ADHDAC

【はじめに】

 思い込みが激しく、訴えが熱心である割には何を言っているか分からない了解の難しいクライアントの中に、発達障害のADHDを持ちながら、家庭環境などの二次障害としてACとなっている人が少なからず居る可能性がある。ケアする立場の人が「ADHDAC」を頭に置いて対応すると解決できる問題が想像以上に多いと思われるため、「ADHDAC」とはどんなものかの説明を試みる。

「典型的なADHDにも見えない。典型的なACにも見えない」というところが診断の難しいところである。

 

ADHDACの臨床特徴】

@        多弁で長時間、断定的な表現で熱心にしゃべる。初対面から早口でまくし立てるような口調が多い。話が飛んだり、相手が理解しているかどうかに関わらずどんどんしゃべり続ける。メールの場合は非常に長い。

 

A        自分のことを非常に客観的に「他人事のように」表現することが多い。不利なことでも、聞いても居ないのに平気でぺらぺら言ってしまう。

 

B        自己評価が異常に低い割には対人緊張がほとんど見られない。

 

C        「困っている」「変わらなければいけない」と強く訴える割に、困っている問題がはっきりしない。何が辛いのか情緒的に了解しにくいことが多い。

 

D        答えを強く要求する。一般的なカウンセリングで「傾聴」しても、「話を聞くだけで何も答えてくれなかった」と満足しない。

 

E        「人に気を使っている」と訴える割には訴え自体、その訴えをしている態度自体は無神経で思い込みが激しい印象を受ける。「気を使うという割にはマイペース」という印象。

 

F        面接の最中にも、泣き出したり、急に冷静になったり、気分や態度が急に変動する。

 

G        ADHDとしては注意欠陥が目立たず、多動性も目立たない。状況が分からない部分と一方的で思い込みが激しいところだけが表面に出ている。

 

H        ACとしては、ACらしい悲劇のヒロイン風の「深刻さ」を感じさせず、かえって見当外れの思い込み、漫画的な印象すら受ける。

 

I        時々自分で「境界例である」と言って受診したり、またうつで受診して境界例と誤診されたりする。

 

J        ストレスの多い状況下では統合失調症のような幻覚妄想や、思考混乱を来たすこともある。激しい精神病症状の割には、薬なしでも急激に治ったりする。

 

K        思い込みがあまりに激しいために、時として妄想的にも見える。妄想的な体臭恐怖など。

 

L        時として強迫観念や強迫行動もある。

 

ADHDACの成り立ち】

 ADHDACは、多くは多動の目立たないADHDの子供が、親や学校などから言語的に否定されるような環境の中で、「自分はダメだ」と思い込むところから生ずる。

状況が分からないのに無闇に周囲に合わせようとしてかえって見当外れで了解困難な態度となり、そのせいでまた二次的に自己評価が下がるという形で、疎外感だけを感じて成長し、自覚的にはACや境界例の「見捨てられ不安」と酷似した自己評価の低下をきたす。

 本人は「周囲に全面的に合わせている」と自覚するが、実際は思い込みが激しく見当外れであるので、周囲からは「了解不能」、かえってADHD的な部分に対して「天然ボケ」と言われたりする。

 自分の本来の「自分が納得する」ことを置き去りにしてひたすら周囲に合わせようとしているため、その一生懸命さに周囲が応えないと感じると激しい怒りが生じ、「私はこんなにやっているのに」とぶち切れ、暴れたりする。

 一度に処理できる問題が限られており、ストレスが多すぎると、うつになるよりも精神病的に混乱することが多い。

 

ADHDACの診断および治療】

@        まず「一生懸命な割には何を言っているのか分からない」というクライアントはADHDACを一度は疑ってみる。

A        精神病状態があれば一旦は抗精神病薬で一時安定させる。

B        幼少期、特に5歳以下の生育歴や、家族歴で発達障害を疑わせる家族がいるか詳細に生活歴を聴取する。出来れば家族からの客観的な情報を取り寄せる。

C        「片付けが出来ない」や「忘れ物が多い」などの特徴ではなく、「状況理解の不足」や「思い込みが激しい」などの対人関係の特徴からADHDを疑ってみる。

D        本人にはまずACについて説明し、ACをカウンセリングで治すという形で治療に導入する。

E        家族歴の聴取から、家族にADHDがいれば、その家族のADHDの行動について詳細に説明し、本人がどうかについてはしばらくは保留にする。

F        生活歴、特に幼少期の生活歴をできれば家族から客観的に聴取し、発達障害を疑う特徴があるか情報を集める。

G        ACが軽い、ADHD的な特徴が強いケース、思春期などの場合は、本人に「ADHDである」ことを説明し、「これまでの不適応はそのせいであり、あなたが悪いのではない」と説明する。

H        ACが比較的重症なケースでは、AC的な認知を丹念に修正し、通常のACのカウンセリングと同様にすすめる。認知が修正されて「自分が悪くない」ことが分かると、とたんに元気になり、表情や服装なども一変して明るくなることが多い。その変化があまりに急速であるというのがADHDACの特徴。

I        ACが回復した後は、ACであった時と回復後についてきちんと対比して本人に自覚できるように話を進める。

J        ADHDに抵抗を示すようなケースは、「ADHDをどう受け止めて、どうADHDとして生きていくか」に治療の力点を移す。

K        最終的にはADHDのコーチングに移行する。「ADHDでよかった点」まで自覚できるようになると、治療終結の可能性も大きい。

 

ホームへ戻る