伊能忠敬が算出した子午線1度の長さ


お詫び    (2008年11月3日)

『新字源』によれば、「分」は、小数では1の10分の1、または100分の1を表わすそうです。

したがって、伊能忠敬自身が、子午線1度の長さ「28.2里(110.75Km)」を「28里2分」と書いていたのです。この「28里2分」を誤記と判断したのは、私が無知だったからです。

もし、私の誤りをそのまま受け入れた方がいたとしたら、どうかお許しください。m(_ _)m


はじめに

子午線1度の長さを求めるために、伊能忠敬がどれだけ地道な努力を積み重ねたかということを取り上げているHPは少なくありません。

ところが、肝心の結論「28.2里」を「28里2分」と誤記するHPがあまりにも多すぎます。

この誤記を最初に見たとき、「里」と「分」ではスケールの違いが大きすぎるので、私は、一瞬、「里」は「厘」の誤りだろうかと疑っていました。

しかし、28厘2分という表わし方はなく、子午線1度の長さを表わすために分や厘が使われることも考えられません。

理解し難い状況に置かれて、いつの間にか私は、少数派の「28.2里」は誤りで、私の知っている「分」とは別な長さの単位「分」があったのかもしれないと思うようになりました。

そこで、ついに思い余って、国土地理院測地部宛に、次のような、「里」と「分」について教えを乞うメールを出してみました。

すると、地図測量広報相談官という肩書の方から、明快な回答のメールを頂戴し、これまでの混迷からすっきり脱出することができました。

そこで、Web上に氾濫している誤りの訂正にいくらかでも役立てばと思い、お許しを得て、次のような形で、そのメールを公開させていただきます。

【追記】 皮肉にも、メールを公開した夜、伊能忠敬が測量に用いた折衷尺が存在することが分りました。ところが、私には、その折衷尺の長さが腑に落ちません。

そこで、折衷尺の紹介とその疑問点を、「折衷尺の長さの不思議」という見出しで追加することにしました。

【追々記】 上の【追記】について、地図測量広報相談官の方から、レスの形でメールを戴き、そこに記されたアドバイスに従ってみたのですが、得るところがありませんでした。

そのままではいささか心残りなので、「折衷尺の長さの不思議」に、関連するメールを追加して、「伊能忠敬の折衷尺の怪」と題する別ページを設けさせて戴きます。


質問のメール

国土地理院測地部 御中

現在私は、「距離と方位角の計算」によって、任意の緯度の範囲に対する子午線の長さが簡単求まることに興味を感じています。

そんな訳で、北緯35度〜41度における子午線1度の長さ、110996.732(m)と、伊能忠敬が算出した子午線1度の長さ「28里2分」を比較して見たくなりました。

ところが、Webで検索しても、当時の1里と1分の長さが何メートルに相当するか分りません。

また、「28里2分」をキロメートルに換算した値も、次のように、一定していません。

子午線1度の弧長は江戸深川から仙台を経て青森の野辺地までの路線をいくつかの区間にわけその実測長から28里2分を得ることができました。これは110.7キロメートルにあたり現在わが国の緯度35度での値である110.9キロメートルに極めて近い値です。

★正式には28里2分(110.75キロ)と確定するのですが、その数値は当時のオランダの天文書と殆ど誤差のないものだったのです。

★子午線一度の長さを28里2分(110.85キロメートル)と定めました。

★1802年の第3次測量にて青森県から新潟県までの海岸線と越後街道を測量し、緯度1度の長さを28.2里(一里は約4キロメートル)と算出している。

★宿願の子午線一度の長さを「110.85km」と算定しました。現代の測地学による数値に比べても1000分の1の誤差しかないという精密なものです。

★忠敬の得た子午線1度の長さは28里2分(110.75km)で、現代の測定値と約1000分の1の誤差しかない。

畑違いの質問かもしれませんが、「里」と「分」についてご教示戴ければ幸甚に存じます

                                                                MM3210


ご返事のメール

MM3210 様 ご返事いたします。

・伊能忠敬に関する図書の中で著名なものの1つに、 保柳睦美博士が編集した「伊能忠敬の科学的業績(訂正版)」(s55.10発行) があります。

この図書では、1802年以降、緯度1°28.2里28里2分では ありません)とし、
110.75Kmとしています。

そして、同書の中で1里 =3.9273Kmとしています。

子午線の長さは、緯度により数値が異なりますが、この数値は同書か ら判断すると東北地方(北緯38°あたりを中心)と考えられます。

・「分」の長さ 同書によると、1尺=0.30303mとしています。

ということで、1分 (=1/100尺)は、0.0030303mになります。

・度量衡は時代や使用した社会によって違うようです。

また、ご質問 の内容(伊能忠敬の測定した子午線1度の長さ)は、一度、佐原市 の伊能忠敬記念館(Tel 0478−54−1118)に照会されると良い と思います。

 http://www.city.sawara.chiba.jp/kinenkan/index.html

宜しくお願いします。

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国土交通省 国土地理院 総務部 広報広聴室 
地図測量広報相談官 * * * *
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〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番
Tel 029-864-4462 Fax 029-864-6441
E-mail tsuboi@gsi.go.jp HP http://www.gsi.go.jp/
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お礼とお願いのメール

地図測量広報相談官  * * * * 様

「里と分」に関するご返事、有難うございました。

早速、距離と方位角の計算」を用いて、35度〜41度、37度59分〜38度01分などにおける子午線の長さをもとに、緯度1度分の長さを求めてみました(下表)

その結果は、藤塚あさひ 氏のHP「おもしろ地図と測量のページ」の次の解説に一致しました。

忠敬がくろうして求めた「子午線1度の長さ」28.2里は、どのくらい正確だったのでしょうか。現在の長さの単位(たんい)であるmになおして比べてみると、その差はわずかに0.2%と、おどろくほど正確なものでした。

そこで、拙HPにおいて、「伊能忠敬が算出した子午線1度の長さ」と題して、戴いたご返事を、当方の質問となどと一緒に掲載したいと思います。何卒ご了承くださるようお願い致します。

                                              MM3210
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【追記】 子午線1度の長さを28.2里とするものには、次のようなものがありました。

伊能忠敬と伊能図関連年譜  1801年 緯度128.2里と算出
(伊能忠敬研究会 渡辺一郎 編)  1802年 緯度1度の長さは今回の計測でも二八.二里

 伊能忠敬の略年譜       1802年 子午線1度の長さを二八二里と算出 


参考資料

緯度の範囲 子午線の長さ A=子午線1度の長さ A と忠敬の算出値との比
35度〜41度 665,980.390(m) 110,996.7(m) 1.0022288
37度30分〜38度30分 110,996.5(m) 110,996.5(m) 1.0022270
37度59分〜38度01分 3,699.883(m) 110,996.49(m) 1.0022269

国土地理院提供の「距離と方位角の計算」で求まる子午線1度の長さと比較してみた
忠敬の算出値 28.2x3.9273(km)
=110.74986(km)の精度(1里=3.9273Km)


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