先ず何があったのか、何から書けばいいのか判りかねますが、現在の状況を説明しますと、青森の大間という港のある寒村で、山の風力発電機の袂でテントを張り、漆黒の闇から聞こえるブァンブァンという風車の音に怯えながらこの日記を付けています。

テントの横には青いプレスカブが一台停まっており、カブのフロントバスケットには道新がごっそり積まれています。
とりあえず今日は午前1時から出発して疲れ果てましたので、終わりにします。
これからなるべく毎日更新しようと思いますので、短期間ではありますが・・・<判読不能>・・・したら幸いです。

同日午後11時頃
今目が覚めましたので、少しばかり加筆させて下さい。
まず始めに言いたいのは、俺は道新を心の底から素晴らしい新聞であるということです〔ママ〕

今の自分があるのは全て道新のお陰であり、道新が無ければ今頃もしかしたら飲酒運転などの悪事をしでかし刑務所に入れられたり、憎たらしい甥っ子を酔ったふりをして強めに叩いたりしてしまうような人間になっていたかも知れません。
俺の部屋の壁、天井、床、ドア、全てに隙間なく道新の切抜きが貼られ、そのエロティックな明朝体にスペルマを放出するのが人生で最も至上の瞬間です。
紙面の内容もまた素晴らしく、そのあまりに先進的な内容故、読んだことは未だありませんが、素晴らしい知恵の宝庫であるところの道新を、他の後進的な地域に配達することにより土人を啓蒙できるのではないかと考えます。

翻るに現在、山陰の出雲地方には出雲族なる勢力が蟠踞し、朝廷の威風に服さない胡乱の民が存在すると聞きます。
その出雲族を支配する出雲大社こそ蛮族の帷幄であり、出雲大社の禰宜ドモは、その不幸な土人に圧政を敷き、あまつさえ土人娘たちには「初夜権」なる破廉恥な権力を行使しております。
五欲に溺れた禰宜ドモの事を思っては激しく憤り、破瓜の痛みに顔を歪める娘たちを思っては激しくエレクトしております。
かように王風に属さない未開の蛮族を教化するには、地球上で最も先進的な新聞「道新」を配達するのが最も効果的なのではないかと考えます。
そして蒙を啓いた義の民を率いて出雲大社を平らげ、俺が出雲族の娘達に初夜権を行使するのです。

 

訂正があります。
エレクトだのスペルマだの出雲族だのは全て出鱈目です。
そこらへんを曖昧にしてしまうと、この旅自体が全て妄想なんじゃないかと思われてしまう可能性がありますので、事実のみをキチンと伝えますと、
原付免許を取った カブを買った 偶々プレスカブだった これでちょっと遠くまで新聞配達に行ったら面白いかもっていうアレで始めました。
決行に当たってはいろいろな人のお世話になりました。
購入相談を引き受けてくれた高○氏
日記の責任編集をやってくれる上に様々なバイクに関する相談に乗ってくれたB様
リアボックス他様々な加工取り付け整備を引き受けてくれた森○氏
仕事のしわ寄せを一身に受けるナオキ
色んな人の力を借りてこの旅に出ることができたことをまず感謝とともに書かせてください。
そしてそのみんなの思いはただ一つ
「出雲に道新を」

 

皆の思いを受け10/12午前1時、札幌を出発しました。
ルートは36号線から苫小牧、室蘭を経て函館に至るアップダウンの少ないと思われるルートを選びました。
法定速度+10km/h固定でのぺーっと走り、室蘭にて夜明けを迎えました。
室蘭市内にあるコンビニを片っ端から訪ね、道新を根こそぎ購入します。
前カゴにどんどん道新が積まれて行きます。
しかし、買っても買ってもいくらでも入るのです。
都合70部ほど買ったでしょうか。
金額にして¥9100、ちなみに旅予算は4万円です。
開始4時間にしていきなり1/4を消費しました。
前カゴにはまだまだ余裕がありましたが、財布の都合でここらへんでヤメることにしました。
そもそも早朝にプレスカブでコンビニに乗りつけ、店内で新聞を根こそぎ購入して前カゴに詰め込むなんていう光景は異常です。
とりあえず室蘭市内の国道沿いの全てのコンビニからは道新が消えました。
そうしてる間にふと気づいた事があります。
室蘭市街は原チャリにとって巨大な袋小路だということです。
室蘭から道新を消してやる、その一心でついつい深追いしてしまい、白鳥大橋の袂まで来てしまいました。
当然原チャリでの通行は無理なので大きく引き返し、かなりの時間をロスしました。
そして朝になると風が強くなってきました。
前カゴでビニールに包まれた道新が風で暴れて大きくハンドルを奪います。
強風の静狩峠は生きた心地がしませんでした。
とりあえず前カゴの隙間に集金カバン風バッグを詰め込んでアソビを無くしてなんとか乗り切ります。

 

お昼過ぎに函館に着き、フェリーターミナルで夕方の便までコックリコックリやってました。
大間行きのフェリーにバイクは2台居ました。一台は俺、もう一台はスーパーカブ100(タイカブ)です。
そのカブはリアボックスに全国各地のステッカーをバチバチに貼りまくり、小さな三角の旗を立てておりました。
かたや俺はといいますと前カゴに新聞と集金カバン、リアボックスは無地の渋いヤツ。
何故かは判りませんがなにやら完全に勝利した気分で一杯でした。
 
俺の乗る「ばあゆ」というボロい船のすぐ横に高速艇ナッチャン号が停泊していました。
あっちは青森港までものの30分で到着するようですが、こっちは大間まで2時間ぐらいかかるそうです。
出港の音楽がチープなスピーカーからキンキンと聞こえ、デッキでカップラーメンを啜りながら隣のご立派な船を見ると、なんだかとてもいい感じの旅情に包まれました。

 

大間に着いたのは午後六時過ぎ、もう真っ暗です。
到着のチープな音楽に起こされて前を見ると寂れた漁村、否応も無くテンションは上がります。
頭の中で「津軽海峡冬景色」がベースと思われる俺オリジナル演歌がエンドレスでリピートしていました。

 

船を下りるとそこは本州。
まあ糞田舎なんで真っ暗で何もわからないわけでして、最初に見つけたスーパーで水と缶詰を買って適当なところでテントを張って寝ました。
 

(※ナッチャンrera→函館〜青森間≒2h)