Dクラッカーズ1〜7−2

あざの耕平/富士見ミステリー文庫

今まで読んだ小説の中で、間違いなく一番好きな小説になりました。
このDクラッカーズよりも、面白く、感動し、熱くなれる小説は確かにあります。
それでも、どの小説が一番好きか? と問われれば、間違いなく本作を挙げます。
それほどまでに、自分の中で特別な物語となりました。

それでは、各巻の評価をだらだらと。
わりとネタバレあるかもしれないんで、注意を。



1巻。

まず、1巻を読んだ時点では、「そこそこ面白いなあ」くらいの評価に落ち着きました。
「カプセル」と呼ばれるドラッグを服用することで、悪魔を使役することができる、という設定も
これといって目新しいものでもなく、アクション部分も最後にちょこっとだけ。
富士見ミステリーというレーベルでありながら、ミステリ部分は結構お粗末でメインがなんだか良くわからない
状態に思えました。
それでも、登場人物たちは魅力的なキャラが多く、特に「女探偵」である海野千絵の存在が大きかったです。
彼女は実に見事に事件を解決(表向きには)するわけですが、その結果として失敗してしまった事実にも
きちんと目を向けています。
ただ単に犯人を暴けばいいと思っているそこいらの探偵とは違います。
彼女は常に信念を持って動いています。
そんなことが印象に残った1巻でした。



2巻。

この巻で、セルネットとDDの内部が少し見えてきて、俄然面白くなってきました。
梓と千絵、水原の「実践捜査研究会」、別名、無慈悲な女王「セルネット」、甲斐氷太を頭とする「DD」
この三すくみが明確に見えてくることで、作品の密度が増した気がします。
……が、相変わらず微妙なミステリ色は健在です。
まあ、個人的にはミステリ大歓迎なんですけどねw 千絵の見せ場も出来るし。
それに、海野千絵というキャラがミステリを書こうとして、生まれたのだとしたら、それだけで価値はあります。
それと……普通にディンゴが甲斐氷太ってのは気づきませんでした(笑



3巻。

えーっと、まずは景がかっこよすぎ……ってのと、セルネットの\Cが意外に弱いってのが印象的で(汗
この巻も、本当に少しですが、ミステリ色はありました。
ただ、犯人云々じゃなくて、読者の疑心暗鬼を煽る展開として使われていただけなので、好印象。
この巻で衝撃だったのが、梓と景の過去。
梓が景にしていた仕打ち。
それは今まで過去を美化していた梓にとって、耐えられない真実。
そしていつも軽薄な笑みを浮かべ、軽い印象の水原の衝撃の過去。



4巻。

この巻は、梓にとって試練のときでした。
罪の重さにつぶれそうになりながら、出会った3人の家出中学生たち。
そして友達であるからこそ、正しい言葉を言ってくれる千絵。
カードに残した景の言葉。
様々な出来事で梓は立ち直り、そして景を取り戻します。
その最後の展開の燃えることといったら!!
わたしゃ、かつての敵との共同戦線っていう王道な展開が大好きなもんで、この巻を読み終えたときの
興奮といったらなかったですよw

「……だが、いまの葛根市で望みうる、最高の戦力だ」

「反撃するぞ」

……激燃え!!



5巻。

──やっぱこいつら最高だ。
最後まで読んで、そう思いました。
作中での時期がちょうど年末ということもあって、感情移入が半端なかったです。
久美子が意外に活躍したのが驚きでした(ぉ
そして、最後の水原の

「A Happy New Year! Crackers!(あけましておめでとう バカやろうども!)」

に完膚なきまでに痺れました……
この5巻で筆者は終わらせる予定だったらしいんですが、ここで終わらせなくて正解でしたね。
まあ、ここで終わってもかなりの良作でしたけど。



6巻。

この巻で梓や景に襲い掛かるのは「日常」
非日常を体験した梓たちには日常に溶け込むことは難しい。
特に景にとって、それは顕著に現れます。
梓のおかげで景も日常に溶け込むべく努力を始めますが、そんなとき、再び非日常の世界が彼らを襲い掛かります。
正直、この巻は完璧にやられました。
もう、ツボな展開ばっかり。
記憶をなくし、それに抗うべく自分へメッセージを送るキャラたちには、涙なしには読めません。

「皆見茜はディンゴが好き。
 これは私の真実」


「負けるな。未来のわたし」

特に茜がとった行動が最高です。
残された時間で、何ができるか。
そして最後に選んだ行動は、自分の偽りない本当の気持ちを自分に伝えること──



7−1巻。

挫けないこと。
それが、海野千絵の最大の武器なのである。


この巻で、一番辛い思いをして、一番努力をして、一番過去を慈しみ、一番仲間を思いやり、一番悲しい思いをして、
一番孤独を味わった人物。
それが、海野千絵である、
それでも──彼女は挫けなかった。
それが、唯一の突破口となった。

この巻は、ちょっと言葉にできないくらいすごかったです……
かつての友が、かつての戦いを、戦友を、相棒を、幼馴染を忘れていくなかで、ただ一人闘った海野千絵。
彼女の努力が結果を得たとき、梓が景を、景が水原を、甲斐が茜を、──呼び覚ます。

「美人の味方、ただいま参上」



7−2巻。

「現実はあいまいだ。だからこそ自由でもある」

「夢も現実も、すべては君のものだ。君が造り上げろ」

魂でつながった、人と人の物語。
そんな感じです。

主要キャラのそれぞれに見せ場があり、もうたまらんッッ!!って感じで、もう言うことないです。
特に、茜と甲斐のエピソードが大好き。
ものすごく将来の二人を見て見たいですw

これで、物語は幕を下ろします。
しかし、日常に戻った彼らは様々な苦悩を体験するでしょう。
だけど──魂でつながった彼らなら、この苦難を乗り切った彼らなら、きっと明るい未来を歩いていける。
そんな気がします。



えー、とにもかくにも素晴らしい作品でした。
読み終えたときの感情は、ちょっと言葉にできませんが、とにかく最高、としか。

色々と考えさせられる作品でもあると思います。
これを読んだ人のなかで、少しは「ベルゼブブ」の思想を支持する人もいるんじゃないでしょうか。
自分は完全に千絵の意見を支持します。
……が、千絵のように信念を持ってあのように考えているわけでもありません。
社会のありかたについても、納得はできますが、自分がそれをできているかは別問題ですし。

この物語は、結局のところ、梓と景の物語である。
そして、梓が、景が、かつての間違いを認め、それを許すことで、この物語は幕を下ろす。

一番の被害者は、──女王なのかもしれない。