短編小説『おいらのゴルフ物語』

サブタイトル「めざせシングル」 著作 寺沢憲重 


ありし日の杉原輝雄師匠とのツーショットです。ベストグロスで優勝をした時の記念写真です。

第一章

ゴルフを始めようと思ったのは何故!。

二十歳過ぎ当時、営業の仕事で車で神戸市内を走り回っていました。
神戸市垂水区に居た頃に仕事をサボって山間部へよく車を走らせました。
ちょっとしたドライブです。林の木々の空間から見下ろすと、
林間コースのゴルフ場のグリーンが見えプレー中のおじさん達の姿が
見える。『垂水ゴルフ倶楽部』大正9年開設で当時は神戸の財界人や
お金に余裕のある自営業者が集うゴルフ場だった。

その時はお金持ちのおじさん達が優雅に遊んでいるなぁと、思った
だけで、ゴルフをしてみたいとは思わなかった。
それから2年後、商売を始めた、日銭が入るどんぶり勘定で儲かって
いるのかどうかも判らぬまま、一国一条の主になった錯覚でゴルフを
始めた。ゴルフを通じてお金持ちと付き合えば仕事の面で何かうまい
話やよい刺激になるだろうといった打算的な乗りで始めたのである。

たまたま歩いて2分程で小さな網囲いの練習場があった。
ゴルフセットは高くて買えないし、何を揃えたらいいのかも解らない、
練習場の貸しクラブを100円で借りて打つのである。
毎日お昼過ぎに行き9番アイアン1本を借りて、土建屋の社長の
スイングを見よう見まねでひたすら打った。そんなある日のこと

当時デッカイ外車に乗っていた土建屋の社長が「兄ちゃんだいぶ
上手くなったな、素質あるで」と声をかけてくれた。
・・・これやがな、ゴルフやってたら社長連中とも付き合える
ようになるんやと、思った。他には誰も居ない練習場だった…。

練習場の経営者なのか知らないがおばさん一人が管理をしている。
おばさんの知り合いらしき若者がやって来た時、暫く私のスイング
を私の打席の前でピッチングウエッジで一球だけ打って見せた。
目からうろことはこの事だ。ボールのとらえ方といい、球筋といい衝撃だった。

「左腕と右腕を絞ってフォローで伸ばしたら良いよ」と、なにげに
言ってくれたアドバイスのお陰で私の球筋が一変した。次の日から
5番あいあんに持ち変え伸びのいいボールが打てるようになった。
残念なことに練習場は網の修復にはお金がかかるし暇なことも
あって閉鎖をする事になった。

いつも練習場の番をしていたおばさんに頼んで、錆付いた貸しクラブの
中から選んでハーフセットを揃え2000円で譲ってもらった。
そのクラブセットが最初のゴルフ道具である。
バッグは三ノ宮の地下で買った3500円のズック生地の安物だ。
今では考えられないゴルフセットであるが、嬉しかった・・・。
まだラウンド経験のないままだった。  

第二章

初ラウンドは名門コースで盗人ゴルフ!。

まだまだ本格的なゴルフとは言えないまま、打ちっぱなしを体験してから
1年近く経とうとしていた。店の近くに在った練習場が閉鎖してからは
千里や東豊中にある練習場で月に2・3回打ち込む程度だった。

商売をしながらアルバイトもしていた。店を閉めて夕飯を済ませたら
8時から12時頃までスナックのバーテンとして入っていた。
遊び半分興味半分でバーテンをしていたのだ。当時は時給200円
だったが、店が終わると気の合った客が麻雀やビリヤードに誘って
くれたりして遊んでいたから楽しかった。

実は同棲して金を少し貯めて結婚をしていた。同棲時代の走りと
言えるかもしれない、10万円以上の給料が貰えるようになるとは
思っても見なかった時代である。早婚か晩婚かどっちが良いのか?
二人合わせて家計をやりくりする方が一人前になれると思っていた。
はたして、内助の功は現実主義で共働きという形で商売の方も女房の
お陰で繁盛した。話はそれてしまったが、そんなある日アルバイト先
のスナックでスナックのママさんの息子さん通称マスターから
「ゴルフ行かへんか」と誘われた。初ラウンドができるやっと念願の
コースでプレーが出来ることになった。

早朝にマスターとその義理の兄(不動産屋)と三人で向かった先は
「三田ゴルフ倶楽部」ゴルフ場は日本庭園のように手入れされ
すばらしさに感動した。「綺麗やな」車はクラブハウスを通り抜け
ゴルフ場周辺の地道に入っていく、おかしいなと思っていると
クラブハウスから死角になる遠く離れたコース沿いの地道に車を止めた。

「さぁ行くぞ」と急かされ、そそくさとゴルフシューズに履き替え
バックを担ぎ、囲いの木々の間からコース内に入って行く、私も慌てて後を
追っかけ着いて行く、綺麗に刈り込まれたフェアーウエイの緑が
私の目を釘付けにした。景色に見とれている間も無く二人は歩く
ティーグランドに着くと「ここから行こか」準備運動も素振りも
そこそこに一打目を放った。快音とともにボールが飛んでいく
私はどう打ったのか覚えていないが、大きな放物線を描いて右に
曲がり隣のフェアーウエイのど真ん中まで飛距離は充分だった。

私のコースデビューは早朝からゴルフ場に忍び込んで堂々と…!?
盗人ゴルフをしていたのである。気が付くと3ホール同じところを
ぐるぐる廻っている、その3ホールはクラブハウスからは見通せな
い場所でうまい事にロング、ミドル、ショートを廻れた。義理の兄は、
用意周到でカメラまで持参していた。ラウンドをしながらお互いの
スイングを写したりして忘れられない初ラウンドになった。…つづく

ありし日に、つかしん前ゴルフ練習場の大会に参加した時のスタート前のショットです。