東京物語
  
  毛利充宏、原節子、東山千榮子、杉村春子、笠智衆、山村聰、村瀬禪、三宅邦子

※ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。

  〜プロローグ〜  〜尾道 旅行前〜  〜東京長男の家〜 〜東京長女の家〜 〜東京見物〜 〜東京嫁の住まい〜 〜熱海
長女の家 昼〜  〜東京友人の家 夕方〜 〜嫁の家 夜 長女の家 夜中〜 〜嫁の家 翌朝〜  〜東京駅
大阪〜 〜電報〜 〜尾道 帰宅〜  〜葬儀〜 〜数日後 エピローグ〜 

記号[☆:スタッフ・キャスト : 始めに ←:終わりに]
(1953) (白黒)(松竹大船)(キ ネマ旬報ベスト第2位)(キ ネマ旬報興行第8位)(第1回サザランド賞)
監督…小津安二郎
製作…山本武
脚本…野田高梧/小津安二郎
撮影…厚田雄春
美術…浜田辰雄
録音…妹尾芳三郎
照明…高下逸男
音楽…斎藤高順
編集…浜村義康
録音技術…金子盈
装置…高橋利男
装飾…守谷節太郎
衣裳…斎藤耐三
現像…林龍次
出演…笠智衆(父/平山周吉)(飄々としているが明治生れの気質である)
………東山千榮子(母/平山とみ)(温かくてふくよかである)
………原 節子(次 男昌二の嫁/平山紀子)(会社員で夫が戦死した後 も義父母を温かくもてなす)
………杉村春子(長女/金子志げ)(美容院を営んでいて維持してゆくことで頭が一杯である)(第8回毎日 映画コンクール女優助演賞)
………山村聰(長男/平山幸一)(町医者で自分の仕事のことで精一杯である)
………三宅邦子(幸一の妻/平山文子)(幸一を支え義父母を気遣う)
………香川京子(末女/平山京子)(小学校の教師をしていて兄姉の身勝手さに憤然とする)
………東野英治郎(周吉の知人/沼田三平)(息子へ不満を持っている)
………中村伸郎(志げの夫/金子庫造)(姑に気を使う)
………大坂志郎(三男/平山敬三)(親不孝を自覚しているが自分の生活を優先する)
………十朱久雄(周吉の友人/服部修)(妻に主導権を握られている)
………村瀬禪(幸一の子/平山実)(生活のリズムを変えられて不機嫌である)
………毛利充宏(幸一の子/平山勇)(幼い)
………長岡輝子(服部の妻/服部よね)(家庭の主導権を握っている)
………高橋豊子(隣家の細君)(話好き)
………三谷幸子(紀子のアパートの女)(紀子と助け合っている)
………安部徹(敬三の先輩鉄道職員)(自分の経験を言い聞かせる)
………阿南純子(美客院の助手/キヨ)(志ずの美客院で働いている)
………櫻むつ子(おでん屋の女)
………長尾敏之助
………田代芳子
………遠山文雄
………戸川美子
………三木隆
………諸角啓二郎
………新島勉
………水木涼子
………秩父晴子
………糸川和広
………鈴木彰三
※昭和28年度芸術祭参加作品

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 日常の出来事の中で誰もが向き合っていく別れを行間と言葉に思いを込めて、それぞれが持つ孤独を演出する最高傑作。

 これほど行間と言葉に喜び・悲しみ・怒り・恥じらい・とまどい、遠慮を細やかに胸に深く浸透させる作品はない。
 それが親・子・夫・妻・兄弟・婿・嫁・友・孫に投げかけられ問われるので、それぞれが共感し共鳴する。

 老夫婦を軸に描き、あまり意識しないでやっている親不孝を深く厳しく入り込ませている。

 静穏なモノクロの画面から淡々と、しかし明確に醸しだされる映像は感動を呼び起こす。
 それが、正に、小津藝術の世界で、世界中の映画人に多大な影響を与え人々に評価され続ける所以だろう。

 紀子3部作(晩春『麦秋』『東京物語』)と言われる作品の第3作。

追記

 昨年(2012)、10年おきに行われている英国映画協会の[世界で最も優れた映画50選]で、358人の映画監督が選ぶ(監督部門)小津安二郎監督『東京物語』1位となる。
 また世界の批評家846人が選ぶ(批評家部門)でも3位となる。

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 〜プロローグ〜

音楽が流れる。
尾道の景色が映し出されポンポン蒸気の音が聞こえる。
列車の音がして、汽笛が鳴りこだまする。

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 〜尾道 旅行前〜

老夫婦の平山周吉(笠智衆)ととみ(東山千榮子)が旅支度をしている。


『東京物語』笠智衆、東山千栄子

とみ・・・「空気枕ァそっちィはいりゃんしたか?」
周吉・・・「空気枕ァお前に頼んだじゃないか」
とみ・・・「ありゃんしェんよ こっちにゃ」 
周吉・・・「そっちょウ 渡したじゃないか」
とみ・・・「そうですか ?」

隣家の細君(高橋豊子)が通りがかる。
細君・・・「お早うござんす」
とみ・・・「ああ お早よ」
細君・・・「今日お発ちですか?」
とみ・・・「へえ 昼過ぎの汽車で」
細君・・・「そうですか」
周吉・・・「まァ今のうちに 子供たちにも会うとこう思いましてなァ」
細君・・・「お楽しみですなァ 東京じゃ皆さんお待ちかねでしょうて」
周吉・・・「いやァ しばらく留守にしますんで よろしくどうぞ」
細君・・・「ええ ええ ごゆっくりと 立派な息子さんや娘さんがいなさって結構です なァ ほんとうにお幸せでさァ」
周吉・・・「いやァ どんなもんですか」
細君・・・「ええあんばいにお天気も良うて……」
とみ・・・「ほんとにおかげさんで」
細君・・・「まあ お気をつけて行っておいでなしゃァ」
とみ・・・「ありがと」
とみがにっこりしてお辞儀する。
細君もお辞儀して去る。
周吉ととみがお辞儀する。

とみ・・・「空気枕 ありゃんしェんよ こっちにゃ」
周吉・・・「ないこたないわ よう探してみぃ
 ああ あったあった」
とみ・・・「ありゃんしたか」
周吉・・・「ああ あった」
周吉は空気枕を探せずとみが別の場所に入れたのかと問い正すが、実際は自分が見落としていたことが分かる。
 「ああ あったあった」と、言い、とみも「ありゃんしたか」と、言うだけで受け入れる。
 明治生まれの気質がでているシーンであり、“忘れるということで老いを演出”している。
 これは“孤独”と共に、この作品のテーマであるので繰り返される。

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 〜東京長男の家〜

長男幸一(山村聰)の嫁の文子(三宅邦子)が老夫婦が休む部屋を掃除している。
中学生の実(村瀬禪)が学校から帰って来る。
嬉しそうに祖父母はまだかと聞いていたが勝手に勉強机を移動させられているのを見て文子に不満を漏らす。
 自分の生活の空間を乱されるのが嫌だったのだ。
勉強机を移動させないと老夫婦が休む部屋がないと文子に言われても歯向かう。

老夫婦が尾道から訪ねて東京にやって来る。
長男幸一の家に長女志げ(杉村春子)と戦死した次男昌二の嫁 紀子(原節子)も集まり二人を歓迎し思い出話に花を咲かせる。


『東京物語』山村聰、三宅邦子、笠智衆、原節子、杉村春子、東山千栄子

夕食後の片付けが終わった紀子に志げが声を掛け帰る。
老夫婦も文子が準備してくれた部屋へ行く。

二人が寝床で話す。
周吉・・・「いやァ」
とみ・・・「疲れなさったでしょ」
周吉・・・「いンやァ……」
とみ・・・「でも みんな元気で……」
周吉・・・「ウーム…… とうとう来たのう……」
とみ・・・「へえ
 ここァ……
 東京のどの辺でしゃア?」
周吉・・・「端の方よ」
とみ・・・「そうでしょうなァ だいぶん自動車で遠いいかったですけえのう」
周吉・・・「ウーム……」
とみ・・・「もっとにぎやかなとこか思うとった……」
周吉・・・「ここか?」
とみ・・・「へえ」
周吉・・・「幸一ももっとにぎやかなとけえ出たい言うとったけえど……
 そうもいかんのじゃろう…… ウーム……なァ……」
とみ・・・「……」
周吉・・・「……」

町医者をしている幸一は、ゆっくりできず両親を構っていられないでいる。
やっと休診日に出掛けようとするが急患があり予定が変更になる。
実は日頃の不満を打ちまける。
とみは勇(毛利充宏)と実を散歩に誘うが実は脹れている。
幼い勇だけを散歩に連れて行く。

文子が出掛けられなくなったことを周吉に詫びる。
文子・・・「でも……せっかくお父さまお出掛けんとこ……」
周吉・・・「いやァ わしらァええよ」
文子・・・「今度の日曜にでもまた……」
周吉・・・「ああ ありがとう まァニ 三日ご厄介になって 志げのとこへも行ってやろう思うとるけえ」
文子、頷く。
周吉は窓から見えるとみと勇の方を見る。
周吉・・・「ああ あんなとこで遊んどるよ」
文子も見る。

無邪気に遊んでいる幼い勇に向かってとみが言う。
・・・「…」
とみ・・・「勇ちゃん あんた 大きうなったらなんになるん?」
・・・「…」
遊んでいる勇を見ながら、独り言をいう。
とみ・・・「あんたもお父さんみたいにお医者さんか?−
 あんたがのう お医者さんになるころァ お祖母ちゃんおるかのう……」
・・・「…」
老いを感じながら見詰めているとみ。
 とみの身に迫っている死を暗示している。
 一方、周吉も背中を丸めとみたちを部屋から眺めている。
 老いを感じさせる描写に死に向き合っている老人の孤独が見えてくる。
 それを自然の移り変わりのように撮っている小津監督の手法は見事だ。
 別の所帯を持っている幸一たちに気遣う老夫婦の姿もその一端であろう。
 このような描写はこの後も繰り返される。

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 〜東京長女の家〜

長女志げのところへ老夫婦は行く。
が、志げは美容院を営んでいて構えないでいる。
 ここでも気遣う老夫婦が見られる。

志げは義妹の紀子に二人を東京見物に連れて行ってくれと頼む。
商事会社勤めの紀子は上司に休暇を願い出る。
残業することを条件にされるが志げの頼みを快く受ける。

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 〜東京見物〜

紀子は老夫婦を東京見物に連れて行く。
 はとバスに乗って見物している老夫婦は嬉しそうだ。
デパートの屋上への外階段で老夫婦に義兄の家の方角を指差して教えている紀子。
紀子・・・「お兄さまのお宅はこっちの方ですわ」
周吉・・・「そうか」
とみ・・・「志げのとこァ?」
紀子・・・「お姉さまのおうちは さァ この辺でしょうか」
とみ・・・「あんたんとこァ?」
紀子・・・「わたくしのところは こちらですわ
 この見当になりますかしら」
とみ・・・「そお」
紀子・・・「とっても汚ないとこですけど およろしかったら お帰りにお寄りいただいて……」
周吉・・・「ああ」

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 〜東京嫁の住まい〜

見物の帰りに紀子は老夫婦を自分の質素なアパートに連れてくる。
部屋には8年前に戦死した昌二の写真が今でも飾ってある。
とみ・・・「紀さん もうほんとにかまわんでくださいよ」
紀子・・・「いいえ−
 なんのおかまいも出来ません」
とみ・・・「ほんとに今日はおかげさんで……」
紀子・・・「いいえ……お父さまお母さま かえってお疲れんなったでしょう?」
周吉・・・「いやァ 思いがけのうあっちィこっちィ見せてもろう て……」
紀子・・・「いいえ−」

とみ・・・「すいませなんだなァ お勤めう休ましてしもうて……」
紀子・・・「いいえ……」
周吉・・・「忙しいじゃなかったんか」
紀子・・・「いいえ よろしいんですの
 小さな会社ですから 忙しい時は日曜も出ますけど いまちょうどひまな時ですから……」
周吉・・・「そうか そんならええけぇど……」

お銚子をつけたのを持って来て周吉に注ぐ紀子。
紀子・・・「どうぞ」
嬉しそうに周吉。
周吉・・・「ああ そうか」
紀子・・・「なんにもめしあがるものがなくって……」
周吉・・・「いやァ……」
美味しそうに、
「ウーム やっぱりうまいなァ」
と言いながら飲む周吉。


『東京物語』笠智衆、原節子、東山千栄子

紀子・・・「お父さま お酒お好きなんですの?」
とみ・・・「へえ 昔ァよう飲みなさったんよ うちにお酒が切れたら  とっても機嫌が悪うなって 遅うなってからまた出て行ったりしてからなァ……」
周吉・・・「いやァ……」
とみ・・・「ほいじゃけぇ 男の子が生れるたんびに この子が大きうなってお酒のみに ならにゃええが思うてのう……」
紀子、微笑みながら頷く。
微笑み返すとみ。
周吉・・・「昌二はどうじゃった?」
紀子・・・「いただきましたわ」
とみ・・・「へえ そお?」
紀子・・・「会社の帰りなんかにどこかで飲んで−
 遅くなって電車がなくなると よくここへお友達つれてきたりして……」
周吉・・・「そうか」
とみ・・・「じゃあ あんたも困った組じゃのう」
紀子・・・「ええ……」
紀子、笑う。
「でも今から思うと懐か しい気がしますわ」
とみ・・・「ほんまにのう わたしらァ離れとったせいか まだどっかに昌二がおるような 気がするんよ それでときどきお父さんにおこられるんじゃけぇど……」
周吉・・・「いやァ もうとうに死んどるよ 8年にもなるんじゃもん」
とみ・・・「そりゃそうですけどなァ……」
周吉・・・「あれもなかなか腕白なヤンチャな奴じゃったから あんたにもいろいろ厄介か けたろう」
紀子・・・「いいえ……
 ……」
とみ・・・「ほんまになァ あんたにも苦労かけて……」
紀子・・・「……」


『東京物語』東山千栄子、原節子、笠智衆

紀子は老夫婦をもてなす。
 8年前に戦地で亡くなった息子の死をまだ受け入れないでいるとみと、未だに夫の写真を飾って一歩を踏み出せないでいる紀子。
 小津監督は戦争を引き摺っている二人を透して戦争というものを語っている。
紀子は団扇で食事をしている二人を優しく扇いでやる。

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 〜熱海〜

一方、幸一と志げが“両親をどうしようか”と困った顔をして扇いでいる。
 団扇の使い方でそれぞれの心情を映し出している。
 実に上手い演出だ。
 心情を映し出す小道具としても使われている団扇は他の場面でも楽しめる。
幸一と志げは“忙しくて両親を構っていられないから”と金を出し合って熱海へ行くように手配する。
老夫婦は熱海までやって貰って喜んでいたが、夜は昼間の静けさとは打って変わっていた。
宿泊客たちが夜遅くまで歌ったりマージャンをしていて騒々しかったのだ。
煩くて眠れなかった老夫婦が、朝、海岸の堤防に二人で背中を丸くして座っている。


『東京物語』笠智衆、東山千栄子

とみ・・・「どうかしなさった?」
周吉・・・「ウーム」
とみ・・・「ゆうべよう寝られなんだけえでしょう」
周吉・・・「ウーム −お前はよう寝とったよ」
とみ・・・「うそ言いなしゃァ わたしも寝られんで……」
周吉・・・「うそ言え いびきうかいとったよ」
とみ・・・「そうですか」
周吉・・・「いやァ こんなとこァ 若いもんの来るところじゃ」
とみ・・・「そうですなァ……」
周吉・・・「……」
とみ・・・「……」

とみ・・・「京子ァどうしとるでしょうなァ……?」
周吉・・・「ウーム…… そろそろ帰ろうか」
とみ・・・「お父さん もう帰りたいんじゃないんですか?」
周吉・・・「いやァ お前じゃよ お前が帰りたいんじゃろ
 東京も見たし 熱海も見たし−
 もう帰るか」
とみ・・・「そうですなァ 帰りますか」
周吉・・・「ウム」
立ち上がり歩き出す。
とみも立ち上がろうとするが立ち上がれずにいる。
周吉が振り向き、
周吉・・・「どうした−」
と言い、戻ってくる。
とみ・・・「なんやら 今ふらっとして…… いえ もうええんでさ」
周吉・・・「よう寝られなんだからじゃろう −行こう」
とみ・・・「へえ」
とみが立ち上がり二人で歩き出す。
 煩悩を超越したような老夫婦の自然な会話が何ともいえない空間を作り出して美しい。
 ほのぼのとしている。
 周吉はちょっと前の会話では「お前はよう寝とったよ」と言って「わたしも寝られんで」と言うとみを否定していたが、具合が悪そうにしているとみに「よう寝られなんだからじゃろう」と心配する。
 ここでも明治生まれの気質がでている。

 二人は熱海までやって貰ったが何か親身な温かさに欠けているようで物足りなかった。
 医者の幸一も美容院を営んでいる志げも、老夫婦が思っていた生活ぶりと違って、それぞれの生活を守ることで精一杯だったのだ。
 この展開は『一人息子』と同じだが、あの母親のように落胆している訳ではない。

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 〜長女の家 昼〜

熱海から老夫婦が一日早く戻って来る。
美容院の扉を開けて入って来た二人に志げの助手のキヨ(阿南純子)が、
キヨ・・・「あ お帰んなさいまし」
と言う。
周吉・・・「やァ ただいま」
客の髪のセットをしていた志げが、
志げ・・・「アーラ もう帰ってらしったの?」
と言う。
周吉・・・「ああ」
とみ・・・「ただいま」
志げ・・・「もっとゆっくりしてらっしゃりゃいいのに……
 どうなすったの?」
周吉・・・「ああ いやァ……」
とみ・・・「どうも」
志げの傍を通りながら、
とみ・・・「ただいま」
と言うとみ。
志げは軽く会釈して客の髪のセットを続けている。
志げ・・・「…」
老夫婦は重苦しい空気を感じながら2階の部屋の方へ上がって行く。

・・・「どなた?」
志げ・・・「ええ ちょいと知り合いの者……いなかから出て来まして……」
・・・「そう」
 志げの言葉に驚くが本人はそれほど悪いと思わないで言っている。
 そのような、あまり意識しないで親不孝をやっているのを小津監督は端的に演出している。
志げはキヨに後を指示し2階へ上がる。

志げ・・・「どうなすったの? ずいぶん早かったのねえ」
周吉・・・「ウーム」
志げ・・・「熱海 どうでしたの?」
周吉・・・「ウム よかったよ ええお湯じゃった」
とみ・・・「見晴らしのええ宿屋で とってもえかったよ」
志げ・・・「そうでしょ あすこいいのよ まだ建ったばかりだし……
 混んでませんでした?」
周吉・・・「ウム 少し混んどった」
志げ・・・「ご馳走 どんなもの出ました?」
とみ・・・「おサシミに茶碗むしに……」
志げ・・・「おサシミおいしかったでしょ? あすこ海が近いから……」
とみ・・・「大けな卵焼きも出てのう」
志げ・・・「なんだって帰ってらしったの? もっとゆっくりしてらっしゃりゃいいの に……
 ニ 三日のんびりしていただこうと思ってたのよ」
周吉・・・「ウーム でも もうそろそろ−
 帰ろうと思うてのう」
志げ・・・「まだいいじゃありませんか たまに出てらしったのに」
周吉・・・「いやァ でももう帰らんと……」
とみ・・・「京子も寂しがっとるじゃろうし……」
志げ・・・「だいじょうぶよ お母さん−
 京子だってもう子供じゃないんだし
 こんどのお休み 歌舞伎へでもお伴しようと思ってたのよ」
周吉・・・「そう −でもそうそう散財かけちゃ悪いけえのう」
志げ・・・「ううん ゆっくりしてらっしゃりゃいいのよ
 今晩ちょいっと7時っからうちで寄合いがあるけど……
 いえね 講習会なのよ」
とみ・・・「そう 大勢さんお寄んなさるんか?」
志げ・・・「ええ あいにくうちが番だもんだから」
周吉・・・「そうか そりゃいけなんだのう」
志げ・・・「だからゆっくりして来てほしかったのよ
 あたしもそう言っときゃよかったんだけど……」

キヨが2階へ上がって来る。
キヨ・・・「先生−
 ピンカールできましたけど……」
志げ・・・「ああそお?
 じゃ ちょっと−」
と言ってキヨと降りてゆく志げ。

周吉・・・「どうする?」
とみ・・・「どうします?」
周吉・・・「ウーム また幸一んとこへ行って−
 迷惑かけてもなァ……」
とみ・・・「そうですなァ…… −紀子のとこへでも泊めてもらいますか」
周吉・・・「いやァ あすこも二人ァ無理じゃ お前だけ行って泊めてもらえ」
とみ・・・「じゃお父さんは?」
周吉・・・「服部さんを訪ねてみよう思うんじゃ
 なんならそけェ泊めてもらうよ −とにかく ま 出かけようか」
とみ・・・「へえ」
周吉・・・「いやァ とうとう宿無しんなってしもうた……
 ハハハハ アア……」
二人、笑う。
 長年連れ添っている夫婦ならではの空気が流れている演出と役者の表情がいい。

門の前に腰掛けている二人をカメラが移動してきて止まる。
二人揃って座っている。
 背中を丸くした後ろ姿が切ない。
時計を見て、
周吉・・・「もうそろそろ紀子も帰る時間かのう」
と言う周吉。
とみ・・・「そうですか?」
周吉・・・「まだちょっと早いかな」
とみ・・・「でもお父さん 服部さんお訪ねんなるんなら あんまり遅うなっちゃ……」
周吉・・・「そうじゃのう ぶらぶら行ってみうか」
とみ・・・「へえ」
周吉が立ち上がって歩き出す。
後に続くとみ。
振り向きとみが傘を忘れているのに気が付く周吉。
傘の方を指差し、
周吉・・・「おい−」
と言う周吉。
とみが傘を取りに行く。
とみが戻ってくると、
周吉・・・「それ見い すぐそれじゃ」
と言う。
 ここでも老いを演出している。

東京の景色を眺めながら、
周吉・・・「なァおい 広いもんじゃなァ東京は−」
と言う周吉。
とみ・・・「そうですなァ うっかりこんなところではぐれでもしたら 一生涯探しても会 わりゃしゃあしぇんよ」
周吉・・・「ウーム」
二人は歩き出す。
 この「東京は−」と言う台詞は『一人息子』と同じ意味を持たせている。
 志を持っていても東京で活躍することの難しさを息子が母親に話すところだ。

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 〜東京友人の家 夕方〜

周吉は同郷の老友服部(十朱久雄)を訪ね思い出話に花を咲かせる。
が、服部は妻(長岡輝子)の態度を察知して“部屋を学生に貸しているので”などと言いながら「どこぞで一杯」と周吉を外に誘い出す。

周吉の知人でもある“沼田(東野英治郎)もこの近くに住んでいるので誘ってみよう”と服部が言う。

♪軍艦マーチが流れる。
 小津監督が旧友と昔を懐かしむ場面によく使う。
 兵隊として戦ったことがある小津監督は戦友に対しての思いが強かったからだろう。
周吉は同郷の老友と昔話を楽しそうに語り合っている。
再会に僅かに慰められ飲みまわる。
沼田・・・「しかし ま あんたがいっちばん幸せじゃ」
周吉・・・「どうしてェ?」
沼田・・・「東京へ来りゃア ええ息子さんや娘さんがおるし……」
周吉・・・「そりゃアあんたんとこでも そうじゃ」
沼田・・・「いやァ うちの奴はいけん かかあの機嫌ばっかりとって このわしを邪魔にしよる 仕様もない奴じゃ」
周吉・・・「でもあんた 印刷会社の部長さんじゃったら−」
沼田・・・「なんの部長さんなもんか まだ係長じゃ あんまり体裁が悪いんで−
 わしゃ人様に 部長じゃ部長じゃ言うとるんじゃけど 出来損いでさ」
周吉・・・「いやァ−
 そんなこたァない」
沼田・・・「遅う生れた一人子で 甘やかしたのが失敗じゃった……
 それからみると あんたんとこは大成功じゃ ほんまの博士じゃもんなァ」
周吉・・・「いやァ 今どき医者の博士はザラじゃ」
沼田・・・「いやァ 親の思うほど子供はやってくれましェんな
 第一 覇気がない 大鵬の志というものを知らん! そこでわしゃアこない だもせがれに言うた そしたらせがれの奴 東京は人が多ゆうて上がつかえとるなどと言いやがる
 あんたどう思う 意っ気地のない話じゃろうが 敢闘精神いうものがなんに もない! わしゃ そんなつもりで育てたんじゃない!」
周吉・・・「そりゃ沼田さん ちょっとあんた……」
沼田・・・「ウム? じゃあんた そう思わんかのう あんたァ満足しとるんか」
周吉・・・「いやァ 決して満足ァしとらんが……」
沼田・・・「そうじゃろ あんたですら満足しとらんのじゃ
 ……
 わしァ悲しうなってきた……」
服部・・・「アア もういけん もう飲めん」
周吉・・・「しかしなァ沼田さん わしもこんど出て来るまでァ もういっとせがれがどう にかなっとると思うとりました
 …
 ところがあんた 場末の小さい町医者でさ あんたの言うことはようくわか る あんたの言うようにわしも不満じゃ
 じゃがのう沼田さん こりゃ世の中の親っちうもんの欲じゃ 欲張ったら切 がない こら諦めにゃアならん と そうわしァおもうたんじゃ」
沼田・・・「おもうたか」
周吉・・・「おもうた」
沼田・・・「そうか あんたもなァ……」
周吉・・・「あれもあんな奴じゃなかったんじゃが……仕様がないわい
 やっぱり沼田さん 東京はのう人が多すぎるんじゃ」
沼田・・・「そうかのう」
周吉・・・「まァ ええと思わにゃいかんじゃろ」
沼田・・・「そうじゃのう…… いまどきの若いもんの中にゃー
 平気で親を殺す奴もおるもんじゃから それに比べりゃ なんぼうかましな ほうか…… ハハハハハ」
周吉は服部と沼田と飲み明かし、酔って幸一たちへの不満を漏らす。

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 〜嫁の家 夜〜

一方、とみは紀子と睦まじく語り合っている。
とみの肩を紀子が揉んでいる。


『東京物語』東山千栄子、原節子

とみ・・・「ああ おおけに− もうたくさん……」
紀子・・・「いいえ……」
とみ・・・「あああ 今日の一日ァ長かったア 熱海からもどって 志げのとこへ行って  上野公園へ行って……」
紀子・・・「お疲れんなったでしょう」
とみ・・・「なんの
 あんたにも迷惑かけてのう……すまんと思うとります……」
紀子・・・「いいえ
 でもほんとによく来ていただいて もう来ていただけないかと思ってました わ」
とみ・・・「ほうぼうでやっきゃあンなって……
 もうほんとにたくさん」
紀子・・・「そうですか」
とみの背中をなでて終わる紀子。
とみ・・・「どうもありがとう……」

とみ・・・「あんた 明日ァお勤めが早いのに−
 こないに遅そうまで……」
紀子・・・「いいえ お母さまこそ お休みになりましたら?」
とみ・・・「そお じゃあ休ましていただこうか……」
紀子・・・「どうぞ」

とみ・・・「思いがけのう昌二のふとんに寝かしてもろうて……」

とみ・・・「なァ紀さん−」
紀子・・・「はあ?」
とみ・・・「気を悪うされると困るんじゃけえど……」
紀子・・・「なんでしょうか?」
とみ・・・「昌二のう 死んでからもう8年にもなるのに−
 あんたがまだああして写真なんか飾っとるのをみると わたしァなんやらあ んたが気の毒で……」
紀子・・・「どうしてなんですの?」
とみ・・・「でも あんたァまだ若いんじゃし……」
紀子は笑って、
紀子・・・「もう若かありませんわ」
と言う。
とみ・・・「いいえ ほんとうよ わたしァあんたにすまん思うて…… ときどきお父さん とも話すんじゃけえど ええ人があったら あんたいつでも気がねなしにお嫁に行ってくださいよ」
紀子、笑う。
とみ・・・「ほんとうよ そうしてもらわんと わたしらもほんとにつらいんじゃけえ」
紀子・・・「じゃあ いいとこがありましたら……」


『東京物語』原節子

とみ・・・「あるよ ありますとも あんたならきっとありまさ」
紀子・・・「そうでしょうか」
とみ・・・「あんたにァ今まで苦労のさせ通しで
 このままじゃ わたしァすまんすまん思うて……」
紀子・・・「いいの お母さま わたし勝手にこうしてますの」
とみ・・・「でもあんた それじゃアあんまりのう……」
紀子・・・「いいえ いいのですの あたし このほうが気楽なんですの」
とみ・・・「でもあんた 今はそうでも だんだん年でもとってくると やっぱり一人じゃ 寂しいけえのう」
紀子・・・「いいんです あたし年とらないことにきめてますから」
とみ・・・「ええ人じゃのう あんたァ……」
と感極まるとみ。
紀子・・・「じゃ お休みなさい」
とみ、頷く。
そして、すすり泣く。
とみが床に着くのを確認しながら、
紀子・・・「お休みなさい」
と言って電気を消す紀子。
すすり泣き続けているとみ。
紀子・・・「……」
 紀子は苦しい胸の内を秘めたままでいる。
紀子の眼に涙がにじむ。

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 〜長女の家 夜中〜

真夜中に警官に引率された周吉が酔っ払って帰ってくる。
夜中に起こされた挙句、見ず知らずの人を連れてこられ苛立つ志げ。
志げ・・・「どなた? お父さん−」
周吉・・・「いやァ……」
泥酔している周吉と沼田はフラフラしながら美容院の椅子に座り込む。
志げ・・・「お父さん!」
周吉を小突く志げ。
「どうしたのよ! お父さん!」
周吉・・・「ウーム……」
志げの夫、庫造(中村伸郎)が、
庫造・・・「おーい どうしたんだい」
と言う。
志げ・・・「へんな人つれて来ちゃったの」
庫造・・・「誰だい」
声を荒げ、
志げ・・・「わからない」
と言う志げ。
沼田・・・「ああ……愉快愉快 ア ウーム……」
志げ・・・「どうしたのよ」
声を荒げながら周吉の背中を揺す振る志げ。
「お父さん お父さん!  お父さん!! どうしたのよゥ!」
周吉・・・「やァ……まったくじゃ 仕様がないわい ウーム……」
志げ・・・「仕様がないわねえ…… せっかくやめてたのに また飲んじゃって……
 もしもし もしもし」
声を荒げ沼田を小突く志げ。
「あなた あなた!」
沼田・・・「ア 愉快じゃ 愉快 愉快……」
志げ・・・「お父さん!−
 お父さん!−」
周吉が被っていた帽子を取り強く投げつけるようにして頭に戻す志げ。
「フン……仕様がないわ ねえ」
 志げの苛立ちがよく出ていて可笑しい。
 杉村春子の上手さが際立つ。
庫造・・・「どうしたっていうんだい どこで飲んで来たんだい」
志げ・・・「どこだか!−だらしがないわねえ……
 お父さん昔はよく飲んだのよ
 宴会だって言うといつもグデングデンになって来て なんだかんだってお母さんを困らせたもんよ いやでねえ あたしたち……
 それがやっと京子が生れる時分から まるで人が変ったみたいにスッカリや めちゃって いいあんばいだと思ってたのに また飲んで……バカ……」
沼田・・・「あ! そりゃいけん! いけんいけん!
 アア……」
庫造・・・「おい どうする?」
志げ・・・「今日はもう帰って来ないと思ってたのに へんな人連れて来ちゃって…… いやんなっちゃうなあ……」
志げは渋々二人の床を準備する。
周吉と沼田は椅子で鼾を掻いて寝ている。

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 〜嫁の家 翌朝〜

紀子が朝食の後片付けをしている。
とみ・・・「ほんまにやっきゃあンなって……」
紀子・・・「いいえ こんな汚ないところで……」
とみ・・・「あんた お勤めおくれやせんな?−
 まだええの?」
紀子・・・「ええ まだだいじょうぶです」

とみの前に座り、
紀子・・・「ねえお母さま−」
と言う紀子。
とみ・・・「なんな?」
紀子がとみへ、そおっと小さい包み紙を差し出す。
紀子・・・「あの……お恥かしいんですけど これ−」
とみ・・・「なに?」
紀子・・・「お母さまのお小遣い」
とみ・・・「なにを あんた」
紀子・・・「いいえ ほんとに少ないんですけど……」
とみ・・・「だめでさあんた こんなこと−」
紀子・・・「でも 気持ちだけなんですから……」
とみ・・・「いけんいけん」
とみの手に両手で包み込むようにして渡す。
紀子・・・「でもお母さま−」
とみ・・・「だめよ こんなことしちゃ」
紀子・・・「どうぞ−」
とみ・・・「ううん わたしのほうこそあんたにあげにゃいけんのに」
紀子・・・「いいえ そんなこと ねえ どうぞお母さま どうぞ−」
とみ・・・「そお? すんませんな−」
包み紙を両手でかかげお辞儀をするとみ。
「じゃ いただきます」
紀子・・・「どうぞ」
とみ・・・「あんたもいろいろ入り用が多いいんじゃろうに−
 こんなことまでしてもろうて ほんとになんというたらええか……」
紀子の手を両手で包み、
「ありがとよ紀さん……」
と言い感極まるとみ。
「ありがと……」
とみは紀子が昔と変わらない心遣いをしてくれるのが嬉しくて涙を流す。
紀子・・・「さ お母さま そろそろ」
とみ・・・「そお」
紀子・・・「ねえ お母さま またどうぞ 東京へいらっしたら……」
とみ・・・「へえ…… でも もう来られるかどうか……
 ひまもないじゃろうけえど あんたもいっぺん尾道へも来てよ」
紀子・・・「伺いたいですわ もう少し近ければ」
とみ・・・「そうなァ なにしろ遠いいけのう……」
紀子、頷く。
そして、立ち上がって出掛ける準備をする。
紀子・・・「あ お母さま−
 お忘れもの」
とみ・・・「ああまた…… よう忘れるんよ このごろァ」
とみの荷物を持ってやり、
紀子・・・「さ まいりましょう」
とドアを開けてやる紀子。
とみが外に出る。
紀子がドアを閉めようとする時に、とみが傘を忘れているのに気付き笑う。
 この笑いがいい、きっとこの後「ハイ お母さま」とにっこりして渡したのだろう。
 だが、ここでもとみの物忘れが老いを感じさせ、とみの身に迫っている死を暗示している。

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 〜東京駅〜

老夫婦が尾道へ発つ。
尾道行きの列車の改札を待っている。
志げ・・・「ずいぶん混むわねえ」
幸一・・・「ウム でもこの辺なら充分すわれるよ
 これだと 名古屋か岐阜あたりで夜が明けますがね」
周吉・・・「そう」
志げ・・・「尾道へ何時に着くの?」
幸一・・・「明日の1時35分」
とみ・・・「あのう 京子に電報打ってェてくれたかしらん?」
幸一・・・「ああ 打ちました きっと敬三も大阪でホームへ出てますよ」
とみ・・・「そう」
紀子・・・「お母さま 汽車ん中でよくおやすみんなれるといいですけど……」
とみ、微笑む。
周吉・・・「いやァ この人ァどこででもよう寝てよ」
とみ・・・「寝られェでも 明日のお昼過ぎにァ着くんじゃから……」
志げ・・・「お父さん あんまりお酒あがっちゃだめよ」
周吉・・・「いやァ ゆうべは久しぶりに友達に会うたもんじゃけえ……」
志げ・・・「もう直りました?−
 頭痛−」
周吉・・・「ああ もうええ」
幸一・・・「まあ あんまり飲まんことですね」
周吉・・・「いやァ」
とみ・・・「でももう今度でこりたでしょうよ」
周吉・・・「いやァ…… どうもいろいろやっきゃあかけて おかげで楽しかったよ」
とみ・・・「みんな忙しいのに ほんまにお世話んなって でも みんなにも会ぇたし これでもう もしものことがあっても わざわざ来てもらわァでもええけえ……」
志げ・・・「なにお母さん そんな心細いこと まるで一生のお別れみたいに」
とみ・・・「ううん ほんまよ ずいぶん遠いいんじゃもんのう」
列車の改札を知らせるアナウンスが流れる。

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 〜大阪〜

車中で、とみが気分が悪くなって三男の敬三(大坂志郎)の所に老夫婦は寄る。
敬三は職場で先輩(安部徹)にその時のことを話している。
敬三・・・「貸ぶとん屋からふとん借りたり お医者さん2回も呼びに行ったり えらい腐りや」
先輩・・・「ふうん で どうやねん」
敬三・・・「もうよろしいんじゃ 今朝はもうケロッとしてますわ」
先輩・・・「いくつやねん お母ァん」
敬三・・・「さァ いくつやったかいなァ もう六十の余は過ぎてますわ
 7やったかいな 8やったかな」
先輩・・・「年やなァ 大事にせなあかんで 孝行したい時分に親はなしや」
敬三・・・「そうですなァ
 さればとて 墓にふとん も着せられずや ハハ」

敬三の家。
周吉・・・「あんまり汽車が混んどったけえ 酔うたんじゃろう」
とみ・・・「そうでしょうか」
とみに湯呑を渡しながら、
周吉・・・「もうええかァ?」
と言う周吉。
湯呑を受け取り、
とみ・・・「へえ もうすっかり」
と言い薬を飲むとみ。
周吉が団扇でとみを扇いでやる。
とみ・・・「これならもう今晩でも去なれまさ」
周吉・・・「ウム まァもう一晩やっきゃあになって 明日のすいた汽車で帰ろうよ」
とみ・・・「へえ……
 京子が心配しとるでしょうなァ」
周吉・・・「ウーム」


『東京物語』笠智衆、東山千栄子

とみ・・・「でも 思いがけのう大阪へも降りて 敬三にも会えたし わずか10日ほどの 間に子供らみんなに会えて……」
周吉・・・「ウム」
とみ・・・「孫らも大きうなっとって……」
周吉・・・「ウーム よう昔から 子供より孫がかわいい言うけえどー
 お前ァ どうじゃった?」
微笑みながら、
とみ・・・「お父さんは?」
と言うとみ。
周吉・・・「やっぱり子供のほうがええのう」
とみ・・・「そうですなァ」
微笑むとみ。
周吉・・・「でも 子供も大きうなると変るもんじゃのう
 志げも子供の時分はもっと優しい子だったじゃにゃァか」
とみ・・・「そうでしたなァ」
周吉・・・「おなごの子ァ嫁にやったらおしまいじゃ」
とみ・・・「幸一も変りやんしたよ あの子ももっと優しい子でしたがのう」
周吉・・・「なかなか親の思うようにァいかんもんじゃ……」
二人、笑う。
周吉・・・「欲を言や切りァにゃァが まァええほうじゃよ」
とみ・・・「ええほうですとも よっぽどええほうでさ わたしらァ幸せでさあ」
周吉・・・「そうじゃのう……
 まァ幸せなほうじゃのう」
微笑みながら、
とみ・・・「そうでさ 幸せなほうでさ……」
と言い、髪に手をやるとみ。
とみを心配している周吉は、そおっと団扇で扇いでやる。

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 〜電報〜

幸一の家。
文子・・・「満足なすったかしら」
と言う文子。
幸一・・・「そりゃ満足してるよ ほうぼう見物もしたし−
 熱海にも行ったしね」
文子・・・「そうねえ」
幸一・・・「とうぶん東京の話でもちきりだろう」
と、 幸一たちが周吉たちのことを話している所に志げから電話が掛かる。
尾道の末娘京子からとみが危篤と電報が来たというのだ。
電話に出ている時、幸一の所にも電報が来る。
 幸一が「両親は満足して帰っただろう」と話しているのと周吉たちが感じる満足に開きがある。

幸一の所へ来た志げが、
志げ・・・「お母さんあんなに元気だったのにねえ
 よっぽどお悪いのかしら?」
と言う。
幸一・・・「ウーム よかないんだろうね
 危篤だっていうんだから」
志げ・・・「やっぱり行かなきゃいけないかしら−?」
幸一・・・「ウム」
志げ・・・「東京駅でみょうなこというと思ったのよ もしものことがあっても来てくれな くっていいなんて
 いやなこと言うと思ったら やっぱり虫が知らせたのね」
幸一・・・「ウーム しかし行かなきゃいかんだろう」
志げ・・・「そうねえ 危篤っていうんだから
 行くんなら 早いほうがいいわね こないだの汽車どうかしら?」
幸一・・・「ウーム
 しかし
 あとのことも頼んでいかなきゃならんからな」
志げ・・・「あたしもそうなのよ
 忙しいんだけどなァ ここんとこ……」
幸一・・・「とにかく今夜の夜行でたつことにするか」
志げ・・・「そうね どうせ行くんなら じゃ そういうことにして 帰ります」
幸一・・・「ああ」
志げは帰り掛けるが戻ってきて、
志げ・・・「ちょっと兄さん
と言う。
幸一・・・「なんだい」
志げ・・・「喪服どうなさる? 持ってく?」
幸一・・・「ウーム…… 持ってったほうがいいかもわからんな」
志げ・・・「そうね 持っていきましょうよ 持ってって役に立たなきゃ こんな結構なこ とないんだもの」
幸一・・・「そりゃそうだ」
志げ・・・「じゃ東京駅 こないだんとこで あたし早目に行ってます」
幸一・・・「ああ」
東京のみんなは尾道へ向かう。

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 〜尾道 帰宅〜

周吉が団扇で扇ぎながら脳溢血で倒れ意識がないとみを看病している。
とみの寝息がやみ、わずかに動く。
周吉・・・「おお どうした? ……ウム?」
とみの顔を拭いてやりながら、
「暑いか?……
 東京から 子供らが みんな来てくれるそうじゃ…… いま京子が迎いに 行ったで…… もうすぐ来る もうすぐじゃ……」
と、とみに話し掛ける周吉。
再びとみの寝息がする。
再び団扇で扇いでやる周吉。
とみの寝息が続く。
団扇で扇ぎながら、
周吉・・・「直るよ…… 直る 直る…… 直るさァ……」
と言う周吉。


『東京物語』笠智衆

 周吉が「直る」を反復させる。
 その言葉が願いから、現実を受け止めてなくてはならない悲しみに変って行く。

東京から幸一たちが駈けつけてくる。
とみは小康状態である。
往診した医者と幸一が容態を診ながら話している。
医者が帰る。
見送る紀子。

幸一が周吉と志げを隣の部屋へ誘い、とみの容態を話す。
幸一・・・「明日の朝までも てばいいと思うんですが……」
と、よくないと言う。
志げ・・・「明日の朝?」
幸一・・・「ウム −明け方 までもてばいいと思うんだ」
周吉・・・「そうか……いけんのか……」
志げが泣き出す。
幸一・・・「お母さん 六十 八でしたねえ」
周吉・・・「ああ…… そうか……いけんのか……」
幸一・・・「僕はそう思いま す」
周吉・・・「そうか……
 おしまいかのう……」
幸一・・・「では……」
とみの方へ行く幸一。
泣き続ける志げ。
一点を見詰めている周吉。
周吉・・・「……」
とみの寝息が続く。

泣き続ける志げ。
周吉・・・「うむ 敬三も間に合わんか……」
と言う周吉。
 現実を受け止める。

とみは周吉たちにみとられて息を引き取る。

幸一たちがとみの傍に座っている。
志げ・・・「人間なんてあっけないもんね…… あんなに元気だったのにねえ…… 東京 に出て来たのも
 虫が知らせたのよ」
幸一・・・「うむ……
 そうだなァ……」
志げ・・・「でも 出て来てくれてよかったわ −元気な顔も見られたし…… いろいろ話 もできたし……
 紀子さん あんた喪服持って来た」
紀子・・・「いいえ……」
志げ・・・「そう 持ってくりゃよかったのにねえ」
京子(香川京子)に、
「京子 あんた あるの?」
と言う志げ。
京子・・・「ううん ない」
志げ・・・「じゃ借りなきゃだめね どっかで 借りときなさい 紀子さんのもいっしょ に」
京子、頷く。
志げ・・・「でも大往生よ お母さんちっとも苦しまないで死んじゃったんだもの……」
玄関の開く音がする。
「敬三じゃないかしら?」
京子が玄関へ行く。
敬三・・・「どうや?」
京子、泣き出す。
敬三・・・「そうか…… 間に合わなんだか…… そうやと思うたんや……」
京子、泣き続ける。
幸一・・・「おう……」
敬三・・・「こんちは
 あいにくと松阪の方に出張しとりましてな 遅れまして−
 どうもすんません
 電報もろうた時おらんのや 姉ちゃん……」
志げ・・・「そう」
敬三・・・「ほんまにえらいことやったなァ…… いつやったんや」
志げ・・・「今朝…… 3時15分……」
敬三・・・「そうか……
 8時40分の鹿児島行きやったら間におうたんやなァ……」
幸一・・・「敬三 お母さん −おだやかな顔だよ」
敬三、白布を取る。
敬三・・・「すいませなんだなァ……」
志げ、泣き出す。
幸一・・・「あ お父さん は?」
志げ・・・「ああ どこかしら−?」
紀子が探しに行く。

高台に佇み、明け染める海を見詰めている周吉の所へ行く紀子。
紀子・・・「お父さま−」
周吉・・・「ああ……」
紀子・・・「敬三さんお見えんなりました」
周吉・・・「そうか……
 ああ ……きれいな夜明 けだったァ…… ああ……今日も暑うなるぞ……」
 とみを亡くした悲しみに耐えようとするかのように心静かにいう周吉。
 そして、小津監督はどんなに悲しい出来事があっても世界は存続していることを周吉の台詞で伝えている。


『東京物語』原節子、笠智衆

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 〜葬儀〜

続経と木魚の音がする。
周吉らが座っている。


『東京物語』原節子ら

敬三が場を離れ縁側に座り込む。
墓地が映し出される。
 それは敬三の胸の内も映し出している。
敬三・・・「……」
敬三が涙ぐんでいる。
紀子が後を追ってきて、
紀子・・・「どうなすったの?」
と言う。
敬三・・・「どうも木魚の音いかんですわ」
紀子・・・「どうして?」
敬三・・・「なんや知らん お母さんがポッコポッコ小ッそなっていきよる……僕 孝行せなんだでなァ……」
紀子・・・「……
 あの−
 もうお焼香ですけど……」
敬三・・・「いま死なれたらかなわんわ −さればとて墓にふとんも着せられずや……」
 小津監督は孝行をしていないと言う末っ子の敬三に「墓にふとんも着せられず」と繰り返させる。
 ここにも「親子とは」と問いかけている。
 そして、再度墓地を映し出すことによってとみが埋葬されることを知らせ、敬三が言った「墓にふとん も着せられず」という言葉を反復させるような映像になる演出を見せる。
 上手い。


『東京物語』香川京子、原節子

葬儀後。
昔話をしながら食事をしている。
周吉が席を立ってゆくと、
志げ・・・「でも何だわねえ−
 そう言っちゃ悪いけど どっちかって言えば お父さん先のほうがよかったわねえ」
と言う志げ。
幸一・・・「ウム」
志げ・・・「これで京子でもお嫁に行ったら お父さん一人じゃやっかいよ」
幸一・・・「ウーム まァねえ」
志げ・・・「お母さんだったら東京へ来てもらったって どうにだってなるけど
 ねえ京子 お母さんの夏帯あったわね? ネズミのさ−
 露芝の……」
京子・・・「ええ」
志げ・・・「あれあたし 形見にほしいの
 いい? 兄さん」
幸一・・・「ああ いいだろ」
志げ・・・「それからね−
 こまかいかすりの上布 あれまだある?」
京子・・・「あります」
志げ・・・「あれも欲しいの しまってあるとこ わかってる?」
京子・・・「ええ」
志げ・・・「出しといてよ」
京子・・・「ええ」
周吉が戻ってくる。
周吉・・・「ああ−」
座って、
周吉・・・「まァお蔭さんで これですっかりすんだ
 みんな忙しいのに遠いいとこをわざわざ来てくれて−
 すまなんだ −ありがとう」
と会釈する。
幸一らも会釈する。
周吉・・・「幸一にもみてもらえたし お母さんも満足じゃ……」
幸一・・・「いやァ どうも お役に立ちませんで……」
周吉・・・「ただのう こんなことがあったんじゃよ こないだ東京へ行った時 熱海でお 母さん−
 ちょっとフラフラッとしてのう」
幸一・・・「はあ−?」
周吉・・・「いやァ たいしたこたァなかったんじゃが……」
志げ・・・「そう じゃあなぜお父さん それおっしゃらなかったの?
 兄さんにだけでもおっしゃっときゃよかったのに」
周吉・・・「そうじゃったなァ……」
幸一・・・「しかし それが 原因じゃないよ
 お母さん太ってもおられたし やっぱり急に来たんだよ」
志げ・・・「そう
 でもなんだかほんとに夢みたい……
 兄さん あんた いつ帰る?」
幸一・・・「ウム そうゆっ くりもしてられないんだが……」
志げ・・・「あたしもそうなのよ どお? 今晩の急行−」
幸一・・・「ああ −敬三は どうするんだ?」
敬三・・・「僕はまだよろしいんや」
幸一・・・「そうか
 じゃ今夜帰るか」
志げ・・・「ええ
 紀子さんまだいいんでしょ もう少しお父さんのとこにいてあげてよ」


『東京物語』杉村春子、笠智衆、山村聰、大坂志郎、原節子、香川京子

紀子・・・「ええ」
周吉・・・「いやァ 忙しいのにもうええよ」
敬三・・・「僕もいっしょに帰ろかな 出張の報告もまだしとらんし 野球の試合もあんのや−帰りますわ」
周吉・・・「そうかい 忙しいのに来てくれて……」
志げ・・・「でもお父さん これからお寂しいわね」
周吉・・・「いやァ じきなれるよ」
志げ・・・「ちょいと京子 あたしにご飯……」
京子・・・「はい」
志げ・・・「ねえ敬三 帰り 駅へまわって晩の切符買っといてよ」
敬三・・・「ああ 僕にもメシ」
京子・・・「はい」
志げ・・・「すいてりゃいいけどねえ」
志げ
・・・「お父さん あんまりお酒飲んじゃだめよ」

周吉・・・「いやァ だいじょうぶだよ
 そうかい もうみんな帰 るかい− いやァ……」
駈けつけたみんなは悲嘆にくれたが、葬儀を終えると幸一たちはそそくさと帰って行った。
戦死した次男の嫁、紀子だけ残った。

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 〜数日後〜

紀子・・・「はい お弁当−」
京子・・・「どうもすいません」
紀子・・・「長いことおじゃましちゃって……
 夏休みに京子さん 東京へいらっしゃいよ」
京子・・・「お姉さん どうしても今日お帰りんなるん?」
紀子・・・「ええ もう帰らないと」
京子・・・「そう
 あたしお見送りできないけえど……」
紀子・・・「ううん いいのよ
 ほんとにいらっしゃいよね 夏休み」
京子・・・「うん
 でもよかった 今日までお姉さんにいていただいて
 兄さん姉さんも−
 もう少しおってくれてもよかったと思うわ」
若い京子は兄姉達の非人情が嫌だった。
紀子はそんな京子に、
紀子・・・「でも みなさんお忙しいのよ」
と言う。
京子・・・「でも ずいぶん勝手よ 言いたいことだけ言うて さっさと帰ってしまうんで すもの」
紀子・・・「そりゃ仕様がないのよ お仕事があるんだから」
京子・・・「だったらお姉さんでもあるじゃありませんか 自分勝手なんよ」
紀子・・・「でもねえ京子さん」
京子・・・「ううん お母さんが亡くなるとすぐ お形見ほしいなんて あたしお母さんの 気持ち考えたら とても悲しうなったわ 他人同士でももっとあたたかいわ 親子ってそんなもんじゃないと思う」
紀子・・・「だけどねえ京子さん あたしもあなたぐらいの時にはそう思ってたのよ
 でも子供って大きくなると だんだん親から離れていくもんじゃないかしら
 お姉さまぐらいになると もうお父さまお母さまとは別の お姉さまだけの 生活ってものがあるのよ お姉さまだって 決して悪気であんなことなすったんじゃないと思うの
 誰だってみんな自分の生活がいちばん大事になってくるのよ」
京子・・・「そうかしらん でもあたしそんな風になりたくない それじゃあ親子なんてずいぶんつまらない」
紀子・・・「そうねえ…… でも みんなそうなってくんじゃないかしら…… だんだんそうなるのよ」
京子・・・「じゃお姉さんも?」
紀子・・・「ええ なりたかないけど やっぱりそうなってくわよ」
京子・・・「いやァねぇ 世の中って……」
紀子・・・「そう いやなことばっかり……」
京子・・・「……」
紀子から大人の生活の厳しさを言い聞かされ、京子はこれから踏み入れる世界を思い気が重くなる。
京子・・・「じゃ お姉さんあたし……」
紀子・・・「そお?
 いってらっしゃい」
庭いじりしている周吉に向かって、
京子・・・「お父さん 行ってまいりまーす」
と言う京子。
京子
・・・「じゃお姉さん お大事に」

紀子・・・「ええ ありがとう あなたもね」
京子・・・「うん」
紀子は京子の手を両手で包み込みながら、
紀子・・・「きっといらっしゃいね 夏休み」
と言う。
京子・・・「うん」
優しい瞳の紀子が京子の髪に手を持ってゆく。
京子・・・「じゃ さよなら」
紀子・・・「さよなら」
京子・・・「行ってまいります」
京子玄関口へ。
京子・・・「さよなら」
紀子・・・「さよなら」
京子を見送り、後片付けをする紀子。
庭いじりを終えた周吉が入って来る。
周吉・・・「京子出かけたか」
紀子・・・「ええ」
紀子は後片付けをしていたのをとめ、

紀子・・・「お父さま−」
と声掛け、周吉の前に正座して、
「わたくし今日お昼からの汽車で……」
と言う。
周吉・・・「そう 帰るか」
紀子・・・「はあ」
周吉・・・「長いことすまなんだなァ」
周吉も座る。
紀子・・・「いいえ お役に立ちませんで」
周吉・・・「いやァ おってもろうて助かったよ」
紀子・・・「いいえ」
周吉・・・「お母さんも喜んどったよ−
 東京であんたんとこへ泊めてもろうて いろいろ親切にしてもろうて……」
紀子・・・「いいえ なんにもおかまいできませんで……」
周吉・・・「いやァ お母さん言うとったよ あの晩がいちばんうれしかったいうて わたしからもお礼を言うよ ありがと」
紀子・・・「いいえ
 ……」

周吉・・・「お母さんも心配しとったけえど−
 あんたのこれからのことなんじゃがなァ…… やっぱりこのままじゃいけん よ なんにも気兼ねはないけえ ええとこがあったら いつでもお嫁にいっておくれ
 もう昌二のこたァ忘れてもろうてええんじゃ
 いつまでもあんたにそのままでおられると かえってこっちが心苦しうなる  −困るんじゃ」
紀子・・・「いいえ そんなことありません」
周吉・・・「いやァそうじゃよ あんたみたいなええ人ァない言うて お母さんもほめとったよ」
紀子・・・「お母さま わたくしを買いかぶってらしったんですわ」
周吉・・・「買いかぶっとりゃァしェんよ」
紀子・・・「いいえ わたくし そんなおっしゃるほどのいい人間じゃありません お父さまにまでそんな風に思っていただいてたら わたくしのほうこそかえって心苦しくって……」
周吉・・・「いやァ そんなこたァない」
紀子は心境の一切を周吉に打ちあける。
紀子・・・「いいえ そうなんです わたくしずるいんです お父さまやお母さまが思ってらっしゃるほど そういつもいつも昌二さんのことばかり考えてるわけじゃありません」
周吉・・・「ええんじゃよ 忘れてくれて」
紀子・・・「でも このごろ 思い出さない日さえあるんです
 忘れてる日が多いんです
 わたくし いつまでもこのままじゃいられないような気もするんです この ままこうして一人でいたら いったいどうなるんだろうなんて−
 夜中にふと考えたりすることがあるんです 一日一日が何事もなく過ぎてゆ くのがとっても寂しいんです どこか心の隅で 何かを待ってるんです
 ずるいんです」
周吉・・・「いやァ ずるうはない」
紀子・・・「いいえ ずるいんです
 そういうこと お母さまには申し上げられなかったんです」
周吉・・・「ええんじゃよ それで やっぱりあんたはええ人じゃよ 正直で……」
紀子・・・「……
 とんでもない」
紀子は顔を背け俯く。
周吉は立ち上がり懐中時計を持ってくる。
周吉・・・「こりゃァ お母さんの時計じゃけえどなァ 今じゃこんなものもはやるまいが −
 お母さんがちょどあんたぐらいの時から持っとったんじゃ」
懐中時計を差し出しながら、
「形見にもろうてやって おくれ」
と言う。


『東京物語』笠智衆、原節子

紀子・・・「でもそんな……」
周吉・・・「ええんじゃよ もろうといておくれ」
紀子の前に置く。
「いやァ あんたに使う てもらやァ お母さんもきっとよろこぶ なあ−
 もろうてやっておくれ」
周吉の気持ちが嬉しく泣き出す紀子。
紀子・・・「すいません……」
周吉・・・「いやァ…… お父さん ほんとにあんたが気兼ねのう さきざき幸せになって くれることを祈っとるよ− ほんとじゃよ」
紀子、顔を両手で覆い泣く。
周吉・・・「妙なもんじゃ…… 自分が育てた子供より−
 いわば他人のあんたのほうが よっぽどわしらにようしてくれた
 いやァ ありがと」
周吉は頭を下げる。
紀子も顔を両手で覆い泣きながら頭を下げる。
泣き続ける紀子。

児童の合唱する♪夕べの鐘が流れて来る。

♪昔の人 今やいずこ
 訪れ来て たたずめば
 黄昏ゆく 空をたどり
 通いて来る 鐘の声

 家鳩の羽ばたきに
 乱れて消ゆ 軒の妻

小学校の教室。
生徒たちがノートに書き取りをしているのを見て回っている京子。
生徒が落としているものを京子が拾って机に戻してやる。
 小津作品で使われる場面だ。
 小津監督は小学校の代用教員をしていた時期があったので、監督の中で教える側と学ぶ側のイメージがあるのだろう。
 この作品ではないが黒板に向かっている教師の後ろで生徒が悪戯しているのもよく使われる。
そろそろ紀子の乗った列車が通る時刻だと思って窓辺へ行き外を見ている京子。

♪みどりの風 岸をそよぐ…

合唱が列車の驀進する音でかき消される。
紀子の乗った汽車が映し出される。
車中で紀子は周吉に打ちあけたことを考えている。
紀子・・・「……」
周吉から貰ったとみの形見の時計をバッグから取り出す。
形見の時計を両手で包み込み、
紀子・・・「……」
紀子は前を向き東京へ向かう。

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 〜エピローグ〜

周吉が背中を丸くして団扇で扇ぎながらひとりで座っている。
 オープニングと同じ場所に。
 だが、とみが座っていた所は空いている。
隣の細君が通りかかり声を掛けながら会釈する。
細君・・・「ああ」
周吉も会釈する。
周吉・・・「いやァ」
細君・・・「みなさんお帰りんなって お寂しうなりましたなァ」
周吉・・・「いやァ……」
細君・・・「ほんとうに急なこってしたなァ……」
周吉・・・「いやァ…… 気のきかん奴でしたが こんなことなら 生きとるうちに もっ と優しうしといてやりゃあよかったと思いますよ……」
細君・・・「なあ」
周吉・・・「一人になると急に日がなごうなりますわい……」
細君・・・「まったくなァ……お寂しいこってすなァ」
隣の細君がお辞儀をして去る。
周吉・・・「いやァ……」
周吉もお辞儀する。
身ひとつの侘びしさをしみじみ感じ、
周吉・・・「あああ……」
と溜息をつく。

尾道の景色が映し出されポンポン蒸気の音が聞こえる。
再 び周吉が丸くなってひとりで座っている姿が画面に。
周吉・・・「……」
団扇で虫を払いながらひとりで座っている周吉。
周吉・・・「……」
周吉の後ろの空間と共に強調させる映像となる。


『東京物語』笠智衆

再び尾道の港になり、ポンポン蒸気船が汽笛を鳴らしながらゆっくり進んで行く。
それぞれの胸に轟かせるかのように。

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 何と心の奥に響いて来る作品だろう。
 どのショットも忘れられない。
 この作品に出会えて幸せだ。

 私はこの作品を龍安寺の石庭を観た時の感動と結び付けている。
 龍安寺の石庭は白砂に15個の自然石が配置されていて、その石に付いた苔までもがピ〜ンと張り詰めた空間の美になっている。
 この作品の行間の思いの深さの美しさも、何といったらよいのかと思うほど感銘を受ける。
 共通のものを感じてしまうのだ。
 小津監督の墓碑に刻まれた「無」が印象深いからかもしれないが…
 
『東京物語』の 脚本はレオ・マッケアリー監督『明日は来らず』Make Way for Tomorrow(1937)ジョセフィン・ローレンス原作から影響を受けた野田高梧と小津安二郎の合作によるオリジナル作品である。
『東京物語』の ネガは撮影後火事で消失し、オリジナルネガはない。
全国公開に先立ち松竹がネガの 焼き増しを発注した会社が火事を起こしたためネガフィルムが灰と化し、プリントはポジから取られた。
よって、監督自身が意図した本来の映像とは異なった状態でしか見る事が出来ない。(キネマ旬報臨時増刊 (1995)No.1176 11/13号『日本映画オールタイムベストテン』映画生誕100年記念特別号 参考)
※ ほとんどの絵をフィックスで撮影、更には人物を向かい合わせるのを避け、イマジナリーラインまでも無視。
ローアングル構図や徹底的に計 算された配置でズームもほとんどなし、それが小津作品の超個性的な手法と言われている。
※児童(ひばり児童合唱団)の合唱する♪夕べの鐘はスティーヴ ン・フォスターの♪主人は冷たい土の中(Massa's in de Cold, Cold Ground)が元歌で、訳詞は作詞者で♪主人は 眠る♪春風などあるそうだ。
♪夕べの鐘の歌 詞は、

♪昔の人 今やいずこ
 訪れ来て たたずめば
 黄昏ゆく 空をたどり
 通いて来る 鐘の声

 家鳩の 羽ばたきに
 乱れて消ゆ 軒の妻
 

♪みどりの風 岸をそよぐ
 川のほとり さまよえば
 黄昏ゆく 路地を越えて
 おとない来る 鐘の声

 牧の童が 笛の音に
 消えては行く 村はずれ

で、吉丸一昌作詞であるという。
『東京物語』が公開された当時に、音楽の教科書に掲載され、昭和20年代の小学校高学年の教科書で(♪春風と並んで)使われていたそうだ。(1984.3.30「リプロ・シネマテーク『小津安二郎 東京物語』リプロポート」 参考)

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『東京物語』原節子、香川京子


『東京物語』原節子、香川京子


『東京物語』撮影スナップ 原節子、小津安二郎監督ら


『東京物語』

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1992
 
[評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテン]英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) Aゲームの規則(ジャン・ルノワール) B東京物語(小津安二郎) Cめまい(ア ルフレッド・ヒッチコック) D捜索者(ジョン・フォード) Eアタランタ号(ジャン・ヴィゴ)
E裁かるるジャンヌ (カール・テオドール・ドライエル)
E大地のうた(サタジット・レイ)
E戦艦ポチョムキン(セルゲイ・エイゼンシュテイン)
F
-
G
-
H
-
I2001年宇宙の旅(スタ ンリー・キューブリック)
※1992.11.16 英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌は、評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテンを発表。
第3位に『東京物語』が入った。
その後も、常に上位に入っている。

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1995
 
[日本映画オールタイ ム・ベストテン]映画100年特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@東京物語(小 津安二郎) A七人の侍(黒澤 明) B浮雲(成瀬 巳喜男) C人情紙風船(山中 貞雄) D西鶴一代女(溝口 健二) E飢餓海峡(内田 吐夢) F羅生門(黒澤 明) G生きる(黒澤 明) H丹下左膳餘話・百万両の壷 (山中 貞雄) I幕末太陽傳(川島 雄三)

@小津安二郎 A黒澤明 B溝口健二 C大島渚
C成瀬巳喜男
D
-
E市川崑 F川島雄三 G内田吐夢 H山中貞雄
H木下恵介
H岡本喜八
H鈴木清順
I
-

@森雅之 A三国連太郎 B笠智衆 C三船敏郎 D高倉健 E市川雷蔵 F石原裕次郎 G松田優作
G勝新太郎
H
-
I志村喬
I阪東妻三郎
I大河内傳次郎

@原節子
@山田五十鈴
A
-
B高峰秀子 C田中絹代 D若尾文子 E京マチ子 F岸恵子 G藤純子 H香川京子 I久我美子
I吉永小百合
※キネマ旬報 臨時 増刊 1995.11.13号
1995年の[日本 映画オールタイム・ベストテン]映画100年特別企画は、映画100年を総括する特別企画として、評論家・作家・ジャーナリストなど104人の選考委員の 全体点数(各個人選出ベストテンの第1位を10点、第2位を9点、以下第10位を1点)を集計、合計数の多い作品から抽出するという方法で、映画史を通じての日本映画ベストテンを発表した。

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1999
 
[映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キ ネマ旬報創刊80周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@七人の侍(黒澤 明) A浮雲(成瀬巳喜男) B飢餓海峡(内田吐夢)
B東京物語(小 津安二郎)
C
-
D幕末太陽傳(川島雄三)
D羅生門(黒澤 明)
E
-
F赤い殺意(今村昌平) G仁義なき戦い(シリーズ) (深作欣二)
G二十四の瞳(木下恵介)
H
-
I雨月物語(溝口健二)

@第三の男(キャロル・リード) A2001年宇宙の旅(スタ ンリー・キューブリック) Bローマの休日(ウィ リアム・ワイラー)
Cアラビアのロレンス(デ ヴィッド・リーン)
D風と共に去りぬ(ヴィクター・フレミング) B市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) F駅馬車(ジョ ン・フォード)
F禁じられた遊び(ルネ・ク レマン)
Fゴッドファーザー(フラン シス・フォード・コッポラ)
F(フェ デリコ・フェリーニ)
G
-
B
-
I
-
※1999
[映画人が選ぶオールタイム・ベスト テン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊80周年記念特別企画は、従来の映画評論家を中心にしたアンケートとは異なり、監督、プロデューサー、脚本家、撮影監督など、実際に日本 映画の製作に携わる映画人(140人、144人)に、それぞれのベ スト作品10本を順不同で選んでもらう選考方法。(1999年10月下旬号、10 月上旬号においてアンケート結果を発表)

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2000
 
[20 世紀の映画スター ベストテン]
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位



@三船敏郎 A石原裕次郎 B森雅之 C高倉健 D笠智衆 E市川雷蔵 F勝新太郎
F阪東妻三郎
G
-
H渥美清
H中村錦之助
H森繁久弥
I
-



@原節子 A吉永小百合 B京マチ子
B高峰秀子
C
-
D田中絹代 E山田五十鈴 F夏目雅子 G岸恵子
G若尾文子
H
-
I岩下志麻
I藤純子



@ゲーリー・クーパー Aチャールズ・チャップリン
Aジョン・ウェイン
B
-
Cマーロン・ブランド
Cアラン・ドロン
Cジャン・ギャバン
D
-
E
-
Fハンフリー・ボガート
Fスティーブ・マックイーン
G
-
Hショーン・コネリー
Hポー ル・ニューマン
I
-



@オードリー・ヘプバーン Aマリリン・モンロー Bイングリッド・バーグマン Cヴィヴィアン・リー Dマレーネ・ディートリヒ Eグレース・ケリー Fフランソワーズ・アルヌー ル
Fベティ・デイビス
Fジョディ・フォスター
Fグレタ・ガルボ
Fアンナ・カリーナ
Fジャンヌ・モロー
Fロミー・シュナイダー
Fエリザベス・テーラー
G
-
H
-
I
-
※2000.6.1 朝日新聞記事
映画誌『キネマ旬報』が、映画評論家や俳優、脚本家ら74人に回答を求めて「20世紀の映画スター」を選出し、ランキングを発表した。

2002
 
[評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテン]英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) Aめまい
(アルフレッド・ヒッチコック)
Bゲームの規則(ジャン・ルノワール) Cゴッドファーザー(1972)/
ゴッドファーザーPart2
(1974)
D東京物語(小津安二郎) E2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック) F戦艦ポチョムキン(セルゲイ・エイゼンシュテイン)
Fサンライズ(F・W・ムルナウ)
G
-
H8 1/2(フェデリコ・フェリーニ) I雨に唄えば(ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン)
※2002 英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌は、評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテンを発表。
第5位に『東京物語』が入った。

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2009
 
[映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キ ネマ旬報創刊90周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

@東京物語(小津安二郎) A七人の侍(黒澤 明) B浮雲(成瀬巳喜男) C幕末太陽傳(川島雄三) D仁義なき戦い(シリーズ) (深作欣二) E二十四の瞳(木下恵介) F羅生門(黒澤 明)
F丹下左膳餘話・百万両の壷 (山中 貞雄)
F太陽を盗んだ男(長谷川和 彦)
G
-
H
-
I家族ゲーム(森田芳光)
I野良犬(黒澤明)
I台風クラブ(相米慎二)

@ゴッドファーザー(フランシス・フォード・コッポラ) Aタクシー・ドライバー(マー チン・スコセッシ)
Aウエスト・サイド物語(ロ バート・ワイズ)
B
-

C第三の男(キャロル・リード)
D勝手にしやがれ(ジャン・ リュック・ゴダール)
Dワイルドバンチ(サム・ペ キンパー)
B
-

F2001年宇宙の旅(スタ ンリー・キューブリック)
Gローマの休日(ウィリアム・ワイラー)
Gブレードランナー(リド リー・スコット)
B
-
I駅馬車(ジョ ン・フォード)
I天井棧敷の人々(マルセル・カルネ)
I(フェ デリコ・フェリーニ)
Iめまい(ア ルフレッド・ヒッチコック)
Iアラビアのロレンス(デ ヴィッド・リーン)
I暗殺の森(ベルナルド・ベ ルトルッチ)
I地獄の黙示録(フランシ ス・フォード・コッポラ)
Iエル・スール(ビクトル・ エリセ)
Iグラン・トリノ(クリン ト・イーストウッド)
※2009.11
[映画人が選ぶオールタイム・ベスト テン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊90周年記念特別企画は、日本編は114人、外国編は121人の映画評論家や作家、文化人の投票を集計した。

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2012
 
[評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテン]英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位






部門

@めまい(ア ルフレッド・ヒッチコック) A市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) B東京物語(小津安二郎) Cゲームの規則(ジャン・ルノワール) Dサンライズ(F・W・ムルナウ) E2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック) F捜索者(ジョン・フォード) Gこれがロシアだ(シガ・ヴェルトフ) H裁かるるジャンヌ(カール・テオドール・ドライエル) I8 1/2(フェデリコ・フェリーニ)

N晩春(小 津安二郎)
P七人の侍(黒澤 明)
26位-羅 生門(黒 澤 明)
50位-雨月物語(溝口健二)
※2012 英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌は、846人の評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテンを発表。

[監督が選んだ映画史上最良の作品ベストテン]英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌

/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位





部門

@東京物語(小津安二郎) A2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック) B市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) C8 1/2(フェデリコ・フェリーニ) Dタクシー・ドライバー(マー チン・スコセッシ) E地獄の黙示録(フランシス・フォード・コッポラ) Fゴッドファーザー(フランシス・フォード・コッポラ)
Fめまい(ア ルフレッド・ヒッチコック)
G - H(アンドレイ・タルコフスキー) I自転車泥棒(ヴィクトリオ・デ・シーカ)
※2012 英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌は、358人の監督が選んだ映画史上最良の作品ベストテンを発表。
※2012.8.3日本経済新聞記事より
[世界で最も優れた映画50選]世界の映画監督358人が選ぶ(監督部門)と、世界の批評家846人が選ぶ(批評家部門)を、英国協会発行「サイト・アンド・サランド」誌が20012.8.2発表。10年ごとに発表される映画50選である。(英国映画協会 公式サイト http://www.bfi.org.uk/news/50-greatest-films-all-time )

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