『おもろい刑事物語』 脚本:世森 友(てらけん)


      サブタイトル『ベゴニアの葉』

第一場

   刑事部屋と取り調べ室。
           机の上には書類などが散乱している。
   デカ長のデスクだけは整理整頓されている。
   出勤した七人の刑事。
有田(女性) 「お早うございます」 (他の刑事の皆さん)「お早うす」
有田   自分の机の上ぐらい、片付けたらどうなのよもう、
     デカ長を見習いなさいよ(と、いいつつみんなの机の上の物を片付ける)
萩    最近これと言った事件も無くて・・・デカ長も暇だからね・・・。
万年   男やもめにうじがわくー、(浪花節調)
九谷   二十五歳は適齢期、三十過ぎたらみそじ、四十過ぎたら行かず後家、なんてね、
有田   ナ、何よ、今の言いぐさは。
デカ長  萩君、失礼だよそんなこと言っちゃ
九谷   課長、いつも言っているじゃないですか、いかず・・・!(慌ててデカ長九谷の口を塞ぐ)
九谷   ムムムムッ(口をふさがれて)
デカ長  イカス、イカス、い、いい女だなあと…ネ、
万年   ソそうですよ、有田君は、こえだめにつる・・・?ってね、
備前   あほ、こえだめじゃなくって、はきだめにつるだろう・・・んもう
立杭   どうしていい男が付かないのか?不思議ですよね、
万年   灯台もと暗し、案外近くに、この中の誰かに・・・!?、
萩    美人で頭脳明晰、有田さんだったら今迄に五人や十人の男にくどかれてますよね。
有田   (まんざらでもなさそうに)イヤだわ、からかわないでよ、そりゃね、
      私だってェ〜、こう見えても〜・・・ぅう〜ん。
デカ長  あっ、有田君お茶入れてもらえんかね、
有田   ハイすぐに、(色っぽくしなをつくり 湯沸かし室へ)
       一同   ぷふふっ(首をすくめ、顔を見合わせて笑う)
デカ長  おいおい、仕事、仕事だ、(せかすように手を叩く)
                (その時、けたたましく電話が鳴り響く)
万年   もしもし捜査一課・・・ はい、はい、え!?、フゥン!ハイハイハイ
備前   万年さん、そそっかしいから又何かやらかしたの、
万年   ハイ了解!、(電話をおき)事件だよ事件、殺人事件かも、
立杭   えっ、平成の平安境と言われし我が官内に殺人?
九谷   やま、やまだよ、ど、どこの誰が、な、何をした。
デカ長  何を言ってるんだ。このおっちょこちょいが、早く現場に行かんか!
一同   現場に行ってきます。(慌てふためいて出て行く)
有田   ぬるま湯にどっぷりつかって、うだつの上がらない刑事ばっかりで課長も大変ね。
デカ長   う〜・〜・ん (頭をかきむしる)



第二場

 刑事部屋、事件現場の捜査から帰ってくる。

備前   課長、ただ今帰りました。
デカ長  (刑事ドラマの気分で格好つけて頷く)うーん、
九谷   こ、殺しですお年寄りの婆さんが首を絞められて、
     ひ、一人身の七十八歳のお婆ちゃんが自宅の部屋で、
デカ長  ちょっと_落ち着いて、順序立てて報告しなさい
備前   自宅、六帖の居間で、七十八才の女性が・・・、えェ〜、
     死因は絞殺です、殺害に使ったロープは見つかっていません、
     部屋はそれほど荒らされた形跡はありませんでした…(自分で頷く)
萩    お婆さんの指に髪の毛が付着していました。
     犯人のものと思われます。首を絞められて争ったときに、
     苦しまぎれに犯人の髪の毛をこう(仕種をする)引っ張ったんでしょうか?
九谷   こ、こうか(後ろから萩の首を絞める)
萩    うう〜、(九谷の髪の毛を両手で引っ張る)
九谷   痛い、痛いっ、毛、毛抜けるやんか!
デカ長  (格好つけて)犯行の目的は怨恨か、物取りか?
備前   近所に聞き込みをした情報によると、お婆さんは金に不動産、
     そこそこの財産があり、何不自由なく暮らしていたそうです。
デカ長  (ますます、その気になって)ふうん、ふうん、
備前   人に感謝されても憎まれるような人じゃ無いって…、
デカ長  うん、(机に両足を乗せ腕を組む)
九谷   (呆れ顔の呟き)刑事ドラマの見過ぎ。
デカ長  エヘン(空咳)
萩    玄関先にはベコニアの鉢が並んでましたよ。
万年   花が好きだったんだな、ベゴニアねぇ・・・、


第三場

     [幕間] 殺人現場のご近所のおばさん達、
A子  お隣りのお婆ちゃんが、殺されるなんて、
B子  怖いわね、こんな近くに殺人事件が起こるなんて、
C子  気味が悪くて夕べは寝つかれなくて、
D子  いつもきれいな花を頂いて、この間もピンクのベゴニアを、
    根が付いたからあげるわと言って分けてもらったの。
A子  私もよ、頂いて三年目になるかしら、毎年花が咲く度に、
    お婆ちゃん見てって楽しみにしていたのに・・・、
C子  そうよね、花が好きでやさしくて、あんな良い人を・・・、
D子  お婆ちゃんには色々教えられたわ、
B子  ねぇね、どうして、なぜ殺されたの、犯人は顔見知りかしら、
    殺人強盗なんてねぇ!?ああ恐ろしい。
三人  三人が揃って、シィー(指で口を押さえ肩をすくめる)
    (人が来る気配を感じてその方向を見て。)
C子  あらっ!昨日見た刑事さんが来たわよ、
D子  うちにも聞き込みに来た、確か万年とかいう刑事よ、
B子  人のよさそうな刑事、あれで刑事が勤まるのかしら
    万年平刑事だったりして、ねぇふふふっ
ACD子  もう、(止めなさいの手つき)
     (口を押さえ笑いを押し殺して立ち去る。)

第三場の幕が開いて、刑事達が聞き込みから帰ってくる。

有田   (それぞれにお茶を配る。)はい、どうぞ
デカ長  何か、手掛かりは??、手ぶらじゃないだろうな。
万年   近所の主婦の証言によると、仏さんは、かなりの財産を所有し長男は
     神戸でトレード峰カンパンニーとかいう小さな貿易商を営んでおります。
立杭   何か変だネェそれを言うなら、トレィドカンパニー峰じゃねぇの。
デカ長  (いらつき)ううっ、そんなこたぁどっちでもいい、それで、
万年   一時はバイアグラでこそくに儲けていたらしいんですが
     認可がおりてからは、経営も不振続きで。
備前   そのことですが、神戸まで行って最近の動向を調べてきました。
     母親の元へ頻繁に訪ねています。資金繰りの相談に行っていたようです。
万年   そう言えば、「墓場まで持っていく気かよ」とボソッと独り言をぼやきながら
     帰って行ったのを、向かいの主婦が偶然にも聞いたと言っていました。
有田   お婆ちゃんは最近息子のことで悩んでいたようです。親は子供が幾つになっても
     気がかりで、息子が頼って来ると、これ以上甘やかしたらあの子は駄目になると
     思い、心を鬼にして邪見に追い返したことで胸を痛めていたようです。
デカ長  むすこも…容疑者の一人か…!?、その線で、動機がはっきりするまで
     徹底的に洗い直してくれ。
九谷   課長、僕の調べでは・・・、
デカ長  (面倒くさくて聞きたくもなさそうに腕を組)ン?、
九谷   あのう職員が出入りしていますぅ、市役所の福祉課で、老人の世話をしてる人、
立杭   定期的に老人宅を訪問し老人介護をする福祉課の方です・・ね
九谷   その福祉の人ですが、競馬が好きで借金だらけで同僚に借りたり、前借り
     したり、サラ金にも借金があります。普段はおとなしく生真面目なんですけど、
     競馬場に行ったら別人28号で、人が変わったように「それ行け、よっしゃ、
     来た〜鞭や鞭、やったあ〜入った取った取った〜」と大騒ぎ目は血走り・・・!
デカ長   あぁ、競馬好きは解ったから、その先続けて、
九谷   はっ、女房にも逃げられ現在独身です。ところが、最近、財布の中身に、
     万札が入っているのを金を貸していた同僚が食堂のレジでチラッと見て、
     貸した五万円返してと言うたら、せかさなくても近いうちに返すよ、
         と、言っていたそうです。
デカ長  (色めき立って)よくそこまで調べた。二人目の容疑者かぁ・・・?
九谷   (得意気に万年の顔を見て咳払い)んうふん、
萩    (デスクの横に廻り)課長、お婆さんの身辺調査をしたところカラオケ同好会の
      中に何となく気になる人物が浮かび上がってきました。
デカ長  ほう、で、それは、
萩    その女性なんですが、近所に住む四十八才で大柄、いつもど派手な格好が好きで
     通称ナニワのサッチー、今まで再三に渡り三十万とか五十万を工面して貰い
     借りては返すを繰り返しています。不景気な時に店を改装しその費用と問屋の
      借金を合わせて三百五十万円程あるそうです。店の経営を立て直したい・・・、
     見栄を張っていたい、動機はまだまだ不十分ですが・・・!?、
デカ長  尻尾を掴むまで詳しく洗い直してくれ、
萩    はい、あの日のアリバイを確かめてみます。
デカ長  三人目の容疑者、ブティック経営のナニワのサッチーか・・・?
備前   どうかなぁ、中国の諺に「李下に冠を正さず」と言うのがある、その反対は
     疑わしきは罰せずと言う、まっ言ってる事はもっともらしいが、調べたことを
     犯人に結びつけたデッチ上げ、噂話しに過ぎないと思うけど・・・。 
一同   (唖然とする、そのうちの一人から)何やて、
備前   私はねこの度の事件は、行きずりの犯行だと睨んでいる。
     あの町内で顔見知りが犯行に及んだとは思えない・・・、
     婆さんを殺してまで金を奪う奴はいない、直ぐに犯行がバレて捕まってしまう。
萩    (憤りながら)行きずりの犯行と、言うんですか、
備前   前課者か、独居老人を狙った犯行・・・、
万年   高齢化社会、独り住まいの悲劇、う〜ん余生を楽しく送ろうという時に・・・、
立杭   最近の新聞記事で読んだ強盗事件によると、捕まったその犯人は、独り暮らしの
     老人ばかりを狙っていたそうです。オレオレ詐欺も高齢者がターゲットだ・・・
デカ長  う〜ん流石、目のつけ所が違うね、行きずりの犯行説か・・・?
有田   課長、参考までに…
デカ長  えっ、(呆れ果て)まだ他にも容疑者がいるのか・・・??、
有田   被害者は前日の二時、銀行に行って三百万おろしています。
     銀行を出てすぐ男とぶつかり、持っていたハンドバッグの中身が歩道に
     散乱したそうです。その時ぶつかった相手はすまなそうに、ぺこぺこ頭を
     下げスミマセンと謝りながら風呂敷から飛び出した封筒を拾っていたそうです。
デカ長  引き出した三百万が現場から消えている?で、男はその現生を見たのか?
有田   それは分かりません、その日は駅前の駐車違反取締り日で、偶然婦人警官が
     その一部始終を見ていたそうです。
デカ長  その婦警さん、ここに来てもらいなさい。
有田   はい、交通課へ行ってきます。 
デカ長  (困り果てて)ぶつかった男、どこの馬の骨だあ〜、
萩    容疑者の特定、犯人の割り出し、こりゃ大変だなぁ
万年   それを追求し本星を挙げるのが、我々の勤めです。
備前   税金の無駄遣いと言われないように、一刻も早く犯人を逮捕し
     平穏な日々を取り返しましょう。
一同  (やる気満々)おう、任してください、(胸を叩く)

          第四場

      幕間に [おばさん達の井戸端会議]事件のこととか日常の会話(アドリブ)

        (報道関係者がおばさん達に近づき)
記者K  事件のあった前後の事とか変わった様子を聞きたいんですが何か知らないですか?
一    何もないわよ、警察に喋ったことと同じよ、
二    警察に行って聞いたほうが早いんじゃないの、
三    ねぇねぇ、カメラで撮ってるの、テレビのニースに写るの出るの恥ずかしい、
記者Y  まぁまぁ、勿論ですよ、被害者の事とか犯人に対する事とかを話して下さいよ。
四    でもねぇ、口は災いのもとって言うでしょう。こう見えても無口なのよ
一    よく言うわ、先まであんなにペチャクチャ喋ってたのは誰やの、ねぇ、
二    ブレーキの壊れた自転車で坂を下るようなものよ 
一二三  もお、(おばさん達がゲラゲラ笑う、どうにもとまらない)
記者M  (大声を出して)あの〜一人暮らしのお婆さんが殺されたことについては何か。
四    そりゃあのお婆ちゃん、この辺では知らない人は居ないくらい有名だったわよ、
記者K  そうですかそれで、どんなふうに、
三    他人(ひと)には親切だし、優しくて如才のない人だったわ・・・、
二    この間も通りすがりに、いつも奇麗にお花咲かせてますねと、声掛けたら、
     この花どうぞ持って帰ってって言うのよ枯らしちゃもったいないからと断ると、
     花を見て美しいと思う貴女なら大丈夫よ、きっと来年も咲いてくれますよって
     言ってくれたの、やさしい蘊蓄のある言葉でしょう。感激したわ、
四    あなたの口から蘊蓄だなんて、花の育て方を聴きに行っては花を分けて貰い、
      花を貰ったお礼にと言ってケーキを持って行きまた花を貰う、要領がいいんだから
記者K  お婆ちゃんの趣味は花を育てること?
二    そんなことを言ってるんじゃないの、そりゃ花は好きだったけど、
     一人暮らしって何かと寂しいでしょ、花を見てると癒され気が紛れるからよ、
三    趣味はもっと高尚なものよ日本舞踊に茶道に詩吟、ええと、なんでも師範格よ、
     お婆ちゃんの名誉のために言っとくけど書道のお師匠さんだったのよ、
一    私の子供が小学生のとき習っていました。子供の心に溶け込んで教える立派な
     先生だったわ、六年のときコンクールで優秀賞を貰った時にお陰様で有り難う
     ございましたとお礼に行ったら、おめでとうよく頑張ったわねと子供をほめ、
     私にもお習字に打ち込める環境を作っている貴女が素晴らしいからよって
     私まで褒めてくれたの(涙声で)
記者M  素敵な方だったんですね、惜しい人を…、それで、犯人について何か・・・?
四    解る分けないでしょ、素人考えで推理して、もしかしてあの人じゃないかしら
     何て言って、真犯人でなかったらすっごく迷惑掛かっちゃうじゃない言えないわ、
記者M  ということは、何か犯人の心当たりでも、
四    もう、しつっこいわね、
記者Y  知り合いのお婆さんが殺された。その犯人に対する怒りとか、言いたいことは。
三    そりゃあるわよ お年寄り、弱いものを襲う犯罪者、卑怯者を早く捕まえて
     一生牢屋に閉じ込めて苦しめてやればいいのよ
二    高齢化社会と不景気で増える失業者、社会現象の一つ、お婆ちゃんは
     その犠牲者かも知れないわ、
一    だんだん 世の中が住みにくくなっていく様で嫌だわ、さあ、帰りましょう。
     (おばさん達が立ち去る)
記者K  現場からMYKがお伝えいたしました。(と冗談めかして言う)

          後半犯人割り出し
第四場

幕が開く  刑事達は容疑者を黒板に書いて、
集めた情報をもとに犯人割り出しに取り組む

デカ長  おい備前どうなっとる、容疑者の方は絞れたか?
備前   動機の裏固めは手止りです、何にも出てきません物的証拠も無い、
     犯人像が浮かんでこなくてどうしようもできません、
九谷   容疑者と思える人物を一人づつ署の方へ引っ張って来ましょうか。
デカ長  うーん、締め上げてみるか。
立杭   課長、第一発見者、仏さんの義理の娘さん、次男の奥さんを連れてきました。
デカ長 ここにお通しして、
    (娘、促されソファーに座る、備前、前に座って)
備前   現場で聞いたことと同じなんですが、時間が経った今、少しは
     落ち着かれたでしょう。何か手がかりになるような事を思い出しませんか?
娘    ええ、どうしてあんな事になったのか、ひどい・・・?。
備前   はあ〜、お気持ちは重々お察しします。どんな些細な事でもいいんです・・・。
娘    五時頃に今日そっちへ行くからって、電話した時「ああ、待ってるわ」って
     元気で居たのに、あっそうそう「今日ね銀行の前で人とぶつかって膝を地面に
     ぶつけてね少し痛いの、親切な方でね落としたものを全部拾ってくれて家まで
     送りますよって何度も言ってくれたのよ、でも大丈夫ですよといって帰って来たの
    人垣が出来てみんな見ているし、恥ずかしくて、その場から早く立ち去りた
     かったの解るでしょう、しばらく歩いてふと振り向くと、その人心配そうに後を
    着いて来たの、目が合って会釈を交わして別れたんだけど、家でお茶でも
     御馳走すれば良かったかしら」って言ってました。私は駄目よ知らない人家に
     入れちゃ、て、言ったんですけど、
備前   そうですか、他に何か?
娘    私が遅く行ったばっかりに、早く着いてれば・・・。
備前   玄関は開いていましたか?鍵は?。
娘    戸締まりは用心してましたから、鍵は掛かってました、私は預っている鍵で
     開けて中に入りました。
備前   密室での絞殺、犯人が鍵を・・・?、どうも気になるな、
     (有田が婦人警官を連れて入ってくる。)

有田   課長、婦警さんに来て頂きました。
デカ長  萩君、婦警さんに銀行前でぶつかったお婆さんのことを詳しく聞いてくれ
萩    はい解りました。どうぞお掛け下さい、で、
     一部始終を目撃したそうですがその場の状況をもう一度詳しくお願いします。
婦警   銀行の前に駐車違反車があり、運転手が車に帰ってくるのを待っていました。
萩    それは何時頃ですか?
婦警   午後二時十分、違反車の停車時間を計っていましたから間違いありません。
萩    ハンドバックか風呂敷包みの中身については。
婦警   全部は覚えてはいませんけど、女性の必需品が・・・、
萩    女性の必需品?
婦警   口紅、コンパクト、香水、ティッシュ、ハンカチ小銭入れ、財布、封筒に、
萩    封筒、それは札束の入った白い銀行の、
婦警   いいえ、茶封筒でしたよこれ位の(手で示す)
萩    茶封筒ですか・・・!?
     (そこえ鑑識課の一人が入ってくる。婦警は萩に敬礼して出ていく)

鑑識   失礼します。
デカ長  ご苦労さまです。で、何か手がかりは、
鑑識   仏さんの死亡推定時間は九時から十時の間
     夕飯は七時に済ませその後、好きなテレビを見るのが日課でしたから
     間違いありません、指紋は照合した結果フアイルに該当者無はありません、
デカ長  犯人の指紋は無しか、髪の毛については。
鑑識   被害者の指に付着していた髪の毛は犯人を特定する有力な物的証拠です。
       DNA鑑定を急ぐよう指示は出してあります。
デカ長  いつ頃、結果がでますか、
鑑識   採取した他の髪の毛も全部鑑定しますのでおそらく二日後になると思います。
デカ長  解りました。足跡か靴跡は取れましたか?
鑑識   どれが犯人の物なのか特定するまでにはいきませんでした。
デカ長  そうでしたか、ご苦労さまでした。
     (鑑識課の人敬礼をして部屋を出る。)
万年   現場百ぺんと言いますからね、犯人が様子を見に来ていないか現場に残された
     遺留品はないか調べに行っててきました。
デカ長  うん!何か、見付かったか、
万年   財布の中身三万八千円は入ったまま三百万は消えた。
     見付けたのは、猫の足跡と花の種一粒、
デカ長  (がっかりして)それだけか、
万年   ご存じでしたか、玄関先のベゴニア、
九谷   ベニア板がどうかしたんですか、
万年   ベニヤでなくてベゴニア、花の名前だよ、このおっちょこちょいが、
九谷   そそっかしいのは先輩譲りです。
万年   いいから向こう行ってろ、犯人は犯行後、玄関の鍵をもとどうりに掛け、
     立ち去ろうとした時に慌ててベゴニアの鉢をひっくり返した。その時・・・
デカ長  つっ、そ、それで、勿体ぶらずに結論を早く言えよ。
万年   ベゴニアの葉は手の平ぐらいの大きさになります。
     ひっくり返した時に踏まれた葉に靴跡が、時間が経ちその葉っぱに
     くっきりと靴跡が残ってました。
デカ長  葉っぱに靴跡が現れた!、そそっかしい経験がものを言ったわけだ。(笑う)
万年   そそっかしいは余計ですよ、それともう一つ〃閃いたのですが・・・、
     実は私もなんですが、鍵を忘れたり無くしたときの用心に玄関先のプランター
     の下にいつもスペアキーを隠しているんです。
     もしかしてお婆さんは外出から戻ると、鉢の下からかぎを取り出して、
     玄関を開けていたんじゃないかと。
萩    その事を知っている、或いは鍵を取り出すところを見た奴が犯人の可能性がある
    そういう事ですね、で、犯行後は玄関を閉めてもとの場所に戻した。
九谷   万年さん凄い、ヤルときゃヤルねぇ、そいつが本星や、
備前   このタコ、慌て者んが、課長このやまは、怨恨や顔身知りの犯行では無いと
     始めから睨んでいましたが、ひょっとしてこれで糸口が見えてきたかもね。
デカ長  有田君お茶・・・、あっコーヒーがいいな、出前頼んで七人分
一同   有り難うございます。御馳になります。
九谷   ケーキセット付きで、
有田   はいはーい、(有頂天になって)
デカ長  しょうがない、今日は特別フンパツしよう。
一同   やったー!。やったね!



      幕間に、下手からA子、B子、C子、D子、
[歩きながら事件の話や噂話(アドリブ)]

上手から主婦、一、二、三、四、歩きながら通り過ぎる、[世間話や芸能人の噂話(アドリブ)]

         第五場

  幕が開いて、取り調べ室と刑事部屋
  舞台二元中継、刑事部屋は無声音で日頃の動き=取り調べ室で容疑者と刑事

万年   正直に答えて下さい。バイアグラは効くかね、
長男   はぁ?(笑いながら)刑事さんも好きですね、
万年  (つかみはOKと独り言)ところで会社の経営はうまくいっていないようですが、
長男   会社といっても社員五人で細々と、輸入商品も倉庫に在庫がだぶついてますし
万年   主な輸入商品は?
長男   ワインとか化粧品、それに陶器類にガラス食器、バック類に時計、
     ランジェリーにアクセサリーにええっと・・・!?。
万年   解りました結構ですよ、最近ちょくちょく実家を訪ねていますがその目的は?
長男   会社の経営が不振なのでお金をくめんして貰えないかと相談に行ってました。
万年   それで母親は、何て応えましたか・・・?。
長男   いつまでも親を当てにしないで、自分の力で切り抜けないと駄目よって、
     いつにもない強い口調で・・・、
万年   母親の遺産が欲しかった。早く死ねばと思いそれでとうとう犯行に及んだ。
長男   私が母親を!殺してませんよ、大切な母親を殺された被害者ですよ、んな馬鹿な、
万年   遺産目的の犯行説、有力だと思ってるんですがね、
長男   随分前に生前贈与の事で、一寸言い争いはしましたけど。
万年   玄関の鍵の隠し場所、知っていますよね、
長男   当然知ってますよ。鉢の下です。
万年   それで困っていた会社の資金繰りはどうしました。
長男   知人の紹介でなんとか出資者から借受ける事が出来そうなんです。
万年   そうですか・・・、今日のところはこれで引き取ってもらって結構です。
長男   (ふてくされ気味に目礼をして立ち去る)

   (入れ替わりに福祉課の職員を連れて九谷が入って来る。)
九谷   (唐突に)私もね競馬が好きで、競馬、馬が走るだけにうまくいかないね!
職員    はぁ??、ハァーハハハ(笑ってごまかす格好)
九谷  (独りごちて呟く)つかみはOK(軽くガッツポーズ)
職員  (呆気にとられ)聞きたい事ってなんですか?
九谷   老人介護の仕事は何年になりますか、
職員   三年目になりますです。
九谷   地味な仕事ですよね、ストレス溜まりませんか?
職員   そんなことは無いですよ、やりがいがあります。
     高齢者がどんどん増え一人暮らしの高齢者のケアはこれからもっと求められます。
九谷   (嫌味たっぷりに)安い給料で年寄りの相手させられて、競馬で発散ですか、
職員   関係無いですよ、何をしようと勝手でしょう。
     お年寄りの方々はみんな私が来る日を楽しみに待って居るんですよ。
九谷   そうですか、競馬で負けた借金、同僚やサラ金に借りた金、三百万近くに
     なってるそうじゃないですか・・・?。
職員   誰に聞いたんですか〜、借金そんなにないですよ、
九谷   嘘つくな、裏は取れてるんだ。
     お婆さんが銀行で下ろした三百万円が無くなってるんだ
職員   私が殺ったと思ってるんですか、絶対に殺ってません、
九谷   じゃ、近い内に借金が返せるらしいが、その金の出どこは、
職員   あっ、そ、それは、親父が持っていた株が上がったんですよ。
     その株を売ったお金は今のところはまだ銀行に預けてありますけど、
     兄弟三人で近いうちに分けることになっているんです。
九谷   あっそう、ところで玄関の鍵はどこにあるか知っていますか?
職員   知りませんよ。訪問日は決まってますから必ず中から開けてもらっていました。
九谷   被害者の死亡推定時間の九時から十時の間、何処で何をしてましたか?
職員   アリバイですか、まだ疑っているんですか、アホらしい
     それを調べるのが刑事の仕事でしょう。わたし帰ります。
九谷   (暗黙の了解で黙って見送る)

 

犯罪捜査 取調室

             [刑事部屋ではそれぞれの動き(無音声)]

萩    ブティックの経営は何年になりますか?
サッチ  十二年です。バブルの絶頂期にオープンしたのよ、
萩    その時の開店資金はどうしました。
サッチ  OL時代の貯金と退職金、不足分は銀行が貸してくれたましたわ、
     良き時代だったのよ、金融の引き締め、貸し渋り、こんな不景気な
     世の中になるなんて思いもしなかったわよ
萩    バブルがはじけて、店は傾き出した。借金だけがっ残った。
サッチ  好景気に便乗して儲けたわ、三年で借金ゼロ、
萩    マンションも購入し、生活が派手になってきた。
サッチ  こう見えてもね大手商社の地味な庶務二だったの
     テレビ番組でもやってたでしょう。あの庶務二、
萩    地味なOL、想像つきませんね、派手な生活から抜け出せず、
     資金繰りに困る度にお婆さんの処に借りに行っていますね。
サッチ  借りたと言っても、ほんの、四、五十万づつよ、在庫一掃セールを
     やれば返せる額だわ、信用があったからお婆ちゃん貸してくれたんじゃない、
萩    最近、店の改装をしましたねこの不景気な時期に何故?
サッチ  お婆ちゃんが、そうすすめてくれたのよ高級婦人服の売れ行き悪いでしょう、
     いっそ、若い人向けのお店にしたらって、その費用を出してくれたのよ
萩    お婆ちゃんが、こんなご時世に・・・今時、奇特な方ですね、
サッチ  本当です、私のお金がお役に立てるならって、
萩    被害者が銀行から下ろしたお金三百万が現場から消えているんです。
     お婆さんが銀行から下ろしたことを貴女は知っていたでしょう。
サッチ  知りません、知りませんよ、そんな事、ほんとに本当です。
     嘘じゃありません、犯人扱いしないで、(涙声)
萩    それじゃ、最後にお聞きしますがあの日のアリバイは?
サッチ  カラオケに行ってました。同好会の方達と一緒に、
萩    そうですか、証明してくれる方が居られますか・・・?。
サッチ  一緒に行った方にでも聞けば、失礼しちゃうわ、もういいでしょう、
萩    今日は、これで引き取ってもらって結構です。

 [喫茶店のウエイトレス、コーヒーを出前。]

ウエイ   失礼します、コーヒーを持って来ました。ハイ萩さん、立杭さん、備前さん、
     課長さん、万田さん、万年さん、いつもこの子、年の順に配りよる、
ウエイ  (有田に配り終わり)違うわよ(照れながら)好きな順ですよ。
万年   萩焼きの陶器みたいな、堅物を一番、好きか、
ウエイ  何よ、万年平の平刑事の、まんねんさん、
一同   (どっと笑う)
万年   憎まれ口を言って、誰かさんみたいに嫁に行けなくなるぞ、
有田   何よ、どういう意味、

 [そこへ鑑識課走って入って来る。]
鑑識    課長、DNAの鑑定が出ました。
デカ長   鑑定結果が出たか、以外に早かったじゃないか、
鑑識    どうぞ(鑑定表を差出)これです。
デカ長  (見てもさっぱり、ちんぷんかんぷん) それで、
鑑識   前課者のリスト全てにDNA鑑定が載っている訳ではありませんが、
     照合の結果前科者リストには該当者はいませんでした。
備前   犯人のものである確証はありませんか、
鑑識   犯人のものである事は間違いないと睨んでいますが、
     被害者に引っ張られて抜けた方の毛根であると断定出来ます。
萩    物的証拠は毛根で、血液型も解りますね、DNA鑑定と、靴跡、
九谷   容疑者を片っ端から洗いましょう。
備前   今までの容疑者はみんな白だよ、無駄だと思うけど、
立杭   もしかして!銀行の前でぶつかった男、そいつが本星ですか、
     備前さんに娘さんが話した中で、一つ引っかかっていたんですが、
     家まで送りたがっていたようにも、ぶつかった相手がそこまでしますか?
備前   そうだよなぁ、男は衝動的にお婆さんの家を知りたいと思った。
万年   本当は同じ銀行でお金を下ろすところを見て、わざとぶつかり札束を
     ひったくろうとしたらお婆さんがこけて持ち物が散乱し封筒が飛び出した、
     たまたま近くに婦警が見ていたので、その場は諦め、後を着けることにした。
九谷   そうですね冴えてるね、万年さん古畑任三郎みたいに鮮やかですね、
デカ長  このおっちょこちょいの万年のどこが古畑任三郎だ、
     その男が誰で、どこの馬の骨かわかってんのか?
萩    (九谷を引張って)課長、銀行前から現場までの当日の足取りを探ってみます。
備前   近くの飲食店に立ち寄った形跡がないか聞き込みをしてくれ、
二人   はい、解りました。(敬礼をして立ち去る)

第六場

     [デカ長、記者会見、報道関係者の質問に答えている(アドリブ)]
 [ウエイトレスと刑事の談笑(アドリブ)]

有田   貴女のいい人は萩さんなの、それとも他に好きな人いるの、
ウエイ  他にいないわよ、知り合いと言えば警察関係の人ばっかりで、
有田   刑事の奥さんは大変よ、苦労するわよ、
ウエイ  ありたさんも、そのけいじが、すきなんでしょう。

デカ長  萩君本星の顔がわれたか?
九谷   目撃証人は今のところ見つかっていません、
デカ長  君には聞いて無い、
九谷   婦警さんにも顔を見てないか確かめたんですが、
デカ長  そんなことはとっくに備前君が確かめてある、
     犯人は婦人警官に顔を見らないように俯いて眼をそらしたままいた。
     面が割れたら困る人物だ。やましいところがあるからだ。
萩    私も、星には前科があると考えています、事件のあった日の、
     夕方五時頃から八時の間に絞って、見かけない男が来なかったか、
     飲食店関係を重点的に当たったんですが、無駄骨でした。
万年   そう、ガッカリするな、能登の穴水と言う所の漁師は、ボラを
     どうやって獲るか知ってるか、海に網を張って、高い櫓の上からボラが
     仕掛けた網に入るのをじっと何時間も待つんだ。
     (電話がけたたましく鳴った)ほーら掛かってぞ、
備前   はい捜査一課、はい、…、はい、はいそうですかご協力有り難う御座います。
     見覚えのない客で何となく怪しげな男を思い出したと言っています。
デカ長  そいつが例の男か、犯人の顔は・・・?、
備前   犯人かどうか、モンタージュを作ってみないと解りませんが、
萩君、 (メモを渡し)ここえ行って、今の人を至急、連れて来てくれたまえ、
萩    はい、行って来ます。
備前   七時頃にうどんを食べに来た男が、さりげなくお婆さんの事を聞いて帰った
     そうです、その事をサスペンスドラマを見ていて思い出したと言っています。

          幕間

 [幕間に 入れ替わり立ち代わり疑われた三人ぼやきながら歩く、]

職員     白い目で見られて、役所に居ずらくて性がないや、事件がはっきりするまでは、
      老人介護の仕事もやらせて貰えない、やりがいがあったのに、この際競馬止めよ、
      止めたら、あいつ帰って来るかな、
       (下手に下がる)
長男     おふくろが亡くなって、ポカンと胸に穴が開いたようだ、穴が大きい分
       それだけおふくろを頼っていたんだな、そのうち親孝行するよっと言ったら、
       ときどき相談に来て心配かけるお前はそれで十分孝行息子だよって言ってた。
       それにしても不景気になったもんだ、輸入販売も止める潮時かなぁ・・・、
       (下手に下がる)
サッチ    イヤンなっちゃうわあのへぼ刑事私を疑うなんて、外見が派手で借金してたら、
     容疑者扱い、失礼しちゃうわ、私、こんなんじゃなかったのに、お金、お金
     そうよバブルがいけないのよ、見栄を張るのも、派手な暮らしも止めようかしら、
     私は地味な庶務二がお似合いなのよ。ホホホッ
       (と言いながら下手にはける)

(尺をあわせる為に書きましたが、この赤い部分は要らないかも知れませんね)

    第七場

      幕が開き活気に満ちた刑事部屋、

デカ長    前課者リストにモンタージュとそっくりの男が居た。
             うどん屋に寄った男に間違いないらしい、
備前    指命手配を本部に通達しました。
デカ長   九谷はどうした。
万年    あのおっちょこちょい、犯人のモンタージュコピーを持って、急いで
      飛び出して行きました。何か当てでもかぎつけたんでしょうかね
萩     (電話が鳴り響く)課長、犯人は競馬場に居るそうです。
      逃がさないように九谷が見張っているそうです。
デカ長   まだ犯人とは断定出来ない容疑者だ、そいつを捕まえて来い、逃がしたら、
      警視庁しょうかん賞も逃げてしまうぞ、ほれっ、行って来い、
      (万年、備前、立杭、萩、飛び出して行く。)

有田     頼もしい、恰好いい、惚れ直しちゃう、
デカ長    誰のことだい、備前君だろう、ズ、ボ、シ、
有田     違いますよ、課長の事を言ったんですよ、うん、
デカ長    不倫は、不倫はいけません、クリントンじゃないんだから、懲戒免職に・・・、
有田     冗談ですよ、冗談、
       (ウエイトレスがコーヒーの出前を持って入ってくる)
ウエイ    失礼します、コーヒーを?あれっ萩さんは、他の人は、
有田     残念だったわね、皆さん出て行ったわ、
デカ長    注文したこと忘れてた、三人で飲むか、

      [暫くして容疑者の男を連れて戻って来る。]

九谷    (ハラハラ鼻息を荒くして)只今戻りました。
デカ長    ご苦労!でかした、競馬好きも時には役に立つねぇ、
九谷     競馬場に絶対にいると、まなこを皿にして、
萩      それを言うなら血まなこになってでしょう。
九谷     そうです、見つけた時は万馬券を取った気分でした。
万年    (笑って)ははは、お前らしいな、
九谷     芸は身を助ける、好きこそものの上手なれ、てね、
萩      それ、一寸、的はずれじゃない、

取調室にて

備前    お前が殺ったんだな、
立杭    素直に吐いた方が、気が楽になりますよ、
      犯人らしき男   知りませんよ、殺ってません、
備前    三百万、どうした。
犯人    三百万!何の事ですか?知りません、二日前にこっちへ来たばっかりで、
      殺人事件があった事も知らなかったんですから、本当ですよ、
立杭   (つかつかっと側に行き)お婆さんが首を絞められ、
     (髪の毛をつかみ)殺されたんだよ、(ドサクサ紛れに髪の毛を抜く)
犯人    痛えっ、いきなり何するんや、
立杭    これが動かぬ証拠か(と独りごちてデスクへ行く)大至急これを、
備前    務所帰りのお前が競馬する金をどこで手に入れた。
犯人    人聞きの悪いこと言わないで下さいよ、前課者だからって
      白い目で見るのは止めてもらえませんかね・・・、
      疑わしくは罰せずって言うでしょう。
備前    それは、俺の言った台詞(せりふ)だ。(にが笑い)
      ひとレースに五万円も賭けていたそうじゃないか、
      (声を荒げて)そんな金をどうして持っていたんだ。
犯人    昨日、駅前のパチンコ屋で久しぶりにやったらフイバーしちゃて、
      出るわ出るわ、大箱三杯も・・・!
備前    (激怒)口から出任せ言うな、正直に吐け、
立杭    (備前に耳打ち)DNAが一致しました(調書席に戻る)
備前    犯行現場の髪の毛と、お前の髪の毛が同一人物のものであると断定、
      今履いている靴の左側の靴底とベゴニアの葉に残っていた靴跡も一致した。
      これだけ証拠が揃っているんだ、観念しろ・・・!、
      (暫く沈黙の後、犯人の口から)
犯人    刑事さん、ス、すみません私がやりました。
      パチンコに負けて銀行の前を通ったら、出て来たお婆さんとぶつかった拍子に、
     バックが飛んでの中身が散らばったんです。慌てて拾ってやりましたその時、
     手の感触で封筒の中が札束だなって解ったんです。
備前    それで、後を着けたんだな、
犯人    遠くから家に入るのを見届けて、一旦帰りました。
備前    鍵の隠し場所も、その時に解ったんだな、
犯人    えぇ、これなら簡単だなと思いました。
備前    馬鹿野郎それは息子さんの為にそうしていたんだ。
犯人    殺す気なんかなかったんです。どうしてどうして・・・、(机を叩き)
      (泣き伏して)殺す気はなかったんです。本当です・・・、
         暗転

 [刑事部屋、七人の刑事、ほっとしてくつろいでいる。]

(そこへウエイトレスがコーヒーを持って入って来る)
ウエイ   コーヒーをお持ちしました。事件が解決して良かったですね、今日は
      私のおごりよ、(萩に近づき)萩さんこれで暫く暇が出来るでしょう。
      今度わたしとデートしてね
デカ長   みんな良くやってくれた。誰の手柄でもなくチームワークの勝利だ。
      それぞれが個性と言うか特徴を生かして捜査に取り組んでくれたと思う、
      よって警視しょうかん賞は代表のわたしが頂く。
一同    (いぐち同音に)ずるいですよ、それは傲慢だ。



         暗転

[翌日、刑事達今回の事件の整理と報告書作成中に]

    (そこえ疑われた三人現れて、刑事達、唖然となる)
職員    女房が戻ってきて仕事に復帰できて頑張ってます。
長男    実家に戻って花を育てて花屋をすることにしました。
サッチ   地味な生活に戻って派手な生活を止めることにしたわ
刑事一同    それは良かったですね、(手揉みしで愛想をする)
        (報道関係者、どどどっと乱入)
記者達    犯人は、立件できたんでしょうか、起訴は、等とマイクを向けられ、
      (刑事達は逃げ惑い、てんやわんやとなる)  

                『完』


あとがき

  七人の個性豊かな刑事が犯人を逮捕するまで、面白、可笑しく、
  解りやすく、展開していきます。
  セットは刑事部屋と取り調べ室のみ、幕の間に女性を多く出演させ、
  劇の幅を広げた。幕間を有効に使い、捜査の進展と、主婦の日常的 
  会話の面白さの効果を出した。
  劇中に登場する人物のキャラクターを明確にし前面に出した。
  人間の喜怒哀楽、気持ちの変化がテンポ良く顕著に現れる様にした。
  舞台劇のジャンルを盛り沢山に組入れた。
  漫才の惚けと突っ込みのようなせりふ、人情話的な場面も取り入れ
  しんみりさせといて笑わしたり、シリアスな展開の中にもコント風に
  変化させたり、時代背景、社会風刺、知識、情報、流行、人間性を
  台詞に取り込み、物語の山あり谷ありの、谷の部分がダレ無い様に
  展開にリズムを持たせた。観客は後頭部で考えてから反応しそして
    笑ったり、泣いたり、納得したりするのではなく、前頭部で受け直に
  反応し感情が出る、極力単純明快な内容にしました。そのためにも
  固有名詞はなるべく台詞で使わないように計らいました。
  舞台二元中継、台詞付きで演じている取り調べ室、一方刑事部屋は
  口ぱくで演じたり、パントマイム風に日常的動きをしたりしている。
  長崎チャンポン麺のようなイメージのドラマ仕立てにしました。

               脚本:世森 友 作