることも
  あるかもしれませんね(笑)。あと、Z以降ガンダムばかり見ることにもなるし(苦笑)。



  とまあ、このようにいくつかルートを考えてみたわけなのですが・・・
  やっぱり好きなように見ていくのが一番かもしれないですね。
  全部が全部レンタルできるとか、手軽に見ることができるわけでもないですし。
  ただ、富野アニメは作品自体もそれぞれ面白いのですが、少し引いた視点で、
  作品ごとの流れで見てみても、様々なものが垣間見えてまた違う面白さがある
  ということは一応知っておいて欲しいと思いました。
  そういう点ではやはり年代順が最も作品の外のことも見えてくるかもしれませんね。





  
−参考文献−


  キネマ旬報社 「富野由悠季 全仕事」  ラポート 「富野語録」  辰巳出版 「サンライズアニメ 2001」

  キネマ旬報社 「世紀末アニメ熱論」 氷川竜介・著  角川春樹事務所 「∀の癒し」 富野由悠季・著

  角川書店 月刊ニュータイプ1998年6月号別冊付録 「まるごと富野」





  
−おわりに−


  富野アニメの「歩き方」ということで富野作品のガイドなぞを作ってみましたが、いかがだったでしょうか。
  「歩き方」という名前をつけたように、富野作品をまだあまり見たことがないというような方に向けて
  書こうとしたつもりなのですが、やはりどうも富野作品好きの視点になってしまい、富野作品について
  既に知っている人に向けた内容になってしまったような気がしています。うーん、難しいものですね。

  本音を言えば、富野アニメのことを全然知らない人にこそ見てもらいたいところなんですが、
  「よく富野アニメとかいうけどどんなもんなのかなー?」くらいにちょっと興味を持ち始めた人が
  このページを参考にして富野作品に触れてもらえればとても嬉しいと思います。
  思いつきで始めて思いつくままに書いてはみたものの、紹介文に間違いがないか調べたり、
  結構面倒な部分もあったりしました。
  内容的にも富野アニメの面白さを伝えるにはこれだけじゃ全然足りませんし。
  (それほど富野作品は浅くはないですよ・笑)
  不備や穴は数え切れないほどあると思いますが、出来る範囲でやってみました。
  これで富野アニメの面白さがほんのちょっとでも伝われば、興味を持ってもらえれば十分です。
  あと、間違い等があったらそのときは優しくご指摘くださいませ。怒らないでくださいね(笑)。

  とりあえず何らかの参考にでもしてもらえればこの上ない喜びです。
  とにかくこれだけは言えると思います。


  
「富野アニメ、まあとりあえず見てみてよ。結構面白いから。」





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