Operation

 


              ペンギンおやじの声門閉鎖手術

 

 

 


ペンギンおやじはALSの告知を受け6年目で気管切開手術を受けました。気管切開前までは、マスク式呼吸器バイパップと排痰補助装置カフアシストを使っていました。一日の吸引回数もさほど多くなかったので気管切開の心づもりをしておくように言われていたペンギンおやじでありましたが、気管切開はまだ先の話とたかをくくっていました。救急搬送は突然にやって来ました。緊急入院(ペンギンおやじの入院奮戦記)した国立刀根山病院で気管切開を受ける際してに担当医の松村先生から声門閉鎖手術の存在を知りました。

 

 

 

声門閉鎖手術の概要

 

 

 

 

     喉頭略図

手術前

手術後

【気管切開の意外な事実】

ALS患者会の講演会で耳鼻咽喉科の先生が気管切開をすると誤嚥しやすくなると言うのである。これには長年ALSと付き合って来たケアマネージャーの人も少し驚いたようです。ALSは療養生活の中でいかに誤嚥性肺炎のリスクを少なくするかを考えなければなりません、気管切開後に気管に挿入するカニューレが喉の動きを押さえ込み唾液などが垂れ込みやすくなる。しかし、呼吸筋が弱くなるALS患者には気管切開の選択は仕方がないことでもあります。

 

【声門閉鎖の誕生】

声門閉鎖手術は誤嚥防止術の術式のひとつです。ALSの患者に選択する誤嚥防止術の術式には現在大きくは喉頭全摘手術、気管食道吻合術、声門閉鎖手術になります。声門閉鎖手術は福島県の鹿野真人先生が2006年頃から発表されたことで全国の先生が指導をうけ、急速に広まった術式です。しかし神経内科医の中には喉頭分離手術と聞くと喉頭全摘出手術と勘違いをしたり、縫合不全などのリスクが多いなどの間違った情報から手術に否定的な先生もいらっしゃいますが、誤嚥防止手術を専門とする先生達がこぞって鹿野先生の手術を見学に行って教えてもらい全国的に耳鼻咽喉科の先生達の中でいち押しの術式です。

 

【声門閉鎖検討のポイント】

本手術は、受けられるのであれば早い時期がのぞましいと思います。肺炎を反復し肺自体が痛んでいたり、既に肺の中に痰が溜まって取れない状況で手術をした場合は、肺炎予防・介護負担(吸引)減少効果は低くなります(手術時点で既に慢性感染状態のため) :国立刀根山病院=松村先生談。

 

【声門閉鎖の概要】

声門閉鎖術は声のもととなる声帯を縫合して、口からの唾液などを気管内に流れ込まないようにする手術です。簡単に書くとこれだけですが実際の手術はもう少し複雑です。上記で声帯の縫合不全の懸念が残る問題ですが、声門閉鎖術には解決策が用意されていました。声帯を縫合するのは3カ所で行いました、縫合は声帯直下の粘膜を上の層、下の層に切離・分断し、上の層、下の層それぞれでしっかり縫合閉鎖します。そしてさらにその間に前頸筋というものを挟み込んで中間層にしています。つまり「3層構造」で気管への誤嚥をブロックしてくれるのです。(※患者の身体状態で上記方法がとれない場合があります)

【メリット】

 唾液などの誤嚥性肺炎のリスク低減

  唾液垂れ込みによる痰の減少(吸引回数の減で介護負担の低減)

  気管、食道分離による経口摂取(口から食べる可能性)

【デメリット】

声が出せなくなる

 

 声門閉鎖手術は縫合がしっかりできる、また術後も縫合部が目に見えるところにあるため安心して経過観察ができること、気管孔を大きく形成し、今後長きにわたる在宅療養での気管切開孔、気管カニューレ管理をトラブルなく安全なものにしたい、という思いがあります。在宅療養型の手術であると思います。

 

 

 

声門閉鎖手術後の経過

 

 

 

 ここからは声門閉鎖手術を受けペンギンおやじの手術後の経過を記憶をもとに書いたもので、傷の治りや痛みの引き具合には個人差があると思います。ふまえてお読み下さい。

    手術後痛みは翌日にはずいぶん楽になりました。痛み止めはよく効きました。

    縫合あとは三日後から腫れが出ましたが1週間で引きました。

    唾液が多く最初は持続吸引をしていました、落ち着いたのは2週間後、口に当てたタオルは唾液で濡れなくなりました。

    喉の吸引をした時、少量の出血は1週間で止まりました。

 

【吸引回数は?】

  ALS患者が気管切開を受け人工呼吸器装着と言うことは、自然発生的にコールの確保、体位交換、呼吸器の安全を確保する上で、家族ないしは夜間介護のヘルパーさんが必須となり、必然的に24時間介護態勢を真っ先に検討しなければなりません、しかし夜間ヘルパーさんの人の問題などで夜間介護態勢を作ることは困難で現況の大きな課題であると思います。そこで本来は誤嚥防止手術の声門閉鎖手術に家族介護の負担軽減の期待は高まります。

  ペンギンおやじは気管切開手術と声門閉鎖手術は別々の病院で受けました。気管切開手術を受けてから声門閉鎖手術を受けるまで約1ヶ月間自宅待機をしていました。その為に声門閉鎖手術のあきらかな効果を実感しました。以下はペンギンおやじの実例です。

    気管切開だけの時

安静時2時間間隔、頻回時30分〜1時間もたない。

    声門閉鎖を受けて

退院当初は吸引回数は多かったです。

    退院1週間後、吸引回数はぐっと減り吸引の痰の量が少なくなりました。手術痕の刺激の減少したと思います。退院時傷口の痛みはありませんでしたが、カニューレがなじんで来たのかなー。

    吸引間隔のその後

  退院後2・3週間と日を重ねるごとに吸引の間隔は長くなり、約3ヶ月後には夜の吸引で寝ている妻を起こすような事はなくなりました。

 

【経口摂取は?】

気管切開手術を受ける前までは看護師さんやヘルパーさんの吸引とカフアシストの助けを借りながら氷を食べたりミキサーにかけたバナナを口にしていました。気管切開手術後は当然のことですが口からの摂食は完全に禁止になり、氷を口に入れることも禁止されました。

    気管切開から声門閉鎖手術の退院まで約4ヶ月間口からまったく食べてなかったのでペンギンおやじの嚥下機能は最低レベルまで落ちていました。

    声門閉鎖手術退院後、1週間のちに氷を食べることから始めました。それまで口腔ケアで若干の水が喉を通ることがあるもののやはり氷が溶けた冷たい雫が喉を通る時の気持ちよさは何物にもたとえがたいものでした。

    一度氷の味を知ってしまったペンギンおやじは早速看護師さんとヘルパーさん達とコンビニに出かけました。これまでの絶飲絶食令から解き放たれたペンギンおやじは抹茶アイスにクルミメイプルアイス・アロマコーヒー・赤ワインと欲望のまま買いあさりました。

    ガッツリ食べると言う訳にはいきませがふたたび口から味わえる楽しみが増えたことでペンギンおやじのQOLはアップしました。

 

※:上記はペンギンおやじの感覚で書いていますので個人差があります。  【】

 

 

声門閉鎖手術の課題

 

 

 

   ペンギンおやじはラッキーでした。それは救急搬送されたのが国立刀根山病院で担当の松村先生が声門閉鎖手術に精通されいたことです。先でも述べたように声門閉鎖手術は新しい術式の為にALSには誤嚥性肺炎の防止が最重要視されなければならないのに周知度が低いことです。そしてもう一つはALS患者を受け入れて声門閉鎖手術をしてくれる病院が少ないことです。大阪府下でも2病院しかないと聞きました。いろんな人のつながりで府立急性期医療センターで声門閉鎖手術を受けることが出来ました。手術後4ヶ月経過して手術結果には非常に満足しています。これから気管切開を検討している患者さんは最初から声門閉鎖手術をご自身の主治医にご相談することをお勧めします。そうすればペンギンおやじみたいに二度手術する必要はないです。痛いのは一回で十分ですからね!

 

    声門閉鎖手術を勧めてくれた先生

     国立刀根山病院  神経内科  松村先生

 

    声門閉鎖手術をしてくれた先生

     大阪府立急性期総合医療センター  耳鼻咽喉科  長井先生

 

このホームページが声門閉鎖手術の広くひろまる一助となれば幸いです。

 

 

Special Thanks

 

 

 

 今回の声門閉鎖手術では本当に多くの人々のお世話になりました。手術前後を支えてくれた専門多職種の方々、手術室の麻酔科・ICUの人達、神経内科の人達、リハビリ科の人達、そして病棟の人達といった人々にもそれぞれの専門分野の最高技術をいかんなく発揮していただき最高の医療態勢であったと思います。そういった恵まれた環境で手術を受けられたことに感謝している次第です。

 

 

ペンギンおやじの声門閉鎖手術レポート

 

 

 

左は2011年5月のALS協会近畿ブロック総会・交流会でペンギンおやじが発表に使ったパワーポイントで作った資料です。二種類のファイルタイプを用意しました、それぞれの環境に合ったファイルをダウンロードして下さい。

 

 Power Pointをお持ちの方はこちらから

 

 PDF形式はこちらから

 

※ ダウンロードはそれぞれの場所でマウスの右クリック→対象ファイルの保存でダウンロード

※ Power PointMicrosoft社の製品です。