哀愁
  
  ヴィヴィアン・リー

※ストーリーの結末を載せていますので、映画をご覧になっていない方は、ご了承下さい。

  〜プロローグ〜 〜出会い〜 〜バレエ公演〜 〜キャンドルライト・クラブ〜 〜雨の中の再会
ロイ戦地へ〜 〜〜 〜結婚へ〜 〜ロイ邸〜 〜別れ〜 〜エピローグ〜  写真

記号[☆:スタッフ・キャスト :始めに :終わりに]
(1940)(米)
監督…マービン・ルロイ 
製作…シドニー・フランクリン 
原作・戯曲…ロバート・E・シャーウッド 
脚本…S・N・バーマン/ハンス・ラモウ
挿入曲♪別れのワルツ
出演…ヴィヴィアン・リー(マイラ・レスター)Vivien Leigh
………ロバート・テイラー(ロイ・クローニン)
………ルシル・ワトソン(マーガレット・クローニン)
………ヴァージニア・フィールド(キティ)
………マリア・オースペンスカヤ(オルガ・キロワ女史)
………C・オーブリー・スミス(公爵)
………ジャネット・ショー(モーリン)

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 これ程、胸を締め付けられる映画はない。それは、ヴィヴィアン・リーが演じるマイラ役が、実にいいからだ。マイラ=ヴィヴィアン・リーと言っても過言ではない。

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 〜プロローグ〜

映画はロマンチックな雰囲気を漂わせたメロディーから始まる。
1939年9月3日の夜。
初老のロイ・クローニン将校(ロバート・テイラー)がウォータールー橋にたたずみ、お守り(ビリケン人形)を見つめる。
そこに、マイラ(ヴィヴィアン・リー)とロイ(ロバート・テイラー)の声が流れる。
マイラ・・・“これを”
ロイ・・・“お守りを?”
マイラ・・・“あなたを守ってくれるよう 祈ってるわ”
ロイ・・・“優しいね”
マイラ・・・“もう私のこと覚えた?”
ロイ・・・“覚えた
もう大丈夫
一生忘れない”
 この演出は、この映画の成功につながる効果があった。

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 〜出会い〜

ロイ(ロバート・テイラー)の回想シーン。
青年将校ロイがウォータールー橋を眺めていると、空襲警報が鳴る。
そこを、バレリーナの団員が通りすがった。
その中の一人がマイラ(ヴィヴィアン・リー)だ。
慌てて逃げようとしたマイラのバッグの留め金が外れ小物を落とす。
それを拾ってやる将校。
それが、ロイ役のロバート・テイラーである。
美男美女の出会い…
マイラは馬車に撥ねられそうになりながらバッグから零れ落ちたお守りを拾おうとする。
助けるロイ。

団員からはぐれたマイラは、ロイと供に防空壕に逃げ込む。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

お互いに見つめ合う目と目に恋心を感じる。
しかし、マイラは「明日戦地に向かう」と言うロイに、もう二度とめぐり会えない人なのだという気持ちで切なくなる。
別れ際に大切にしていたあのお守りを、ロイの無事を祈って渡す。
マイラ・・・「これを」
ロイ・・・「お守りを?」
マイラ・・・「あなたを守ってくれるように」
ロイ・・・「大事なものだ もらえない」
マイラ・・・「いいの 私は頼り過ぎ」
ロイ・・・「ありがとう」
マイラ・・・さようなら
ロイ・・・「さようなら」
 ここでのヴィヴィアンの表情は慎ましやかで品格が滲み出ている。
 特に頭を傾けて言う「さようなら」は最高だ。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

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 〜バレエ公演〜

場面は“白鳥の湖”のバレエ公演が行われている劇場へ移る。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー

ロイが客席に姿を現しマイラの姿を探している。
つったったままでいるロイに気付き驚くマイラ。
マイラを見つけマイラの姿だけに視線を注ぐロイ。
 ロバートの表情が、純朴で可愛らしい。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー

公演が終わりマイラは友達のキティ(ヴァージニア・フィールド)にロイの事を楽しそうにおしゃべりしながら楽屋に戻って来る。
しかし、そこにバレエの指導者キロワ女史(マリア・オースペンスカヤ)が現れ、
キロワ女史・・・「今日のダンスはなっていない」と団員を叱りとばす。
そんな時、ロイから誘いの手紙が来る。


『哀愁』マリア・オースペンスカヤ、ヴィヴィアン・リー、ヴァージニア・フィールドら

それを、キロワ女史に見つかってみんなの前で読まされる。
女史は、
キロワ女史・・・「バレエ団に入っている限り交際は認めない」と言い断りの返事を書かせる。

その手紙を受け取ったロイは、がっかりし帰ろうとする。
そこに、駆けつけたキティが、
キティ ・・・「その手紙は無理やり書かされたものである」と伝え待ち合わせの場所を聞き出す。
更に、
キティ ・・・「マイラは初だから」と心配そうにロイを覗き込む。
ロイ・・・「それは充分心得ている」と答え嬉しそうに帰ってゆくロイ。

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 〜キャンドルライト・クラブ〜

待ち合わせの場所で、今か今かと車に歩みより覗き込むロイ。
その背中に声を掛けるマイラ。
マイラをエスコートしてキャンドルライト・クラブへ入ってゆくロイ。
 ここでのヴィヴィアンの品の良い歩き方は手本にしたいくらい見事。

向かい合わせに腰掛ける二人。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

 ここで、私が一番注目した場面になる。
 見詰るロイを挑発するような仕草で手袋をはずして行くマイラ。
 そして、それはネックレスをいじくり回す仕草に受け継がれて行く。
 ヴィヴィアンは、この仕草にマイラの気持ちを込めていたと思う。
 実生活でローレンス・オリヴィエを射止めたのも、このようなものであったのではと想像してしまう。
 ヴィヴィアンの立ち振る舞いは芸術的であることは、だれもが周知のことではあるが、感情表現を物を通して伝えることにも類まれな才能を持っていたと思う。
 この手袋をはずす仕草は、後のシーンでも出てくるので見比べてみたら面白い。
 
次は、軽快にダンスを踊るシーンに移る。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

再びテーブルに向かい合い乾杯。
ロイ・・・「君に」
マイラ・・・「有難う」
ロイ・・・「二人に」
頷くマイラ。
 この頷き方も、ヴィヴィアンの品格をより際立たせていると思う。
ロイ・・・「わからないな」
マイラ・・・「何が」
ロイ・・・「若くて きれいな君の顔」
マイラ・・・「それが何か」
ロイ・・・「君と別れたあと 顔が思い出せなくて
きれいだったかどうかも 忘れていた
それで劇場へ確かめに」
マイラ・・・「もう覚えた?」
ロイ・・・「覚えた
もう大丈夫
一生忘れない」
そこで、名場面中の名場面の♪別れのワルツを踊るシーンに。
キャンドルライトの中で踊る二人。
徐々にライトが消されて行く。
そして、全部消された時、二人の結びつきは揺るぎないものになる。
見詰め合いキスをする。
微笑むロイ、微笑み返すマイラ。
 一言のセリフも使わず、美しいメロディの中キャンドルライトを消して行く演出に拍手を送りたい。
 美男美女は窓外の薄明かりを通してのシルエットでも美しい事を充分に計算していた。
 
ロイは夜更けの街にマイラを宿舎まで送る。
このまま別れることが忍びなく希望を見出そうとするロイ、現実を直視し悲嘆しているマイラ。
宿舎前。
マイラ・・・「お別れを言うだけよ」
ロイ・・・「そうだね」
マイラ・・・「さようなら」
ロイ・・・「さようなら親愛なるマイラ」
マイラ・・・「さようならロイ」


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

ロイ・・・「元気で」
マイラ・・・「あなたもご無事で」
ロイ・・・「大丈夫 君のお守りがある」
マイラ・・・「そうね そのご利益を祈るわ
さようなら」
ロイ・・・「さようなら」
マイラ・・・「・・・」
ロイ・・・「君が先に」
マイラ・・・「わかったわ」
促されるままにドアを開け中に入るマイラ。
見送るロイ。
ドア越しにロイが立ち去るのを見送るマイラ。
 なんと細やかな演出だろう。
 名シーンの連続にうっとりしっぱなしだ。

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 〜雨の中の再会〜

翌朝。
マイラは、じっとしていられずガウン姿でバッグの修理をしている。
ロイは“もう戦地に発ったかしら”と言う思いで一杯だ。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー

そこに、キロワ女史が入ってきて、
キロワ女史・・・「うちの団員には兵隊あさりなど させません
今後この様な事があったら 即刻クビですよ」と、叱り問答無用とばかりに出て行く。

マイラは「どうして分かってもらえないのかしら」と気落ちする。
キティ ・・・「キロワ女史は誰にでもああなのよ 気にしないで」と慰める。
マイラ・・・「ロイもう発ったかしら」
窓際に寄りかかり雨の外を見下ろす。
クローズ・アップ。
 巧みだ。
 この手法は再三使われる。

見開いたマイラの瞳に映し出されたのは、発ったはずのロイが雨に濡れて立っている姿である。
マイラ・・・「キティ! 彼が来てる」
キティ・・・「脱走よ」
マイラ・・・「行かなかったのよ」
キティ・・・「軍法会議だわ」
マイラ・・・「行かなきゃ」
慌てふためくマイラ。
ガウンを脱ぎ捨て身支度をしようとするが、焦ってうまくいかない。
どうしたのか心配だ。
早く会いたい。
駆け足でロイのもとへ。
 ヴィヴィアンの驚喜の表情が微笑ましい。
 
どしゃぶりの雨の中の再会。
マイラ・・・「Hello」
ロイ ・・・「Hello」
抱き合いキス。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

マイラ・・・「来てくれたのね」
ロイ・・・「Not at all.」
マイラ・・・「出発は」
ロイ・・・「掃海で48時間のびた」
マイラ・・・「うれしい」
ロイ・・・「丸2日だ」
キス。
「君の事を考えて 眠れなかった」
マイラ・・・「顔を覚えたのね」
ロイ・・・「なんとか
僕の考えがわかる?」
マイラ・・・「なにかしら」
ロイ・・・「ヒマがない」
マイラ・・・「何の」
ロイ・・・「迷うヒマだ」
マイラ・・・「ない」
ロイ・・・「ない」
マイラ・・・「じゃどうするの」
ロイ・・・「結婚だ」


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

マイラ・・・「どうかしてる」
ロイ・・・「そう 感激だ」
マイラ・・・「冷静に」
ロイ・・・「無理だ」
マイラ・・・「私の事は」
ロイ・・・「これから知ればいい」
マイラ・・・「いくら戦時下でも一生の大事を48時間で決めるなんて」
ロイ・・・「とにかく結婚だ 君しかいない」
マイラ・・・「本気なの?」
ロイ・・・「言い逃れは無用 質問も疑問も無用だ
もう決まりなんだ いいね
結婚するんだ」
マイラ・・・「わかったわ」


『哀愁』ロバート・テイラー、ヴィヴィアン・リー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

ロイは車を拾いマイラを乗せる。
 求婚しているロバートの瞳の輝きに吸い込まれそう。
 演技と思えない。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

車内。
ロイは自分は英国陸軍大尉であるので結婚するのに正式な手続きが必要で、直属の上官に許可を貰わないといけないのだと説明する。
マイラを車内に待たせ急ぎ許可を貰いに行く。
しかし、大佐は結婚相手として相応しいか自分一人では負いかねる責任だからと公爵の了解を取り付けてこいと言う。

公爵の所へ行き結婚の承認を願う。
 この公爵役のC・オーブリー・スミスが、いい味を出している。
最初は難色を示すが、踊り子と聞き、
公爵・・・「実は自分も踊り子は好きだったし 君の軍功を誇りにしている
それに 君は分別のある男だ」と二人の結婚を承認する。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

教会へ行く。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

牧師に式をお願いしているロイ。
入り口で見詰ているマイラ。
二人の様子に不安な面持ちになるマイラ。
 この時、ヴィヴィアンは瞳に語らせる演技をした。
 素晴らしい、圧巻である。
牧師・・・「3時以降は法律で禁じられているので式が行えない 明朝だったら喜んで式をあげる」と言う牧師。
気を取り直して二人は教会を後にする。

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 〜ロイ戦地へ〜

バレエ公演の時間が迫っている。
団員たち・・・「マイラはまだかしら」と心配している。

キティが部屋に戻ると買い物から帰ってきたマイラがいた。
ロイから何度も電話があったと伝え、
キティ・・・「どうしたの」と聞くキティ。
ロイと明日結婚することを伝える。
自分の事のように喜ぶキティ。

団員も結婚を祝福する。
そして、キロワ女史に話さなくてはと公演会場へ急ぐマイラにロイから電話がかかる。
予定変更で25分後に戦地へ出発するというのだ。
見送りに行くというマイラ。
団員たち・・・「キロワ女史は許さないからやめて」という団員。
マイラ・・・「お別れだから」と駅に向かうマイラ。
 
出発時刻が迫る。
マイラはとホームを見渡すロイ。
いよいよ出発。
汽車へ乗り窓から身を乗り出してマイラを探す。
汽車が動き出す。
ホームに走り込むマイラ。
汽車を追いかけロイを探すマイラ。
その時、
ロイ・・・「マイラ!」
マイラ・・・「ロイ!」
ロイ・・・「マイラ!」
マイラ・・・「ロイ!」
汽車は汽笛を鳴らしながら二人を引き離し走り去ってゆく。

舞台から音楽のエンディングが聞こえて来る。
気落ちしたマイラは楽屋に。
舞台を終えたキティたちがマイラのもとへ走り寄って来る。
キティ・・・「会えたの?」
マイラ・・・「一目だけ」
キティ・・・「可哀想に」
マイラ・・・「タクシーが拾えなくて」
キティ・・・「帰るわよ」
団員・・・「戦争もすぐ終るし」


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ヴァージニア・フィールド

そこへ、キロワ女史。
マイラに解雇を言い渡す。
それに憤慨したキティは、これまでの扱いに対しての思いをぶちまける。
キティも解雇される。

職探しをして帰ってきたマイラ。
 この時、例の手袋を外すシーンがある。
方々探し回っても職がなく落胆している。
 その感情を手袋を外す仕草で表している。
 上手い。
キティ・・・「二人ともこのままでは生活して行けない」と不安を募らせるキティ。
そんな時、ロイからの手紙でロイの母親に会うことになった。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー

約束の喫茶店でロイの母親を待っているとき、新聞の戦死者名簿の覧に視線が…
 ここでまた効果音とクローズ・アップ。
マイラの心臓の鼓動にダブらせた音楽の高鳴りと、マイラの目の動きを追ったカメラの動きは、ロイ・クローニンという名前を画面一杯に映し出したとき止まる。

失神したマイラはウエートレスの介抱でようやく気がつく。
だが気分はすぐれない。
ウエートレスが気付けに飲ませてくれたブランディに手を伸ばし飲み始めたマイラの目の前にロイの母親クローニン夫人(ルシル・ワトスン)が現れる。

クローニン夫人はロイの戦死を知らない。
マイラは今にも倒れそうな極限状態なのに、ロイの死を知らせまいと神経を擦り減らしている。
 いじらしいマイラがよく出ている。
クローニン夫人はロイの話題に触れまいとするマイラに気を悪くして去って行く。

あまりの悲しみにマイラは病の床に伏してしまう。
彼女の看病などのため、親友のキティは娼婦になっていた。
それを知るとマイラも同じ道に足を踏み入れる…

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 〜駅〜

時は流れ、娼婦に身を落としたマイラは帰還兵を出迎えるために駅に立っていた。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー

 ここでまた効果音とマイラのクローズ・アップが。
見開かれた瞳はロイを見ている。
マイラに気がついたロイ。
ロイ・・・「マイラ!
マイラ!
マイラ!
信じられん マイラだね
君だね」
マイラ ・・・「ロイ」
ロイ・・・「やっぱり君だ 顔をよく見せて 夢じゃないな
待っててくれたなんて」
マイラ ・・・「生きてたのね」


『哀愁』ロバート・テイラー、ヴィヴィアン・リー

ロイ・・・「この時を何ヶ月も夢見てた
帰るのがよくわかったね
どうした そんな顔して 元気を出せ
終わったんだ もう離れない」
マイラ・・・「ロイ 生きていたのね」
ロイ・・・「この通りさ」
ロイは負傷して認識票をなくしてドイツ軍にとらわれていたのだという。

再会を喜び、スコットランドの母のもとに行き結婚しようというロイ。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

自分の職業を悟られないようにして結婚を断ろうとするマイラ。
ロイ・・・「マイラ
僕がバカだった うぬぼれてた
君も僕と同じ気持でいたとばかり思っていた
誰かいるんだね 僕が死んだと思って
そうなんだろ 話してごらん」
マイラ ・・・「そんな人 誰もいないわ
愛してたのはあなただけよ
これからもずっと 本当よ」
ロイ ・・・「それを聞きたかった」


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

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 〜結婚へ〜

明日スコットランドへ発つ身支度をしている所へキティが入ってくる。


『哀愁』ヴァージニア・フィールド、ヴィヴィアン・リー

ロイが生きていて結婚しようと言ってることを告げると、
キティ・・・「冗談でしょ そんなバカな」
マイラ・・・「本当よ 何もかもうまくいくわ あなたも悪いようにはしないわ
考えてる事わかるわ 私もそう思ってる
恐ろしい女だと」
キティ ・・・「彼 知ってる?」
マイラ ・・・「いいえ」
キティ ・・・「隠し通せる?」
マイラ ・・・「今までの事?」
キティ・・・「そう」
マイラ ・・・「打ち明けるわ」
キティ ・・・「人は2種類 運のある人と ない人よ」
マイラ ・・・「その運をつかむのよ
これも生きるため 割り切るわ
一生に一度のチャンスよ
彼は優しくて清潔で 素晴らしい人よ
全てを捧げるわ
それで彼も幸せなのよ 愛してるのだから
私も心の底では待ってたのよ お願い 大丈夫だと言って」
キティ ・・・「二人の気持まで ルールで裁くことはできないわ」
マイラ ・・・「キティ」
キティ ・・・「彼が夢中なら隠し通せるかもね」
マイラ・・・ 「そうよ そうよ」
キティ ・・・「とび込みなさい 彼の胸に」
マイラ ・・・「キティ」

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 〜ロイ邸〜

スコットランドへ。
幸せそうに屋敷を案内しているロイ。
幸せそうなロイを見詰め“これで良かったのだ”と自分に言い聞かせているマイラ。

喜びを一杯にして出迎えるクローニン夫人。
近所の人たちが花嫁を見たいと押し寄せるという。
 ここでのヴィヴィアンの視線の移し方の美しいこと。

絵に描いたような美男美女ロイロバートとマイラヴィヴィアンが踊っている。
二人を祝福するような美しいメロディーが流れる。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

クローニン夫人・・・「お似合いね」
牧師・・・「愛らしい娘さんだ 近いうちに式の相談があるでしょうな」
クローニン夫人・・・「明日お伺いしますわ ロイはもう夢中でして」
牧師・・・「妬けますか」
クローニン夫人・・・「少しは」
牧師・・・「でも彼女を」
クローニン夫人・・・「好きです
ますます好きに」
牧師とクローニン夫人が二人を見ながら話している。
 台詞は音楽に一体して心地よい。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

踊りながら移動して外へ出る。
二人きりになるとキスを。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

メロディーも変わり♪白鳥の湖に。
ロイ・・・「幸せ?」
マイラ・・・「YES」
ロイ・・・「本当に?」
マイラ・・・「YES」
ロイ ・・・「この上なく?」
マイラ・・・「YES」
ロイ・・・「疑いもなく?」
マイラ・・・「ないわ」
ロイ ・・・「遠慮も」
マイラ・・・「ないわ」
ロイ・・・「ためらいも?」
マイラ・・・「ないわ」
ロイ・・・「君は時々不安な目をする なぜだ
苦労したんだね
生きる苦労を でもそれは終った
もう何も心配はない 何も恐れることはない
愛してるよ」
マイラ・・・「あなたっていい人」
キス。
ロイ・・・「夢のような気分だ」
マイラ・・・「YES」
 優れた工芸品を観ているように見入ってしまうショットばかりだ。

パンチを持ってきてあげるから、ここで待ってるんだよというロイに、悪戯っぽくマイラは、
マイラ・・・「吟遊詩人と逃げるわよ」と言う。
指差しながらロイは、
ロイ・・・「ダーリンは」と言う。
マイラ・・・「ロイ」と返すマイラ。
投げキッスをしながらパンチを取りに行くロイ。
 ロバートヴィヴィアンの息がピッタリだ。

大声が聞こえる。
公爵 ・・・「その娘の顔を見に来た
どこに隠した」
マイラの所にロイに伴われ公爵が歩み寄ってくる。
マイラを一目見てにこやかな表情になっている。
ロイ・・・「マイラです
伯父だ 今の大声の主だよ」と紹介するロイ。
マイラ・・・「はじめまして」
公爵 ・・・「この人が」
マイラ・・・「ようこそ」
ロイに向かって、
公爵・・・「なぜ私をさける」と言う公爵。
ロイ・・・「もめそうだ」
公爵・・・「お前はパンチを取りに行くんだろう」
ロイ・・・「幸せは続かないもんだ」とパンチを取りに行くロイ。

公爵・・・「おかけ」とマイラに言う公爵。
マイラ・・・「伯父様には気をもみましたわ」と言うマイラ。
公爵・・・「私に いつ」
マイラ・・・「ロイが結婚許可を頂きに行ってる間車の中で」
公爵・・・「あの時 外に?」
頷くマイラ。
公爵・・・「来ればよかった」と言う公爵。
マイラ・・・「彼の作戦で」と答えるマイラ。
公爵・・・「ずる賢い奴だ 連れて来たら許すものか
私が申し込んだ」と言う公爵。
にこやかに、
マイラ・・・「お受けしたわ」と言うマイラ。
笑う公爵。
改まった表情で、
公爵・・・「頼みがあるのだが」と言う公爵。
マイラ・・・「何なりと」
公爵・・・「私と踊ってくれないか」
マイラ・・・「彼が駆落ちを心配しますよ」と言うマイラ。
笑いながら、
公爵・・・「してみるかな」と言う公爵。
マイラ・・・「オーライ」
公爵・・・「ここは久し振りだ。堂々の入場を」
公爵は愉快そうにマイラと腕を組み、大きく腕を振って中へ入って行く。

ここで軽快なメロディにのって公爵とマイラが踊っているシーンに。
 にこやかだ。

 踊り終えヴィヴィアンがソファーへ向かう時の歩き方、腰掛け方の気品に満ちていること。
 最高。
マイラ・・・「お心遣いには感謝します」
公爵 ・・・「感謝? 何の事かな」
マイラ・・・「私と踊って 意思表示して下さった事です」
公爵・・・「意思表示とは」
マイラ・・・「私を認めると 知らせて下さいました」
公爵・・・「ダンスが好きなだけだ」
マイラ・・・「お優しいかた
ロイのためにも 皆さんに好かれたいわ」
公爵・・・「ここらの連中はいい奴だよ 親切な連中でな
ただ古くて頭は固いがね
中世そのままだ
これをごらん
折れた槍の紋章だ
ロイの連隊のだ 彼らは身内同士で結婚して伝統を守る
踊り子など はねっ返りだと思っとる」と話す公爵。
顔を曇らせるマイラ。
公爵・・・「そんな考えにはついて行けまい おかしいだろう」と言う公爵。
動揺を押し隠し、
マイラ・・・「ええ」とマイラ。
公爵・・・「だが ロイも私も本能的にあんたを見抜いとる
善良な女性だと
紋章を汚すことはないと
わかっているからこそ 迎え入れた」と言う公爵。

そこへパンチを持ってロイが入って来て、
ロイ・・・「マイラ
もう充分でしょう これ以上は危ない」と言う。
公爵・・・「そうだな 私になびいてしまう」と言う公爵。
そこに♪別れのワルツのメロディーが流れる。
ロイ・・・「マイラ
あの曲を頼んだ 踊ろう」と言うロイ。
頷くマイラ。 
ロイ・・・「失礼します」と公爵に言うロイ。
マイラ・・・「サンキュウ」と公爵にお辞儀する。
公爵・・・「お行き 楽しんでおいで」と言う公爵。
 この流れの中のヴィヴィアンの所作の美しいこと。

♪別れのワルツを踊っている二人。
今までのダンスと違いマイラはパートナーを見詰ていない。
伏目である。
ロイ・・・「覚えているかい あのクラブ 今夜があの時だと思って踊ろう」と言うロイ。
マイラはロイに視線を向けるが、その視線は紋章へと行く。
紋章を注視することが出来ない瞳は、やり場のない気持ちを代弁するようにさ迷い再び伏目になる。
 瞳の動きはマイラの悲しさ・恥じらい・迷いを見事に表している。

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 〜別れ〜

婚約披露の舞踏会が終わり、マイラはどうしたらよいのだろうかと決心つきかねている。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー

そこへ、クローニン夫人が入って来る。
クローニン夫人・・・「やはり気が高ぶって 寝られないのね
嬉しい時と悲しい時は 無理ね」と言うクローニン夫人。
マイラ・・・「YES」
クローニン夫人・・・「私も気がかりな事があってだめ
お疲れじゃない?」と言うクローニン夫人。
マイラ・・・「大丈夫ですわ」と答えるマイラ。
クローニン夫人・・・「ロンドンでの事が ずっと気になってたの
私を恨んだでしょうね」と言うクローニン夫人。
マイラ・・・「とんでもない」と答えるマイラ。
クローニン夫人・・・「偏見もあったけど あの時はあなたが異様で
これではロイの妻として どうかと思って」と話すクローニン夫人。
今のマイラにはグサリと突き刺さる言葉だ。
視線が動き動揺している。
さらにクローニン夫人の話は続く。
クローニン夫人・・・「息子の為を思う母親は 欲が深いから
許して下さい」
マイラ・・・「許すなんて」
クローニン夫人・・・「家に帰ってから電報で 戦死の事を知ったの
あの時あなたは新聞で 戦死公報を見たんですね
それで取り乱した そうでしょう」
マイラ・・・「YES」
クローニン夫人・・・「それさえ知っていたら
あれから捜したんですよ 今後償いをさせてもらいます
私 この結婚が嬉しくてね いいお友達になれるわ
センチになってごめんなさい ではおやすみ」


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ルシル・ワトソン

部屋を出て行く夫人。
夫人を見ているマイラ。
クローズ・アップになる。

決心したマイラ。
マイラ・・・「お母様」
小走りに追う。
マイラ・・・「お母様」
夫人の部屋へ入る。
マイラ・・・「お母様」
クローニン夫人・・・「何か」
マイラ・・・「お話が」
クローニン夫人・・・「どうぞ」
マイラ・・・「私 結婚できません」
クローニン夫人・・・「落ち着いて話して」
マイラ・・・「帰ります
来てはいけなかったのに つい自分を偽って
二度と会ってはいけないんです」と言うマイラ。
クローニン夫人・・・「訳を言って 力になりますよ」
マイラ・・・「だめですわ」
クローニン夫人・・・「どうしたというんです
他に好きな人でも」
マイラ・・・「そんな生易しい事じゃ ないんです」と言うマイラ。
驚き、
クローニン夫人・・・「マイラ」とクローニン夫人。
マイラ・・・「そうなんです」
クローニン夫人・・・「マイラ」
マイラ・・・「今お考えになってる 破廉恥な事なんです」
クローニン夫人・・・「マイラ」
マイラ・・・「YES」
クローニン夫人・・・「なぜ黙ってたの」
マイラ・・・「勇気がなくて
あの頃はお金もなく飢えて 彼の戦死の事もあったので
でもそれは言い訳です」
クローニン夫人・・・「何と言えばいいのか
そうと知らず お世話をしなかった私にも罪が」
マイラ・・・「やめて下さい
もう彼には会いませんから 真相は言わないで
お約束を
苦しめたくないんです」
クローニン夫人・・・「マイラ 朝まで待ちましょう
よく考えましょう」
マイラ・・・「お約束を」
頷きながら、
クローニン夫人・・・「約束します」と言うクローニン夫人。
マイラ・・・「優しいお方 そのお心に 叶う女ならよかったのですが」
うな垂れ部屋を後にするマイラ。
 切なく苦しい胸の内が伝わってくる。

部屋へ戻ろうとするマイラは、階段を上ってこようとしているロイに見つかってしまう。
呼び止められ顔が引きつっているマイラ。
マイラ・・・“どうしよう”
ロイ・・・「こんな時間に何をしてる 母の所にいたのか」
振り向き、
マイラ・・・「YES」と答えるマイラ。
ロイ・・・「いい人だろう」
マイラ・・・「とても」
ロイ・・・「眠れなくて庭で 星に幸運を打ち明けてた」
マイラ・・・「星は何と」
ロイ・・・「黙って、またたいているだけだ」
笑うロイ。
笑い返すマイラの瞳は思いを込めてロイを見詰ている。
お守りを取り出し、
ロイ・・・「覚えてる?」と言うロイ。
マイラ・・・「ええ」
ロイ・・・「返す」
マイラ・・・「あげた物よ」
ロイ・・・「君が持ってた方が確かだ 庭で落として捜すのに苦労した
これからは一心同体 どちらが持ってても同じ事だ」と言うロイ。
首を振るマイラ。
ロイ・・・「今度は君に幸運を呼ぶ」と言うロイ。
マイラ・・・「じゃ持ってる
疲れたわ」と言うマイラ。
ロイ・・・「今日は大変だったからな」と言うロイ。
マイラ・・・「YES」
ロイ・・・「おやすみ」
マイラ・・・「さようなら」
ロイ・・・「さようならはおかしい」
マイラ・・・「お別れはいつも 永遠に思えて」
ロイ・・・「思いは同じだ」
マイラ・・・「さようなら」
ロイ・・・「さようなら おセンチさん」
抱きつきキスを交わす。
ロイ・・・「明日は二人きりで」
マイラ・・・「そうね」
別れ部屋に戻りドアにもたれ悲しみに暮れるマイラ。

翌朝。
ロイへ置手紙が。
マイラ・・・“言葉に尽せないほど 感謝しています
でも 私達に将来はありません
これ以上書けません お別れです マイラ”
ロイはマイラの後を追ってロンドンへ。

マイラはいない。
キティへ消息を尋ね一緒に捜す。
ロイはマイラを捜すうちに自分が死んだと思い、生きるために娼婦になっていたことを知る。
そして、自分の前に姿を現すことは二度とないと悟る。


『哀愁』ヴィヴィアン・リー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー

マイラは、出会いの場所ウォータールー橋で、濃霧の中を突進してくるトラックに身をおどらせてしまう。
驚いて駆けつけた群集の足元にあのお守りがころがっている。

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 〜エピローグ〜

1939年9月3日の夜のウォータールー橋、お守りを擦っている白髪のロイ。
マイラ・・・“愛していたのはあなただけよ
これからもずっと 本当よ
いつまでも”
マイラの声が流れる。
ロイが涙を浮かべお守りを大切にしまい、車に乗り込む。
車が橋を通り過ぎて行く。

死によって彼への愛の証しをたてたマイラは、永遠にロイの脳裡から去ることはなかった。

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 マーヴィン・ルロイ監督の腕によりをかけた演出と、ヴィヴィアン・リーの美貌と名演技、美男男優ロバート・テイラーの好演で恋愛映画の最高傑作となった。
 後にヴィヴィアン・リーロバート・テイラーは一番好きな作品は『哀愁』と答えたそうである。

※イギリスがドイツに宣戦布告した1939年9月3日にウォータールー橋でクローニン大佐(ロバート・テイラー)が、前大戦の頃に、ここで出会ったバレリーナのマイラ(ヴィヴィアン・リー)を思い浮かべる。そして、回想に入る『哀愁』(1940)の原作はロバート・E・シャーウッド戯曲『ウォータールー橋』である。
美しくも哀しい物語『哀愁』(1940)は恋愛映画のバイブルと言われる傑作である。
『哀愁』(1940)は1931年にジェイムス・ホエール監督、メエ・クラーク主演で初映画化された『ウォタルウ橋』のリメイクである。
1956年にレスリー・キャロン、ジョン・カー主演『哀愁物語』としてもリメイクされている。
※お守りはビリケン人形。(ビリケンは1908年、米国の女性美術家フローレンス・プリッツが夢で見た神様をモデルに創作したのが、幸運のマスコットや縁起物として流行したと言われている)
※テムズ河のほぼ中央にかかっているウォータールー橋はジョン・レニーの設計で1811年から6年かけられた橋で、当時「地球上でもっとも気品に満ちた橋」といわれていたそうだ。(1993.5.20工藤みゆき編・著「ヨーロッパ映画散歩」洋泉社 参考)

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〜写真〜


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー


『哀愁』ロバート・テイラー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー


『哀愁』ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー


『哀愁』ワーナー・ホーム・ビデオ ヴィヴィアン・リー、ロバート・テイラー

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参考文献
ヴィヴィアン・リー
ヴィヴィアン・リーバイオグラフィー
『風と共に去りぬ』
シネマトーク『風と共に去りぬ』公開前後
シネマトーク『風と共に去りぬ』コスチューム
シネマトーク『風と共に去りぬ』出版前後
シネマトーク『風と共に去りぬ』ミュージック
『美女ありき』
シネマトーク『アンナ・カレニナ』
『欲望という名の電車』
シネマトーク『愚か者の船』
ロバート・テイラー
洋画
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