対馬 〜景〜

いつものことだけれど、遠征に行く電車の中は、なんだか不安なような、嬉しいような不思議な感じがする。

不安?

たとえば出張や、出張と掛け合わせた遠征などは、出張という目的が明確であるため絶対に行かなければならない。
しかし、釣りのみの遠征は、時間と費用を釣りのためにわざわざ作って出掛けていくわけだから、私のような貧乏性な人間にとっては、それなりに思い切った行動なのだ。随分慣れてはきたけれど。

そういった、自分の意志のみで行動している、ということが、僅かながら不安という気持ちに結びついているのかも知れない。

また、電車の中には、いろんな人の世界が存在している。しかし、電車にのって釣りに行こうとしている人はそんなにはいない。
今回は釣り道具はすべて先に送ってしまっているのでそれほど浮いた感じはしないが、宇和海方面への遠征では釣り道具を運んでいるので、かなり浮いた感じがする。
なんにしても、電車という現実の中に、非現実を抱えて乗っているような気がする、といったらいいだろうか。


30分ほど山陽本線の上りに乗り、JR広島駅に着いた。

新幹線ホームへ。金曜の夜だが、広島から博多の間は割と空いている。

博多までは1時間と少し。あっという間の距離だ。ウトウトする暇もない...が、ウトウトしての寝過ごすこともない終着駅への旅は気が楽だ。

博多。広島駅より随分活気がある。都会だもんなぁ。

駅から北側へ出て、宿を探す。少し解りにくかったがなんとか発見。

最近多い、システム化されたシンプルなホテルだ。味気ないが、まぁ綺麗でいい。

飯も食べてきたので、早めにシャワーを浴びて眠ることにする。
さぁ寝よう...と思うと、表で救急車の音が。

ウトウト、とし始めるとまた救急車。

?ひょっとするとホテルの近くに消防署があるのかな?以前、そういう立地条件のホテルで酷い目にあったことがある。

結局、どれくらい眠れただろう。いや、興奮もあったのだと思う。
それに、耳栓は持っていたが、耳栓をしてアラームに気がつかなかったら...という怖さがあった。

寝不足のまま、とりあえずシェーバーでヒゲを剃り、ホテルの1階で無料のパンと珈琲を食べてからチェックアウト。


10分弱あるいて博多駅へ戻る。地下鉄改札へ急ぎ、空港方面行きの地下鉄に乗り込んだ。実は少し時間の読み間違いがあり、少し慌てた。これに乗り遅れたら福岡空港でバタバタになるところだった。

2駅目が福岡空港。
対馬行きは第1ターミナルからの出発。
第2ターミナルは地下鉄の駅のすぐ上だが、第2ターミナルはかなり歩かないといけないようだ。第2ターミナルは初めてだったので、少し悩んでしまった。こんなに遠いの?と。

今回の遠征ではここ福岡空港からちぬパパさんと合流することになっている...のだが、なかなか現れない。おかしいなぁ。この飛行機に乗るなら自分と同じ地下鉄に乗っているはずなんだけど...

寝過ごしたんじゃなかろうか?

とうとう、飛行機への搭乗が始まってしまった。まだ来ない。・・・あ、来た。
「お久しぶりです。」

慌ただしく飛行機に乗り込む。


飛行機、ちゃんと飛ぶんだろうか?と不安が出たほどの風の予報。飛行機の運航自体には何の問題もなかったようだが、対馬で7〜8mの風速。海上は15mほど。絶対揺れるに違いない。

おまけに飛行機が小型だったりしたら...

正直怖かった。が、乗り込んだ飛行機は、広島−羽田便でも使われる3列−3列シートのジェット機。小型ではあるものの、それほど不安になる飛行機ではない。ホッ。

離陸。

案の定揺れる。しかし何とか我慢できそう。

そもそも高いところが苦手で、飛行機は苦痛だったのだが、出張で頻繁に飛行機に乗ることで随分慣れてきたようだ。
・・・足の下に何もないことを考えないようにするのが上手くなっただけではあるのだけれど。

雲を抜ける。眼下は白い世界。つまらんなぁ...と思っていたら、雲が切れる。
そして眼下に壱岐。

そして離陸から30分ほど。眼下に切り立った磯を僅かに挟み、海から緑が隆起したような大きな陸地が見える。
対馬だ。

顔がにやけてくるのが解る。とうとう来た。巨チヌの海 浅茅湾を抱えた憧れの島、対馬。

着陸時の揺れは殆ど気にならなかった。

とうとう対馬へ来たんだ。

ようやく夢と現実が一つになった。

仕事の関係ですでに対馬入りしていたEさんと合流する。

Eさんはちぬパパさんのお友達で、頻繁に仕事で対馬入りできる羨ましい人。
会社の同僚に顔やしゃべり方が似ていて...まぁそれは関係ないのだけれど、人当たりのいい優しい雰囲気の方で一安心。もっともちぬパパさんのお友達なのだから、それほど心配していた訳ではないのだけれど。

Eさんの借りていたレンタカーに荷物を積み込み、空港を出発する。

とりあえず釣具屋に寄る、とのこと。

寄った釣具屋。ああ、こういう店は周防大島にもあるな。という、昔ながらの雑貨屋とか酒屋と釣具屋が一緒になった店だ。ここは酒屋と釣具屋だった。

お世辞にも集魚材や釣り具は品揃えが豊富、というものではないが、オキアミ3kgは700円ということで、広島あたりとそれほど変わらない。
この日のオキアミはすでに宿で手配してもらっているが、明日のオキアミはここで買った方が安いので買っておこう、ということだ。

続いてレンタカー店に。結構沢山の車を抱えたレンタカー店。想像以上に車があります。Eさんに聞いてみると、これでも出払うような状況になるとのこと。

ここで車を返し、レンタカー店の車で「くろいわ荘」に送ってもらう。


思ったより立派な作りだな。
まずそう思った。

しかしドア(自動ドア)を抜けてまた驚いた。ほとんどそれなりに立派な旅館と見間違うような立派な作り。そう、使っている素材素材がとても立派なのだ。
木のぬくもりが伝わってくるような品のある構え。

広い階段を上がると、廊下から玄関が見下ろせるような吹き抜け。

部屋に入ってまた驚いた。個室。洋室。風呂付き。ただしトイレは共同。しかも自分の部屋はツインの部屋のシングル使用。

もう釣り宿ではない。そもそも、釣り宿として作ったのではないのだろう。
しかし宿が船を何隻か持っていて、養殖イケスも持っていて、カセも掛けてあって...何とも...

ここなら家族で泊まりに来ても問題ないな。・・・そんな機会はないだろうけど。


(部屋:ベッド方向)



(部屋:部屋風呂。共同浴場もある。)



(部屋:クローゼットと入り口)



(部屋:入り口とテレビ。私の荷物。)


初日の釣りが終わった。

部屋で風呂に入り、遠い秋田の友人、Kishiさんとしばし電話で話をする。
不思議なものだ。
秋田の友人と、対馬で電話で話をしているのだから。

いや、そもそも対馬に来ていること自体、10年前の自分では想像できなかったことだ。
本当に感謝しないといけない。よい仲間に巡り会えたことを。

さて、夕食である。事前にパパさんから豪華であることを聞いていたが...

いや、豪華だった。当然、2食込みで7000円〜の料金であるから、高級旅館のようなものを想像してはいけない。
が、どれも取れたての魚や地の素材。美味しくない訳もないし量も充分。
鍋は地鶏の鍋だ。




対馬に来てから、とにかく腹が減る。

おそらく、この空気のせいだろう。いやそれだけではない。海や山が...この島が何ともいえない力に漲っていて、これに身体がほぐされて元気になっているのだろう。細胞の一つ一つが生き生きしてきているような気がする。

これで温泉があれば最高なのだけれど、これは対馬では叶わないようだ。


あとは、その対馬の風景を...いや、憧れの浅茅湾の景をただ綴ってみる。























対馬空港。現実への窓口だ。

とりあえず家への土産物を買っておく。かす巻きが有名、とのことで、これを。
土産を買うところも少ないのだろう。観光客(特にご年配の方が多い)で空港の土産売り場はごった返している。土産を買いたいと思ったら早めに空港に入った方がよさそうだ。

もうフライトまでの時間はないのだが、Eさんが何か食べる、というので、ご一緒する。

対馬そば。これが有名とのこと。つなぎを使わない十割そば。これを頼む。
ゆっくり食べる時間はなかったが、確かにこれは美味しい。

ラーメン好きだが、蕎麦も好き。基本的に麺類は好きな方で、蕎麦は地方地方で味が違うし、味に誇りもあるだろう。だからそんな蕎麦をあちこちで食べるのが好きだ。

空港の食堂、と侮るなかれ。美味しい。ただ、そばつゆが少し甘い気がした。

・・・とはいえ、今度、島内の店で食べてみたいものだ。


福岡空港。

Eさんとまずお別れ。Eさんは空港まで車で来ていたそう。

またご一緒したい。そう思って携帯番号を聞いている。いい出会い。


重たい荷物。
釣りの基本はやはり食べるまで。当然、無理なときもあるが、可能であれば...それが自分のスタンス。
あくまで自分の、である。

なにより、対馬のチヌの味はやはり味わってみたい。


しかし、これが重い。クーラが肩に食い込む。持って帰っているのは5枚だが、氷を詰めてある。

そうとう疲労困憊した顔をしていただろうと思う。

ちぬパパさんと2人。地下鉄に乗って博多へ。

ここでちぬパパさんともしばしのお別れ。また...そうだな、徳山湾あたりででも竿を並べたい。
何から何まで本当に世話になってしまった。本当に有り難い。本当に。


新幹線を降りる。
もう疲れ果てている。在来線に乗り換える。駅に着いた。迎えの車にクーラを積み込む。

・・・ああ、終わったな。


また行こう。うん、また行こう。