小津安二郎
  
(1903.12.12 -1963.12.12)(東京市深川区万年町生まれ)
 
プロフィール 独自の作品解釈 年譜

〜プロフィール〜

 小津作品のメッセージは世界共通のものであるから支持される
 長年、洋画ファンだった私に、1990年頃から邦画も中々いいじゃないかと思わせたのが小津作品だ。
 小津作品には 私がいつも映画から感じ取りたい眼差しを受け取れるような気がする。
 そして、何よりも小津監督は超個性的だ。
 戦後の作品の紀子3部作と言われている『晩春』(1949)『麦秋』(1951)『東京物語』(1953)は、勿論面白く秀作だが、戦前のサイレント作品の『生れてはみたけれど』(1932)も素晴らしい。
 会社員ものを描いた作品で最高峰に達している。
 ある場面を2000年に初めて観た時に、私は嗚咽した。
 そして、涙が溢れ出し止まらなかった。
 その場面については、この作品の重要なポイントなので触れない。
 観た人は、どの場面か直ぐピーンとくるところだ。
 2003年、小津監督の生誕100年を記念して現存する全作品をNHKBSで連日放送していた。
 それを企画した関係者に感謝する。
 ただ、ひとつ残念に思ったことがあった。
 『生れてはみたけれど』の予告で、先ほどの重要なポイントの場面を入れていたことだ。
 この作品を初めて観る人は、予告なしの方が感銘を受けると思う。
 私は『生れてはみたけれど』を観て小津監督の凄さを改めて知った。
 他、『秋刀魚の味』(1962)『秋日和』(1960)『浮草』(1959)『東京暮色』(1957)『長屋紳士録』(1947)『一人息子』(1936)や、サイレント作品の『出来ごころ』(1933)『東京の合唱(コーラス)(1931)などもいい。

 小津作品は日常の出来事の中で誰もが向き合っていく別れに触れ、その時、「親は、子は、夫は、妻は、兄弟は、友は…」と投げかける
 監督が評価され続けるのは(特にヨーロッパにおいて)観る人のそれぞれの心情を呼び起こし、感動させ共感させるからだと思う。
 そして、独自のローアングルで撮影されることによって、内面がより一層映し出される
 それは女優の所作の美しさも際立たせる
 それが、正に小津藝術の世界だ。
 

 「品行は直せても 品性は直らない」の心情を語ってきた小津監督は、美意識を持ち凛とした作品を作り続けた。
 監督の葬式には喪服姿の女優たちが並んでいたという。
 小津作品宛らに。
 還暦の誕生日に亡くなった小津監督は、ここまで演出していたように思えてくる。
 5年後に亡くなった脚本家野田高梧とは数々の名作を「茅ヶ崎館」や「雲呼荘」に籠って脚本を執筆していたことから、きっと、小津監督は「よお!」と、彼を出迎え「天国館」でお酒を酌み交わしながら、“小津調”『天国物語』なるものを執筆しているのではないだろうか。
 “どんなに悲しいことがあっても 空は何時ものように晴れている”という考えで、場面を誇張することなく演出した小津監督のことを思い浮かべて空を見上げると、いい天気だ。
 小津監督の一番お気に入りの♪サセレシアが聴こえてきた。
 すると、青空のスクリーンに数々の作品が映し出された。
 大好きな台詞も聞こえてきた。
 「欲を言や切りァにゃァが まァええほうじゃよ」
 「ええほうですとも よっぽどええほうでさ わたしらァ幸せでさあ」
 「そうじゃのう…… まァ幸せなほうじゃのう」
 「そうでさ 幸せなほうでさ……」
 涙が頬を伝って流れた。
 これからも空を見上げると小津作品に出会えそうだと思うと何だか嬉しくなった。

追記

 昨年(2012)、10年おきに行われている英国映画協会の[世界で最も優れた映画50選]で、358人の映画監督が選ぶ(監督部門)小津安二郎監督の『東京物語』1位となる。
 また世界の批評家846人が選ぶ(批評家部門)でも3位となる。

更新2013.1.11

追記

 
小津安二郎監督生誕110年、没後50年

更新2013.12.12

※小津監督のことを溝口監督は「私より難しいものを撮っている」と語っていたそうだ。
※小津監督の後継者というような言われ方をしている山田洋次監督だが、助監督時代はその当時の若手監督が殆どそうであったように小津監督に反発を感じていたそうだ。 「毎回、スタイルを変える木下恵介監督や、黒澤明監督に比べて、やたら保守的だ」と。  だが、ある時『東京物語』のビデオを熱心に観ている黒澤監督を見て、 「あの黒澤監督がなぜ?」という思いを持ち、 それから小津監督を見る目が変わったという。(2003.12『小津生誕100年記念特集 山田洋次監督へのインタビュー』NHKBS放送 参考)
生涯54作(記録映画1作を含む)を遺したが現存するのは37作。

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〜独自の作品解釈〜

1930 『その夜の妻』-That Night's Wife-
1931 『東京の合唱(コーラス)-Tokyo Chorus-
1932 『生れてはみたけれど』-I Was Born, But...-
1933 『出来ごころ』-Passing Fancy-
1935 『東京の宿』-An Inn in Tokyo-
1936 『一人息子』-The Only Son-
1942 『父ありき』-There Was a Father-
1947 『長屋紳士録』-Record of a Tenement Gentleman-
1949 『晩春』-Late Spring-
ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。
1950 『宗方姉妹』-The Munekata Sisters-
1951 『麦秋』-Early Summer-
ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。
1952 『お茶漬の味』-Tea Over Rice-
1953 『東京物語』-Tokyo Story-
ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。
1957 『東京暮色』-Tokyo Twilight-
1960 『秋日和』-Late Autumn-
1961 『小早川家の秋』-The End of Summer-
1962 『秋刀魚の味』-An Autumn Afternoon-

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〜年譜〜
[1903][1905][1907][1909][1910][1911][1913][1916][1918][1921][1923][1924][1926][1927 懺悔の刃]
[1928 若人の夢 女房紛失 カボチャ 引越し夫婦 肉体美][1929 宝の山 学生ロマンス 若き日 和製喧嘩友達 大学は出たけれど 会社員生活 突貫小僧]
[1930 結婚学入門 朗らかに歩め 落第はしたけれど その夜の妻 エロ神の怨霊 足に触った幸運 お嬢さん][1931 淑女と髯 美人哀愁 東京の合唱]
[1932 春は御婦人から 大人 の見る絵本 生れてはみたけれど 青春の夢いまいづこ また逢ふ日まで][1933 東京の女 非常線の女 出来ごころ]
[1934 母を恋はずや 浮草物語][1935 箱入り娘 東京の宿][1936 鏡獅子(記録映画) 一人息子][1937 淑女は何を忘れたか][1941 戸田家の兄妹]
[1942 父ありき][1947 長屋紳士録][1948 風の中の牝鶏][1949 晩春][1950 宗方姉妹][1951 麦秋][1952 お茶漬の味][1953 東京物語][1956 早春]
[1957 東京暮色][1958 彼岸花][1959 お早よう 浮草][1960 秋日和][1961 小早川家の秋][1962 秋刀魚の味][1963]
[1992 評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテン][1993][1995 日本・世界映画オールタイム・ベストテン]
[1999 映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン][2000 日本・外国映画20世紀の映画スター、映画監督オールタイム・ベストテン 特別企画]
[2002 評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテン][2003][2009 映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]
[2012 
評論家・映画監督が選んだ映画史上最良の作品ベストテン][写真][雑誌][プログラム][パンフレット][チラシ]

1903

12月12日、東京市深川区万年町生まれ。
(寅之助)、 母(あさゑ)の次男。兄(新一)は3才年上。
生家は『湯浅屋』という肥料問屋をいとなむ。

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1905

深川区亀住町7番地へ移転。

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1907

(とき)が生れる。

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1909

明治小学校付属明治幼稚園に入る。

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1910

市立深川区明治尋常小学校に入学。

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1911

(とく)が生れる。

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1913

父は子供の教育は田舎の方がいいと考えて、父以外の全家族そろって、父の郷里、三重県松阪市垣鼻785番地に移転。
松阪市立第2尋常小学校4年に転入。

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1916

三重県立第4中学校(現在の伊勢高校)に入学。
寄宿舎生活をする。柔道部員となる。
活動写真にとりつかれる。
パール・ホワイトの熱烈なファンであった。

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1918

(信三)が生まれ、5人兄弟となる。

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1921

宇治山田中学校卒業。
宮之前の小学校の代用教員となる。

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1923

3月、妹(とき)女学校卒業とともに、学年末に代用教員をやめて深川和倉町の新居に移る。
今まで父ひとりだった家の中は松阪から引きあげて きた家族を加えて賑やかとなる。
8月、松竹キネマ蒲田撮影所に入所しようとしたが、父は賛成せず、しかし伯父の口添えもあり、また松竹重役(堤友次郎)にコネもあったので強引に映画界に入る。 だが、監督部に助手の欠員がなかったため、撮影助手となる。

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1924

9月1日、関東大震災に撮影所であう。
12月、中野野方に移る。
深川区亀住町2番地に新築。
父は肥料業をやめ小津地所部のカンバンを出す。
兵隊検査は甲種合格。
1年志願兵として近衛歩兵4聯隊6中隊に入営。翌年除隊、伍長となる。

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1926

助監督部に移る。

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1927

『懺悔の刃』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督原案: 小津安二郎
- 脚本: 野田高梧
- 撮影: 青木勇
- 出演: 吾妻三郎/小川国松/河原侃二/野寺正一/渥美映子/河村黎吉/花柳都/小波初子
- アメリカのインス作品『豪雨の一夜』にヒントを得ているのではと言われている時代劇。(筈実恒夫『私の小津安二郎観』1952.6記事 参考)

中学生、新進監督時代はアメリカ映画の熱心なファンだったそうだ。

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1928

『若人の夢』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督・脚色: 小津安二郎
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 吉谷久雄/松井潤子/斎藤達雄/若葉信子/大山健二/坂本武/関時男/高松榮子/小倉繁/笠智衆
- 名コンビとうたわれたカメラマン茂原英雄との最初の映画。
笠智衆は、この『若人の夢』から小津作品に出演し始めた。

『女房紛失』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: 高野斧之助
- 脚本: 吉田百助
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 斎藤達雄/岡本文子/国島荘一/菅野七郎/松井潤子/坂本武/小倉繁/関時男/笠智衆

『カボチャ』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 出演: 斎藤達雄/坂本武/小桜葉子/日夏百合絵/半田日出丸

『引越し夫婦』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: 菊池一平
- 脚本・潤色: 伏見晁
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 渡辺篤/吉川満子/大山健二/浪花友子/大国一郎/中川一三(息子/清一)

『肉体美』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 出演: 斎藤達雄/飯田蝶子/大山健二/木村健児
- エルンスト・ルビッチ監督の影響を受けたと言われる喜劇。

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1929

『宝の山』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 出演: 岡本文子/飯田蝶子/日夏百合絵/浪花友子/糸川京子/若美多喜子/小林十九二/青山萬里子

『学生 ロマンス 若き日』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督・潤色: 小津安二郎
- 原作・脚色: 伏見晁
- 撮影: 茂原英雄
- 美術: 脇田世根一
- 出演: 結城一郎/斎藤達雄/松井潤子/飯田蝶子/高松榮子/小藤田正一/大国一郎/坂本武/日守新一/山田房生/笠智衆/小倉繁/一木突破/錦織斌/蜂野豊夫
- 早稲田生が登場する“学生もの”でスキー旅行を舞台に繰り広げられる喜劇。
『第七天国』(1927)のポスターが当時を感じさせる。
小津監督の現存する最古の作品。


『学生 ロマンス 若き日』結城一郎、松井潤子、飯田蝶子

『和製喧嘩友達』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 原作脚本: 野田高梧
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 渡辺篤/浪花友子/吉谷久雄/結城一郎/高松榮子/若葉信子/大国一郎
- 迷い込んできた娘をめぐっての諍いをコミカルに描く。


『和製喧嘩友達』渡辺篤、吉谷久雄、浪花友子

『大学は出たけれど』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: 清水宏
- 脚色: 荒牧芳郎
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 高田稔(野本)/田中絹代(町子)/鈴木歌子/大山健二/日守新一/坂本武/飯田蝶子(宿のおばさん)/木村健児
- 金融恐慌のあおりを受けた昭和の不況下の卒業生が就職難の中でどうあるべきかを描く“学生もの”


『大学は出たけれど』高田稔、田中絹代

『会社員生活』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督原案: 小津安二郎
- 脚本: 野田高梧
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 斎藤達雄/吉川満子/小藤田正一/加藤精一/青木富夫(のちの突貫小僧)/石渡暉明/坂本武

『突貫小僧』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(短編)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: 野津忠二(野田高梧/小津安二郎/池田忠雄/大久保忠素のペンネーム)
- 脚本: 池田忠雄
- 撮影: 野村昊/茂原英雄
- 出演: 斎藤達雄/青木富夫(のちの突貫小僧)/坂本武
- さらってきた小僧(青木富夫)に振り回されるドタバタぶりが面白く描かれている。
突貫小僧を演じた青木富夫は、この後、役名を芸名にした。


『突貫小僧』斎藤達雄、青木富夫、坂本武

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1930

『結婚学入門』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: 大隈俊雄
- 脚本: 野田高梧
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 斎藤達雄/栗原すみ子/奈良真養/岡本文子/高田稔/龍田静枝/吉川満子
- エルンスト・ルビッチ監督の影響を受けたと言われる喜劇。

『朗らかに歩め』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 出演: 高田稔/川嵜弘子/松園延子/鈴木歌子/吉谷久雄/坂本武/伊達里子/毛利輝夫
- 好きになった娘のために堅気になろうとするが、仲間は許さない…


『朗らかに歩め』伊達里子、高田稔、毛利輝夫

『落第はしたけれど』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督・原作: 小津安二郎
- 脚色: 伏見晁 
- 撮影: 茂原英雄
- 美術: 脇田世根一
- 挿入曲: ♪ボレロ♪白鳥
- 出演: 斎藤達男(学生)/田中絹代(茶店の娘)/二葉かほる(宿のおばさん)/青木富夫(のちの突貫小僧)(息子)/若林廣雄(教授)/大国一郎(教授)/横尾泥海男(落第生)/関時男(落第生)/三倉博(落第生)/横山五郎(落第生)/月田一郎(及第生)/笠智衆(及第生)/山田房生(及第生)/里見健児(及第生)
- 昭和の不況下で卒業生が就職難であるのに対して、落第生の方は応援団を初めたりして学生生活を楽しんでいる姿を描いている。
バックに♪ボレロが流れる中でカンニングをしているシーンや腕を組んで足並みを揃えて歩くシーンなど滑稽だ。
小津監督のお気に入りの早稲田生や大隈講堂を登場させている“学生もの”。
茶店の娘役の田中絹代が初々しい。


『落第はしたけれど』田中絹代、斎藤達男

『その夜の妻』-That Night's Wife-(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: オスカー・シスゴール『九時から九時まで』
- 脚色・翻案: 野田高梧
- 撮影: 茂原英雄
- 美術: 脇田世根一
- 出演: 岡田時彦/八雲恵美子/市村美津子(娘)/山本冬郷(刑事)/斎藤達雄/笠智衆
- オスカー・シスゴール『九時から九時まで』の映画化。
娘の治療費のために犯罪を犯す父親(岡田時彦)と、それを追う刑事(山本冬郷)。それに必死に夫をかくまう妻(八雲恵美子)が娘(市村美津子)の病状とともにサスペンス・タッチで描かれている。
子役の市村美津子が可愛らしい。[『その夜の妻』へ]


『その夜の妻』八雲恵美子、岡田時彦

 『エロ神の怨霊』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: 石原清三郎
- 脚本: 野田高梧
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 斎藤達雄/星ひかる/伊達里子/月田一郎
- エルンスト・ルビッチ監督の影響を受けたと言われる喜劇。

『足に触った幸運』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 脚本: 野田高梧
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 斎藤達雄/吉川満子/青木富夫(のちの突貫小僧)/市村美津子(高峰秀子のクレジット名)/関時男/毛利輝夫/月田一郎/大国一郎/坂本武

『お嬢さん』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)(キネマ旬報第3位)
- 監督: 小津安二郎
- 脚本: 北村小松
- ギャグマン: 伏見晁/ヂェームス・槇(小津安二郎のペンネーム)/池田忠雄
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 栗原すみ子/岡田時彦/田中絹代/斎藤達雄/岡田宗太郎/浪花友子/大国一郎/小倉繁/龍田静枝/毛利輝夫/横尾泥海男/若林廣雄/山本冬郷/光喜三子/堺一二/畑譲治


『お嬢さん』栗島すみ子、岡田時彦

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1931

『淑女と髯』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 原作脚本: 北村小松
- ギャグマン: ヂェームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 撮影: 茂原英朗(のちに茂原英雄に改名)
- 美術: 脇田世根一
- 出演: 岡田時彦/川崎弘子/飯田蝶子/伊達里子/月田一郎/飯塚敏子/吉川満子/坂本武/斎藤達雄/青木富夫(のちの突貫小僧)/岡田宗太郎/葛城文子/南條康雄
- 剣道一筋の髯面の大学生が、髯を剃ったことで別世界を体験する爆笑ナンセンス・コメディ。
二枚目俳優、岡田時彦の髯面が可笑しい。


『淑女と髯』伊達里子、岡田時彦ら

『美人哀愁』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: アンリ・ド・レニエ
- 翻案: ジェームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 脚本・潤色: 池田忠雄
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 岡田時彦/斎藤達雄/井上雪子/岡田宗太郎/吉川満子/若水照子/奈良真養/飯塚敏子


『美人哀愁』岡田時彦、井上雪子

『東京の合唱(コーラス)-Tokyo Chorus-(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(キネマ旬報第3位)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: 北村小松
- 脚色: 北村小松/野田高梧
- 潤色: 野田高梧
- 撮影: 茂原英朗(のちに茂原英雄に改名)
- 美術: 脇田世根一
- 出演: 岡田時彦(岡島伸二)/八雲恵美子(妻/すが子)/菅原秀雄(長男)/高峰秀子(長女)/斉藤達雄(大村先生)/飯田蝶子(先生の妻)/坂本武(老社員/山田)/宮島健一/山口勇/谷麗光
- 不景気時に、同僚の解雇に抗議して自分もクビになったサラリーマン(岡田時彦)の悲哀が描かれている。
洋食屋“カロリー軒”を始めた恩師との関係がコミカルだ。
子役の高峰秀子が可愛い。[『東京の合唱(コーラス)へ]


『東京の合唱』高峰秀子、八雲恵美子、菅原秀雄、岡田時彦


『東京の合唱』岡田時彦、斉藤達雄

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1932

『春は御婦人から』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: ジェームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 脚本: 池田忠雄 柳井隆雄
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 城多二郎/斎藤達雄/井上雪子/泉博子/坂本武/谷麗光

大人 の見る絵本 生れてはみたけれど』-I Was Born, But...-(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(キネマ旬報第1位)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: ゼェームス槇(小津安二郎のペンネーム)
- 脚色: 伏見晃
- 潤色: 燻屋鯨兵衛(小津安二郎)
- 撮影- 編集: 茂原英朗(のちに茂原英雄に改名)
- 美術監督: 河野鷹思
- 衣裳: 斎藤紅
- 出演: 斎藤達雄(父)/吉川満子(母)/菅原秀雄(長男/良一)/突貫小僧(青木富夫)(次男/啓二)/坂本武(重役/岩崎)/早見照代(夫人)/加藤清一(子供)/小藤田正一(小僧)/西村青兒(先生)/飯島善太郎(遊び仲間)/藤松正太郎(遊び仲間)/葉山正雄(遊び仲間)/佐藤三千雄(遊び仲間)/林國康(遊び仲間)/野村秋生(遊び仲間)/石渡輝秋(遊び仲間)/笠智衆
- 素晴らしい。子供の世界と大人の世界で価値付けられるものの違いを子供の視線で鋭く描いた社会風刺劇で会社員ものを描いた作品で最高峰に達している。
ある場面を2000年に初めて観た時に、私は嗚咽した。そして、涙が溢れ出し止まらなかった。その場面につい ては、この作品の重要なポイントなので触れない。観た人は、どの場面か直ぐピーンとくるところだ。
その場面と、ヴィスコンティの『ベリッシマ』(1951)で、母親役のアンナ・マニャーニが娘のオーディションのフィルムを見る場面と重なり合った。こちらでも、声を出して泣いてしまった。[全文へ]


『生れてはみたけれど』菅原秀雄、加藤清一、突貫小僧

『青春の夢いまいづこ』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎/清輔彰/原研吉
- 原作・脚色: 野田高梧
- 撮影- 編集: 茂原英朗(のちに茂原英雄に改名)/栗林実/厚田雄春/入江政夫
- 出演: 江川宇礼雄(堀野哲夫)/田中絹代(ベーカリーの娘/お繁)/斎藤達雄(斉木太ー郎)/武田春郎(哲夫の父/謙蔵)/水島亮太郎(哲夫の叔父)/大山健二(哲夫の友/態田)/笠智衆(哲夫の友/島崎)/坂本武(大学の小使)/飯田蝶子(斉木の毋/おせん)/萬城文子(山村男爵夫人)/伊達里子(令嬢)/二葉かほる(婆や)/花岡菊子(旅館の令嬢)
- これも“学生もの”で早稲田生や大隈講堂が登場する。
かつての学友で社長と社員になった二人がベーカリーの娘をめぐって友情が揺らぎ始める。


『青春の夢いまいづこ』江川宇礼雄、田中絹代、斎藤達雄

『また逢ふ日まで』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 脚本: 野田高梧
- 撮影: 茂原英雄
- 出演: 岡田嘉子/岡譲二/奈良真養/川崎弘子/飯田蝶子/伊達里子/吉川満子

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1933

『東京の女』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: エルンスト・シュワルツ(小津安二郎のペンネーム)『二十六時間』
- 脚色・翻案: 野田高梧/池田忠雄
- 撮影: 茂原英朗(のちに茂原英雄に改名)
- 美術: 金須孝
- 出演: 岡田嘉子/江川宇礼雄/田中絹代/奈良真養
- ペンネーム(エルンスト・シュワルツ)は、尊敬するエルンスト・ルビッチとハンス・シュワルツから。


『東京の女』岡田嘉子

『非常線の女』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 原案: ゼームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 脚色: 池田忠雄
- 撮影: 茂原英朗(のちに茂原英雄に改名)
- 美術: 脇田世根一
- 出演: 田中絹代/岡譲二/水久保澄子/三井英夫(三井秀夫)/逢初夢子/南條康雄/谷麗光/西村青兒/加賀晃二/高山義郎/鹿島俊作/竹村信夫


『非常線の女』田中絹代、岡譲二

『出来ごころ』-Passing Fancy-(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(キネマ旬報第1位)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: ジェームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 脚色: 池田忠雄
- 撮影: 杉本正二郎
- 美術: 脇田世根一
- 編集: 石川和雄
- 出演: 坂本武(喜八)/伏見信子(春江)/大日方傳(次郎)/飯田蝶子(おとめ)/突貫小僧(青木富夫)(富夫)/谷麗光(床屋)/加藤清一/西村青兒/山田長政
- 学も稼ぎも無いが人情と心意気だけは誰にも負けない喜八(坂本武)や、面倒見のよいかあやんたちが登場する下町の人情の世界を描いた“喜八もの”は小津監督が愛した世界で、これが最初の作品だ。
旅芸人だった坂本武の風貌といい、いかにも長屋のおばさんといった雰囲気の飯田蝶子が実にいい。
ラストシーンで人情の機微に触れた私は声を上げ泣いた。
アメリカ映画に傾倒していた小津監督は『チャンプ』(1931)を翻案したそうだ。[『出来ごころ』へ]


『出来ごころ』伏見信子、坂本武

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1934

『母を恋はずや』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: 小宮周太郎
- 構成: 野田高梧
- 脚色: 池田忠雄
- 撮影: 青木勇
- 出演: 岩田祐吉/吉川満子/大日方伝/加藤清一/飯田蝶子/三井秀男(三井秀夫)/野村秋生/奈良真養/青木しのぶ/光川京子/笠智衆/逢初夢子/松井潤子


『母を恋はずや』吉川満子

『浮草物語』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(キネマ旬報第1位)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: ジエームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 脚色: 池田忠雄
- 撮影- 編集: 茂原英朗(のちに茂原英雄に改名)
- 美術監督: 浜田辰雄
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 坂本武(喜八)/飯田蝶子(かあやん)/三井秀男(三井秀夫)(信吉)/八雲理恵子(八雲恵美子)(おたか)/坪内美子(おとき)/突貫小僧(青木富夫)(富坊)/谷麗光(とっつあん)/西村青兒(吉ちゃん)/笠智衆/山田長政/懸秀介/若宮満/青野清/池部光村/平陽光/油井宗信
- アメリカ映画の『煩悩』(1928)を下敷きにした“喜八もの”の第2作。
この作品で息子役だった三井秀男を1959年にリメイクした『浮草』では、一座の金を持ち逃げする役に抜擢している。小津監督らしいユーモアだ。


『浮草物語』三井秀男、飯田蝶子

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1935

『箱入り娘』(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(現存せず)
- 監督: 小津安二郎
- 出演: 坂本武/田中絹代/大山健二/吉川満子/飯田蝶子/突貫小僧(青木富夫)/懸秀介/青野清/竹内良一

『東京の宿』-An Inn in Tokyo-(サイレント)(白黒)(松竹蒲田)(キネマ旬報第9位)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: ウィンザァト モネ(小津安二郎のペンネーム)
- 脚色: 池田忠雄/荒田正男
- 撮影- 編集: 茂原英朗(のちに茂原英雄に改名)
- 美術: 浜田辰雄
- 音楽: 堀内敬三
- 作曲: 伊藤宣二
- 衣裳: 斎藤紅
- 出演: 坂本武(喜八)/突貫小僧(青木富夫)(善公)/末松孝行(正公)/岡田嘉子(おたか)/小嶋和子(君子)/飯田蝶子(おつね)/笠智衆(警官)
- “喜八もの”
ペンネーム(ウィンザァト モネ)は、「Without money」、「一文なし」を捩っているそうだ。[『東京の宿』へ]


『東京の宿』岡田嘉子、坂本武、小嶋和子


『東京の宿』岡田嘉子、小嶋和子

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1936

『鏡獅子』記録映画(白黒)(国際文化振興会=松竹蒲田)(一般公開せず)
- 監督: 小津安二郎
- 出演: 尾上菊五郎(六代目)/尾上琴次郎/尾上しげる/松永和楓/柏伊三郎/望月太左衛門


『鏡獅子』撮影時 小津安二郎、六代目尾上菊五郎ら

『大学よいとこ』(白黒)(松竹蒲田)
- 監督: 小津安二郎
- 脚本: 荒田正男
- 原案: ゼームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 撮影: 茂原英雄 
- 出演: 近衛敏明(大学生/藤木)/笠智衆(天野)/小林十九二(西田)/大山健二(河原)/池部鶴彦(大学生/井上)/日下部章(青木)/高杉早苗(藤木の妻/千代子)/斎藤達雄(講師)/青野清(下宿の亭主)/飯田蝶子(お内儀)/出雲八重子(女中)/坂本武(教官)/爆弾小僧(子供)

『一人息子』-The Only Son-(白黒)(松竹蒲田)(キネマ旬報第4位)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: ゼームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 脚色: 池田忠雄/荒田正男
- 撮影: 杉本正次郎
- 録音: 茂原英雄/長谷川栄一
- 美術: 浜田辰雄
- 音楽: 伊藤宣二
- 音響効果: 斎藤六三郎
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 飯田蝶子(野々宮つね)/日守新一(野々宮良助)/吉川満子(おたか)/葉山正雄(良助の少年時代)/坪内美子(良助の妻/杉子)/笠智衆(大久保先生)/浪花友子(大久保先生の妻)/爆彈小僧(大久保先生の子)/突貫小僧(青木富夫)(富坊)/高松榮子/加藤清一/青野清/小嶋和子
- 小津監督、初のトーキーで、飯田蝶子は茂原英雄の妻。
トーキー時代になっていたのにずっと土橋武夫の土橋式トーキーを使わなかったのは、親友・茂原英雄の茂原式トーキーの完成を待つ約束があったからだそうだ。
撮影所は大船に移っていたが、大船は土橋式なので、この作品は蒲田で撮った。
息子の立身出世を夢みて必死に働き仕送りを続けていた母が東京の息子を訪ねてゆく。だが…[全文へ]


『一人息子』日守新一、坪内美子


『一人息子』飯田蝶子

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1937

『淑女は何を忘れたか』(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報第8位)
- 監督: 小津安二郎
- 脚本: 伏見晁/ゼームス・槇(小津安二郎のペンネーム)
- 撮影: 茂原英雄/厚田雄春
- 録音: 土橋武夫/妹尾芳三郎
- 編集: 原研吉
- 美術: 浜田辰雄
- 音楽: 伊藤宣二
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 栗島すみ子(麹町の夫人/時子)/齋藤達雄(麹町のドクトル/小宮)/桑野通子(大坂の姪/節子)/佐野周二(大学の助手/岡田)/坂本武(牛込の重役/杉山)/飯田蝶子(そのマダム/千代子)/上原謙(大船のスター)/吉川満子(御殿山の未亡人/光子)/葉山正雄(その子藤雄)/突貫小僧(青木富夫)(近所の小学生/富夫)/鈴木歌子(料亭の女将)/出雲八重子(お文)/立花泰子(酒場のマダム)/大山健二(大学の学生)/浪花友子/久原良子/小牧和子/水島光代/大塚君代/東山光子
- 終生のコンビとなるキャメラマン厚田雄春との最初の映画。


『淑女は何を忘れたか』齋藤達雄、栗島すみ子、桑野通子


『淑女は何を忘れたか』桑野通子、佐野周二

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1941

『戸田家の兄妹』(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報第1位)
- 監督: 小津安二郎
- 脚本: 池田忠雄/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄治
- 美術: 浜田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 現像: 宮城島文ー
- 編集: 浜村義康
- 音楽: 伊藤宣二
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 佐分利信(二男/昌二郎)/高峰三枝子(戸田家三女/節子)/吉川満子(長女/千鶴)/斎藤達雄(長男/進一郎)/三宅邦子(長男の妻/和子)/坪内美子(二女/綾子)/近衛敏明(二女の夫/雨宮)/桑野通子(節子の友人/時子)/藤野秀夫(父/戸田進太郎)/葛城文子(母)/河村黎吉(鈴木)/飯田蝶子(女中/きよ)/葉山正雄(千鶴の子/良吉)/高木眞由子(進一郎の子/光子)/岡村文子(鰻屋の女将)/笠智衆(友人)/坂本武(骨董屋)/西村青兒(骨董屋)/谷麗光(写真屋)/森川まさみ(谷本夫人)/若水絹子(谷本夫人の友)/忍節子(谷本夫人の友)/河野敏子(女中/きぬ)/文谷千代子(女中/たけ)/岡本エイ子(女中/かね)/出雲八重子(女中/しげ)/武田春郎(畠山)/山口勇(昌二郎の友人/内田)
- 中国戦線から帰還した小津監督が、父の死によって解体する家族を描いている。
佐分利信が演じる二男、昌二郎は小津監督自身だと言われているが、翻案は古いアメリカ映画『オウヴァ・ゼ・ヒル』である。


『戸田家の兄妹』佐分利信、葛城文子、高峰三枝子


『戸田家の兄妹』撮影スナップ 小津安二郎監督、高峰三枝子ら

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1942

『父ありき』-There Was a Father-(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報第2位)
- 監督: 小津安二郎
- 脚本: 池田忠雄/柳井隆雄/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄治
- 美術: 浜田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 編集: 浜村義康
- 音楽: 彩木暁一
- 音響: 斎藤六三郎
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 笠智衆(堀川周平)/佐野周二(堀川良平)/津田晴彦(良平の少年時代)/佐分利信(黒川保太郎)/坂本武(平田真琴)/水戸光子(平田ふみ)/大塚正義(平田清一)/日守新一(内田実)/西村青児(和尚さん)/谷麗光(漢文の先生)/河原侃二(中学の先生)/倉田勇助(中学の先生)/宮島健一(会社員)/文谷千代子(堀川の女中)/奈良真養(医師)/大山健二(卒業生)/三井秀男(三井秀夫)(卒業生)/如月輝夫(卒業生)/久保田勝巳(卒業生)/毛塚守彦(写真師)/大杉恒雄(北陸の中学生)/葉山正雄(北陸の中学生)/永井達郎(北陸の中学生)/藤井正太郎(北陸の中学生)/小藤田正一(東北の工業生)/緒方喬(東北の工業生)/横山準(東北の工業生)/沖田儀一(東北の工業生)/爆弾小僧
- 1928年の『若人の夢』から、『淑女は何を忘れたか』以外の作品には全部、小津作品に出演している笠智衆の初主演作。
「笠智衆は人間がいい、人間がいいとそれが演技に出る」と言って小津監督が主演に抜擢した。
男でひとつで育てた息子と離れ離れに暮らさなければならない父と息子の深い哀歓が描かれている。
誠実な父を演じた笠智衆は、この後も主役級を演じ続け小津作品になくてはならぬ存在になってゆく。[『父ありき』へ]
※アメリカ映画の『ソレルとその子』からヒントを得て作られたといわれている作品。


『父ありき』津田晴彦、笠智衆


『父ありき』笠智衆、津田晴彦

『父ありき』の後、徴用されて南方へ渡った。
南方で映画を作る予定があったそうだが、敗戦で実現しなかった。

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1947

『長屋紳士録』-Record of a Tenement Gentleman-(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報第4位)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 久保光三
- 脚本: 小津安二郎/池田忠雄
- 撮影: 厚田雄春
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 磯野春雄
- 美術: 浜田辰雄
- 編集: 杉原よ志
- 現像: 林龍次
- 音楽: 斎藤一郎
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 飯田蝶子(おたね)/青木放屁(幸平)/小澤榮太郎(父親)/吉川満子(きく女)/河村黎吉(為吉)/三村秀子(ゆき子)/笠智衆(田代)/坂本武(喜八)/高松榮子(とめ)/長船フジヨ(しげ子)/河賀祐一(平ちゃん)/谷よしの(おかみさん)/殿山泰司(写真師)/西村青兒(柏屋)
- 小津監督が抑留生活を終えて、シンガポールから帰還して最初に撮った作品で、長屋の人情話“喜八もの”の最後の作品。
 焼け野原で迷っていた子を孤児と思い連れてきた田代(笠智衆)に、文句を言いつつも引き取って面倒を見てやっていたおたね(飯田蝶子)がラストシーンで「嬉しくって泣いているのよ」に泣けた。[全文へ]
※青木放屁は突貫小僧(青木富夫)の異父弟。


『長屋紳士録』河村黎吉、青木放屁、笠智衆

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1948

『風の中の牝鶏』(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報第7位)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 久保光三
- 脚本: 齋藤良輔/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 調音: 妹尾芳三郎
- 録音: 宇佐美駿
- 照明: 磯野春雄
- 美術: 浜田辰雄
- 装置: 齋藤竹次郎
- 編集: 浜村義康
- 現像: 林龍次
- 音楽: 伊藤宣二
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 佐野周二(雨宮修一)/田中絹代(雨宮時子)/村田知英子(井田秋子)/笠智衆(佐竹和一郎)/坂本武(酒井彦三)/高松榮子(酒井つね)/水上令子(野間織江)/文谷千代子(小野田房子)/長尾敏之助(医師)/中川健三(巡査)/岡村文子(女将)/清水一郎(古川)/三井弘次(三井秀夫)(男A)/千代木国男(男B)/谷よしの(看護婦A)/泉啓子(看護婦B)/中山さかゑ(看護婦C)/中川秀人(時子の子/浩)/長船フジヨ(彦三の子/あや子)/青木放屁(彦三の子/正一)
- 急病の娘の治療費がなく一夜身を売った妻と、それを知った戦地から帰ってきた夫の怒り苛立ち、悲しみが描かれている。
※青木放屁は突貫小僧(青木富夫)の異父弟。


『風の中の牝鶏』中川秀人、田中絹代、佐野周二

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1949

『晩春』-Late Spring-(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報第1位)(第4回毎日映画コンクール日本映画大賞)
- 監督: 小津安二郎(第4回毎日映画コンクール監督賞)
- 製作: 山本武
- 原作: 廣津和郎『父と娘』
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎(第4回毎日映画コンクール脚本賞)
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 濱田辰雄
- 調音: 妹尾芳三郎
- 録音: 佐々木秀孝
- 照明: 磯野春雄
- 編集: 浜村義康
- 装置: 山本金太郎
- 装飾: 小牧基胤
- 現像: 林龍次
- 音楽: 伊藤宣二
- 衣裳: 鈴木文次郎
- 出演: 笠智衆(曾宮周吉)/原節子(紀子)(第4回毎日映画コンクール女優演技賞)/月丘夢路(北川アヤ)/杉村春子(田口まさ)/青木放屁(勝義)/宇佐美淳(服部昌一)/三宅邦子(三輪秋子)/三島雅夫(小野寺譲)/坪内美子(きく)/桂木洋子(美佐子)/清水一郎(「多喜川」の亭主)/谷崎純(林清造)/高橋豊子(しげ)/紅沢葉子(茶場の先生)/長谷川雅山/梅若万三郎/野島信/島田巳久馬/北村一郎/安福春雄/金春惣一/青木只一/吉田長弘/観世清寿/梅若新太郎/観世静夫/戸田清二/福田光蔵/高山新一郎/石田清之助/青木豊/長谷川欣造
- 芸術性が一番高い作品で、紀子3部作(晩春『麦秋』『東京物語』)と言われる作品の第1作。
原節子の美しさが際立っている。
どのシーンも名シーンであるが、周吉がリンゴの皮を剥くシーンの感慨は言葉では言い尽くせない。[全文へ]
原節子と杉村春子が小津作品に初出演した作品。

※青木放屁は突貫小僧(青木富夫)の異父弟。


『晩春』原節子


『晩春』原節子、宇佐美淳


『晩春』原節子、三宅邦子


『晩春』原節子


『晩春』原節子


『晩春』原節子、笠智衆


『晩春』

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1950

『宗方姉妹』-The Munekata Sisters-(むねかたきょうだい)(白黒)(新東宝)(キネマ旬報第7位)
- 監督: 小津安二郎
- 原作: 大佛次郎(朝日新聞連載『宗方姉妹』より)
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 小原讓治
- 照明: 藤林甲
- 録音: 神谷正和
- 美術: 下河原友雄
- 編集: 後藤敏男
- 音楽: 齋藤一郎
- 出演: 田中絹代(宗方節子)/高峰秀子(満里子)/上原謙(田代宏)/高杉早苗(真下頼子)/笠智 衆(宗方忠親)/山村聰(節子の夫/三村亮助)(第5回毎日映画コンクール助演賞)/堀雄二(前島五郎七)/河村黎吉(「三銀」の客)/齋藤達雄(教授/内田譲)/藤原釜足(「三銀」の亭主)/坪内美子(藤代美惠子)/一の宮あつ子(箱根の宿女中)/堀越節子(「三銀」の女中)/千石規子(東京の宿女中)
- 古風な姉(田中絹代)と進歩的な妹(高峰秀子)、死期を悟っている父(笠智 衆)と病弱の姉の夫(山村聰)。それに姉の元恋人(上原謙)、その恋人に思いを寄せている未亡人(高杉早苗)などの複雑な人間関係を名優たちが演じている。
嫉妬した夫(山村聰)が妻(田中絹代)を叩くシーンは『風の中の牝鶏』の時のような衝撃を与えた。[『宗方姉妹』へ]


『宗方姉妹』田中絹代、高峰秀子


『宗方姉妹』田中絹代、高峰秀子

高峰秀子は、子役時代に『東京の合唱(コーラス)に出演しているが、成長してから出るのは、初めてだった。
小津の映画に出演するのは、俳優にとって名誉なことだったが、この映画の撮影は、完全主義者の小津が終始厳しく、現場はぴりぴりしていたという。
特にアメリカから帰り、“投げキス事件”で世間の顰蹙を買った田中絹代に厳しく、何度もダメを出したそうだ。
追いつめられた田中絹代は高峰秀子に死にたいとまで言ったという。(1999.2.20『別冊太陽 女優 高峰秀子』平凡社 参考)

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1951

『麦秋』-Early Summer-(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報第1位)(キネマ旬報興行第6位)(第6回毎日映画コンクール日本映画大賞)
- 監督: 小津安二郎(第2回ブルーリボン監督賞)
- 製作: 山本武
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 濱田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 高下逸男
- 現像: 林龍次
- 編集: 浜村義康
- 録音技術: 宇佐美駿
- 装置: 山本金太郎
- 装飾: 橋本庄太郎
- 音楽: 伊藤宣二
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 原節子(間宮紀子)(第6回毎日映画コンクール女優演技賞)(第2回ブルーリボン主演女優賞)/笠智衆(間宮康一)/淡島千景(田村アヤ)/三宅邦子(間宮史子)/菅井一郎(間宮周吉)/東山千榮子(間宮志げ)/杉村春子(矢部たみ)(第2回ブルーリボン助演女優賞)/二本柳寛(謙吉)/井川邦子(安田高子)/高橋豊子(田村のぶ)/高堂國典(間宮茂吉)/宮口精二(西脇宏三)/志賀眞津子(高梨マリ)/村瀬禅(間宮實)/城澤勇夫(間宮勇)/伊藤和代(矢部光子)/山本多美(西脇富子)/谷よしの(「多喜川」の女中)/寺田佳世子(看護婦)/長谷部朋香(病院の助手)/山田英子(会社事務員)/田代芳子(「田むら」の女中)/谷崎純(写真屋)/佐野周二(佐竹宗太郎)/河野敏子/谷崎純
※昭和26年度芸術祭参加作品
- 紀子3部作(晩春『麦秋』『東京物語』)の第2作目。
28才を迎えた紀子の結婚話をめぐる家族らの心情が細やかに演出されている秀作。
子連れの息子の嫁に来てくれたらとたみが紀子に言い、思い掛けない反応に大喜びし涙を流しながら何度も何度も聞き返すシーンが印象的だ。[全文へ]


『麦秋』淡島千景、原節子


『麦秋』佐野周二、原節子、淡島千景


『麦秋』原節子ら


『麦秋』原節子、杉村春子


『麦秋』城澤勇夫、笠智衆、東山千榮子、原節子、菅井一郎、三宅邦子、村瀬禅


『麦秋』

小津監督は原節子について次のように語っている。
「彼女とは一昨年の『晩春』以 来今度の作品で二度目のおつき合いですが、お世辞でなく本当に巧い女優さんですね。一時世間から美貌がわざわいして演技が大変まずいというひどい噂をたて られたこともあるが、僕はむしろ世間で巧いといわれている俳優こそまずくて彼女の方がはるかに巧いとすら思っている。小手先だけが眼にとまる巧さは本当の 巧さではない。その点彼女は自分で納得のいかない演技は絶対にやらない。僕が一つのセリフを注意すれば心理まで訂正するといった非常に勘のいい鋭さを持っ ている。おそらく日本の映画界で勘の鋭い女優といえば彼女と高峰秀子だけだろう。その意味で今度の僕の作品における彼女の演技は素晴らしい進歩を見せている。今後の彼女への期待は大きい」(「産業経済新聞」昭和26年8月30日)
「僕は過 去二十何年か映画を撮ってきたが、原さんのように理解が深くてうまい演技をする女優はめずらしい。芸の幅ということからすれば狭い。しかし原さんは原さん の役柄があってそこで深い演技を示すといった人なのだ。例えばがなりたてたり、子守っ子やおかみさんのような役はあの人の顔立ちや人柄が出来上っていないというそれを「原節子は大根だ」と評するに至っては、むしろ監督が大根に気づかぬ自分の不明を露呈するようなものだと思う。
映画が人間を描く以上、知性とか教養とかいうものも現れてこなければならない。そういう意味でも原さんの演技には内容があるといえる。もちろん原さんが結婚すればまた違った面も出てくるとは思うが……。“原節子は日本人向き”という評、結構、大いに結構なことだ。
実際、お世辞ぬきにして、日本の映画女優としては最高だと私は思っている」(「アサヒ芸能新聞」昭和26年9月9日)
「ぼくは今まで『晩春』に次いで今度の『麦秋』が二本目のつき合いですが、前の場あいよりすべての面で成長していると思う。原節子の よさは内面的な深さのある演技で脚本に提示された役柄の理解力と勘は驚くほど鋭敏です。演技指導の場あいも、こっちの気持ちをすぐ受けとってくれ、すばら しい演技で解答を与えてくれます。単に顔面筋肉を動かす迷優はずいぶん多いけれど彼女のようなのは数えるほどしかいません。演出家の中には彼女の個性をつ かみそこね大根だの、何んだのと言う人もいますが、その人にないものを求めること自体間違っているのです。日本の映画界は大スターに求めることの余りに大 きく多いことが欠点でしょう。国際舞台へ出て恥ずかしくない人というと彼女はたしかに有資格者の一人でしょう……」(「時事新報」昭和26年9月14日)(田中眞澄編1993.9.20[1989.5.1]「小津安二郎戦後語録集成 昭和21(1946)年-昭和38(1963)年」フィルムアート社より 抜粋)

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1952

キネマ旬報ベストテンで、小津安二郎監督の『麦秋』が1位成瀬巳喜男監督『めし』が2位。
原節子の主演作品『麦秋』『めし』がベスト・テンのキネマ旬報1位2位を占めた。

『お茶漬の味』-Tea over Rice-(白黒)(松竹大船)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 山本武
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 濱田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 高下逸男
- 現像: 林龍次
- 編集: 浜村義康
- 装置: 山本金太郎
- 装飾: 守谷節太郎
- 音楽: 齋藤一郎
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 佐分利信(佐竹茂吉)(第7回毎日映画コンクール男優主演賞)/木暮實千代(妙子)/鶴田浩二(岡田登)/笠智衆(平山定郎)/淡島千景(雨宮アヤ)/津島恵子(山内節子)/三宅邦子(山内千鶴)/柳永二郎(山内直亮)/十朱久雄(雨宮京一郎)/望月優子(平山しげ)/設楽幸嗣(山内幸二)/小園蓉子(女中/ふみ)/志賀直津子(西銀座の女)/石川欣一(大川社長)/上原葉子(黒田高子)/美山悦子(女店員)/日夏紀子(女店員)/北原三枝(女給)/山本多美(女中/よね)/山田英子(給仕)/谷崎純(爺や)/長谷部朋香(見合いの相手)/藤丘昇一(事務員)/長尾敏之助(社長秘書)
- 中国戦線から帰還した小津監督が最初に書いたシナリオだったそうだが、検閲にかかって実現できなかったという。
どうしても撮りたかった小津監督は出征前夜の物語を、海外出張という設定に変えて12年後に実現させた。
お茶漬を二人で食べるシーンに感動し涙が溢れ出た。[『お茶漬の味』へ]

5月、母(あさゑ)とともに北鎌倉山ノ内1445に移転。
『晩春』いらいコンビを組んでいる野田高梧と共同執筆の場所として茅ヶ崎館を使用し、『東京物語』を書き上げる。


『お茶漬の味』佐分利信、木暮實千代

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1953

『東京物語』-Tokyo Story-(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報ベスト第2位)(キネマ旬報興行第8位)(第1回サザランド賞)(私の好きな映画・名作と思う映画2位)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 山本武
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 濱田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 高下逸男
- 編集: 浜村義康
- 録音技術: 金子盈
- 装置: 高橋利男
- 装飾: 守谷節太郎
- 現像: 林龍次
- 音楽: 斎藤高順
- 衣裳: 斎藤耐三
- 出演: 笠智衆(父/平山周吉)/東山千榮子(母/平山とみ)/原節子(次男昌二の嫁/平山紀子)/杉村春子(長女/金子志げ)(第8回毎日映画コンクール女優助演賞)/山村聰(長男/平山幸一)/三宅邦子(幸一の妻/平山文子)/香川京子(末女/平山京子)/東野英治郎(周吉の知人/沼田三平)/中村伸郎(志げの夫/金子庫造)/大坂志郎(三男/平山敬三)/十朱久雄(周吉の友人/服部修)/長岡輝子(服部の妻/服部よね)/櫻むつ子(おでん屋の女)/高橋豊子(隣家の細君)/安部徹(敬三の先輩鉄道職員)/三谷幸子(紀子のアパートの女)/村瀬禪(幸一の子/平山實)/毛利充宏(幸一の子/平山勇)/阿南純子(美客院の助手/キヨ)/長尾敏之助/田代芳子/遠山文雄/戸川美子/三木隆/諸角啓二郎/新島勉/水木涼子/秩父晴子/糸川和広/鈴木彰三
※昭和28年度芸術祭参加作品
- 紀子3部作(晩春『麦秋』『東京物語』)の第3作目。
日常の出来事の中で誰もが向き合っていく別れを行間と言葉に思いを込めて、それぞれが持つ孤独を演出する最高傑作。
これほど行間と言葉に喜び・悲しみ・怒り・恥じらい・とまどい、遠慮を細やかに胸に深く浸透させる作品はない。
それが親・子・夫・妻・兄弟・婿・嫁・友・孫に投げかけられ問われるので、それぞれが共感し共鳴する。
老夫婦を軸に描き、あまり意識しないでやっている親不孝を深く厳しく入り込ませている。
静穏なモノクロの画面から淡々と、しかし明確に醸しだされる映像は感動を呼び起こす。
それが、正に、小津藝術の世界で、世界中の映画人に多大な影響を与え人々に評価され続ける所以だろう。[全文へ]
『東京物語』『明日は来たらず』がもとになっているといわれているように、アメリカ映画の影響を受けていた小津監督は、その中から独自の世界を創り出している。

長女の家にいられなくなった老夫婦が一休みしたのは、上野の寛永寺の輪王殿の横である。(2003.12.15貴田庄著『小津安二郎をたどる 東京・鎌倉散歩』青春出版社 参考)


毛利充宏、東山千榮子、笠智衆、村瀬禪、原節子、杉村春子、山村聰、三宅邦子


『東京物語』笠智衆、東山千栄子


『東京物語』山村聰、三宅邦子、笠智衆、原節子、杉村春子、東山千栄子


『東京物語』笠智衆、原節子、東山千栄子


『東京物語』東山千栄子、原節子、笠智衆


『東京物語』笠智衆、東山千栄子


『東京物語』東山千栄子、原節子


『東京物語』原節子


『東京物語』笠智衆、東山千栄子


『東京物語』笠智衆


『東京物語』原節子、笠智衆


『東京物語』原節子ら


『東京物語』香川京子、原節子


『東京物語』原節子、香川京子


『東京物語』原節子、香川京子


『東京物語』杉村春子、笠智衆、山村聰、大坂志郎、原節子、香川京子


『東京物語』笠智衆、原節子


『東京物語』笠智衆


『東京物語』撮影スナップ 原節子、小津安二郎監督ら


『東京物語』

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1956

『早春』(白黒)(松竹大船)(キネマ旬報第6位)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 山内静夫
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 浜田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 加藤政雄
- 現像: 林龍次
- 編集: 浜村義康
- 音楽: 齋藤一郎
- 衣裳: 長島勇治
- 出演: 淡島千景(杉山昌子)/池部良(正二)/高橋貞二(青木大造)/岸恵子(金子千代)/笠智衆(小野田喜一)/山村聰(河合豊)/藤乃高子(青木テルミ)/田浦正巳(北川幸一)/杉村春子(田村たま子)/浦邊粂子(北川しげ)/三宅邦子(河合雪子)/東野英治郎(服部東吉)/三井弘次(三井秀夫)(平山)/加東大介(坂本)/須賀不二夫(田辺)/田中春男(野村)/中北千枝子(富永栄)/山本和子(本田久子)/永井達郎(田村精一郎)/諸角啓二郎(辻)/中村伸郎(荒川総務部長)/宮口精二(三浦勇三)/長岡輝子(母/さと)/菅原通済(菅井のツーさん)/谷崎純/村瀬禅/山本多美/長谷部朋香/井上正彦/今井健太郎/佐々木恒子/山田好二(山田好一)/杉田弘子/川口のぶ/太田千恵子/竹田法一/島村俊雄/南郷佑児/千村洋子/末永功/峰久子/鬼笑介/佐原康/稲川善一/松野日出夫/鈴木康之/叶多賀子/千葉晃/中山淳二


『早春』岸恵子、池部良

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1957

『東京暮色』-Tokyo Twilight-(白黒)(松竹大船)
- 監督: 小津安二郎
- 企画: 山内静夫
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 浜田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 青松明
- 装置: 高橋利男
- 装飾: 守谷節太郎
- 衣裳: 長島勇治
- 現像: 林龍次
- 編集: 浜村義康
- 音楽: 斎藤高順
- テーマ曲: ♪サセレシア
- 出演: 原節子(沼田孝子)/有馬稲子(杉山明子)/笠智衆(杉山周吉)/山田五十鈴(相馬喜久子)/高橋貞二(川口登)/田浦正巳(木村憲二)/杉村春子(竹内重子)/山村聰(関口積)/信欣三(沼田康雄)/藤原釜足(下村義平)/中村伸郎(相馬栄)/宮口精二(判事/和田)/須賀不二夫(富田三郎)/浦辺粂子(「小松」の女主人)/三好榮子(女医/笠原)/田中春男(「小松」の客)/山本和子(前川やす子)/長岡輝子(家政婦/富沢)/櫻むつ子(バアの女給)/増田順二(バアの客)/山田好二(山田好一)(警官)/長谷部朋香(松下昌太郎)/島村俊雄(「お多福」のおやぢ)/森敦子(沼田道子)/石井克二(菅井の店の小店員)/菅原通済(菅井の旦那)/山吉鴻作(銀行の重役)/川口のぶ(銀行の給士)/空伸子(銀行の給士)/伊久美愛子(うなぎ屋の少女)/城谷皓二(麻雀屋の客)/井上正彦(麻雀屋の客)/末永功(麻雀屋の客)/秩父晴子(義平の細君)/石山龍嗣(深夜喫茶の客)/佐原康(深夜喫茶の客)/篠山正子(深夜喫茶の客)/高木信夫(深夜喫茶の客)/中村はる江(深夜喫茶の客)/寺岡孝二(深夜喫茶の客)/谷崎純(取調べを受ける中老の男)/今井健太郎(受付の警官)/宮幸子(笠原医院の女患者)/新島勉(バアの客)/朝海日出男(バアの客)/鬼笑介(バアの客)/千村洋子(町の医院の看護婦)
- 妻に逃げられた父親と二人の娘は、それぞれ悩みを抱えて生活していた。
(孝子)は夫の態度に苦しみ娘を連れて帰ってきていた。妹(明子)は男に騙されて妊娠していた。そこに駆け落ちしていた母親が戻ってきた。
孝子は、明子に母の秘密を知られないようにしようとするが…
『東京暮色』は、重苦しく切ない作品であるが小津監督は明るくテンポのいい音楽を斎藤高順に希望したそうだ。
そうして出来上がったのが♪サセレシアで小津監督の一番お気に入りの曲となった。
どんなに悲しいことがあっても、空は何時ものように晴れているという考えの小津監督は、場面を誇張することなく演出した。[『東京暮色』へ]
※明子役は当初、岸恵子を考えていたそうだが、フランスの監督との結婚のために実現できなかったそうだ。


『東京暮色』原節子、山田五十鈴


『東京暮色』笠智衆原節子ら


『東京暮色』山田五十鈴、原節子


『東京暮色』

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1958

『彼岸花』(松竹大船)(キネマ旬報第3位)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 山内静夫
- 原作: 里見*(*=弓と享)
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 浜田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎(第13回毎日映画コンクール録音賞)
- 照明: 青松明
- 編集: 浜村義康
- 音楽: 斎藤高順
- 衣裳: 長島勇治
- 出演: 佐分利信(平山渉)/田中絹代(平山清子)/山本富士子(佐々木幸子)/有馬稲子(平山節子)/久我美子(三上文子)/佐田啓二(谷口正彦)/高橋貞二(近藤庄太郎)/桑野みゆき(平山久子)/笠智衆(三上周吉)/浪花千栄子(佐々木初)/渡辺文雄(長沼一郎)/中村伸郎(河合利彦)/北龍二(堀江平之助)/高橋とよ(「若松」の女将)/櫻むつ子(女給アケミ)/長岡輝子(派出婦/富沢)/十朱久雄(曽我良造)/須賀不二夫(列車給士)/江川宇礼雄(同窓生/中西)/菅原通済(同窓生/菅井)/竹田法一(同窓生/林)/小林十九二(同窓生A)/今井健太郎(駅員A)/井上正彦(駅員B)/川金正直(花婿)/清川晶子(花嫁)/空伸子(女事務員)/千村洋子(看護婦)/末永功(バーテン)/峰久子(女給A)/鬼笑介(社員A)/伊久美愛子(店屋の女中)/佐々木恒子(店屋の女中)/橘一枝(「佐々木」の女中)/川村耿平(披露宴司会者)/長谷川雅山(披露宴来賓客)/空伸子
- 初のカラー作品でドイツ製のカラーフイルム、アダファカラーを使う。その後の作品もアダファカラーを使う。


『彼岸花』有馬稲子、山本富士 子、久我美子


『彼岸花』有馬稲子、田中絹代

文部大臣賞受賞
11月、紫綬勲章受賞

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1959

『お早よう』(松竹大船)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 山内静夫
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 浜田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 青松明
- 編集: 浜村義康
- 音楽: 黛敏郎
- 出演: 佐田啓二(福井平一郎)/久我美子(有田節子)/笠智衆(林敬太郎)/三宅邦子(民子)/杉村春子(原口きく江)/設楽幸嗣(林実)/島津雅彦(勇)/泉京子(丸山みどり)/高橋とよ(大久保しげ)/沢村貞子(福井加代子)/東野英治郎(宮沢汎)/長岡輝子(とよ子)/三好栄子(原口みつ江)/田中春男(辰造)/大泉滉(丸山明)/須賀不二夫(伊藤先生)/殿山泰司(押売りの男)/佐竹明夫(防犯ベルの男)/諸角啓二郎(巡査)/櫻むつ子(おでんやの女房)/竹田法一(大久保善之助)/千村洋子(佐久間先生)/白田肇(原口幸造)/藤木滿寿夫(大久保善一)/島村俊雄(おでんやの亭主)/菅原通済(客/通さん)


『お早よう』島津雅彦、笠智衆、設楽幸嗣、三宅邦子

『浮草』(大映京都)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 永田雅一
- 企画: 松山英夫
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 宮川一夫
- 美術: 下河原友雄
- 録音: 須田武雄
- 照明: 伊藤幸夫
- 色彩技術: 田中省三
- 装置: 原島徳次郎
- 装飾: 岩見岩男
- 編集: 鈴木東陽
- 音楽: 斎藤高順
- メークアップ: 牧野隆
- 舞踊振付: 花柳寿恵幸
- 舞台指導: 上田吉二郎
- 出演: 中村鴈治郎(嵐駒十郎)/京マチ子(すみ子)/若尾文子(加代)/川口浩(本間清)/杉村春子(清の母/お芳)/野添ひとみ(小川軒のあい子)/笠智衆(相生座の旦那)/三井弘次(三井秀夫)(吉之助)/田中春男(矢太蔵)/入江洋吉(杉山)/星ひかる(木村)/潮万太郎(仙太郎)/浦辺粂子(しげ)/高橋とよ(あい子の母)/桜むつ子(梅廼家おかつ)/賀原夏子(八重)/島津雅彦(扇升の孫/正夫)/菅原通済(客)/伊達正(扇升)/丸井太郎(庄吉)/宮島健一/ジョー・オハラ/花布辰男/丸山修/佐々木正時/三角八郎/山口健/酒井三郎/松村若代/新宮信子/中田勉/杉田康/竹里光子/潮万太郎/入江洋吉/飛田喜佐夫/志保京助/杉森麟/南方伸夫/竹内吾郎/藤村善秋
※昭和34年度芸術祭参加作品
- 『浮草物語』のリメイク。


『浮草』若尾文子、京マチ子、川口浩

春、芸術院賞受賞
小津監督が「映画に“文法”はない」と語っている興味深い内容を紹介する。
「私が浦 田の撮影所へ入って映画修業を始めたのは大正も末の頃だった。いわゆる活動写真がようやく映画らしいものになりかけた頃で、まだ映画というものが、さきざ き、どんなものになるかわからない時代であった。それでわれわれ若い連中は、四六時中、映画について論じ合ったものである。酒を飲んでも映画を語り、常設 館へ行っても、暗がりの中で一生懸命心覚えのノートをとったりしたものだ。このごろでは、映画を見てもただ面白がって見てしまうけれど、その時分は、どこ で場面が変ったとか、どんな撮り方をしているとか、そんな緊張した見方であったから、見ていてもたいして面白くもなかった。
ちょうど その頃、アメリカでビクター・フリイブルグが「映画制作法」を出し、これが翻訳もされて、大いに騒がれたりした。映画には文学的要素と絵画的要素と音楽的 要素がある。だから映画は芸術であるというような、変哲もない本質論なのである。いまから思うとつまらぬことを、わざわざ難しく書いているような本だ。こ のコンニャクは、醤油もしみているし、砂糖もきいているし、唐がらしもちょいときいているから、これはうまいというような話だ。
しかしこ のフリイブルグの「映画制作法」が騒がれたのも無理はなかったのである。その少し前まではー私の先輩たちの時代になるわけだがー活動写真の時代で、主人公 は、女なら花子さん、男なら武夫さんと決っていたものだ。外国の映画ならメリーさんに、ロバート君というわけだ。それで清水宏だったかが『泣きぬれたマイ ア』という題を考えたところが、会社の重役から、マイアというのは西洋人の女だろう、それなら『泣きぬれたメリー』に変え給えと言われた。マリアがメリー になってしまっては、話がだいぶ違ってきてしまう。また『道頓堀行進曲』が流行った頃のことで、チルチル、ミチルの『青い鳥』を翻案映画化するとき、『青 い鳥』だけでは淋しいから『青い鳥、赤い鳥』にしろという注文が出たという話もあり、そんな時代だったのである。いまになって思うと、それはそれで捨て難 いまことに楽しい時代には違いなかったけれども、芸術などとは、およそ無縁の世界だったのである。
その時分に見て感激した映画に、ルビッチの作品がある。それまでの映画は善玉と悪玉があって追っかけっこをする。結局は善玉が勝つに決っているのだが、悪玉に負けそうになり、追いつ追われつすると いうような筋書きで、背景には西部の町が出てきたり、雪のアラスカが出てきたり、話は似たりよったりで、ただ、背景の違いだけであった。それがルビッチの ものとなると一歩前進して、人間の感情だとか、心境といったものが描き出されてきて、それが迫ってくることだった。いまの人には、そんなことは別に驚きで もなんでもないだろうが、その頃としては大変な革命だった。無声映画の当時のことだから、しゃべったり、独白があるわけでもないのに、悲しさや、よろこび が迫ってくるのだ。それも、ただ悲しいというだけのことでなく、笑いながら、実は悲しいのだという複雑なニュアンスが、ルビッチや、チャップリンや、モンタ・ベルなどの映画にはあった。
それ以後、そうしたソフィスティケートなものが映画に多くとりあげられるようになって、それからまた前進して映画も、文学でやっているような、人間表現とか、性 格追求というようなテーマを持つように成長した。さらに映画は、文学では出来ないような、映画独自のテーマ、集団的な動き、記録的な迫力を追求するように なるのだが、それはずっと後のことだ。
若い時分 に見て感激した映画はいくつもあるが、折あって、後年再び見ると、案外につまらないという経験がしばしばある。最初に見たときの印象というものが記憶の中 で昇華され、美化され、頭の中で、どんどん育って行ってしまい、それは映画自体とは別個のイメージになってしまっているからだろう。トーキー初期の傑作と 言われる『モロッコ』な ども、数年経って、もう一度見てみると、あそこはアップだったと思っていた場面が、据えッ放しで、ガラガラ回されていたりして、まるで印象が違っている。 芥川龍之介の小説に『秋山図』というのがあるが、その主人公ではないが、以前に感激した作品を、後年になってみて、これは狐狸のなせる業ではないかと思う ようなことは、よくあることだ。それは見る側の美意識とか、環境とか、時代感覚とかが変ってくるせいもあるだろうが、やはり、映画という芸術がメカニズム において、日進月歩しているために、『秋山図』の思いが、殊に強いのであろう。

アメリカの有名な監督であるグリフィースが、クローズ・アップの手法を初めて使ったのは、もう大昔のことだ。なんのことはない、歌舞伎で使う“面明り”的な 演出を、もっと大胆に映画に使っただけのことであったが、しかし、悲しいときに、ハンカチを握りしめている手を大きく写すというこの手法は、当時として は、驚くべき新鮮な表情だったのである。やがてクローズ・アップは、撮影技術の発達とともに、表情の微妙な動きをとらえるようになって、感情表現の盛りあ げにはクローズ・アップを用いるというのが、一つの“文法”化されるようになった。
だが、私は悲しいときに、それを強調するためにクローズ・アップを用いることは、必ずしも効果的とは思わない。むしろ悲しすぎて逆効果になる場合もあるのではない か。だから、いざ悲しいという場面では、逆にロング・ショットに引いた方が、悲しさを押しつけがましいものにしなくて済むー説明でなく、少なくとも表現に なると考えている。そして、私は何を強調するということがないシーンでも、クローズ・アップを用いることがある。それはロングだと背景が広く入るために、 背景の処理がめんどうになる、そこで周囲を消すためにクローズ・アップにするというわけだ。クローズ・アップには、そういう効用もあると思う。その他テン ポを刻む場合や色々の場合がある。だから、グリフィース的クローズ・アップをもって一つの“文法”のように考えるのは、どうも窮屈すぎるような気がするの である。
こういう “文法”的な考え方は、何もクローズ・アップに始まったことではない。日本で映画が企業として、とりあげられるようになったころ、アメリカから、栗原トー マス氏が来て、いろいろな映画技術を伝えられた。このときに“文法”的な受け取り方をしたのが、金科玉条の映画文法論の始まりらしい。
たとえ ば、こういう文法がある。AとBが対話をしているところを、交互に、クローズ・アップでとるときに、カメラはAとBとを結ぶ線をまたいではならないという のだ。つまりABを結ぶ線から、少し離れたところからAをクローズ・アップする。すると画面に写ったAの顔は左向きになっている。こんどは、ABを結ぶ線 の同じ側で、前とは対照的な位置にカメラを移してBをクローズ・アップする。すると、Bは画面では右向きとなるわけだ。両者の視線が客席の上で交差するか ら、対話の感じが出るというわけだ。もし、ABを結ぶ線をまたいだりすると、絶対に対話でなくなるというのである。
しかし、 この“文法”も、私に言わせると何か説明的な、こじつけのように思えてならない。それで私は一向に構わずABを結ぶ線をまたいでクローズ・アップを撮る。 すると、Aも左を向くし、Bも左を向く、だから、客席の上で視線が交るようなことにはならない。しかしそれでも対話の感じは出るのである。
おそらく、こんな撮り方をしているのは、日本では私だけであろうが、世界でも、おそらく私一人であろう。私は、こんなことをやり出して、もう三十年になる。それ で私の友人たちー故山中貞雄とか稲垣浩、内田吐夢などーは、どうも私の映画は見にくいと言う。撮り方が違っているからである。では終りまで見にくいかと聞 くと、いや初めのうちだけで、すぐに慣れるという。だから、ロング・ショットで、ABの位置関係だけ、はっきりさせておけば、あとはどういう角度から撮っ てもかまわない。客席の上での視線の交差など、そんなに重要なことではないようだ。どうも、そういう“文法”論はこじつけ臭い気がするし、それにとらわれていては窮屈すぎる。もっと、のびのびと映画は演出すべきものではないだろうか。

何 か新しい技法が導入されると、すぐさま何々論といった考え方をして“文法”化されるというのは、どうしたことだろう。たとえばフェイド・イン、フェイド・ アウトにしてもそうである。ここで一日が終っているのだからフェイド・アウトで暗くしなければならなぬ。日が経たない。あるいは画面が始まるところは必ず フェイド・インにしなければならぬ。昔はそれにアイリス・イン、アイリス・アウトといって丸く絞るようなことも行われていた。
しかし、そういうものは映画作家が考え出したものではなく、撮影機械の一つの機能に過ぎない。シャッターの調節で、ボタンを押せば閉じていたものがぐっと広く開く。それが画面に現われたものがフェイド・インである。
つまり、 機械の機能が画面に現われただけのフェイド・イン、アウトを、まるで“文法”の如く考えて、この場合はどうすべきだなどと、まことしやかに言う人がいるの だが、これは実に無定見な話だ。文法でもなんでもない、機械の属性である。あたかも本の第一章が始まる前に、一枚よけいにページをさしはさむといった類のことなのだ。
そういう点では、私はー他人様には、非常にオーソドックスな方法論者のように思われているけれどもーなかなかにへそ曲りな演出者なのである。フェイド・イン、フェ イド・アウトは、オーバーラップもそうだが、ここ二十五六年一度も使ったことはない。そんなものを使わなくても、感じはちゃんと伝えられると思っている。
私がもと もとへそ曲りだったから、文法否定論者になったのには違いないが、しかし、私の映画修行時代は、文法論が、また、あまりにもやかましかったのである。ある 評論家は、映画に文法が厳然とあるが如き口ぶりをして、その文法にはずれた演出は、映画ではないとまでこき下ろしていた。その頃の映画鑑賞の手引のような 本などを読むと、たとえばオーバーラップは、こういうもので、こういうときに用いるなどと書かれている。これは鑑賞者のための本なのだが、一般のお客さん は、それを読んで、オーバーラップがないのは、その監督が映画の文法を知らないのではないかと思うに違いない。そこで演出者の方も、では、このへんに一ヶ 所オーバーラップを入れようかということになる。誰のための文法なのだか、これではさっぱり解らなくなる。
文学の場 合の“文法”というのは、いわば人間の生理につながった問題だと思う。動詞の活用形を間違ったりすると、読みにくいし、テンスもわからない。そういう生理 的なものは尊重しなくてはならない。しかし、映画でいう。“文法”というのは、何か演出上の特殊な技術の問題で、観客の生理に直接つながっていない。それ に、いまは観客の方もなかなか目がこえてきている。映画館などへ行っても、昔だったらとてもこういう場面ではお客は笑わなかったと思われるところで、実に よく笑っている。非常に細かい反応ぶりにこっちが驚くようなことがたびたびである。つまり観客自体の方が、映画的な感覚を身に余るほど持っているのだ。だ から評論家が、これは“文法”にはまったいい演出だとほめたところで、観客の方は正直で、“文法”どおりの窮屈な画面にはたちまち退屈してしまう。観客を ひきずってゆくものは、観客の生理と結びついた映画感覚であって、技術の上の文法などというものではない。文章の場合にしても、文法にかなったもの必ずし も名文とは限らない。やはり文学的な感覚の問題ではないだろうか。
映画的な 感覚といっても、難しい問題ではない。観客の生理に、いかに訴えかけるかということだ。この観客の生理を無視してしまったら、動詞の活用形を違えたのと同 じに、混乱するばかりで、表現にはならない。たとえば、さっきのABの対話の場面にしても、クローズ・アップの向きはどうでもよいが、対話者の位置関係は 説明しておかなければ、観客は混乱して、映画の中に入れない。そういう意味での観客生理との結びつきが重要だというのである。
 このごろ 知人たちの中で8ミリや小型映画をやっている連中がいて、来て批評してくれなどというので、行ってみると、ピクニックか何かで、一家団らんの様子が写って いるらしいのだが、それが団らんの感じになっていない。子供はこっちを向いてお菓子をねだっているのに、母親はあらぬ方を向いて菓子を渡している。距離感 や位置関係が、さっぱり観ている側に解らないのだ。それではどうしたらいいかと言えば、それは各人各説いろいろあるだろうが、私だったら、まず、母親の肩 ごしに子供を写す。そうして、それから母親と子のアップをとる。
私は映画的感覚の基本は、自分が先ずこう思い、この思いが観客生理に、いかに訴えかけるか、どうかにあると思う。ここから、すべてが出発するのだ。こんなことは、なんでもないことで、ナイーヴな感覚の持主なら、誰だって、そう思うに違いない。
ところが、学校を出て、新鮮な映画感覚をあふれるほどにもった若い人が、撮影所に入り、助監督生活を、十年近くもつづけてゆくうちに、いつの間にか自分の感覚を すりへらす結果になって、ようやく一本立ちして監督になったときには、まわりの空気に同化して、自分の映画感覚に自信が持てなくなり、そこで何か演出の方 程式に頼ろうとする。すると金科玉条の文法論に従うのが安全な道ということになる。観客の方は、とっくに卒業してしまっているのに、映画作家の方が、未だに文法論から抜け出せず、月並みな演出ばかりを繰り返すというのは、まさに悲劇的なことだ。
私などは 当時としては割合遅く監督になった方だが、それでも二十四歳だった。まだ遊びたい盛りで、監督になったために、家族といっしょに夕飯もゆっくり食べること も出来ず、自分だけ二階にとじこもって、明日の準備をしなければならない身の不幸を嘆いたりしたものだった。それにくらべて、いまの人は、監督になりたい のに、なかなかしてくれない。五年、十年の修業中には、その肝腎の映画感覚まですりへらすという結果になって、なんとも気の毒な話だ。若い人たちに同情は するのだけれど、しかし感覚の枯渇を“文法”でごまかされたのでは、金を払って見られる観客に申し訳ないことだし、映画芸術の将来を思うと、これでは寒心 に耐えない。その点、最近フランスに二十代作家が続々登場して問題作を製作しているというニュースは楽しい。日本でも、そういう若い作家の若い感覚によっ て新しい映画が生まれることを期待したいものだ。そういう意味からも、私は、映画に文法はないということを強調したいのである」(談話・文責記者)(「芸術新潮」昭和34年4月号)(田中眞澄編1993.9.20[1989.5.1]「小津安二郎戦後語録集成 昭和21(1946)年-昭和38(1963)年」フィルムアート社より 抜粋)
秋、映画の日、特別功労賞受賞

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1960

『秋日和』-Late Autumn-(松竹大船)(キネマ旬報第5位)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 山内静夫
- 原作: 里見*(*=弓と享/とん)
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春
- 美術: 浜田辰雄
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 石渡健蔵
- 編集: 浜村義康
- 装置: 高橋利男
- 装飾: 石井勇
- 音楽: 斎藤高順
- 衣裳: 杉山利和
- 美粧: 杉山和子
- 出演: 原節子(三輪秋子)/佐分利信(間宮宗一)/司葉子(秋子の娘/アヤ子)/岡田茉莉子(佐々木百合子)/佐田啓二(後藤庄太郎)/桑野みゆき(間宮の娘/路子)/三上真一郎(平山の息子/幸一)/笠智衆(三輪周吉)/中村伸郎(田口秀三) /三宅邦子(田口の妻/のぶ子)/沢村貞子(間宮の妻/文子)/北竜二(平山精一郎)/渡辺文雄(杉山常男)/千之赫子(高松重子)/田代百合子(田口の娘/洋子)/須賀不二男(須賀不二夫)(旧部下の社員)/高橋とよ(若松の女将)/桜むつ子(佐々木ひさ)/十朱久雄(桑田種吉)/南美江(桑田の妻栄)岩下志麻(受付係)/菅原通済(すし屋の客)/設楽幸嗣(田口の息子/和男)/島津雅彦(間宮の息子/忠雄)/竹田法一(ひさの夫/芳太郎)/長谷部朋香/城谷皓治/末永功
※昭和35年度芸術祭参加作品
- 亡夫の7回忌を終えた美しい未亡人秋子とその娘で婚期を迎えたアヤ子に、亡夫の友人たちが波風を立てる。
味わいのある役者たちのユーモア溢れる会話が秀逸だ。
小津監督の手腕の賜物だろう。
巻き込まれた母娘の間の心の波風も細やかに描かれている。
『晩春』の父娘関係を母娘に置き換えている作品で、娘が嫁いでいった夜に寝支度を済ませた秋子が一人でポツリと座っている姿に涙が溢れて止まらなかった。
10数年前は母のことを思いながら泣いて観ていた私が、今は嫁がせる母となって泣いた。[『秋日和』へ]


『秋日和』原節子、司葉子


『秋日和』岡田茉莉 子、原節子、司葉子


『秋日和』司葉子、岡田茉莉 子、原節子


『秋日和』中村伸郎、北竜二、 佐分利信、岡田茉莉子


『秋日和』原節子、司葉子


『秋日和』佐分利信、中村伸 郎、北竜二


『秋日和』原節子、司葉子


『秋日和

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1961

『小早川家の秋』-The End of Summe-(宝塚映画)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 藤本真澄/金子正且/寺本忠弘
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 中井朝一
- 美術: 下河原友雄
- 照明: 石井長四郎
- 録音: 中川浩一
- 整音: 下永尚
- 編集: 岩下広一
- 音楽: 黛敏郎
- 出演: 原節子(長男の嫁/秋子)/中村鴈治郎(小早川万兵衛)/森繁久彌(磯村英一郎)/司葉子(次女/紀子)/新珠三千代(長女/文子)(第16回毎日映画コンクール女優助演賞)/小林桂樹(文子の夫/久夫)/宝田明(寺本忠)/加東大介(北川弥之助)/団令子(つねの娘/百合子)/白川由美(中西多佳子)/山茶花究(店員/山口信吉)/藤木悠(店員/丸山六太郎)/杉村春子(加藤しげ)/望月優子(農夫の妻)/浪花千栄子(佐々木つね)/笠智衆(農夫)/東郷晴子(北川の妻/照子)/環三千世(ホステス)/島津雅彦(文子の息子/正夫)/遠藤辰雄(万兵衛の弟)/内田朝雄(医者)/早川恭二
※昭和36年度芸術祭参加作品
- 造り酒屋を営む一家の人間ドラマ。女好きの万兵衛役の中村鴈治郎や店員山口役の山茶花究などの関西弁が心地よい。
また、原節子の佇まいが美しい。[『小早川家の秋』へ]


『小早川家の秋』司葉子、原節子


『小早川家の秋』原節子、新珠三千代、司葉子

春、芸術選奨受賞アジア映画祭監督賞受賞

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1962

『秋刀魚の味』-An Autumn Afternoon-(松竹大船)(キネマ旬報第8位)
- 監督: 小津安二郎
- 製作: 山内静夫
- 脚本: 野田高梧/小津安二郎
- 撮影: 厚田雄春(第17回毎日映画コンクール撮影賞)
- 美術: 浜田辰雄/荻原重夫
- 録音: 妹尾芳三郎
- 照明: 石渡健蔵
- 編集: 浜村義康
- 音楽: 斎藤高順
- 出演: 笠智衆(父/平山周平)/岩下志麻(平山路子)/佐田啓二(兄/平山幸一)/岡田茉莉子(その妻/秋子)/杉村春子(佐久間の娘/伴子)/加東大介(坂本芳太郎)/菅原通済(同窓生/菅井)/緒方安雄(同窓生/緒方)吉田輝雄(三浦豊)/牧紀子(田口房子)/三上真一郎(弟/平山和夫)/中村伸郎(河合秀三)/東野英治郎(恩師“ヒョータン”/佐久間清太郎)(第17回毎日映画コンクール男優助演賞)/三宅邦子(妻/のぶ子)/岸田今日子(かおるのマダム)(第17回毎日映画コンクール女優助演賞)/環三千世(後妻/タマ子)/高橋とよ(若松の女将)/北竜二(堀江晋)/浅茅しのぶ(秘書/佐々木洋子)/織田政雄(同窓生/渡辺)/須賀不二男(須賀不二夫)(酔客A)
※昭和37年度芸術祭参加作品
- 小津監督の遺作。
恩師“ヒョータン”佐久間清太郎(東野英治郎)とその娘伴子(杉村春子)の姿を通して、男で一つで育ててきた娘路子(岩下志麻)を嫁に出すまでの父親平山周平(笠智衆)の心情と、嫁に行く娘路子(岩下志麻)の心情を細やかに描く。
父佐久間(東野英治郎)の世話をしているうちに婚期を逃した娘伴子(杉村春子)の苛立つ姿を見た平山周平が、佐久間の娘のように世話をしてくれている娘路子(岩下志麻)の結婚を真剣に考える。
周平が突然、路子に結婚話を持ち出す。
だが、その話というのは父親(笠智衆)の世話を優先させ結婚に踏み込めなかった相手で、その男は待ちきれずに他の女と結婚することが決まっていたのだ。
それを聞いた周平の心情と、この時期に持ち出された結婚話に複雑な表情を見せる娘が映し出される。
見事な演出だ。
『晩春』と同じような設定であるが、父親(笠智衆)に恩師佐久間(東野英治郎)父娘の姿を見せることによってより重く迫ってくる。

また、海軍時代駆逐艦あさかぜに乗っていた一等兵曹の坂本(加東大介)が、あさかぜの艦長周平(笠智衆)を誘ってトリスバーへ行き♪軍艦マーチを聞きながら行進する。
それを見ている周平(笠智衆)とトリスバーのマダム(岸田今日子)が、坂本の敬礼に応えるシーンがいい。[『秋刀魚の味』へ]


『秋刀魚の味』岩下志麻、笠智衆


『秋刀魚の味』岸田今日子、佐田啓二、笠智衆


『秋刀魚の味』岡田茉莉子、笠智衆、岩下志麻、佐田啓二

2月4日、母(あさゑ)死去。

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1963

2月13日、映画人として初の芸術院会員となった大祝賀パーティ を、ホテル・オークラにて催す。
3月27日、蓼科下山、築地ガンセンターに入院。
7月一時退院、半月ほど湯河原にて静養した甲斐もなく自宅に帰り、8月、9月と自宅にて病臥、病勢悪化するのみ。
12月12日お茶の水医科歯科病院に入院したが、不帰の客となる。奇しくも60才還暦の日であった。
12月16日、葬儀が築地本願寺で、松竹、監督協会合同葬にて盛大にいとなまれた。
勲四等
東京映画記者会 より日本映画文化賞
NHKより特別賞を贈られた。
第18回毎日映画コンクール特別賞(多年にわたり日本映画に尽くした功績)

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1992
 
[評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテン]英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) ゲームの規則(ジャン・ルノワール) 東京物語(小津安二郎) めまい(ア ルフレッド・ヒッチコック) 捜索者(ジョン・フォード) アタランタ号(ジャン・ヴィゴ)
裁かるるジャンヌ (カール・テオドール・ドライエル)
大地のうた(サタジット・レイ)
戦艦ポチョムキン(セルゲイ・エイゼンシュテイン)
-
-
-
2001年宇宙の旅(スタ ンリー・キューブリック)
※1992.11.16  英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌は、評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテンを発表。
第3位に『東京物語』が入った。 その後も、常に上位に入っている。

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1993

『小津と語る』-Talking with Ozu-(松竹)
- 監督: 監督  田中公義
- 製作: 山内静夫
- 製作総指揮: 奥山融
- プロデューサー: 八木ケ谷昭次/大嶺俊順
- 撮影: 川又昂/羽方義昌
- 音楽: 斎藤高順
- 編集: 大島ともよ
- 録音: 橋本泰夫
- 小津安二郎生誕90周年(及び没後30周年)を記念して企画されたドキュメンタリー。『東京物語』リバイバルと併映された40分のショート・バージョンと、80分のロング・バージョンがある。
スタンリー・クワン、侯孝賢(ホウ・シャオシエン)、ヴィム・ヴェンダース、リンゼイ・アンダーソン、アキ・カウリスマキ、ポール・シュレイダー、クレール・ドニの7人の監督にインタビュー形式で、それぞれに小津への思いを語ってもらっているフィルム。
「小 津作品は、私の成長を促し、また啓発を与えてくれました。小津作品を見続けてきて、そこで語られるのが日本の家庭あっても、登場人物にはっきりと普遍性が 見出せます。小津作品に私が見出すものは、父、母、そして私の弟妹たちであり、時に自分自身の姿でさえありました。それは鏡のようで、水に映る影ともいえ ます。 スタンリー・クワン
「小津監督は、どこか数学者のようです。彼は当時の日本人の生活を把握していて、それも透徹している。まるで冷静な解剖、解析をする人であって、つまり数学者なわけです。
私は小津作品をみて強い啓示を与えられました。日本のあの時代に、小津監督のような存在があったこと、それは幸運なことでした。 侯孝賢(ホウ・シャオシエン)
「この映画監督の墓にお参りすることは、私にはとても大切なことです。なぜなら彼は映画を20世紀の芸術として誰も真似のできない再現不可能な美にまで高めた からです。彼の作品は私にとって映画の聖域です。だからお墓参りは巡礼のようなものです。小津を知り、彼の映画こそ世界中の言語だと確信しました。 ヴィム・ヴェンダース
「映画は時間が経つと時代遅れになるという人がいますが、私はそうは思いません。特に、古典的に作られ、小津監督の精神で作られた映画は違います。彼の人生に 対する偉大な理解は、今もその作品の中に生きています。それは誠実に生きることへの理解であり、また彼のユーモアに皮肉はありません。だからこそ偉大な映 画監督の作品として生き続けるのだと思います。 リンゼイ・アンダーソン
「76年、兄にロンドンで強引に見せられたのが『東京物語』です。その時から、私は文学への憧れを捨てて赤いヤカンを探すことにしました。アメリカ映画の影響を 受けて育った私が、小津監督を尊敬するのは、人生の根源を描くとき、一度として殺人や暴力や銃を使わなかったことです。
私の墓には“生まれてはみたけれど”と刻みます。 アキ・カウリスマキ
「小津作品は私のみならず、同世代の映画作家に、映画が見るものに影響を与える手法について、いわゆる映画的な手法すなわちエネルギッシュな手法ではない、 もっと静かで興味深い手法があることを示してくれたのです。私は小津と他の映画作家の共通点を追求し、小津に取りつかれてしまいました。 ポール・シュレイダー
「小津監督の作品を初めてみた時、いわゆる通俗的な意味で映画が語りかけてくるというのではなく、何か私自身に訴えてくるものを感じました。 クレール・ドニ
 (小津安二郎生誕90周年記念作品『 小津と語る』より)

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1995
 
[日本映画オールタイ ム・ベストテン]映画100年特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
作品
東京物語(小津安二郎) 七人の侍(黒澤 明) 浮雲(成瀬 巳喜男) 人情紙風船(山中 貞雄) 西鶴一代女(溝口 健二) 飢餓海峡(内田 吐夢) 羅生門(黒澤 明) 生きる(黒澤 明) 丹下左膳餘話・百万両の壷(山中 貞雄) 幕末太陽傳(川島 雄三)
監督
小津安二郎 黒澤明 溝口健二 大島渚
成瀬巳喜男

-
市川崑 川島雄三 内田吐夢 山中貞雄
木下恵介
岡本喜八
鈴木清順

-
男優
森雅之 三国連太郎 笠智衆 三船敏郎 高倉健 市川雷蔵 石原裕次郎 松田優作
勝新太郎

-
志村喬
阪東妻三郎
大河内傳次郎
女優
原節子
山田五十鈴
-
高峰秀子 田中絹代 若尾文子 京マチ子 岸恵子 藤純子 香川京子 久我美子
吉永小百合
※キネマ旬報 臨時 増刊 1995.11.13号
1995年の[日本 映画オールタイム・ベストテン]映画100年特別企画は、映画100年を総括する特別企画として、評論家・作家・ジャーナリストなど104人の選考委員の 全体点数(各個人選出ベストテンの第1位を10点、第2位を9点、以下第10位を1点)を集計、合計数の多い作品 から抽出するという方法で、映画史を通 じての日本映画ベストテンを発表した。
 
[世界映画オールタイム・ベストテン]映画100年特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
作品
世界
七人の侍(黒澤明) 市民ケーン(オーソン・ウェルズ)
2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック)
東京物語(小津安二郎)
天井桟敷の人々(マルセル・カルネ)

戦艦ポチョムキン(セルゲイ・M・エイゼンシュテイン)
駅馬車(ジョン・フォード)
ウエスト・サイド物語(ロバート・ワイズ)
甘い生活(フェデリコ・フェリーニ) 大いなる幻影(ジャン・ルノワール)
※キネマ旬報 臨時 増刊 1995.11.13号
[オールタイム・ベストテン](世界映画編)映画100年特別企画は、映画100年を総括する特別企画として、評論家・作家・ジャーナリストなど104人、113人の選考委員の全体点数(各個人選出ベストテンの第1位を10点、第2位を9点、以下第10位を1点)を集計、合計数の多い作品 から抽出するという方法で、邦画・洋画を問わない映画史を通じての世界映画ベストテンを発表した。(臨時増刊No.1176号、No.1173号においてアンケート結果を発表)

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1999
 
[映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キネマ旬報創刊80周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
日本
七人の侍(黒澤明) 浮雲(成瀬巳喜男) 飢餓海峡(内田吐夢)
東京物語(小津安二郎)
-
幕末太陽傳(川島雄三)
羅生門(黒澤 明)
-
赤い殺意(今村昌平) 仁義なき戦い(シリーズ)(深作欣二)
二十四の瞳(木下恵介)
-
雨月物語(溝口健二)
外国
第三の男(キャロル・リード) 2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック) ローマの休日(ウィリアム・ワイラー)
アラビアのロレンス(デヴィッド・リーン)
風と共に去りぬ(ヴィクター・フレミング) 市民ケーン(オーソン・ウェルズ) 駅馬車(ジョン・フォード)
禁じられた遊び(ルネ・クレマン)
ゴッドファーザー(フランシス・フォード・コッポラ)
(フェデリコ・フェリーニ)
-
-
-
※1999
[映画人が選ぶオールタイム・ベストテン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊80周年記念特別企画は、従来の映画評論家を中心にしたアンケートとは異なり、監督、プロデューサー、脚本家、撮影監督など、実際に日本映画の製作に携わる映画人(140人、144人)に、それぞれのベスト作品10本を順不同で選んでもらう選考方法。(1999年10月下旬号、10月上旬号においてアンケート結果を発表)

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2000

[日本・外国映画20世紀の映画スター、映画監督オールタイム・ベストテン]特別企画

/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
監督
日本
黒澤明 小津安二郎 溝口健二 木下恵介 成瀬巳喜男 山田洋次 市川崑
内田吐夢
大島渚
深作欣二
-
-
-
男優
日本
三船敏郎 石原裕次郎 森雅之 高倉健 笠智衆 市川雷蔵 勝新太郎
阪東妻三郎
-
渥美清
中村錦之助(萬屋錦之介)
森繁久彌

-
女優
日本
原節子 吉永小百合 京マチ子 高峰秀子 田中絹代 山田五十鈴 夏目雅子 岸恵子
若尾文子
-
岩下志麻
藤純子(富司純子)
監督
外国
アルフレッド・ヒッチコック フェデリコ・フェリーニ ジョン・フォード ジャン=リュック・ゴダール
スチィーヴン・スピルバーグ
チャー ルズ・チャップリン
ビリー・ワイルダー
-
-
-
ルキノ・ヴィスコンティ スタンリー・キューブリック ルイス・ブニュエル
男優
外国
ゲーリー・クーパー チャー ルズ・チャップリン
ジョン・ウェイン
-
マーロン・ブランド
アラン・ドロン
ジャン・ギャバン
-
-
ハンフリー・ボガート
スティーブ・マックイーン
-
ショーン・コネリー
ポール・ニューマン

-
女優
外国
オードリー・ヘプバーン マリリン・モンロー イングリッド・バーグマン ヴィヴィアン・リー マレーネ・ディートリヒ グレース・ケリー フランソワーズ・アルヌール
ベティ・デイビス
ジョディ・フォスター
グレタ・ガルボ
アンナ・カリーナ
ジャンヌ・モロー
ロミー・シュナイダー
エリザベス・テーラー
-
-
-
[20世紀の映画スター](日本編)特別企画、[20世紀の映画スター](外国編)特別企画は、評論家・作家・ジャーナリストなど74人の選考委員に20世紀を代表する男優、女優のそれぞれ3名ずつを選んでもらう選考方法。(2000年5月下旬号、6月上旬号においてアンケート結果を発表)
[20世紀の映画監督](日本編)特別企画、[20世紀の映画監督](外国編)特別企画は、評論家・作家・ジャーナリストなど104人、107人の選考委員に20世紀を代表する監督5名を選んでもらう選考方法。(2000年11月下旬号、11月上旬号においてアンケート結果を発表)

2002
 
[評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテン]英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) めまい
(アルフレッド・ヒッチコック)
ゲームの規則(ジャン・ルノワール) ゴッドファーザー(1972)/
ゴッドファーザーPart2
(1974)
東京物語(小津安二郎) 2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック) 戦艦ポチョムキン(セルゲイ・エイゼンシュテイン)
サンライズ(F・W・ムルナウ)


-
8 1/2(フェデリコ・フェリーニ) 雨に唄えば(ジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン)
※2002 英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌は、評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテンを発表。
第5位に『東京物語』が入った。

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2003

小津安二郎生誕100年記念として国内約16会場での上映と展示、2月のベルリン映画祭、4月の香港映画祭、秋にニューヨーク映画祭における特集上映、東京国立近代美術館フィルムセンター(2003/11/18(火)-2004/1/25(日))での一挙上映、NHKBS2にて至上初・現存37作品を一挙放映、衛星劇場(CS放送)の特集放送などがプロジェクトされた。(松竹公式ページ、NHKBS2小津安二郎生誕100年記念特集、『小津安二郎生誕100年記念 小津安二郎の藝術』チラシ 参考)

12月11・12日『小津安二郎生誕100年記念 国際シンポジウム「OZU 2003」』が有楽町朝日ホールで行われる。
ペドロ・コスタ、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、マノエル・デ・オリヴェイラ、吉田喜重(司会etcも)、青山真治、黒沢清、是枝裕和、崔洋一、澤井信一郎などの監督、ジャン=ミッシェル・フロドン、クリス・フジワラ、イム・ジェチョル、ノエル・シムソロ、シャルル・テッソンなど海外の評論家が2日間にわたって熱く討論した。
尚、アッバス・キアロスタミ監督は歯痛とのことで初日のみ参加し、小津監督に対する思いを語り退席した。
また、井上雪子、岡田茉莉子、淡島千景、香川京子らがゲストとして小津監督に対する思いや撮影現場でのエピソードを語った。
司会etcは、蓮実重彦、山根貞男、吉田喜重。(『小津安二郎生誕100年記念 国際シンポジウム』パンフレット 参考)
これを会場で見聞きした私は各国の監督、評論家が小津監督に尊敬の念を率直に語るのに対して、日本の若い監督たちは小津監督の撮影手法に重点を置き語っていると感じた。

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2009
 
[映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キネマ旬報創刊90周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
日本
東京物語(小津安二郎) 七人の侍(黒澤 明) 浮雲(成瀬 巳喜男) 幕末太陽傳(川島雄三) 仁義なき戦い(シリーズ)(深作欣二) 二十四の瞳(木下恵介) 羅生門(黒澤 明)
丹下左膳餘話・百万両の壷(山中 貞雄)
太陽を盗んだ男(長谷川和彦)
-
-
家族ゲーム(森田芳光)
野良犬(黒澤明)
台風クラブ(相米慎二)
外国
ゴッドファーザー(フランシス・フォード・コッポラ) タクシー・ドライバー(マーチン・スコセッシ)
ウエスト・サイド物語(ロバート・ワイズ)
-

第三の男(キャロル・リード)
勝手にしやがれ(ジャン・リュック・ゴダール)
ワイルドバンチ(サム・ペキンパー)
-

2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック)
ローマの休日(ウィリアム・ワイラー)
ブレードランナー(リドリー・スコット)
-
駅馬車(ジョン・フォード)
天井棧敷の人々(マルセル・カルネ)
(フェデリコ・フェリーニ)
めまい(アルフレッド・ヒッチコック)
アラビアのロレンス(デヴィッド・リーン)
暗殺の森(ベルナルド・ベルトルッチ)
地獄の黙示録(フランシス・フォード・コッポラ)
エル・スール(ビクトル・エリセ)
グラン・トリノ(クリント・イーストウッド)
※2009.11
[映画人が選ぶオールタイム・ベストテン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊90周年記念特別企画は、日本編は114人、外国編は121人の映画評論家や作家、文化人の投票を集計した。

2012
 
[評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテン]英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位






部門

めまい(アルフレッド・ヒッチコック) 市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) 東京物語(小津安二郎) ゲームの規則(ジャン・ルノワール) サンライズ(F・W・ムルナウ) 2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック) 捜索者(ジョン・フォード) これがロシアだ(シガ・ヴェルトフ) 裁かるるジャンヌ(カール・テオドール・ドライエル) 8 1/2(フェデリコ・フェリーニ)

晩春(小 津安二郎)
七人の侍(黒澤 明)
26位-羅生門(黒 澤 明)
50位-雨月物語(溝口健二)
※2012 英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌は、846人の評論家が選んだ映画史上最良の作品ベストテンを発表。

[監督が選んだ映画史上最良の作品ベストテン]英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌

/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位





部門

東京物語(小津安二郎) 2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック) 市民ケーン(オーソン・ ウェルズ) 8 1/2(フェデリコ・フェリーニ) タクシー・ドライバー(マー チン・スコセッシ) 地獄の黙示録(フランシス・フォード・コッポラ) ゴッドファーザー(フランシス・フォード・コッポラ)
めまい(アルフレッド・ヒッチコック)
- (アンドレイ・タルコフスキー) 自転車泥棒(ヴィクトリオ・デ・シーカ)
※2012 英国映画研究所発行のサイト・アンド・サウンド誌は、358人の監督が選んだ映画史上最良の作品ベストテンを発表。
※2012.8.3日本経済新聞記事より
[世界で最も優れた映画50選]世界の映画監督358人が選ぶ(監督部門)と、世界の批評家846人が選ぶ(批評家部門)を、英国協会発行「サイト・アンド・サランド」誌が20012.8.2発表。10年ごとに発表される映画50選である。(英国映画協会 公式サイト http://www.bfi.org.uk/news/50-greatest-films-all-time )

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〜写真〜


小津安二郎監督


ローアングルにカメ ラをセットする小津安二郎監督

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〜雑誌〜


「キネマ旬報 臨時増刊 1994年7月7日号 小津と語る」表紙 『生れてはみたけれど』


キネマ旬報 臨時 増刊 1995.11.13号 「日本 映画オールタイム・ベストテン」映画生誕100年記念特別号

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〜プログラム〜


2004.3.30「小津安二郎映畫讀本 東京そして家族 小津安二郎生誕100年記念 小津安二郎の藝術」公式プログラム 松竹映像版権室

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〜パンフレット〜


「小津安二郎 作品展」パンフレット


「小津安二郎生誕100年記念 国際シンポジウム」パンフレット

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〜チラシ〜


「小津安二郎生誕100年記念 小津安二郎の藝術」チラシ


「小津安二郎生誕100年記念 小津安二郎の藝術」チラシ

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※記号[: 特に好きな作品 : 面白い作品 (私の好きな映画・名作と思う映画): 私のベスト : 注目]
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参考文献
『その夜の妻』
『東京の合唱(コーラス)
『生れてはみたけれど』
『出来ごころ』
『東京の宿』
『一人息子』
『父ありき』
『長屋紳士録』
『晩春』
『宗方姉妹』
『麦秋』
『お茶漬の味』
『東京物語』
『東京暮色』
『秋日和』
『小早川家の秋』
『秋刀魚の味』
原節子
高峰秀子
小津安二郎写真館
監督
サイトマップ
映画ありき
〜クラシック映画に魅せられて〜

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