野菊の如き君なりき


  有田紀子
※ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。
 
記号[☆:スタッフ・キャスト :始めに]

(1955)(白黒)(松竹大船)(11月29日封切)(キネマ旬報ベストテン第3位)(都民映画コンクール1位)-You Were Like a Wild Chrysanthemum-
監督木下恵介
製作久保光三
原作
伊藤左千夫『野菊の墓』より
脚色木下恵介
撮影楠田浩之(毎日映画コンクール撮影賞)
美術伊藤熹朔
音楽
木下忠司
録音大野久男
照明
豊島良三
出演有田紀子(民子)
………田中晋二(少年期/斉藤政夫)
………笠智衆(老人/斉藤政夫)
………田村高廣(政夫の兄/栄造)
………小林トシ子(作女/お増)
………杉村春子(政夫の母)
………山本和子(栄造の嫁/さだ)
………雪代敬子(民子の姉)
………浦辺粂子(民子の祖母)
………松本克平(船頭)
………小林十九二(庄さん)
………本橋和子(民子の母)
………高木信夫(民子の父)
………渡邊(常吉)
………松島恭子(お仙)
………末永功/谷よしお(お浜)

 旧家の次男の少年・政夫(田中晋二)が中学へ上がる十五歳の秋、近くに住む町家の娘で従姉の民子(有田紀子)が手伝いにきていた。

 信州千曲川のほとりで姉弟のように稚くすごす二人の淡い仲を人々の心ない噂話が傷つけ、二人は無理やり引き離された。

 泣く泣く他家に嫁ぐ民子が婚礼の日に覚悟の表情をして顔を上げるシーンが印象的だ。
 境遇に対する心の叫びを感じ、
胸を締め付けられ、切ない
 だが、これさえも日ごろ民子を擁護している祖母(
浦辺粂子)諌めるのだ。
 世間の目によって。

 民子は儚く世を去った。
 亡くなった時の様子を祖母が泣きながら、政夫に話すシーンが圧巻だ。

祖母…「民子はな お前の名前を一言もいわなんだ
 だもんでな 諦めきっていることと思って
 一目も合わさんで 許してくれや
 だけどな
 息を引き取って 枕を直そうと思ったら
 左の手にな
 モミの木で包んだものを しっかりと握って
 その手を胸に乗せてたんじゃ
 可哀想な気もするけど
 見ずにおくのも気にかかるで
 みんなが相談して 開いて見るとな
 政
 民子はな
 嫁に行って お前に会わす顔がないで
 それで お前の名は一言もいわなんじゃ
 モミの木で包んであったのは の
 お前の手紙と リンドウの花じゃった」

 号泣する政夫。
 何度観ても、いや、聞いても、このシーンは切なく涙が溢れてしまう。
 「リンドウの花」で。

 民子の心情が込められた階段の上り下りの際の足元、作品の重要なモチーフとなる民子と政夫に例えられた野菊リンドウの花の描写。政夫を乗せた小舟が霧の中に消えて行くのを民子が泣きながら見送る渡し場の墨絵のような映像美
 なんと素晴らしい演出なんだろう。

 ひっそりと咲いて散っていった野菊のような民子を演じた有田紀子のたたずまい、可憐さ、繊細な美しさが脳裏に焼き付き、涙が止めどもなく流れた作品だ

伊藤左千夫「野菊の墓」が原作を抒情詩として映像化。
老人の初恋回想シーンを古い写真帳を開いて見るような楕円形のソフトなボカシ枠にするという実験的手法を使用し好効果を生んだ。


『野菊の如き君なりき』
有田紀子


『野菊の如き君なりき』田中晋二、小林トシ子、有田紀子

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1995
 
[日本映画オールタイム・ベストテン]映画100年特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

東京物語
(小津安二郎)
七人の侍
(黒澤明)
浮雲
(成瀬 巳喜男)
人情紙風船
(山中貞雄)
西鶴一代女
(溝口健二)
飢餓海峡
(内田吐夢)
羅生門
(黒澤明)
生きる
(黒澤明)
丹下左膳餘話・百万両の壷
(山中貞雄)
幕末太陽傳
(川島雄三)

小津安二郎 黒澤明 溝口健二 大島渚
成瀬巳喜男
-
市川崑 川島雄三 内田吐夢 山中貞雄
木下恵介
岡本喜八
鈴木清順
-

森雅之 三国連太郎 笠智衆 三船敏郎 高倉健 市川雷蔵 石原裕次郎 松田優作
勝新太郎
-
志村喬
阪東妻三郎
大河内傳次郎

原節子
山田五十鈴
-
高峰秀子 田中絹代 若尾文子 京マチ子 岸恵子 藤純子 香川京子 久我美子
吉永小百合
※キネマ旬報 臨時 増刊 1995.11.13号
1995年の[日本映画オールタイム・ベストテン]映画100年特別企画は、映画100年を総括する特別企画として、評論家・作家・ジャーナリストなど104人の選考委員の 全体点数(各個人選出ベストテンの第1位を10点、第2位を9点、以下第10位を1点)を集計、合計数の多い作品から抽出するという方法で、映画史を通じての日本映画ベストテンを発表した。

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1999
[映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キネマ旬報創刊80周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位

七人の侍
(黒澤明)
浮雲
(成瀬巳喜男)
飢餓海峡
(内田吐夢)

東京物語
(小津安二郎)
-
幕末太陽傳
(川島雄三)

羅生門
(黒澤明)
-
赤い殺意
(今村昌平)
仁義なき戦い
(シリーズ)(深作欣二)

二十四の瞳
(
木下恵介)
-
雨月物語
(溝口健二)

第三の男
(キャロル・リード)
2001年宇宙の旅
(スタンリー・キューブリック)
ローマの休日
(ウィリアム・ワイラー)
アラビアのロレンス
(デヴィッド・リーン)
風と共に去りぬ
(ヴィクター・フレミング)
市民ケーン
(オーソン・ウェルズ)
駅馬車
(ジョン・フォード)

禁じられた遊び
(ルネ・クレマン)

ゴッドファーザー
(フランシス・フォード・コッポラ)


(フェデリコ・フェリーニ)
-
-
-
※1999
[映画人が選ぶオールタイム・ベストテン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊80周年記念特別企画は、従来の映画評論家を中心にしたアンケートとは異なり、監督、プロデューサー、脚本家、撮影監督など、実際に日本映画の製作に携わる映画人(140人、144人)に、それぞれのベスト作品10本を順不同で選んでもらう選考方法。(1999年10月下旬号、10月上旬号においてアンケート結果を発表)

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2000

[日本・外国映画20世紀の映画スター、 映画監督オールタイム・ベストテン]特別企画

/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
監督
日 本
黒澤明 小津安二郎 溝口健二 木下恵介 成瀬巳喜男 山田洋次 市川崑
内田吐夢
大島渚
深作欣二
-
-
-
男優
日 本
三船敏郎 石原裕次郎 森雅之 高倉健 笠智衆 市川雷蔵 勝新太郎
阪東妻三郎
-
渥美清
中村錦之助(萬屋錦之介)
森繁久彌

-
女優
日 本
原節子 吉永小百合 京マチ子 高峰秀子 田中絹代 山田五十鈴 夏目雅子 岸恵子
若尾文子
-
岩下志麻
藤純子(富司純子)
監督
外 国
アルフレッド・ヒッチコック フェデリコ・フェリーニ ジョン・フォード ジャン=リュック・ゴダール
スチィーヴン・スピルバーグ
チャー ルズ・チャップリン
ビリー・ワイルダー
-
-
-
ルキノ・ヴィスコンティ スタンリー・キューブリック ルイス・ブニュエル
男優
外 国
ゲーリー・クーパー チャー ルズ・チャップリン
ジョン・ウェイン
-
マーロン・ブランド
アラン・ドロン
ジャン・ギャバン
-
-
ハンフリー・ボガート
スティーブ・マックイーン
-
ショーン・コネリー
ポール・ニューマン
-
女優
外国
オードリー・ヘプバーン マリリン・モンロー イングリッド・バー グマン ヴィヴィアン・リー マレーネ・ ディートリヒ グレース・ケリー フランソワーズ・アルヌー ル
ベティ・デイビス
ジョディ・フォスター
グレタ・ガルボ
アンナ・カリーナ
ジャンヌ・モロー
ロミー・シュナイダー
エリザベス・テーラー
-
-
-

[20世紀の映画スター](日本編)特別企画、[20世紀の映画スター](外国編)特別企画は、評論家・作家・ジャーナリストなど74人の選考委員に20世紀を代表する男優、女優のそれぞれ3名ずつを選んでもらう選考方法。(2000年5月下旬号、6月上旬号においてアンケート結果を発表)
※2000.6.1  朝日新聞記事
[20世紀の映画監督](日本編)特別企画、[20世紀の映画監督](外国編)特別企画は、評論家・作家・ジャーナリストなど104人、107人の選考委員に20世紀を代表する監督5名を選んでもらう選考方法。(2000年11月下旬号、11月上旬号においてアンケート結果を発表)

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2009
[映画人が選ぶ日本・外国映画オールタイム・ベストテン]キネマ旬報創刊90周年記念特別企画
/
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
日本
東京物語
(小津安二郎)
七人の侍
(黒澤明)
浮雲
(成瀬巳喜男)
幕末太陽傳
(川島雄三)
仁義なき戦い(シリーズ)(深作欣二) 二十四の瞳(木下恵介) 羅生門
(黒澤明)

丹下左膳餘話・百万両の壷
(山中貞雄)

太陽を盗んだ男
(長谷川和彦)
-
-
家族ゲーム
(森田芳光)

野良犬
(黒澤明)

台風クラブ
(相米慎二)

ゴッドファーザー
(フランシス・フォード・コッポラ)
タクシー・ドライバー
(マーチン・スコセッシ)

ウエスト・サイド物語
(ロバート・ワイズ)
-
第三の男
(キャロル・リード)
勝手にしやがれ
(ジャン・リュック・ゴダール)

ワイルドバンチ
(サム・ペキンパー)
-
2001年宇宙の旅
(スタンリー・キューブリック)
ローマの休日
(ウィリアム・ワイラー)

ブレードランナー
(リドリー・スコット)
-
駅馬車
(ジョン・フォード)

天井棧敷の人々
(マルセル・カルネ)


(フェデリコ・フェリーニ)

めまい
(アルフレッド・ヒッチコック)

アラビアのロレンス
(デヴィッド・リーン)

暗殺の森
(ベルナルド・ベルトルッチ)

地獄の黙示録
(フランシス・フォード・コッポラ)

エル・スール
(ビクトル・エリセ)

グラン・トリノ
(クリント・イーストウッド)
※2009.11
[映画人が選ぶオールタイム・ベストテン](日本編)(外国編)キネマ旬報創刊90周年記念特別企画は、日本編は114人、外国編は121人の映画評論家や作家、文化人の投票を集計した。
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