平成20年5月19日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 児玉謙次郎

平成17年(ワ)第477号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成20年2月4日

判          決

浜松市************************

原告 高**子

浜松市*****************

原告 ****

浜松市*************************

原告 武**男

札幌市****************

原告 大**美

上記4名訴訟代理人弁護士 森下文雄

同            藤森克美

浜松市中区花川町351番地

被告   ハレルヤコミュニティーチャーチ浜松教会

同代表者代表役員   榊   山   清   志

浜松市北区三方原町650番地の24

被告   榊   山   清   志

上記2名訴訟代理人弁護士 松下泰三

同訴訟復代理人弁護士 本郷謙史

主         文

l 原告らの請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事 実 及 び 理 由


第1 請求の趣旨

 被告らは原告らに対し,連帯して各340万円及びこれに対する被告ハレ

ルヤコミュニティーチャーチ浜松教会につき平成17年11月9日から,被告

榊山清志につき同月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払

え。

第2 事案の概要

1 本件は,原告らが,被告ハレルヤコミュニティーチャーチ浜松教会(以下「被

 告教会」という。)に入会していたものであるが,被告榊山清志(以下「被告

 榊山」という。)から,体罰や治療と称して,暴力やセクハラを受けたり,お

 灸を据えられて熱傷を負わされたなどと主張して,被告榊山に対し,不法行為

 責任に基づき,被告教会に対し,法人の不法行為責任(民法44条)又は安全

 配慮義務違反による債務不履行責任に基づき,連帯して,慰謝料等合計各34

 0万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告教会につき平成17年11

 月9日,被告榊山につき同月10日)から各支払済みまで民法所定の年5分の

 割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 争いのない事実

  被告教会は,聖書に基づき,主イエス・キリストの福音を宣べ伝えるために,

 礼拝施設,教会関係施設等を管理運営して儀式行事を行い,信者を教化育成す

 ることを目的とし,その目的達成のために必要な業務を行うことを目的として

 昭和63年3月9日に設立された宗教法人であり,被告榊山は,被告教会の代

 表役員である。

  原告らは,被告教会の元信者である。

3 争点 

(1) 被告らの不法行為責任及び消滅時効

(2) 被告教会の安全配慮義務違反

(3) 損害


第3 争点に対する当事者の主張

1 争点(l)について

(原告らの主張)

(1)原告らは,被告教会の代表役員である被告榊山から,被告教会の職務を行

  うにつき,以下の不法行為を受けた。

ア 原告高**子(以下「原告高*」という。)は,平成10年6月27日

 及び同年7月1日ころ,治療や体罰と称して,大量のもぐさでお灸をされ,

 両くるぶしの外側部分及び右大腿部の上部外側部分に大きな熱傷を負い,

 後遺症が残った。

  また,原告高*は,平成11年12月末,被告教会の施設である教育セ

 ンターにおいて,平成12年1月,浜名湖チャペルにおいて,額を殴られ

 た。

  さらに,原告高*は,平成12年1月28日午後2時ないし3時ころ,

 被告教会2階の第5ゲストルームにおいて,「パンツを下げろ。」と強要さ

 れ,腎部を平手で叩かれ,平成l3年10月ころから平成14年3月ころ

 まで,ゲストルームの個室において,「心の傷を癒す必要がある。」などと

 言って涙を拭かれたり,鼻や唇をつままれたり,被告榊山の膝の上に乗せ

 られて,内股をくすぐられるというセクハラ行為を受けた。

イ 原告****(以下「原告**」という。)は,平成9年5月ころ,人

 形劇の練習中に,棒で叩かれた。

  また,原告**は,平成10年6月28日ころ,大量のもぐさでお灸を

 され,熱傷を負い,後遺症が残った。

ウ 原告武**男(以下「原告武*」という。)は,平成10年6月中旬こ

 ろ,大量のもぐさでお灸をされ,熱傷を負い,後遺症が残った。

  また,原告武*は,業務用の鍋で腎部を殴られたり,平手で顔を叩かれ,

 平成ll年3月ころ,こたつの脚で頭を叩かれ,ズボンを下ろした状態で


 臀部を20回以上殴られた。

エ 原告大**美(以下「原告大*」という。)は,平手で叩かれたり,フ

 ライパンで叩かれたりしたほか,平成9年3月,礼拝中に目をそらしたと

 いう理由で,こたつの脚で30回以上警部を叩かれた。

  また,平成10年6月末ころ,大量のもぐさでお灸をされ,右下腿部の

 上部外側に熱傷を負い,後遺症が残った。

(2)原告らは,被告らによるマインドコントロール又は洗脳によって,被告榊

  山が絶対者であると刷り込まれていたため,脱会後も,激しい罪責感やフラ

  ッシュバックがあったことや,信者であった間に受けていた精神的,肉体的

  苦痛の恐怖により,被告らを訴えることができなかったものであり,原告ら

  代理人森下文雄に対し,傷害の告訴についで相談をした日である平成17年

  5月6日をもって,時効の起算点とすべきである。

   また,原告らに対しマインドコントロールや洗脳を行った被告らが消滅時

  効を援用することは,信義則に反し,権利濫用として許されない。

(被告らの主張)

(1)被告教会において,お灸が流行った時期があったが,冗談を言ったり笑っ

  たりしながら,互いにお灸をし合ったにすぎず,他人に強制してお灸をして

  いたものではないし,被告榊山が他人にお灸をしたことはない。

   また,被告榊山は,信者に対し,しつけ,教育の意味で,多少の有形力を

  行使したことはあったが,暴力といえるほどのものではないし,セクハラは

  一切存在しない。

(2)仮に,原告らが主張する不法行為が存したとしても,それらはいずれも,

  平成9年3月から平成12年1月にかけての行為であり,既に時効期間であ

  る3年が経過しているところ,被告らは,平成l7年12月19日の本件第

  1回口頭弁論期日において,時効を援用するとの意思表示をした。

   原告らは,いずれも自らの意思で被告教会を脱会し,その後は被告教会を


  批判する行為を行ってきたものであって,原告らがマインドコントロール又

  は洗脳を受けていたという事実は否認する。

2 争点(2)について

(原告らの主張)

(1)被告教会には,入会手続があり,信者に対し,伝導活動,施設内での作業,

  献金などを義務づけており,原告らと被告教会の間には,入会契約があった

  か,少なくとも,事実上の拘束力があったといえるから,被告教会は,原告

  らに対し,ある法律関係に基づく特別な社会的接触の関係に入った当事者間

  において信義則上発生する義務である安全配慮義務を負っており,被告教会

  は,同義務を怠って暴力やセクハラを行ったことにより,原告らに対し,債

  務不履行責任を負う。

(2)被告教会は,被告教会が原告らに対し安全配慮義務を負うとしても,被告

  榊山による暴力やセクハラは,安全配慮義務違反と無関係であり,債務不履

  行責任を負わないと主張するが,被告教会の負う安全配慮義務とは,宗教活

  動を遂行するにあたつて,自己が支配する人的環境(教祖としてカリスマ性

  を有していたり,絶対者として振る舞う人物の存在)から生じる可能性のあ

  る危険から原告らを保護する義務であるところ,代表役員である被告榊山が

  宗教行為を装つて,体罰やセクハラを行うのを防止できなかったことは,被

  告教会の安全配慮義務違反となる。

(被告教会の主張)

(1)被告教会には,入会手続も脱会手続も存在せず,信者が宗教活動を行うか

  どうかは本人の意思次第であつて,原告らと被告教会の間には,法的評価が

  可能な権利義務関係を伴う入会契約は何ら存在しない。

(2)また,仮に,被告教会が,原告らに対し,安全配慮義務を負うとしても,

  契約責任としての安全配慮義務とは,ある者が,当該契約関係又は契約に準

  じる関係に基づき,ある行為を遂行する際に、当該行為に内在する危険から


  行為者の生命,健康を保護すべき義務であり,当該契約関係又は契約に準じ

  る関係と無関係に発生する−般的な安全配慮義務は,不法行為を構成するの

  は別論として,債務不履行責任を構成するものではないところ,暴力やセク

  ハラは,暴力を加えてはいけないなどの一般的な安全配慮義務に違反する行

  為ではあるが、原告らと被告教会との間の契約関係又は契約に準じる関係と

  は無関係であるから,被告教会は,原告らに対し,安全配慮義務違反に基づ

  く債務不履行責任を負わない。

3 争点(3)について

(原告らの主張)

  原告らは,被告らの不法行為及び債務不履行により,多大な精神的苦痛を受

 けたものであり,慰謝料の額は, 1人当たり300万円を下らない。

  また,弁護士費用は, 1人当たり40万円が相当である。

(被告らの主張)

  争う。

第4 当裁判所の判断

l 争点(l)について

(1)上記争いのない事実に,証拠(甲1ないし4,6ないし15,19ないし

  29,31ないし35,38ないし41,43ないし51,53ないし64,

  66,乙1,2,4ないし6,17〔以上,枝番のあるものは枝番を含む。

  以下同じ。〕)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることがで

  きる。

ア 原告らの入会

(ア)被告教会には,一般信者のほか,聖書を学ぶ場である聖書塾に参加し,

  将来牧師や宣教師になることを目指して訓練を行う塾生(献身者)と呼

  ばれる信者がいた。

   被告教会に入会する際には,洗礼を受けるが,特段の入会手続は存在


  せず,一般信者が塾生になる際にも,手続は何ら存在しなかった。

(イ)塾生は,概ね被告榊山の定めたスケジュールに従って,毎日午前4時

  半に行われる祈祷会に出席し,午前中にアルバイトをして生計を立て,

  午後1時ころ被告教会に戻って打合せを行い,被告教会において夕食を

  とり,午後9時ころまで,種々の奉仕活動に従事するという生活を送っ

  ていた。

  塾生が行う奉仕活動の内容としては,集会で披露する出し物の練習,

  伝道活動,被告教会所有施設の土木作業,被告教会が開催する行事(毎

  週日曜日に行われる礼拝,年2回の中央聖会,年3回のキャンプ等)の

  運営などがあった。

   また,信者は,集会や礼拝時等に,被告教会からの要請に応じて献金

  することがあり,塾生は,食事代などのため,月数千円程度の会費を徴

  収されていた。

(ウ)原告高*は,平成2年7月8日,原告**は,平成元年12月10日,

  原告武*は,昭和63年5月1日,原告大*は,平成2年5月27日に

  それぞれ被告教会に入会し,原告高*は,平成9年2月18日,原告*

  *及び原告武*は,同年5月ころ,原告大*は,平成4年4月ころそれ

  ぞれ塾生となって,被告教会において奉仕活動を行っていた。

   また,原告大*は,平成11年11月,被告教会の枝教会である札幌

  教会の牧師となった。

イ 被告榊山による暴力等

(ア)被告榊山は,原告らを含む信者に対し,しつけと称して,こたつの脚,

  フライパン, ドラムのステイックなどで腎部や足の裏を叩いたり,素手

  で顔を叩いたりといった暴力を日常的に加えていた。

   特に,原告高*は,平成12年1月,浜名湖チャペルで行われたキャ

  ンプ中に顔が暗いとして額を殴られ,原告**は,塾生となって間も


  ないころ,人形劇の練習中に棒で叩かれ,原告武*は,業務用の鍋で臀

  部を叩かれたり,平手で顔面を叩かれたり,平成11年3月ころ,処分

  を命じられた他団体のCDを処分していなかったため,こたつの脚で頭

  を殴られた後,ズボンを下ろすよう命じられて,臀部を20回以上叩か

  れ,原告大*は,平手で顔面を叩かれたり,フライパンで臀部を叩かれ

  たり,礼拝中に目をそらしたとして,こたつの脚で臀部を30回以上叩

  かれたということがあった。

   ただし,原告大*は,札幌教会の牧師となった平成11年11月以後

  は,被告榊山から暴力を受けることはなくなった。

   また,原告らは,平成10年6月ころ,被告教会において,被告榊山

  から,健康のためなどと称してお灸を据えられ,原告高*は右下腿・

  左足背部に,原告**は,両足部に,原告大*は,右足部に,原告武*

  は,右下腿・両足部に熱傷を負った。

(イ)原告高*は,平成12年1月28日,被告榊山から,布団のぼやを出

  したことを各められ,被告教会2階の第5ゲストルームにおいて,「パ

  ンツを下げろ。」と言われて,半分ほど下着を下げたところ,臀部を軽

  く叩かれた。

   その後,原告高*は,しばしば被告榊山から呼び出され,個室で話を

  するようになったが,被告高*が,自己の心の傷について話をするうち

  に泣いてしまったときには,被告榊山から,涙を拭かれ,鼻や唇をつま

  まれるということがあった。

   また,原告高*は,平成13年10月ころから平成14年3月末日こ

  ろまでの問,被告榊山に指示され,週に3回,被告教会2階の第5ゲス

  トルームにおいて,1人で聖書を読んでいたところ,しばしば,被告榊

  山が上記部屋に入ってきて,遅刻や欠席等の罰と称して,ベッドにうつ

  伏せにさせられたり,ベッドに座った被告榊山の膝の上にうつ伏せで乗


  せられたりして,横腹をくすぐられたり,被告榊山の肩にかつがれ,内

  股をくすぐられたりした。

ウ 原告らの脱会

(ア)原告らは,次第に被告榊山の教えに疑いを抱くようになり,原告武*

  は平成11年5月,原告**は同年6月,原告高*は平成14年5月,

  原告大*は平成16年12月に,それぞれ自分の意思で被告教会に通う

  のを止めて脱会したが,この際,被告教会が原告らを引き留めたことは

  なかった。

   なお,被告教会を脱会する際には,被告教会に通うのを止めるだけで

  よく,特段の手続を要しなかった。

(イ)当時,被告教会が所属していたイエス福音教団の監督代行であった穐

  近祈(以下「穐近」という。)は,平成6年12月ころから,被告教会

  を脱会した元信徒から,被告教会における暴力やセクハラに関する苦情,

  告発を受けるようになったため,平成12年4月22日及び同年6月1

  7日,被告教会を訪れ,被告榊山に対し,被告榊山が暴力やセクハラを

  行っているということが事実かどうかについて,説明を求めたが,被告

  榊山は,被告教会における暴力やセクハラについて,あいまいな返答し

  かしなかった。

(2)以上の認定に対し,被告らは,被告榊山は,しつけ,教育の意味で,多少

  の有形力を行使したことはあったが,暴力といえるほどのものではないし,

  セクハラは一切存在しないと主張し,被告榊山はこれに沿う供述をする(乙

  1,4,17)。

   しかしながら,原告らは,別訴(当庁平成18年ワ第7号,平成19年(ワ)

  第419号,同年(ワ)第515号)における各原告本人尋問(甲53ないし5

  6)及び陳述書において,上記認定に沿う供述をしているところ,その供述

  内容は迫真的かつ具体的である上,熱傷に係る部分についでは,診断書(甲


  1ないし4)や写真(甲6)により裏付けられている。そして,被告教会の

  他の元信者8名も,被告榊山による暴力を自ら受けたかこれを目撃した旨述

  べており(甲1lないし13,28,29,31,32,35,49,58),

  原告らの上記供述と符合するものである。さらに,被告榊山は,上記即別訴に

  おける尋問において,こたつの脚やフライパンで信者の臀部を叩いた旨を自

  認している。したがって,原告らの上記供述は信用性が高いと言うべきであ

  る。

   これに対し,被告榊山は,上記別訴における尋問において,熱傷について

  は,信者同士が被告榊山の指示と関係なく,お灸をした結果,そのようなこ

  とがあったと思うと供述するものの,上記診断書及び写真によれば,原告ら

  の熱傷の程度が軽度なものとは到底認め難く,任意に信者同士がお灸をし合

  った結果のものであるとは考え難い。また,被告榊山は,上記のとおり,信

  者の臀部を叩いた旨を自認するものの,こたつの脚で原告大*を叩いた点に

  ついて,叩いたことはあったかもしれないと供述しその回数につき質問さ

  れると,直ちに回答することなく,それは定かではないけれども,そんなに

  する必要もないと思うなどとあいまいな供述に終始している。さらにまた,

  上記認定の事実によれば被告榊山は,平成12年4月22日及び同年6月

  17日の2度にわたって穐近と話合いの機会を持ち,穐近から暴力やセクハ

  ラの存在についでの説明を求められたにもかかわらず,あいまいな返答に終

  始し,明確に暴力やセクハラを否定しなかつたことを認めることができる。

  したがって,被告らの上記主張に沿う被告榊山の供述部分は採用できない。

(3)したがって,被告榊山は,原告らに対し,暴力及びセクハラを行ったと認

  めることができるが,これら不法行為が行われた時期は,上記認定事実のと

  おり,原告大*につき,平成11年11月ころまでであり,原告高*,原告

  **及び原告武*につき,遅くとも,同原告らが被告教会を脱会した時期(原

  告武*につき平成11年5月,原告**につき同年6月,原告高*につき平


  成14年5月)までであると認めることができるところ,原告らが本件訴訟

  を提起したのは,各不法行為の日から3年が経過した後の平成17年10月

  24日であること,被告らが同年12月19日の本件第1回口頭弁論期日に

  おいて消滅時効を援用する旨の意思表示を行ったことは当裁判所に顕著な事

  実であるから,原告らの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権は

  時効によって消滅したというべきである。

   これに対し,原告らは,被告らによるマインドコントロール又は洗脳によ

  って,脱会後も,激しい罪責感やフラッシュバックがあったことや,精神的,

  肉体的苦痛の恐怖により,被告らを訴えることができなかったものであり,

  原告ら代理人森下文雄に対し,傷害の告訴について相談をした日である平成

  17年5月6日をもつて,時効の起算点とすべきであるし,原告らに対しマ

  インドコントロールや洗脳を行つた被告らが消滅時効を援用することは,信

  義則に反し,権利濫用として許されないと主張する。

   しかしながら,上記認定事実のとおり,原告らはいずれも,被告榊山の教

  えに疑問を感じるようになり,自分の意思で被告教会を脱会したものであっ

  て,原告らが被告らからマインドコントロールや洗脳を受けていたと認める

  ことはできないから,原告らの上記主張は採用できない。

   よって,原告らの不法行為に基づく請求には理由がない。

2 争点(2)について

 債務不履行責任を基礎づける安全配慮義務とは,ある法律関係に基づいて特

別な社会的接触の関係に入った当事者間において,当該法律関係の付随義務と

して,信義則上発生する義務であり(最高裁昭和48年訛茖械牽街翔隠毅闇

2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁参照),契約関係又は契

約類似の関係を前提とするものである。そこで,原告らと被告教会との間に上

記の関係があるか否かについて検討する。

 原告らは,被告教会が信者に対し,伝道活動,施設内での作業,献金などを


義務づけていたから,原告らと被告教会の間には,入会契約があったか,少な

くとも,事実上の拘束力があったから,被告教会は原告らに対し安全配慮義務

を負うと主張し,上記認定事実によれば,塾生は,概ね被告榊山の定めたスケ

ジュールに従って,生活の大半を被告教会における奉仕活動や礼拝に充ててい

たこと,信者が被告教会からの要請に応じて献金していたことを認めることが

できる。

 しかしながら,上記認定事実によれば被告教会には,入会手続も脱会手続

も存在しないこと,原告らは,被告榊山の教えに疑問を感じるようになり,自

分の意思で,被告教会に通うのを止めて脱会したこと,被告教会が原告らの脱

会を引き留めたことはなかったことを認めることができるから,原告らが被告

教会に通うかどうかは,各人の自由な意思に委ねられており,原告らは,専ら

信仰上の動機に基づいて,被告教会において,奉仕活動,礼拝及び献金といっ

た宗教活動を行っていたものというべきである。       

 したがって,原告らが被告教会に入会したことにより,原告らと被告教会と

の間に,法的権利義務関係を伴う入会契約が締結されたということはできない。

 また,原告らが主張する「事実上の拘束力」とは,原告らが自由な意思の下,

被告教会において宗教活動をしていたことに伴って,事実上,被告教会が原告

らに対して宗教上の影響力を有していたことを意味するにすぎないと解される

から,これをもつて契約類似の関係があるということもできない。

 よって,原告らの安全配慮義務違反による債務不履行責任に基づく請求には

理由がない。

第5 結論

 以上のとおり,原告らの請求は,その余の点につき判断するまでもなく,い

ずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民訴

法61条, 65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。

    静岡地方裁判所浜松支部民事部


裁判長裁判官  酒  井  正  史

   裁判官  矢 作 泰 幸

   裁判官  神 原 文 美


これは正本である。

平成20年5月19日

静岡地方裁判所浜松支部民事部

 

裁判所書記官 児 玉 謙次郎

 

 

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