霜月の


霜月の
さめざめとした月の夜に
ススキの野原の真中に
金色まとった狐が一匹


狐は月が大嫌い
月を眺めりゃ毎日違う
満ち満ちて 尚
留まらず
欠けゆく月が大嫌い


狐の回りにゃ何時でも誰か
何かを求めてやってくる
狐は誰にも隔てなく
優しさ分けて与えてる


月の満ち欠け
まん丸の
昨日と違う立待月


猿が来れば騒がしい
飯だ!うめえ!と囃子立て
狐はちょっぴりご満悦
上弦の月を眺めてた


嘘つき啄木鳥情報屋
悪気は無いがホラ吹きの
悪態ついて戯言言って
それじゃぁ又なと手を振れば
ほんわり残るはバナナ月
少し育ったバナナ月


秋の野に咲くオレンジの
見かけは可憐なオジギソウ
咽が渇くと所望され
浸した毛皮の川の水
ぶるんと振えば全身で
ご馳走様と葉っぱで合図
枯れ野を照らすメロン月


角だけ立派な春子の鹿の
臆病そうな大きな瞳
寂しかねえやと強がる様に
ぎゅっと抱きしめ言ってやる
俺が居るから恐くない
言ってる俺が満たされる
今夜は半分スイカ月


ススキのざわめく枯野にぽつり
誰待つ気も無く立っている
どんぐり散らしたその後の
冬ごもったら一人きり
つまんねぇなぁと独りごち
かけるでもなく聞いてみる
ええ、それでもと 答える枝は
そうして幾年過ごしたか
少しの間のすれ違い
今日は貴方に逢えたから
片目を瞑って 微笑んだ
狐は椎の木眩しくて
満ちたる月は後少し
欠けたる部分は後少し



木枯らしの
ススキの穂を引き千切る



ごおと ごおおと 引き千切る



せっかく育った光の珠も
残らず全部と 引っ攫う

ススキの穂の波 
寄せる風
狐の心の隙間風
狐の心の満月は
満たされる事無く欠けてゆく
輝る事は無い朔の月


満天の星、聞いてくれ、

俺の望みを聞いてくれ、


星は瞬き降り注ぐ
不安定だと降り注ぐ
満たし満たされ満ち足りた
もがくほどに狂おしい
冷めてく心の隙間風





ごおと 寄せる 北風の
運ぶ微かな生臭い
ぞくりと背中の毛の逆立つ
赤い色した生臭さ


北の斜面の岩ノ下
森の仲間は通らない
大きな岩の其の下の
窪みに横たう肉片が
もぞり蠢く褐色の
光たたえた双眼の
えもいわれぬ深い色



狐が運ぶは有機物
どうだ 旨いか 喰ってみろ
高飛車に言うその下の
僅かに歪んだ口の端


まずかねえやと返答し
咀嚼もせずに飲み下す
もっと寄越せと睨みつけ
返す瞳の暖かさ





最近狐 どうしたの?
柔かくなった身のこなし
穏やかになった四足の
蹴りも冴えたる天上に
青空追いかけ雲雀の鳴いて
足音忍ばす師走月
もう後僅かな秋の色



誰にでも分け隔てなく
他人に与える愛情も
返せば自分が欲しかった
許して欲しい身の脆さ
受け入れて欲しい我儘も


俺には言ってはいけない病が

俺には泣いてはいけない病が

俺には頼ってはいけない病が

俺には俺の心のままに

叫びを閉ざす心の病が、、



与えて与えて与える事で
俺の居場所を見出した
つもりが所詮
隙間風
ススキの枯野を揺するだけ



てめぇみたいな奴ぁ嫌いだ!
でぇ嫌れぇだと 威嚇する
ああ 俺もてめぇは嫌いだな
鼻に皺寄せ剥き出す牙が
嫌いと言いつつ気になる狐
あれから毎日おさんどん


北の斜面の岩場の穴は
入れば温い体温と
触れれば柔い毛皮の虎が
今日も狐を待っている


大嫌いだと吐いた口で
大嫌いだと届いた胸に
大嫌いが木魂した


好かれようともがいてた
森の仲間に壁作り
嫌われぬように引いていた


大嫌いだと言った日から
大嫌いなら嫌われぬ
それ以上なことは無い



狐と虎は仲が悪い
だって お互い 大嫌い


狐と虎は仲がいい
だって お互い 大嫌い



好かれる努力をしなくても
一緒に居れる気安さに
いつか狐の暗闇は
まん丸見事な満月が



甘え甘えて甘えられ
狐の尻尾に寝る虎の
背中を撫でるは俺独り

虎は背中を触らせない
背中は虎の一番の
誇り高き野獣の証


其の背中に俺だけが
鼻を埋めて甘噛みし、

求め求めて求められ
求められて気付いた狐
求めているのは俺のほう
与える狐は与える事で
満たされ丸く甘えられ



知ってか能らずか まどろむ虎の
狐可愛さ愛おしさ
甘えて甘えて甘え倒し
てめぇのもやもや喰ってやる
寂しい狐の隙間風
舐めとる金色の輝きは
狐の熟した金の月

まん丸見事な




お月様





狐と虎のお月様










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ちび僕の寝物語に話したら
狐と虎が動き出し
甘く切なくパラレルを
語って伝えて冬ごもり

狐と虎のお話は
なおも続いてまいります

今日はこれまで

ねんねんよ♪


都都逸仕立てにしたかったのに
言葉が出ない紡げない

さん よん よん さん
さん よん ご に

都都逸 都都逸 何処へ行く
よいよい