地産地消な道具を訪ねて

地産地消を字面通り捉えるなら、地域固有の独特なニーズに応じた製品を主に地域の中にだけ供給してきた「村の鍛冶屋」は、こじつけでも何でもなく、典型的な「地産地消」であると言えます。鍛冶屋は戦後の復興期に最盛期を迎えた後、高度経済成長期の前後に、農業の機械化、安手の量産品の氾濫、農山村地域の過疎化などの煽りを受けて衰退し激減しました。現在、高齢化と後継者の不在により、更にじわじわと姿を消し続けていて、地場産業化している刃物生産地を除けば、「村の鍛冶屋」は、もはや風前の灯火という状態に陥っています。
「鉈の収集とは珍しい物に目を付けたよね」と友人に言われることがありますが、左利きの私にとって、家にあった右利き用の片刃の鉈は絶望的に使いにくい道具で、野鍛冶が鍛えた左利き用の鉈を手に入れることは、子供の頃からずっと抱き続けて来た長い間の宿願でした。また、子供の頃から戸川幸夫や矢口高雄の作品の大ファンで、雪深い東北の山村やマタギの世界に憧れを懐いていたので、気が付いてみれば、山刀と呼ばれる狩猟用の剣鉈ばかり買い求めていたというような訳なのです。同じような物を無駄に持っていると呆れる方もいるかと思いますが、現地を訪ね歩いて名人と呼ばれる鍛冶屋さんの仕事を実際に見聞できたことは、多少の無駄をしても余りある貴重な体験で、鍛冶屋の職人技と仕事に対する誇りには深く感銘を受けました。惜しくも故人となられた鍛冶屋さんも紹介しているのは、失われてしまった貴重な「手技」への私なりのオマージュです。
※所在地は今後も平成合併以前の旧市町村名を採用して行きます(多少のブレは生じるかもしれません)。
名称 所在地 備考
打刃物(鍛冶屋さん)
小山鍛冶店 秋田県河辺町 切っ先が反り返った独特な山刀で、柄や鞘まですべて手作り。手押しのふいごが実働している姿も貴重だった。故人。
各上刃物店 秋田県五城目町 ご主人の一関卯一郎さんは、長い歴史を誇る五城目鍛冶の老舗の名工で、五城目タイプの伝統的な山刀は魅惑の逸品。故人。
西根打刃物製作所 秋田県阿仁町 西根稔さんは阿仁マタギの狩猟刀「又鬼山刀」の製作で知られた名工。気さくな方で色々な話も伺えた。故人。
西根鍛冶工場 秋田県森吉町 ご主人の西根登さんは、阿仁の西根稔さん(故人)とは親戚の関係。現在、稔さんの意志を継いで「西根正剛」銘の袋ナガサも手がけている。
タケフナイフビレッジ 福井県武生市 1996年にJKG(ジャパン・ナイフ・ギルド)主催の切出小刀製作体験会に一般参加して、福井県のタケフナイフビレッジを訪ねた時の記録。
黒姫物産センター 長野県信濃町 国道18号線の黒姫駅付近にある観光ドライブイン。信州打刃物が豊富に展示販売されている。
古見刃物店 群馬県沼田市 沼田鉈と呼ばれる角鉈。群馬北部の山仕事の現場のニーズから作り出された、プロユースの逸品。
戸草内源光刃物 岩手県軽米町 「岩手県卓越技能者表彰」を受けた名人鍛冶。懐が寂しかったのでトラックの板バネで鍛造したという片刃の角鉈を購入した。故人。
栗原鍛冶店 群馬県千代田町 栃木県田沼町の初午祭りに出店しているのを見掛け撮影。どの程度自家製品なのか不明だが、野鍛冶の仕事が実によく解る品揃えだった。
カゴ
こだし(朝市など) 秋田県五城目町・鹿角市 海に山に野に畑にと野外のあらゆる場面で大活躍する超便利な運搬・採集用のカゴ。東北地方全域で使われている。

番外編
鉈の研ぎ方 各地の鍛冶屋さんで教えてもらったナタの研ぎ方を、いいとこ取りでアレンジしてまとめました。
石臼の再生 戦後の経済発展の陰で価値を失い、ほとんど完全に日常生活から姿を消した道具の一つである「石臼」を古物屋で購入。庭石寸前だった石臼をクリーニングして心棒を交換し、使用可能な状態に再生した。自家栽培したそばの製粉に大活躍。

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