2004年ソフト化賞・社会起業家賞受賞者フリートーク

2005年2月17日 内幸町ホール

NPO昭和の記憶 清家 ゆうほ代表理事
日本自然エネルギー(株) 正田 剛代表取締役
司会 久米信行氏 久米繊維工業(株) 代表取締役


久米 司会の久米です。なるべく会場の皆様からご質問を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いします。

会場 清家さんにお聞きします。、うちにも92才の祖母がおりますが、話を聞いてみたいな、本を作ってみたいなと思ってる方が会場にもたくさんいらっしゃると思います。具体的にどんなプロセスを踏み、本にしてもらうのに幾らぐらいかかるのでしょうか。

清家 聞き取りは10時間前後です。そのくらい時間があれば十分聞き取りが行えます。それを我々がテープを起こし、印刷、製本していきます。部数はオンデマンド印刷と呼ばれるものを使用します。ページ数は概ね160〜180ページです。あとは写真を多く入れたいと思っていますが、そうすると費用は少し上積みされます。

聞き取りを行って、テープを聞いて原稿化しますので、通常の自費出版の料金に比べ、手間の分がかかります。

なるべくそれを補うためにボランティアのスタッフが原稿をまとめて値段を下げ、さらに地元の自治体から助成をいただけるような働きかけもできるようになりたいと思っています。数字で申しますと100部で、大体80万円ぐらい掛かります。

久米 個人で出したいという人は増えてますか。

清家 問い合わせは結構あるのですが、そこから先はなかなか進みませんね。

久米 聞き取りは10時間前後と話されましたが、何度かに分けるのでしょうね。

清家 2時間ぐらいづつ4回ぐらいに分けて行います。お年寄りにとっては大変と思われるかもしれませんが、それぐらい時間をかけると、お年寄りは却って元気になられますね。1時間程度では物足りないようです。

久米 4回目を終わったときはやはり淋しそうですか。

清家 友人がオーラルヒストリーの手法を使って政治学の研究をしていますが、彼が明治の元勲のお孫さんにあたるお婆さんから毎月1度、1年かけて聞き取りを行ってきました。おばあさんは最初は躊躇われていたそうですが、だんだんオシャレをするようになったんだそうです。最後12回目を終えたときには非常に名残惜しそうにしていたということです。そのあと少し具合を悪くされたそうです。身内の方が継続してフォローしていくのも大事なことですね。

久米 記憶が途切れているようなこともあると思いますが、それは大丈夫ですか。

清家 それは常にある問題です。でもそれが話しを愉快にさせるところでもあります。必ずしも歴史的資料という感じではなくて、今から過去を振り返ったときどうだったかという点が眼目ですから。

会場 聞き取りをやっていて、教科書や本に載っていないような昭和の歴史があると仰っていましたが、そのいくつかを教えてください。

清家 江戸東京博物館に写真の展示がありますが、そこに昭和17年8月の写真がありました。その写真を見ると、緊迫した時期にも拘らず、水辺では水着を着た若い人が海水浴をしている写真が残っている。それを見ると私自身暗い時代のイメージしか持っていませんでしたが、それだけではないんだなということが分かります。そういう意味で私たちは写真を大事にしようと考えています。

面白い話がたくさんあります。是非ホームページをご覧ください。

会場 日本全国に博物館が300ぐらいあるそうですが、聞き取りが終わったらその地で代々伝わる伝統工芸、職人さんの聞き取りも是非やっていただきたいと思います。地方の小さい製造業はそこから成り立っていく。日本の活性化はそれ以外にないと思いますので。

久米 私は最近、岐阜の郡上八幡を訪れた折、藍染めの老舗に寄りましたが、そこのキーマンのような人に話しを聞くと、博物館で見たり知ったりしたことがさらに立体的になると思いました。是非そういう代々伝統工芸に携わってきているような方たちの聞き取りも行って欲しいと思いますね。

清家 是非そうしたいですね。

会場 正田さんに2点お伺いします。家庭のソーラーシステムで発電した電気を買い取る制度がありますが、電気の買いとりは行わないのですか。
CO2を何トン減らしたという証明書を売るビジネスがありますが、それとの違いはどんなところでしょうか。

正田 一つ目のご質問は太陽光発電もグリーンエネルギーになるのではないかとうことですが、我々もずっと検討してきています。一つネックになるのはやはり太陽電池そのものがまだ高いということ。グリーンエネルギー証書は企業の環境対策のような形でお客様に買って頂いていますので、費用対効果が問われます。値段はできれば安い方がいい。実は今年から環境NPOを母体とした二つの会社がここに事業参入されました。そちらでは太陽光発電に対しても証書にして販売すると聞いております。

二つ目の質問は証書をもっていると何かいいことがあるのかというご質問だと思います。
これがまさに我々の創業以来の最大の課題です。いまのところこれをもっていると、税金が戻ってくるとか、国が褒めてくれるとか、そういう仕組みにはなっていません。
それではいけないと思います。

ボランティアの方だけが買って、よかったねで済ませるだけでは経済的に成り立ちません。やはり50社の企業が買ってくれるようになったわけですから、国もそういう取り組みを認めて、これに対して何らかのインセンティブを与える仕組みが望まれます。私たちはグリーンエネルギーというツールを使って、社会全体の仕組みを環境との調和に変えていきたいという願いを最初から持っています。

現実にオランダでは、クリーン電力を買っていると、一旦払った環境税が戻ってくる。あるいはイギリスではCO2の排出資料にグリーン電力証書も組み込まれていて、これをもっていると、CO2の市場で売れる。日本ではそういう仕組みを作ろうという議論が各省庁で始まったばかりです。50社のお客様のパワーを基に是非社会を変えていきたいと思っています。

久米 この証書を持っている企業を積極的に応援しようというような運動は起きているのですか。

正田 2年、3年とやってきて、だんだん我々の会社のコンセプトが分かって頂けるようになって、環境NPOからも大分応援していただけるようになりました。
去年のアースディに「みんなのグリーン電力」というウェブサイトが環境NPOの方の主導で立ち上がりました。そこで我々の取り組みも含めてグリーン電力というものを第三者的な立場でアピールしていく、そんな活動も始めました。

会場 グリーンエネルギー証書を輸出するお考えはありませんか。

正田 ご指摘のようにグリーンエネルギー証書は環境の価値ですから国の枠を超えて、取引できるのではないかという議論がここ数年出てきています。ごく小規模ですが、ワールドワイドグリーンという世界共通のグリーン電力証書をWEBで買えます。ボランタリーベースですがこういう取り組みが始まっています。

地球環境そのもはグローバルなものです。どこでCO2を減らしても価値は同じわけです。そういう意味では国際的な取引も視野に入れてやっていきたいと思っています。

久米 グリーンエネルギー証書の次にやりたい事業がありますか。

正田 グリーンエネルギーを買えるのは、まだまだ企業に限られています。よくみなさんからこういうサービスを選べるようにして欲しいとご要望を頂きます。なんとか電力グループとも協力しながら、個人でも電力を選べるような仕組みを作りたいと思います。

久米 そうなった時に、20%なりが上乗せされた分を目的税のような形で、正田さんがやられるような新しい事業に使われるというような仕組みは考えれますか。

正田 いろいろなものと組み合わせていくやり方がいいと思います。アメリカのオレゴン州は自然が豊かなところで、サーモンが溯上するところで有名です。そこの電力会社が面白いものを開発しています。自然エネルギーを促進するグリーン電力とサケの孵化を助けるような基金をセットにして電力会社が販売しているんです。それを買うと郷土のためにきれいな電気をつくりながら、サケの振興にも協力できる。

そういう地域特性を加味しながら、色々なバリエーションを作っていくのが面白いと思います。

会場 清家さんにお伺いします。聞き手を身内の方が勤める場合もあるのでしょうか。インタビューされる側とインタビューする側の人を同時に発掘されているのでしょうか。

清家 聞き手、書き手はこちらのボランティアの方が務めます。身内の方が同席する場合もありますが、基本的には身内の方が聞き手というのは想定していません。

久米 聞き手は有償、無償はあると思いますが、公募しトレーニングし登録していくような仕組みはあるのですか。

清家 編集をやっていたような方がその技術を使えるのではないかと応募されてくる場合が多いです。こういうNPO活動は求人情報紙も好意的で無料で求人の広告を出してくれたりします。

久米 子供たちに聞き取りをさせるというお話でしたが、具体的な試みはありますか。

清家 学習塾などの場所を借りてよくやります。子供と、その子供のお婆さんあるいは近所のお年寄りが対座して聞き取りを行います。会話は弾むのかと思われるかもしれませんが、これがものすごく盛り上がるのです。

子供たちは親戚のおじいさん、おばあさんを結構知らないんです。そこで系図を作るところから始めると、みるみる会話が弾みます。子供は係累の中にいるということに興味深々です。そこが我々の狙い目でもあります。

いま世の中の人は、国際化、環境問題などに目がいくようになってきたと思いますが、その一方で時間軸がどんどん短くなっているように思います。自分のおじいさんが何をやっているか分からない、おばあさんがどんな人生を送ってきたかが分からない。そういう子供たちが果たして将来の自分たちの孫の世代に思いを馳せるとは到底思えません。

最近町村合併でまことに奇異な町名をつけるケースがありますが、それはその場にいる人の発想と投票だけで決められているような気がします。ご先祖さまの投票はどこにいくのかなと気になります。私たちの活動は歴史の時間軸を延ばしていく意味も込めています。

久米 いま塾でやられているようなことを、公立学校も含め広めていこうというアイデアはありますか。

清家 デイサービスセンターでこの手法を使って実際にやっている方がいます。私の友人の教師も同じくやっています。

会場 私は東京の下町で職人さんをよく取材しますが、その当人だけではなく、時代のバックボーンなども結構重要で考証も必要になります。昭和の記憶も同じだと思いますが、時代考証をするスタッフは何人かいらっしゃいますか。

清家 率直に申しますといません。私はどちらかというとコミュニケーションツールとして使っているところがあります。その人の記憶にあればそれを尊重しようというスタンスです。

会場 正田さんにお聞きします。京都議定書が発効されましたが、それが商売の追い風になるということは。

正田 京都議定書の批准や発効は相当の追い風になっています。昨年の夏ぐらいから企業からの問い合わせがどんどん増えてきました。やはり各企業はこのままではいけない、何かしなければいけないと強く思うようになったのだと思います。

久米  表彰状にもありましたが、取り組みが早すぎる状況であの東京電力が、というわけで、たぶん私たちが想像できない色々な軋轢があったと思います。いま思い返して、辛かったなというようなことをお話いただけませんか。

正田 特に会社をつくるまでの1年は本当にいろいろありました。ここで話せない部分が一杯あります。それは墓場まで持っていくつもりです。
最初は「こんなの売れるわけがない、ただのポーズじゃないか」とボロクソに言われました。でも同じことを5回、10回と言っていくうちに、最後は祝福して送り出してくれましたですね。会社ができて最後の挨拶に行くと、本当によかったですねと言われたりもしました。
やはり他人を斜に見ていてはダメですね。やりたいことを何度も言っていけば、最後は99%の人は分かってくれると思います。それを私は学習しました。

久米 私が今日正田さんに会って感銘を受けたのは、普通起業家というと、先鋭的で、自己主張が強くて、圧力を撥ね退けるというイメージがありますが、正田さんは静かな語り口で、他人を説得していらしたというのがよく伝わってきました。
墓場まで持っていくという発言には男としてしびれました(笑)

最後にお二人にお聞きします。10年後のご自身の姿、やりたい夢についてお話ください。

清家 10年後は46才ですが、いろいろやりたいことがあり過ぎて、最近すごく焦りを感じます。10年後は昭和の記憶はすっかり社会に組み込まれた状態で、私が推進していかなくても敬老の日になれば自動的にイベントが行われたり、自治体の中でもそういう課が作られていて、自然と行われているはずです。
その目標を私は2010年を目処に掲げていますが、その2010年が丁度祖母の生誕100年にあたります。それで2010年を一つのメルクマールにしようと考えています。

久米 ありがとうございました。皆様、それが実現しますよう拍手で祝福したいと思います。次に正田さんの10年後についてお聞かせください。

正田 10年後は我々のような仕事は珍しくはなく、自然エネルギーをごく当たり前に使っている社会になっていればいいなと思います。
自分がどうなっているかは、ハードボイルド調に言えば「そんな先のことは分かりません」。

久米 アハハ。お二人のお話は第1部も大変素敵で、胸にグッとくるものがございましたが、このトークでさらに感銘を受けました。どうもありがとうございました。