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Pは××のP 5

 ロイは、与えられる甘美な刺激に身悶えながら、ビリーとの会話が頭をぐるぐる回っているのを持て余していた。
 差し込まれた下腹部を相手の腹に打ち付けられるほど、深く抉られて男と男のセックスは行われるのだということが。
 いかにもそれが当然のようなビリーの口ぶり。満足できるか、そんなもので、と吐き捨てた口調。
 そして、未熟な身体という言葉がロイを傷つけていた。
 すでにジムの一部はちゃんと受け入れられるのだ。だったら、少しくらい奥へ進まれても意外と耐えられるものなのかもしれない。
 いや……、ロイはこっそりジムの様子を窺った。 “スティンガー並み”と噂されたものが、そこにある。
 眉間にしわが走る。ありえない。そんなことをしたら、死んでしまうかもしれない。
 いや、物じゃなく肉体の一部なのだから、大丈夫なようにできているのかもしれない。
 ジムのような人間は、たまにはいるはずだと思うと、そんな連中が皆セックスできないで泣いているとも思えない。
 事実、隊員たちの下世話な話の中で、ジムは英雄扱いだ。みんながこんなものを持ちたがるのは、それを使って思う存分相手を喜ばせることが出来ると思っているからだ。
 ロイの頭の中はぐるぐるまわり、それでいっぱいになっていく。
 ジムは、ジムなりに過去の出来事によるトラウマをもっている。ロイの身体を手荒に扱えないのは、大切だと思うと同時に、過去の出来事が邪魔するからだとロイには分かっていた。
 ジムは時々「あんたの身体は硝子細工のようだ」と言うことがある。
 そして、そのことばどおり、壊れ物でも扱うかのように気をつかってくれる。苦痛など、ほとんど感じさせないほどにジムはロイを丁寧に愛してくれる。
 ――もちろん、それでもロイは耐えられないくらいつらい場合もあるが、ジムの気持ちが伝わることで、それはいつしかロイに安心感や快楽をも与えてくれている。
 ジムに愛されたいというのは、自分の望みでもあるのだ。だからこそ、自分だけでなくジムにも満足をしてほしい。
 これを解決する唯一つの手段はロイが『訓練』していくしかない、と考えて、ロイはふとどうやってそんなことをするのか、まるで理解できていないことに気がついた。
 それに、何をするにしても自分で実行することは困難に思われた。
 もういやだ、とロイはいっぱいいっぱいになった頭を左右に振った。
 これ以上考えられない。どうしてこんな情けないことに思い煩わせられなければならないのだろうと思うと、とことん嫌になってくる。
「ジム……」
 ロイはまぶたを伏せたままで、ジムに言った。
「お前の……好きにしていい」
「ん?」 ジムは、ロイの心理を測りかね、じっと顔を見た。
 ロイは気配を感じて目を開けると、「好きにしていいよ」ともう一度言った。
 ジムはちょっと驚いたような顔をしていたが、温かな微笑を浮かべ、頷いた。

その日、身体の奥深くに進入してきたジムは、その瞬間からロイを狂わせた。
 息をつくこともままならず、うめき声すらも満足にでない状態で、ロイは必死に耐えた。    ものすごい圧迫感に、内部が押さえ込まれているような気さえする。
 指が白くなるほどシーツがつかまれ、今まで感じたことのない身体の内側にはしる刺激にロイは揺さぶられ、何も考えることができないほどの苦痛と、そして快感の狭間をさまよった。

 激しい息を継ぎながら、自分がいつ達したのか、あるいはそれもなかったのか、ジムがいつ自分を解放したのかまったく分からない状態で、ロイは深い闇の底に沈んでいった。「つらかったか?」 
ジムが唇に注いでくれた冷たい水に、ロイはうっすらと目を開けた。
 どうやらすべてが終了したらしい、と分かり、ロイはほっと息をもらした。
 良かった。なんだかんだと言いながら生きている。
 気を失うほどつらかったけれど、きっとこれも慣れていくことなのだろう、ロイは疲れ果てた身体の中に、深い満足感が生まれるのを感じた。それはどちらかと言えば、身体ではなく精神的な悩みを解消できた喜びではあったが。
 ジムは愛しそうに、ロイの髪をかきあげた。

「ロイ、最高だったよ。嬉しかった。やっと半分だけだけど、ものすごく気持ちよかった」 
 ロイは今のジムの言葉が、すぐには脳内に響いてこなかった。
「ジム、いまなんて……」
「すごく気持ちよかった」
「いや、その前」
「最高だった」
「……そのあとだ」
 ええと、とジムは考えてから、「やっと半分ってとこか?」と、聞いた。
「は、んぶ、……て?」
「少し進めたんだよ。でもまだまだ壁は厚いな。何かに邪魔されて、進めないんだ。それを突破すれば、多分こう、ずるっと行くはずなんだが」 
 ジムは、ジョージの身体に押し入ったときのことを思い出しながら言った。確かに、突き当たった何かが不意に開通し、それから一気に最奥に潜り込んだ。
 それがえもいわれぬ快感となったことが、ジムをたぎらせていた。
「これから少しずつトライしていこうな。少しずつでいい」 
 はんぶん、という言葉ががんがんとロイの頭を叩き出した。ずるっと、という生々しい言葉が身体中の肌を粟立たせた。
 本当に頭痛がし始めた。
 半分、はんぶん、と、ロイはうわ言のように呟いた。
「なぁ、ロイ。俺たちチームには、訓練は大切なものだな?」
 いきなりジムが話題を変えたので、ロイは戸惑いながら頷いた。「やっぱり何事も訓練だな、ロイ。今日は本当にすばらしくて感動したよ。だから、もっと良くなるように訓練してみないか?」
「ど、どうやって?」
 ビリーと同じに、ジムがやはり訓練、という言葉を使ったので、ロイは緊張した。
「こういう棒があってな。訓練専用みたいなものだ。長さも太さもいろいろで、小さいのから慣らしていって、すこしずつ太く長くしていくんだ。そんなものとんでもないと思ったけど、あんたがその気になってくれたんなら、あれを使ったら早いんじゃないかと思って」
 嬉しげにしゃべるジムの口元を、仰向けに寝かされたまま、ロイはじっと見つめた。
 そんな異物を自分の恥ずかしいところに差し込まれている姿を、ロイは第三者の目から想像した。
 ――そしてこの忌まわしいスティンガーミサイル。
 たった“はんぶん”で、自分を失神させたもの。

 ロイの目に、涙が溢れた。
「どうしてお前は……そんなに大きいんだ?」と、ロイは言った。
 それから激しく念を押した。
「……今のはお前の身体のことじゃない。お前のその、……立派なペニスのことだ!」 
 ジムはびっくりしてロイの顔を覗き込んだ。
「お前が一センチ深く入ってくるたびに、俺は気を失い、どんどん深くなるたびに気を失わされて、最後に到達したときにはどうなるんだ? ――死んでしまうのか?」
「次は三分の二、くらい頑張るよ。一センチずつじゃあんた身が持たないだろ?」
 ジムが生真面目に言うと、ロイは鸚鵡返しに、しかも声をうわずらせて呟いた。
「さんぶんの……に?」 
 ロイがこの間とは別の壊れ方を始めた、とジムは思った。
 目がつり上がり、ヒステリーに近い状態になっている。目に涙まで浮かべている。少し身体に負担をかけたのかもしれない。それで頭にきているんだろうか?
 だったら……、とジムは思った。
 最初からロイが言ったとおりに一息にやってしまえば良かったのだ。そうすれば、一気にかたがついたはずだ。また気を使いすぎたらしい、とジムは臍を噛んだ。
 この人がいいと言った時にことを行わなければ、必ず計画は途中で頓挫するのだ。
 下手な情けは失敗のもとだと何度も経験しているジムだったが、まさかここで怒り出すとは思わなかった。しかもぼろぼろと涙を零し続けている。
「俺は……いつまでこんなことで悩まなければならないんだ? テロリストのことも、イラク情勢も、チームの訓練のことも、毎日何を食べるかということもぜんぶ上の空で、どうしてお前のペニスのことで頭をいっぱいにしなきゃならないんだ!」
 ロイは息も継がず、自分のしゃべっている内容に対しての羞恥や後悔も何も感じない様子で、文句を言い続ける。

「だいたい、男は人からペニスを挿れられるように生まれてきたわけじゃないんだなんだって変な棒みたいなもので広げていかなきゃならないんだ人より大きなペニスを持った男が恋人の連中はみんなそんなものを使って訓練しなきゃならないのかそんなでかいミサイルみたいなのを受け入れられないからってなんで俺の身体が未熟だと言われなきゃいけないんだ俺は女性の経験も男に挿れた経験もないから確かに未熟だけどお前がいなかったらだいいたいセックスなんかしなくたって俺は平気だったんだなのにお前がどんどん抱くからお前なしじゃいられなくなってそれなのにこれまでたった三分の一で気を失うほどのが二分の一で三分の二とか四分の三とかあたりになるまでいったいどれだけ時間をかければいいのかいったいいつまでお前のペニスのことを考え続けなければならないのか……」
 ロイは酸素不足で急に喘ぐと、枕に頭を落とした。
 普段しゃべらない人間が、息もつかずに、よくも長々と演説したな、とジムは黙って聞いていたが、やがてぽつんと言った。
「……ロイ、だれがあんたの身体が未熟だなんて、言ったんだ?」
 ロイははっと、ジムの顔を見た。
 目が据わっている。
 ジムはずいっと身体を乗せた。
「誰かがあんたの身体を試したとでもいうのか? それでその身体が未熟だと?」
「ちが……」 
 恐怖に目が見開かれる。 ジムは、強い力でロイを抑え込むと、無理やり押し入ってきた。
 疲れた身体を仰け反らせ、ロイの喉から悲鳴が漏れる。
「違わないだろ? 未熟なのは俺がちゃんとやれないからだ。あんたがそんなふうに思っているんなら、俺は責任を取らなきゃいけない」
「やめ……、誤解だ、ジム。俺はだれとも……」
 だが、ジムは容赦なく逃れようとするロイの腰をつかみ、身体中を押し開いた。
 大きく開かれ、喘ぐ喉とは逆に、ロイの目がきつく閉じられる。
 突き上げられる苦痛が、すでに言葉を吐くことを阻止していた。
 短い息で、呼吸をつなぎ、このまま失神してしまいたいのに、それも叶わず、ロイはただ喘いでいた。
 いっぱいに挿り込んで来るものの感覚だけが、ロイを獲り付くように責め立てる。
 内部を打ち付けられ、それでもやっとこれでジムの願いが達成されたのだろうかと、他人事のようにロイの一部が推し量っていた。

 ジムのうめき声が聞こえた。
 折り曲げられた足を押さえるジムの手がきつく、ロイを押し潰し、そちらに痛みを感じ始めたロイは、自分の手でジムの腕をつかんだ。
 手をどけてくれ、と頼もうとして、いきなり、何かが脳天まで貫いたような気がして、ロイの脳内が火花を散らした。
「……っ!」 
 緊張し、こわばる身体にジムが覆いかぶさってきた。
「ロイ、愛してる」 
 ジムが、かみ締めた唇の間から、息を漏らすように訴えた。
 愛してくれなくてもいい。――ロイは心の中で反抗した。
 今後ずっと、ジムの愛はこうしてロイのつつましい生き方の一切をぶち壊しながら、ロイを変えていくのかもしれない、とロイはぼんやりと思った。
 ただの苦痛だけではない、身体の内から沸いてくる不思議な感覚に、ロイは打ちのめされていた。
 信じられない思いと、安堵の思い。自分の身体が自分のものとは思えない感覚。なぜという疑問と、これからずっと続いていくだろうことに対する恐怖。
 あらゆる感情に身体中を支配されながら、それでも愛する人が今度は本当に悲願を遂げたのだ、ということが、ロイにははっきりと分かった。
 ばらばらに壊れそうな身体が、みしみしと音を立てている。それなのに、ロイの内側から狂いそうになるほどの甘い激情があふれ出すのが感じられた。
 泉のように湧き出る、何者かに溶かされて、ロイは永遠に続くかと思われる激しいものが、自らを快楽に導いていることに、やっと気がついた。



















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