[エイリアンズはどうなんだ?] of [ロイジム映画評]


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エイリアンズはどうなんだ?


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 ロイは、あまり映画を見ない。テレビのドラマもそうは見ない。
 絵空事が嫌いなわけではなさそうだが、見るべきものが――たとえば仕事に関する資料とか、自分が興味を持っている深海の魚の本とか、そういったものに時間を費やすあまり、どうしても後回しにしてしまうのが、いわゆる『物語』ということになるのだ。
 ジムはでかい図体をして、脳みそまで筋肉になってしまったかのように粗野な雰囲気を持った男だが、実際には映画鑑賞が趣味という、きわめてロマンチックな部分を持っている。
 そのせいか、ロイはジムと親しくなってから、映画館へ足を運んだり、休日の昼下がり、あるいは長い夜の始まりなどに、ジムにつきあって映画を鑑賞する時間が格段に増えた。
 映画館まで足を伸ばすのが面倒なとき、ジムはたいてい2、3本のDVDをレンタルしてきてロイに選ばせる。さすがに続けてたくさんは見ないが、ロイがこれなら見てもいいという映画をひとつ選ぶと、ジムは必ずレンジで弾けるポップコーンを仕入れてきて、にわか仕立ての映画館の雰囲気を愉しんでいるらしい。
 今日はなにを思ったのか、ディズニーの往年のアニメ『シンデレラ』と――おまえ、これをまじめに見るつもりで借りたのか、とロイは思わず唸った――若かりし頃のチャールトン・ヘストンの『ミッドウエイ』と『エイリアンズ』を借りてきていた。
 アニメはどうも、戦争映画はなんだか、と呟きながら、ロイはSFものにも眉を顰めた。
「おまえはいったい、どんな趣味なんだ?」
 ロイは呆れたようにジムを見やり、ジムは「映画なら何でもいいんだ」と、あっさりと受け流した。

 『エイリアン』で、1匹にやられた貨物宇宙船から逃げたリプリーは、脱出ポッドで結局地球の周りを五十年近く回り続け、目覚めて宇宙衛星で仕事を得た。
 ところが、かの恐ろしき生き物は、ある地球の植民地である惑星に現れ、住人たちから連絡が来ないという。そこで、彼女はエイリアン経験者として、海兵隊員たちに同行してそれを退治に出向くのだ。
 その星にただ一人生き残っていた「ニュート」という少女を救うため、リプリーの母性と、エイリアンを生み続けるクィーンエイリアンとの戦いが始まった……。

 ラストのエンディングを眺めながら、ジムはひたすら感心していた。
「はあ、リプリーは豪傑だな」
「……7歳の子供を抱き続けて、あんなに走れるものか? 武器だってすごい重量だぞ。しかも火炎放射つきのやつだった」
 ロイも、たった今まで戦い続けた女性の姿に、呆然としているように見えた。
「いや、実際には役者の彼女は、腰痛で、抱いているのは人形だったんだそうだ」
「人形? ……だろうな。例え幼児でも抱き続けるのは大変だ。ほら、おまえのとこのお姉さんの――」
「ああ、ロイな」
 ジムには、自分の恋人と同じ名の甥っ子がいるのだ。一度だけ、ジムの家に行ったとき、さんざんロイは懐かれて、上質のシャツに涎をなすりつけられた。
「あれはまだ、赤ん坊だった。でも、俺は三十分も抱いていたら、なんだか石みたいに重く感じられて、けっこう堪えたぞ。眠ってしまった子供は、まるでゴブリンにでもなったかのようだ」
 ロイはそれを思い出したように、腕を伸ばした。
「赤ん坊は慣れないと抱くのも気を使うから――でも俺はあんたを抱き続けてだって、戦うぞ」
 ジムの言葉に、ロイは露骨に眉を顰めた。
「……俺のことはいい」
「いや、あんたが負傷して、戦えなくなったなら、俺は片手でこう――」
 ジムが腰に手を回すと、ロイは身を捩ってその手をかわした。
「俺が負傷したら、捨てていけ! 映画の少女と俺を重ねるなッ!」
 そんな怒らなくてもいいだろう? と、ジムは恨めしげな目をしたが、これ以上からかうと本気で怒り出すのは分かっているので、話題を変えることにした。
「未来の海兵隊にしちゃ、武器がリアルだったな。光線銃とかじゃないのがいい。あの武器は、ミリタリーオタクが喜んだはずだ」
 海兵隊か、とロイは呟き、険しい顔をした。
「軍曹のエイポーンははやばやと繭にされ、無能の大尉は怪我をしてますます役立たずになって、豪傑女性隊員バスケスも、臆病で大口たたきのハドスンも死んだ、唯一まともだったヒックスも半死半生だ。なんで映画では、いつも兵士たちはああも無力なんだ!?」
「……よく登場人物の名前まで覚えているもんだな」
 唸るようなジムの言葉に、ロイは片方の眉をあげた。
「おまえ、感動して震えていたくせに覚えてないというのか? まさか、人の顔が見分けられてないとか言わないだろうな?」
「実は、俺は途中までヒックスとその、なんだ? ハドスンか? ビル・パクストンな。今じゃ主役も張ってたな。竜巻の映画かなんかで。あのふたりが見分けがつかなくて、少し混乱しちまった」
 あはは、と笑うジムに、ロイは半分唇を開けて、呆れたように眺めている。
「こないだ見た、シールズの大尉が、ヒックスだったろう? なんとかいう綺麗な男だと、おまえ唸りながら見てたじゃないか」
「なにせ、エイリアンズはそれより古い。若さが違ったせいかな?」
 はあ、とロイは脱力したように、ソファに尻餅をついた。
「でも、エイリアンてのは怖いもんだな。あれをデザインした人間は、天才だな」
 ジムの感想に、ロイは今度は素直に頷いた。
「深海に住む魚だって、通常の常識では考えられない格好をしているから、宇宙生物ならまあ、ありかもしれないな」
「見たか? あの悪魔みたいな爪と二重の歯。まるでサメだ。なのに、血液が酸だなんて、どこまで邪悪なんだ」
「あの尻尾で、あの鉤爪で、宇宙に飛ばされたのに、リプリーが無事なんて、変だろう?」
「じゃあ、どうなる?」
「エイリアンに掴まれて、無重力に吸い込まれて、あのロボットのように体が真っ二つになるか、腕か足がちぎれるか。でなければ共に宇宙のゴミだ」
「……それじゃあ、救われんよ、ロイ」
 ジムは片手で頭を抱えて見せた。
「エイリアンがかぎ爪も効かず吸い込まれるほどなのに、人が三人とも無事なんて、有り得ない。ビショップは、躰半分で、指だけを引っ掛けてたんだぞ。あんな少女は一瞬で宇宙の藻屑だ。そうなると、リプリーが殺したも同然だろう?」
 ジムは心底あきれ果てたような顔をした。
「……あんた、映画見て楽しいか?」
「楽しい? 俺はおまえが見たいと言うからつきあっただけだ」
 それにしては、熱心に見てる気がするな、とジムは笑いをかみ殺した。

















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後日憚―哀しみの追憶―

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