バイラは十二歳」誕生記  (第3回白鳥省吾賞受賞者・川井豊子女史の紹介)


/川井豊子女史(岡山県)は種々の雑誌に詩、短歌を発表し、数々の賞を受賞して居られる。また仕事と家庭を両立して幅広い活躍をなされている。「バイラは十二歳」の作品の背景をお伺いすると、人権に関する新聞のスクラップブックを丁寧に作って居られるという・・・・・。/

<この作品の背景もそうです。モンゴルと言うと大草原だけが、私達のイメージにありますが、実際にはこの詩のような生活をしている、沢山の子供達がいるのを、新聞を通して知りました。そして同じ内容のテレビ番組も拝見しました。そのとき、この詩のモチーフができたのです・・・。

 当時、私にも同年代の女の子がおりました・・・。私達夫婦は自分たちの手で、日曜大工のようにして、何日も、何週間も、何年もかかって、やっとマイホームを造りました・・・・・。出来上がった時は娘が高校生になっていました。やっとみどり色した屋根の家が出来上がったのです・・・。> (詩誌『AUBE』第33号「水曜大工」、「バイラは十二歳」より)

h14sik132.jpg (11139 バイト) バイラは十二歳

/バイラは十二歳/モンゴルのマンホールの中に住んでいる/マンホールはあたたかい/零下二〇度の外にくらべれば/

食べるもののない貧しい暮らしにくらべれば/バイラは十二歳/昼は皿運びをし 夜は居酒屋の前で歌を唄う/そして別の家族の家に暮らす/おかあさんに残りのごはんを運ぶ/バイラといっしょに/地下の温水管のすきまに眠る/何百人ものこどもたち/その子たちが眠りの中で見るのは/どんな夢なのか/ふたのないマンホールから/子供たちはまぶしそうに朝日を見上げる/

柵のそばには/耳のたれた犬がまちくたびれたように立っている/凍った道の向こうには/鉄筋コンクリートのアパートやお店が見える/マンホールに眠るバイラの上にも/星空があった/クラシキシテイのベッどに眠る/十二歳のジュンコの上にも/マンホールの上を凍った風は吹き過ぎた/みどり色したジュンコの屋根にも/それはたぶん同じ風で/同じ星空だった/たくさんのバイラ/たくさんのジュンコ/たくさんのバイラの夢/たくさんのジュンコの夢/かぞえきれないくらいの星の中の/青く輝く星の上でのできごとだった/>

h14siki4.jpg (13854 バイト) 『朔太郎の耳』(一九九七年六月二十五日・思潮社発行)は川井豊子女史の二冊目の詩集である。この詩集のあとがきを抜粋して紹介する。

<この度、思潮社小田久郎氏のご厚意により、第二詩集を上梓することになりました。一昨年の『水車のめぐる家』でから、自分でも思いがけない早さですが、一九九三年にはこの詩集前半の制作は始まっており、四年余を経ていることになります・・・中略。/前詩集は一つの「場」から生まれました。現在も灌漑用に水車が使われている倉敷の祐安という土地に住むことなくしては、「水面」などあれらの詩の多くは書かれなかったでしょう。

 しかし一つの場は、一方で「別の場」への憧れの芽をも同時に育んでいきました。どこまでも力の及ぶ限り飛んでゆきたいという気持ちが、今回の詩集の出発点にはあり、それはこの火山国の地方都市ではごく日常的な、電線のある風景から始まっていきました。・・・中略。

 現代というのは、見え過ぎることの中で生が萎縮してしまってる時代であり、そんな光の過剰が根無し草のような不安をかき立てているのだとも思えます。光対闇という二元論を超えて、宇宙の闇に浮かんだ一個の地球の姿を見るように、今一度闇の可能性をも問うならば、その時、生命が持っていた豊饒なその原初の力も回復されてゆくのかも知れません。広がってゆく仮想現実の風景の中、生という闇の上では、今も未知の花々が果てしなく生まれ続けているのだと思えるのです。・・・後略>

 

 川井豊子女史はひかえめにお話しされる。言葉数は少ない方だと思った。しかし言葉数と思考過程は比例しない。省吾の文学的価値も把握していた。私共が女史の詩境を理解するにはもう少し時間が必要だと思った。女史のプロフイールを『朔太郎の耳』より紹介する。

 /詩集『水車のめぐる家で』一九九五年(手帖社)/AUBE面白詩の会会員/「詩脈」「MANNNA」同人/岡山県詩人協会会員/

 


 川井豊子女史の所属する雑誌を写真にて紹介する。

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 詩誌『AUBE』、『きょうは詩人』。童話雑誌『とっくんこ』。

 

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参考・引用資料

 * 採用した詩は、ホームページの都合上横書き、/にて区切らせていただきました。

 * 文責は「白鳥省吾を研究する会」事務局にあります。

 * 写真は白鳥省吾賞表彰式にて撮影した川井豊子女史肖像。寄贈された雑誌。

 * 下写真は「白鳥省吾賞受賞記念パーテイ」での記念写真。<H氏賞選考委員であり、白鳥省吾賞の選考委員も努められて いる佐々木洋一氏(中央)と築館町図書館、白鳥省吾記念館館長、小野寺正志様と川井豊子女史の記念撮影。>

 

 

 

 

 


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