[Pは××のP 6] of [Pは××のP]


HOME > Pは××のP > Pは××のP 6

p_p_title.jpg

Pは××のP 6

「ねえ、あんた! ……ジム!」
 レストランの駐車場で、ジムは後ろから声をかけられ振り返った。 
 ぼろぼろのジーンズを履いた東洋人がこっちに手を振っている。
「ああ、ええとジョージか」
 ジムは思わず微笑んだ。AVのスカウトマンなどという得体の知れないことをしている青年だが、心根は悪くはない男だと、ジムは感じていた。
「あれからどうした? 清純な彼は受け入れてくれたかい?」
 ジムは赤くなり、大声でそんなことをしゃべるジョージを肘で小突いた。
「よせよ」
 ジムが言うと、レストランに並んで入り、勝手にジムの前に座った。
「俺も一緒にいい?」
「ああ、いいよ。奢ってやるからなんでも食え」
「やったね」
 細い身体に見合わず、大量の料理を注文し、片端からたいらげていくジョージにジムは呆れながらもジョージの身の上話に耳を傾けた。
 肉親が事故で亡くなり、大学を中途退学したこと。両親の借金が後を追って来て、仕方なく街角に立ってみたら、AVにスカウトされたこと。割のいい仕事なので出演するかたわら、アシスタントや使い走りからスカウトまで、金になることはなんでもしてきたこと。
「今はね、やっともらった給料はぜんぶ使えるようになったんだ。だからほんとはまともな職につきたいんだけどね」
「海軍なんかどうだ? 鉄砲持って戦うたけじゃなくて、仕事の内容はいろいろだ」
「え~? ……なに? あんたもしかして、海兵?」
「いや、海軍だ」 
 ジョージが目を丸くしているところへ、いきなり制服の男達が数人入ってきた。
 士官組だ、と目をやると、その中にロイの姿があった。
「あ、ロイ」
 ジムが嬉しそうな顔をすると、席に着いている他の人間に声をかけ、ロイがジムの方に歩いてきた。
「食事か、ジム」
「ああ」
 ジムは、ジョージを紹介した。
「ちょっとした知り合いでな」
 ロイは手を差し出すと握手をし、にっこり微笑むジョージに、ほんのちょっと笑って見せた。
「じゃ、俺はあの連中につきあわなきゃならないから」 
 奥へ去っていくロイの後ろ姿を見ながら、ジョージは圧倒されたような顔をしていたが、ジムの顔を見てにんまりと微笑んだ。
「あんたの彼って、あの人?」
 ジムはその鋭さに舌を巻いたが、返事はしなかった。
「なるほどね、確かにキャンディバーなんか、とんでもないというだろうな」 
 ジムは赤面した。盛り場でもない、健全な場所で言われると、台詞が漫画の吹き出しのように、空気からひとつ浮き上がったように思える。
 掴んで懐にしまいたいくらいだ。
「でも、あんたのおっきいのでひいひい鳴いてるんだ、あの人」
「ジョージ」
 ジムが厳しさを含ませた口調でたしなめると、ジョージは肩をすくめた。
 そういっては申し訳ないが、やはり住んでいる世界が違いすぎる。深入りはしない方がいいなとジムは思った。
 けれど、彼の生い立ちを考えると、若い今ならいくらでも人生を軌道修正できるのに、とジムは説得してやりたい気分でもあった。
 ジムが先ほどの就職の話題に矛先を変えると、「俺、せっかくだけど軍は嫌いなんだ。でもあんたは好きだよ、ジム」と、ジョージはコーラを飲みながら言った。
 何度も視線が奥の方へ走っている。
「そんなにあの人を見るな、おかしいだろう? それにあの人は俺の恋人じゃないよ」
 ジムが言うと、ジョージは舌をだした。
「どっちでもいいけど。上玉だね。オナペットとして映画に出たら、爆発的に売れるだろうな。俺でさえ一回やってみたいよ」
 ジムはため息をついた。
 ジョージを残して、先に店を出たジムは、店からほど近いマリーナにたたずんでいた。 派手なボートやヨットが、ぎっしりと停泊している港をぼんやりと眺める。
 不意に背中を叩かれて振り向くと、ロイが立っていた。
「ロイ」
「……今、スカウトされたぞ。俳優にならないかって」
「スカウト……?」 
 ジムは後方に目をやり、手を振りながら去っていくジョージの姿を認めた。
「スターになれるって、言われた」
「そ、そうか……」 
 じろりと睨まれて、ジムは首をすくめた。




















硝子の破片

哀しみの追憶

後日憚―哀しみの追憶―

観客

おもちゃ屋探検

おもちゃ談議

キャンディーバー

Pは××のP

金の砂銀の砂第一部

金の砂銀の砂第二部

金の砂銀の砂第三部

僕が彼を憎んだわけ

ロイとジムの映画評