[談議その3] of [おもちゃ談議]


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おもちゃ談議 その3

「ん?」
 目をまん丸にしたポールが、開いたドア口に立って、引きずるようにロイを連れ去っていくジムの後姿を見つめた。
「使われたく……ない?」
 店は大盛り上がりに盛り上がり、「あの人、いくつだっけ?」とリックが笑い転げている。
「ほんとに、ほんとに、潔癖なんだな」
 レクスターは、明日になるのが怖かった。
 今夜のことを、大尉は覚えているだろうかと、酔いが一気に醒めてしまい、また新たにビールを飲みだした。
「おい、レク、今からショップに行くぞ」
 ビリーが無理やりレクの腕を引っ張って、立ち上がらせた。
「え? いやだよ、俺……」
「馬鹿でかいの買って、明日大尉のロッカーに入れておくんだ」
 いやだよ~、とレクが叫ぶ。
「今度、あの人引っ張って、皆で玩具屋に行こうぜ」
 悪乗りした連中が、新しい遊びを見つけたとばかりに盛り上がっている中、ポールはひとり、考え込んでいた。
「使われる…って、どういう意味だ……??」
 幸いにも、まっとうな人生を送っているポールには、ロイの言った意味がピンときてはいなかった。


「ロイ、大丈夫か?」
 ジムが言うと、ロイは肩にもたれて、よろよろしながら頷いた。
「なんだって、玩具の話なんかしてたんだ?」
 ロイは返事をしない。
「……あのとき俺がからかったの、そんなに気にしてたのか?」
「ジム、今から買いにいくぞ」
 ロイが低い声で言った。相当に機嫌を悪くしているらしい。
「もう遅い。帰ろう、ロイ」
「いや、買いにいく! あのものすごいのを買ってやる!」
 ジムはロイの前に腰をかがめ、強引におぶった。
「……ジム…買いに行こう…」
 ロイが頭を肩にもたせかけてきた。
「正気になっても、そう言ってくれるならな」
 ジムは笑った。
 どうやら、この話題は、ロイにとってのアキレス腱みたいなものらしい。何をどうしても理解できず、すっかり混乱している。
「あんなものなくたって、あんた俺相手で手一杯だろう? それだっていやだいやだと逃げるくせに」
 ジムが言うと、「……くそ」と、思い切り下品な言葉が聞こえた。
「知ってるか? あれは生身の俺より、うんとタフなんだ。あんたには耐えられないよ」
 ロイはしばらく唸るような声を上げていたが、案外しっかりした声で言った。
「不思議だな」
「なにが?」
「……みんなどこで、あんな知識を学んでる?」
 ジムは笑い出した。
 あんたこそ、なんでそんなことに触れずにこれまで来れたんだ? と聞き返したくなったが、黙っていた。
 フォード家は王室並に格式の高い家なのだろう。
 海軍三代の家に、下世話な話は似合わない。まあ、それは冗談としても、小さい頃から自らを律するために生きてきたようなロイにとって、脇道にそれる暇などなかったということかもしれない。
 当分、みんなにからかわれるだろうが、まあ、それもいいだろう。
「そんなに気になるなら、やっぱり今から行くか?」
と、聞いたが、もう返事はなかった。
 顔の横で聞こえる、規則正しい寝息に耳をすませながら、ジムは微笑み、一度担ぎなおすように躰を跳ねさせると、ゆっくりと歩き出した。


 休暇明け……。
 朝出勤したロイがロッカーを開け、ものすごい悲鳴があがり、その日の訓練が地獄のように厳しかったことは、当然である。
 







硝子の破片

哀しみの追憶

後日憚―哀しみの追憶―

観客

おもちゃ屋探検

おもちゃ談議

キャンディーバー

Pは××のP

金の砂銀の砂第一部

金の砂銀の砂第二部

金の砂銀の砂第三部

僕が彼を憎んだわけ

ロイとジムの映画評