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火山灰の健康影響

火山灰の健康影響
地域住民のためのガイド

この文書は、IVHHNと米国地質調査所(USGS) が中心となって、 作成しました。 国際火山学地球内部化学協会(IAVCEI)、 都市火山委員会(CaV) ならびに ニュージーランド地質核科学研究所(GNS)に協力をいただきました。

この文書をパンフレット としてまとめたもののPDFファイルを、ここからダウンロードできます。 印刷した冊子もございます。


目次

  1. 火山灰とは?

  2. 火山灰が健康に与える影響は?

  3. 火山灰から身を守るためにできること

  4. 子供のための予防策

  5. 追加情報

  6. 参考文献

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1. 火山灰とは?

火山灰とは、火山岩が粉々になった細かい粒子(直径2ミリ以下のもの)のことです。 火山灰は火山のすぐ近くでは非常に熱いことがありますが、 遠くに降り積もるときには冷たくなっています。 火山灰が生じるのは、火山が爆発するときや、高温の岩なだれが火山の山腹を流れ落ちるとき、 赤熱した液状の溶岩がしぶきになって飛び散るときなどです。 火山灰の外見は、火山のタイプや噴火の仕方によって異なります。 そのため、その色は、明るい灰色から黒まで様々で、 大きさも小石のようなものから化粧用パウダーと同じぐらい細かいものまであります。 空中を浮遊する火山灰は太陽光をさえぎり、視界を悪くします。 昼間なのに真っ暗になるということもあります。 火山噴火では、浮遊している細かい火山灰どうしの衝突によって、 雷や稲妻が生じることもあります。細かい火山灰は、 火山の上だけに降る場合もありますが、 大規模な噴煙と一緒に風下側に流される場合もあります。

大量に降り積もった火山灰は、それまでの土壌と一体となって、 やがて火山地域の表土層になります。 多くの火山周辺の土壌が肥沃なのは、古い火山灰の堆積物があるためです。 長期的に見れば、火山活動はこのような恩恵をもたらす一方で、 火山噴火による災害はめったに起きないので、 肥沃な火山地域にはたいてい多くの人々が暮らしています。

降り積もった直後の火山灰粒子は、酸性の被膜に覆われていて、 肺や目へ刺激を与えることがあります。 この被膜は、雨が降ればすぐに取り除かれますが、その結果、 周辺地域に供給される上水の水質が悪化する場合があります。 また、酸性の火山灰は植物にも影響を与えるので、 農作物が不作になることもあります。

ほとんどの噴火では、火山灰が健康被害を引き起こすことは少ないのですが、 住民にとっては大きな不安材料になります。 人々は、火砕流のようなもっと恐ろしい現象で命を落とす危険性よりも、 火山灰や火山ガスによる健康被害を心配することがあります。 これは必ずしも理にかなった反応ではないのですが、 降灰現象は火山周辺の非常に広い範囲に影響を及ぼし、 日常生活を混乱させる主な原因になりうるのは事実です。

降灰時ならびにその後しばらくは、呼吸器系や目の症状を訴える患者の数が増えます。 このことを、医療関係者は想定しておく必要があります (医療関係者へのアドバイスは、IVHHNのガイドラインをご覧ください)。


2. 火山灰が健康に与える影響は?

火山灰が健康に与える影響は、いくつかに分類することができます。 主なものは、呼吸器系への影響、目の症状、皮膚への刺激、そして間接的な影響です。

2.1 呼吸器系への影響

噴火によっては、火山灰粒子が非常に細かく、 呼吸によって肺の奥深くにまで入ることがあります。 大量の火山灰にさらされると、健康な人でも、 せきの増加や炎症などを伴う胸の不快感を感じます。 一般的な急性(短期間)の症状は次のようなものです。

  • 鼻の炎症と鼻水。
  • のどの炎症と痛み。乾いたせきを伴うこともある。
  • 呼吸器系の基礎疾患がある人は、火山灰を浴びた後、 数日続く気管支のひどい症状(例えば、空せき、たん、ぜーぜーとした呼吸、息切れ) を引き起こす可能性がある。
  • ぜんそくまたは気管支炎の患者における気道の刺激; ぜんそく患者は、息切れ、ぜーぜーとした呼吸、せきなどの症状を訴えることが一般的。
  • 息苦しくなる。

めったに起きないことですが、細かい火山灰に長期間さらされることによって、 深刻な肺の病気になることがあります。 このような病気が起きるのは、火山灰が非常に細かい場合や、 結晶性シリカを含む場合(ケイ肺症のような病気が生じる)、 人々が長年にわたって高い濃度の火山灰にさらされている場合に限られます。 火山灰の中の結晶性シリカにさらされるのは、 ほとんどの場合は短期間(数日から数週間)です。 しかし、噴火中には、一般市民の生活環境においても、短期間、 曝露限界の推奨基準(ほとんどの国で同程度の基準を用いています) を超えることがあるという調査結果が報告されています。

最も危険度が高いのは、ぜんそくや気管支炎、 肺気腫など肺に問題を抱える人々ならびに深刻な心臓疾患のある人々です。

なぜ慢性肺疾患の人々が特に危険なのか?

細かい火山灰粒子は気道を刺激して収縮させます。 そして、すでに肺に問題がある人々の呼吸を、さらに困難にします。 細かい粒子によって気道内面での分泌も多くなり、 せきが出たり、息苦しくなったりする原因にもなります。 ぜんそく患者は、発作的なせきや、胸部のしめつけ感、 ぜーぜーとした呼吸に苦しむことがあります。 特に子供の場合、外で遊んでいる間に大量の火山灰を浴びる可能性が高く、 この傾向が顕著です。 それまでにぜんそくになった自覚がなくても、 降灰後にぜんそくの症状に見舞われる人がいます。 これは特に、火山灰の中を外出し、 過重労働をした場合に起こりやすいようです。

呼吸器系の症状に影響を与える要因は?

火山灰を吸い込んだことによる呼吸器系の症状の進展は、 多くの要因によって変化します。 主な要因としては、大気中の火山灰粒子の濃度、 火山灰中の細かい粒子の割合、曝露の頻度や期間などがあります。 火山灰に混ざっている結晶性シリカや火山ガス、 エアロゾルの有無、そして、気象条件も関係します。 それまでの健康状態や、 防塵マスクなど呼吸器を保護する器具を使っていたかどうかということも、 症状に影響を与えます。

2.2 目の症状

目の炎症は、火山灰による健康影響の典型的なものです。 なぜなら、火山灰のかけらによって、目に痛みを伴う引っかき傷 (角膜剥離)や結膜炎が生じるからです。 コンタクトレンズを着用している人は、特にこの問題を認識しておく必要があります。 そして、角膜剥離を予防するため、 降灰時にはコンタクトレンズを外しておくことをお勧めします。

一般的な症状は次のようなものです。

  • 目の異物感。
  • 目の痛み、かゆみ、充血。
  • ねばねばした目やに、涙。
  • 角膜剥離や擦り傷。
  • 急性結膜炎や眼球を取り囲む結膜のうの炎症。 これらの炎症は、火山灰が目に入ることで起こり、 充血や、ひりひり感、まぶしく感じるなどの症状がある。

2.3 皮膚への刺激

あまり一般的ではありませんが、火山灰で皮膚に炎症を起こす人もいます。 特に、火山灰が酸性である場合に多いようです。 症状は次のようなものです。

  • 皮膚の痛みや腫れ。
  • 引っかき傷からの二次感染。

2.4 降灰による間接的な健康影響

火山灰そのものによる短期的・長期的な健康へのリスクと同様に、 大量の火山灰が降ることによる間接的な健康への影響も考慮する必要があります。 これらの間接影響は主に、生活基盤施設の降灰による被害によって、 2次的に引き起こされるものです。 例えば、次のようなものが挙げられます。

  • 道路への影響 空中を浮遊する火山灰によって視界が悪くなるだけでも交通事故が起きやすくなります。 しかも、道路が火山灰で覆われるという条件が加わって、 事故の危険性はさらに高くなります。 道路標示が見えなくなるだけでなく、火山灰が薄く積もった路面は、 湿っていても乾いていても非常に滑りやすく、ブレーキが利きにくくなります。 火山灰が厚く積もると、道路が通行不能になり、 被災地域への物資の供給が途絶えてしまうこともあります。
  • 電力への影響 降灰によって停電が起きることがあります。 停電は、暖房などに必要な電気機器が使えなくなるという形で、 健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。 湿った火山灰には導電性があるので、 電源供給装置の清掃を行うときには、 安全な操作手順を厳密に守ることが極めて重要です。
  • 給水への影響 降灰によって、水の汚濁や給水装置の遮断・破損が起きる可能性があります。 小規模でふたのない給水施設 (例えば屋根から水を引き込んで集落規模の地域に給水する貯水槽のようなもの)は、 特に火山灰に弱く、少量の火山灰でも給水に支障をきたします。 有毒である危険性は低いものの、酸性度が強くなったり、 塩素による殺菌効果が弱くなったりする可能性はあります。 また、降灰時や、その後しばらくの間、清掃用に水の需要が増加して、 その結果、水不足になることもあります。
  • 衛生施設(汚水処理など)への影響 自治体の衛生施設が一時的に利用できなくなると、影響が及ぶ範囲で、 病気の危険性が増す可能性があります。
  • 屋根が崩壊する危険性 1)火山灰の重みによって屋根が崩壊することがあります。 その結果、下敷きになって、けがをしたり、死亡したりする可能性があります。 2)屋根の火山灰を清掃するときに、屋根が崩壊する危険性があります。 すでに火山灰で荷重がかかりすぎている屋根に、人の重みが加わるからです。 3)いくつかの噴火で、火山灰を清掃中に屋根から落ちて死亡する事故が起きています。
  • 動物への影響 酸性のフッ化水素で覆われた火山灰は、 草食動物にひどい中毒を引き起こすことがあります。 特に、火山灰で覆われた牧草や土をそのまま食べる場合には危険性が高くなります。
  • その他の大噴火が生命に影響を与える深刻な危険には、 洪水(大規模な噴煙がひきがねとなって起きる豪雨によるもの)や、 大雨による土石流や火山性の泥流の発生などがあります。 このような場合、山の斜面に積もった大量の火山灰が動いて、 集落をのみ込む可能性があります。


3. 火山灰から身を守るためにできること

  • 自動車の運転を控える たとえ少量の降灰でも、その直後は、 視界や大気の状態などの運転条件が著しく悪化する可能性があります。 しかも、自動車が巻き上げる火山灰が、さらなる条件悪化の要因にもなります。 雨が降れば空気は一時的に急激にきれいになりますが、 この効果は火山灰が再び乾燥するまでに限られます。 可能ならば、降灰時には車の運転を控えて屋内に留まることをお勧めします。 どうしても運転しなければならない場合は、十分な車間距離を保って、 徐行運転を心がけましょう。
  • 家庭内の火山灰を減らす 可能な限り、常に全てのドアと窓を閉めておきましょう。
  • 防護 清掃作業を行う人は、しっかりとした防塵マスクを常に着用しましょう (IVHHNが推奨する防塵マスクについてはwww.ivhhn.orgの案内をご覧ください)。 推奨されたマスクが利用できない場合には、衣類から作った即席の布製マスクで、 のどや目に痛みを起こす大きめの火山灰粒子を防ぐことができます。 布を水で湿らせれば、より効果的です。 慢性気管支炎や肺気腫、ぜんそくなどの患者の方々は、 屋内に留まって、不必要に火山灰を浴びるのを避けるようにしましょう。
  • 目の防護 細かい火山灰が降る環境では、コンタクトレンズではなく、 ゴーグルや眼鏡をかけることで、目の痛みを防ぐことができます。
  • 飲用水 降灰があまりひどくない場合には、一般的には、 火山灰で汚れた水を飲んでも、それほど心配はありません。 ただし、飲む前に火山灰粒子を濾過した方がよいでしょう。 また、火山灰が混入していると、 地表で集めた水を殺菌するために必要な塩素の量が多くなります。 そのため、そのような水には雑菌が含まれていて、 飲み水に適さない危険性があります。 飲み水に火山灰が入っていると、通常は、 健康に被害を及ぼす段階に達する以前に、味が悪くなります (すっぱい、金属臭がする、にがいなど)。 健康を確保する最も安全な方法は、噴火の前に水を確保しておくことです。 少なくとも1週間に1回、十分な量の飲用水(1人1日約4リットル) を確保しておきましょう。 もし、雨水を集めて利用しているのであれば、タンクにふたをして、 火山灰が降る前に引き込みパイプをはずしておきましょう。
  • 家庭で育てた食べ物 畑で育てた野菜は、火山灰が付いたものでも、 きれいな水で洗えば安全に食べることができます。
  • 清掃 積もった火山灰をショベルで取り除くときは、 事前に軽く水をかけると作業がしやすくなります。 ただし、屋根に積もった火山灰については、 重くなりすぎて屋根が壊れないように、濡らし過ぎに注意してください。 乾いた状態で掃き掃除をすると大量の火山灰を浴びるので、避けるべきです。 ホースでの水かけは、大量の水を使うため、 人口密集地では水不足を引き起こすことがあります。


4. 子供のための予防策

火山灰は、子供の周りにも、大人の周りと同じように浮遊しています。 しかし、子供は体が小さい上、必要以上に火山灰を浴びないように、 うまい対策を考えて実践するということが少ないようです。 そのため、大人より多くの火山灰にさらされる危険性があります。 少量の火山灰を吸い込んでもそれほど害がないことが調査によって分かってはいますが、 次のような予防策を取ることをお勧めします。

  • できるだけ子供を室内で遊ばせましょう。
  • 火山灰が巻き上がっているときは、かけっこや激しい運動をしないように、 子供に助言しましょう。 動き回ると呼吸が深くなり、小さな粒子が肺のより奥深くまで入ってしまうからです。
  • 降灰がひどい地域では、親が清掃作業に従事できるように、お互いに協力して、 子供の一時預かり制度を作るのが理想的です。
  • 火山灰が降っているときに子供が外出する必要がある場合は、 マスク(IVHHNが推奨するものが望ましい)を着けさせましょう。 しかしながら、多くのマスクは大人用に作られており、 子供用のものはあまりありません。
  • 火山灰が深く堆積している場所や積み上がっている場所で子供が遊ばないように、 特に注意しましょう。


5. 追加情報

米国地質調査所(USGS)のホームページでは、火山灰が健康に与える影響に関して、 過去の噴火で得られた情報を提供しています。 また、結晶性シリカと火山灰によって引き起こされる可能性がある慢性疾患についての追加情報も、 掲載されています。 http://volcanoes.usgs.gov/ash/health/index.html


6. 参考文献

  • "Resident's guide to the state of the Soufriè Hills volcano following the scientific assessment of July 1998 and the dangers of volcanic ash with tips for cleaning up ash". The Emergency Department, St John's, Montserrat, West Indies. August 1998.
  • "Volcanic ashfall. How to be prepared for an ashfall." USGS, CVO, Vancouver, Washington. November 1999.
  • "Ash particles and home clean-up problems; advice from the University of Idaho." Mt. St. Helens Technical Information Network. Bulletin 7. Federal Coordinating Network, May 1980.
  • "Health criteria for reoccupation of ashfall areas in Montserrat." Report to the Dept for International Development, London. Baxter, P. J. and Maynard, R. L., October 1998.
  • "The mitigation of ashfall damage to public facilities: lessons learned from the 1980 eruption of Mount St. Helens." Washington. Federal Emergency Management Agency, Region X, Wm. H. Mayer, Regional Director. 1984.
  • "Volcanic ash, effects and mitigation strategies." http://volcanoes.usgs.gov/ash/
  • "Volcanic Hazards: A Sourcebook on the Effects of Eruptions" Blong, R. J, Academic Press, Sydney. pp484.1984.
  • "Mount St Helens Technical Information Network Bulletin" 14, 1980.
  • "Preventive Health Measures in Volcanic Eruptions." Baxter, PJ. American Journal of Public Health 76 (1986) Supplement: 84-90.

謝辞

このしおりは、米国地質調査所のスタッフからの協力を受けて、 英国ケンブリッジ大学のClaire Horwell博士ならびにPeter Baxter博士が座長を務めるIVHHNの専門家委員会によって作成されました。 IVHHNは、関連する会合に資金提供をしていただいた英国リバーハルム財団に感謝いたします。

IVHHNはこの文書を精読し意見を与えてくださった次の方々にも感謝いたします。
Dr Bob Maynard, Department of Health, UK Government, London, UK.
Dr Phil Weinstein, School of Population Health, University of Western Australia.
Steve Brantley, Hawaiian Volcano Observatory, United States Geological Survey, USA.
Dr David Johnston, Institute of Geological and Nuclear Sciences, Wellington, New Zealand.
Scott Barnard, Canterbury University, Christchurch, New Zealand.


 

 


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