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藤花歓迎光臨
楓若葉
花咲き乱れ、若葉陽光に輝く季節となった。
1650年ほど前、中国晋代の田園大詩人は、この季節をこう詠った。時は移り人は変わっても、自然の営みは泰然として変わらない。孟夏草木長 孟夏 草木長じ
遶屋樹扶疏 屋を遶りて樹は扶疏たり
・・・・・・
孟夏=陰暦四月 扶疏(ふそ)=樹木がよく茂り、枝ぶりのよいこと
2012年5月22日は待ちに待ったスカイツリーの開業日となる。それにさきだって、最寄の鉄道駅「業平橋」が「とうきょうスカイツリー」駅と改名された。この土地近くで生まれ育った私は大いに落胆したものだ。長年慣れ親しんだ「業平」が駅名から消える。少しほっとしたのは、括弧つきながら(旧業平橋)が残されたことだ。この由緒ある名を残して欲しいという要望が全国から寄せられたという。この近くで隅田川に架かる橋は、白髭橋、言問橋、吾妻橋、駒形橋、蔵前橋、両国橋と、江戸時代を髣髴とさせる優雅な呼称を持っている。が、業平橋はない。
この歌は、「伊勢物語」の「東下り」にみえる。官位を取り上げられ東国を放浪中であった業平が、はるか遠い都とそこに残してきた想い人を偲んで、都鳥よ、とこの歌を詠んだところ、隅田川の渡船に同乗していた人はみな涙したという。「言問橋」の名は、之に由来する。話題の業平橋だが、江戸時代にさかのぼると、隅田川に近くで東から流れ込む大横川にこの橋が架かっていた。近くに業平天神なる神社があってそれにちなんで名付けられたものらしい。
名にし負はば いざこと問はむ都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと
超近代的な高層タワー「とうきょうスカイツリー」に業平を偲ぶよすがを残してくれたのはうれしい限りである。折りしもスカイツリー開業日の5月22日の一週間後の5月28日は「業平忌」である。業平は西暦880年のこの日に幾つもの恋に彩られたその生涯を56歳で閉じている。
ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは
君や来し我れや行きけん思ほえず夢かうつつか寝てか覚めてか
恋といえば、生涯一途に夫を愛し続けた与謝野晶子は、ちょうど70年前の1942年の5月29日に64歳でなくなっている。1912年、留学中の与謝野鉄幹を追いかけてフランスに渡った晶子は、5月のパリ近郊の町でこんな歌を残している。
ああ皐月 仏蘭西の野は火の色す
君も雛罌粟(こくりこ)われも雛罌粟(こくりこ) 晶子
コクリコは、雛罌粟のフランス語である五月はまさに初夏、生きとし生けるものすべてが溌溂として生を謳いあげる。
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