66.団塊ジュニアの結婚格差と少子化問題 (2007年5月8日記載)

 第二次ベビーブーム時代に生まれた世代(いわゆる「団塊ジュニア」)とその格差について、「65.団塊ジュニアとその格差」で分析した。しかし、団塊ジュニアの結婚事情と、その結果、拍車がかかっている少子化問題を分析するまでには至らなかった。そこで、今回は、「難民世代 団塊ジュニア下流化白書」(三浦展著)、「少子社会日本」(山田昌弘著)の記述を中心に、団塊ジュニアの結婚事情を分析し、少子化問題の背景を探ってみる事とする。

1.起きなかった第三次ベビーブーム(図1)

 右の図に、1947(昭和22)年以降の、出生数、人口妊娠中絶数、合計特殊出生率の推移を示す。

(1)第一次ベビーブームとその終息 
 @第一次ベビーブームは、1947年から1949年までの3年間続いた後、急速に終息した。その背景には、1948年9月に施行された「優生保護法」で、政府が人工妊娠中絶を容認したことがある。政府は、ベビーブームによる人口の急増を心配し、人工妊娠中絶によって、それを回避しようとしたのである。その政府の狙いは見事に的中した。
 A1950年以降、中絶数が急増し、出生数が急減した。中絶が無かったとすれば、出生数はそれほど減っていなかったと思われるのである。たとえば、1953年でみると、出生数1,868千人に対し、中絶数は1,068千人であり、もし「優生保護法」が施行されていなければ、2,800千人くらいの出生があったかもしれず、ベビーブームは当分続いたであろう。実際、人工妊娠中絶を認めていない米国では、1946年から1964年までの間に生まれた7千8百万人ベビーブーマーと呼んでいる。その人口は米国人口の4分の1を占める規模になっている。

(2)第二次ベビーブームとその終息
 @中絶数は、1953年から1961年までは、百万の大台を超えていたが、その後緩やかに減少している。一方、合計特殊出生率は、1947年の4.54をピークに、1957年の2.04まで一直線で低下したが、その後は1974年まで、ほぼ、2以上で横ばいで推移した(ただし、1966年は、迷信の丙午の影響により1.58まで大きく落ち込んだ)。そして、第一次ベビーブームで生まれた人達が成人になった1970年頃から、第二次ベビーブームが始まった。
 A1970年前半は、ニクソンショックやオイルショックで、日本経済が落ち込んだ時期であり、政府は再び、「人口増加」を心配する事となった。また、世界的にも、食糧・資源といった観点から人口の増加が問題となっていた。そこで、政府は、1974年6月、第二回人口白書を発表し、「子供は二人まで」というキャンペーンをはるとともに、「産児制限」で人口抑制を図る政策をすすめた
 Bこの効果はてきめんで、その翌年(1975年)から合計特殊出生率は、2を下回り、第二次ベビーブームはあっけなく終息した。ところが、出生率はその後低下の一途をたどり、1989年には1.57となって、丙午の年の1.58を下回り、「1.57ショック」と称され、一転して「少子化問題」がクローズアップされるようになったのである。


(3)起きなかった第三次ベビーブーム 
 @1990年代は、第二次ベビーブーマーが成人を迎えた時期であり、それまで減少一途だった出生数は、120万人前後でほぼ横ばいで推移した。しかし、出生率は1994年を例外として緩やかに減少しており(1994年には1.5と前年の1.46よりわずかに上昇した)、第三次ベビーブームと言われるほどの状況は起こらなかった
 Aその理由は、図2をみれば明らかである。この図は、団塊世代は1948年生まれ、団塊ジュニア世代は1973年生まれを代表させて、それぞれが、同じ年齢で何人子供を生んだかを比べたものである。図2から、以下のことがわかる。
 (@)団塊ジュニアは、団塊の世代ほど子供を生まなくなっている。
 (A)出産のピークが高齢化し、なだらかになっている。
 つまり、団塊ジュニア世代では、晩婚化・未婚化現象が一般的になり、なかなか結婚しなくなったのである。







2.晩婚化・未婚化現象


 まず、晩婚化・未婚化の状況をみてみよう。

(1)平均初婚年齢の推移(図3) 厚生労働省の「人口動態統計」からのデータに基づき、「平均初婚年齢の推移」を図3に示す。
 @1950年代に入ってから、平均初婚年齢は緩やかに上昇した。1950年には、男性25.9歳、女性23.1歳であったのが、1966年には、男性27.3歳、女性24.5歳となり、一旦ピークに達した。
 A高度経済成長が軌道に乗り、団塊の世代が結婚適齢期を迎える1960年代後半から平均初婚年齢は低下し始め、1972年には、男性26.7歳、女性24.2歳まで低下した。
 Bしかし、その後は緩やかに上昇を続け、2005年には、男性29.8歳、女性28.0歳まで上昇している。
 Cただし、男性の場合、1980年代後半から1990年代後半まで、ほぼ28.5歳で安定的に推移した。これは、ちょうどバブル経済が最盛期を迎えてその後崩壊し、「失われた10年」が始まる時期と一致している。この間は、経済的にまだ余裕が残っており、それが、男性の結婚時期を安定させたのではないか、と考えられる。

(2)年齢階級別未婚率の推移(図4、図5) 「国民生活白書」のデータに基づき、年齢階級別の未婚率の推移を、男性は図4で、女性は図5で示す。
(2−1)1975年まで 
 図4(男性)、図5(女性)をみるとわかるとおり、1975年までは各年齢階級ともに、未婚率はほぼ横ばいで推移している。
(2−2)1980年以降 
 しかし、1980年から、男女を問わず、全ての年齢階級にわたって、未婚率は上昇を始めた。1975年の平均初婚年齢に該当する年齢階級(男性25〜29歳、女性20〜24歳)以上でみつゆくと以下の事がわかる。
 @男性25〜29歳(図4) 1975年までは、未婚率は5割以下であり、半数以上の男性は結婚していた。しかし、1980年のデータでは、55%となり、未婚者が多数派となった。そして、2005年には、未婚率が73%となり、4人のうち一人しか結婚していない状態になってしまった。
 A女性20〜24歳(図5) 1975年までは、未婚率は7割くらいであったが、1980年のデータでは78%となり、未婚者が8割近くに増えた。そして、2005年には、未婚率が89%となり、20代前半で結婚している女性は、10人に一人までへってしまった。
 B女性25〜29歳(図5) 1975年までは、未婚率は2割前後であり、8割の女性は結婚していた。しかし、1980年のデータでは24%、1985年のデータでは31%というように、未婚者が一直線で増えていった。そして、2005年には、20代後半の女性のうち6割が、未婚のままである、という「晩婚化」「未婚化」になってしまった。
 C男性30〜34歳(図4) 1975年までの未婚率は、15%未満であった。しかし、1980年には20%を超え、2005年には、ほぼ半分の男性が未婚のまま、という状態になってしまった。
 D女性30〜34歳(図5) 1980年までの未婚率は10%に達していなかった。その後、ゆるやかに上昇し、2005年には、3人のうち一人は、未婚のままである。
 E35歳〜39歳
 (@)30代後半の男性の未婚率は、1980年までは1割未満であった。その後、急テンポで上昇し、2005年の未婚率は、31%となってしまった。
 (A)30代後半の女性の未婚率は、さすがに低く、10%に達したのは1995年である。しかし、その10年後の2005年には、19%とほぼ倍増している。
 F生涯未婚率(50歳の未婚率) 50歳での未婚率を「生涯未婚率」というが、その値もゆるやかに上昇している。とくに、1985年までは、女性の生涯未婚率が男性を上回っていたのし、1990年には逆転し、その後格差はどんどん拡大している。そして、2005年には、男性で15%、女性でも6.8%となり、その差は倍以上に拡大した。生涯未婚率の上昇は、日本における皆婚慣習の崩壊が近づいているかの指標でもある







3.未婚・晩婚の背景

 今までの分析からわかることは、1975年頃から、結婚する時期が遅くなり、次第に結婚が遠のいてきた、という事である。その背景には何があったのだろうか?

(1)結婚年次別結婚形態の推移(図6) 「第13回出生動向基本調査」の結果から、「結婚年次別結婚形態の推移」を図6に示す。
 @高度経済成長が始まる1960年代前半頃までは、「見合結婚」が主流であり、「恋愛結婚」はまだ少数派だった。
 Aしかし、高度成長が軌道に乗った1960年代後半からは、「恋愛結婚」が「見合結婚」を上回るようになり、21世紀に入ってからは、9割近くが「恋愛結婚」となっている。
 Bこのことは、「恋愛結婚」が広まるにつれ、若い人は結婚しなくなってきた、ということでもある。これは、男女交際がさかんになるにつれて、「恋愛はするが結婚はしない」というカップルが増えてきた、ということでもある。
 C別の言い方をすれば、1970年代に入る頃までは、「恋愛をしなくても結婚できた」のに、1990年代以降頃からは、「恋人はいるけれど結婚できるかどうかはわからない」、という変化が起きた、と言う事である。
 Dこの背景として言えるのが、「恋愛と結婚の分離」である。昔は、「恋愛のゴールは結婚」であった。しかし、今は、「恋人と恋愛は楽しむが、結婚は別」、という考え方が主流となっている。
 Eこの結果、「結婚するのに『理由』がいる時代」が到来したのである。








4.結婚する理由・しない理由

 結婚の理由にはいろいろあるであろうが、男性の経済力が大きな比重を占めていると思われる。それを確認するために、様々なデータを眺めてみよう。


(1)男性の年収別既婚率(図7) まず最初に、「難民世代」に載っている2006年の調査データをベースに「男性の年収別既婚率(初婚)」を図7に示す。この図と、図4の2005年のデータを比べれば、以下のことがわかる。
 @年収が上がれば、未婚率は下がる、つまり、年収が多ければそれだけ、結婚できる可能性が高くなる、という事である。ただし、年収1000万円以上で「35〜39歳」以外の層では、また未婚率が高くなっているのは、自営業が多く、結婚する時間的余裕が無かった人が多いようである。
 A年収300万円を超すと、「25〜29歳」では、図7の未婚率が図4の未婚率を下回るようになる。
 B年収500万円を超すと、「30〜39歳」では、図7の未婚率が図4の未婚率を下回るようになる。
 Cつまり、20代では、男性の年収300万円以上が、そして、30代では、男性の年収500万円以上が、結婚の大きな条件になっている、と思える。
 Dなお、年収ゼロの男性が150万円未満よりも既婚率が高いのは、結婚後失業した人がいるからであり、年収の無いほうが結婚し易いわけではない。
 E年収レベルと結婚の確率を、別の角度からぶんせきしてみよう。






(2)女性が男性に求める年収(図8) 女性は、結婚相手の男性にどれくらいの年収を求めているのであろうか?「難民世代」に載っている2005年の調査データに基づき、女性が男性に求める年収を年齢階級別に図8に示す。 
 @このデータを見ると、年収400万年未満の男性が結婚できる可能性はほとんど無い、と思える。
  (@)女性全体の93%は、男性の年収が400万円以上であることを希望している。
  (A)もっとも割合の少ない「23〜27歳の女性」の場合でも、89%は、年収400万円以上の男性を希望している。

A面白い事に、女性の年齢の若い層(18〜22歳)と上の層(33〜37歳)では、希望する年収が高い。
 (@)とくに、33〜37歳層においては、年収が600万円未満の男性でも良いとする人はわずか2割に過ぎない。
 (A)18〜22歳層でも、64%が男性の年収として600万円以上を希望している。

 Bその中間の年齢層(23〜32歳)では、男性の年収が600万円未満であっても、結婚できる確率はやや高くなる。
 C上記の分析から、結婚に際して、男性の年収と言う点では、女性がかなり妥協している、と思える。





(3)男性の年収と、女性が希望していると男性が思っている年収との分布(図9) それでは、男性の年収はどれくらいであろうか?また、「女性が結婚相手の男性に求めている」と男性が思っている年収はどれくらいであろうか?「難民世代」に載っている2006年の調査データをベースに「男性の年収と、女性が希望していると男性が思っている年収との分布」を図9に示す。

 @男性の現実の年収
  (@)26.3%が年収300万円未満である。つまり、図7からわかるように、結婚するのに必要な年収に達していない男性が4人に1人はいるのである。
  (A)35.5%(およそ3人に1人)が、結婚可能レベルぎりぎりの年収300万円から500万円である。
  (B)つまり、男性の61.8%が、年収500万円未満であり、結婚するために必要と思われる年収500万円以上を稼いでいる男性は、38%(ほぼ3人に1人)に過ぎないのである。
 A「女性が結婚相手の男性に求めている」と男性が思っている年収
  (@)89.7%の男性が、相手の女性は年収500万円以上を望んでいるのだろう、と思っている。
  (A)さらには、57.4%の男性は、相手の女性は年収700万円以上を望んでいるのだろう、と思っている。
 Bつまり、6割以上の男性が300万円未満、あるいは300万円以上500万円未満の年収であるのに、「相手の女性が望んでいる」と男性が考えている年収は、500万円以上である。このため、男性から積極的に結婚を申し込めない、という状態があるものと思われ、これが、未婚か・晩婚化の一つの理由であるとも思われる。





5.団塊ジュニアの経済力 

 結婚にあたり、男性の「経済力」が重要な役割を果たしているというところを概観してきた。その「経済力」とは、現在の収入だけではなく、将来の見通しも重要である。高度成長の頃は、今が貧しくても将来は給与も上がり経済的に豊かになる、という見通しが持てた。しかし、今は事情が違ってしまった。ニューエコノミーの進展により、日本型雇用は崩壊し、将来の見通しがよくわからない時代となってしまった。この変化の様子をデータで見てみよう。(なお、詳細については、47.正社員システムの崩壊」、「48.年功序列賃金の崩壊?」、「50.多様化する雇用形態を参照ください)。

(1)低成長の影響(左図)

 @年功序列賃金の崩壊
  (@)左の「図5−3」の上のグラフを見ていただきたい。プリ団塊(1941−45年生まれ)、ポスト団塊(1951−55年生まれ)、及び、新人類(1961−65年生まれ)の3世代について、「25〜29歳」の年収を100とした時の、各年齢階級別の実質年収を指数表示したものである。
  (A)この図をみれば、年功賃金の崩壊が一目瞭然である。団塊ジュニアについては、さらに賃金カーブがフラット化しているであろうから、将来の収入増はあまり期待できない世代となってしまった。
 A実質年間収変化率(伸び率)
  (@)左の「図5−3」の下のグラフを見ていただきたい。これは、1970年代、1980年代、1990年代、それぞれの10年間の実質年間収入の変化率を示すものである。
  (A)1970年代前半(団塊の世代が社会人としてスタートした頃)は、高度成長のピークの頃であり、後半に息切れしたけれども、この10年間の平均伸び率は3.4%であった。
  (B)1980年代の後半は、バブル経済で沸きかえった頃である。この10年間では、実質収入は年間平均で2.0%伸びた。
  (C)1990年代前半にはバブル経済が崩壊し、日本経済は長い低迷時代に入った。このため、この10年間の年間平均伸び率は0.2%となり、実質年間収入はほとんど伸びなかった。
  (D)団塊ジュニアは、この不況の真っ只中の1990年代半ばから社会に出たわけであり、最初から不幸なスタートであった。彼らの多くは、就職氷河期のため、正社員として就職が出来なかったし、そして、就職できたとしても、その後の昇給はあまり期待できなかったのである。










(2)フリーターと非正社員問題

 近年、大きな問題となっているフリーターや非正社員の問題の起源は、団塊ジュニアが高校や大学を卒業し、社会人となる頃に遡る。その辺の事情をデータからみていこう。


(2−1)フリーター数の推移(図10) 1990年以降のフリーター数の推移を図10に示す。これは、総務省の「労働力調査」に基づき作成したものであり、内閣府調査のデータよりは、絶対数が少ない。しかし、大体の傾向は同じである。
 @1996年に、100万人を突破したフリーター総数は、2002年に一気に200万人を突破した。
 Aバブル経済が崩壊したのが1992年、その影響で「就職氷河期」が始まったのは1990年代半ば、「就職超氷河期」が始まったのが21世紀の初めからである。
 B団塊ジュニアは、経済状況が悪化しているという最悪のタイミングで学校を卒業する事となったのである。
 Cこのため、フリーター等の非正社員として、社会人生活をスタートせざるをえない人が多かったのである。
 D親に経済力がある場合、留年、あるいは大学院進学等で卒業時期を遅らせる「雨宿り族」が大量に発生したのもこの頃である。
 E経済情勢が上向いてきた2004年にはフリーター総数はようやく減少し始めたが、30〜34歳のフリーターは減るどころか増え続けている。
 F30〜34歳のフリーター総数は、2000年に初めて201千人となって、20万人を突破し、2003年には327千人となり、30万人台を超えた。そして、総数が減った2004年にも、372千人となり、相変わらず増え続けている。
 G2004年に30〜34歳ということは、ちょうど団塊ジュニアの世代である。つまり、団塊ジュニアは、正社員として就職する事が出来ず、フリーター等の非正社員として就職し、その後もフリーターであり続けている人が多いということを示している。(詳しくは、「51.増え続ける中高年フリーター」を参照ください)。





(2−2)新卒時にフリーターだった人の現在の就業状態(図11)
 
 @新卒時にフリーターだった人は、その後もフリーターであり続ける確率が高いのだ。その状況を内閣府の2003年の「調査データに基づき図11に示す。
 A新卒時にフリーターだった人の55%は、今でもフリーターのままなのである。
 B正社員になれた人は31%であり、ほぼ3人に1人しか正社員になる事が出来なかったのである。
 C残りの14%のうち、自営業として独立した人は6%、後の8%は、実態不詳である。
 Dつまり、フリーターとして社会人生活をスタートさせた団塊ジュニアは、その後も半数以上がフリーターであり続けているのである。
 Eこうしたフリーターを含む「非正社員」と「正社員」の年収の差は極めて大きい。この違いを次にみてみよう。











(2−3)非正社員と正社員の年収比較(図12)

 @非正社員と正社員の年収の比較を、2005年の野村総研総合研究所の調査データに基づき、図12に示す。
 A20台の非正社員の8割前後は年収が200万円以下である。
 B20代前半の非正社員は、全員が年収300万円以下である。
 C20代後半でも、年収が300万円以上の非正社員は、わずか5%しかいない。
 D一方、正社員の場合は、20代前半でも2割強が年収300万円以上であり、20代後半になれば、6割弱が300万円以上の年収を稼いでいる。
 E4項で分析したデータから、20台の場合、年収300万円というのが結婚する場合の最低年収基準に近い事がわかった。
 Fつまり、非正社員は、結婚できるだけの年収を稼げない、ということであり、その結果、未婚化・晩婚化に拍車がかからざるをえないわけである。
 Gまた、正社員であっても、300万円未満の人が多数いるわけであり、ここからも、未婚化・晩婚化に拍車がかからざるをえない事情が見えてくる。






(2−4)金銭的理由で結婚しない人達

 @右の図に、金銭的理由で結婚しない人の割合を示す。これは、2003年の内閣府「国民生活白書」からのデータである。
 A男性正社員の34%(3人に1人)は、金銭的理由で結婚できない、と答えている。
 B一方、男性非正社員は、44%が、金銭的理由で結婚できない、と答えている。
 Cこの比率は、女性と比べると、非正社員・正社員ともに、10%以上高い。女性が、男性より収入が多いとは考えにくいから、このちがいは、「性的役割分担」に基づく意識が働いているものと思われる。
 Dつまり、「家計は男性の稼ぎで賄われるべきである」、という考えがいまだに主流であり、「夫婦の稼ぎを合わせて家計を賄えばよい」、という考えには、なかなか、変わっていかないようである。


V.最後に

 「団塊ジュニア」が成人して社会人になる時期は、就職口も少なく、なかなか正社員として働き始める事が出来なかった。そのため、フリーター等の非正社員として、不安定な身分のままで世の中に出て行かざるをえなかった。そうした、経済的不安定さが、未婚化・晩婚化をさらに促進している実態をみてきた。
 つまり、非正規雇用等による経済格差が結婚格差を生み、未婚のままの状態でいる時期が長くなり、結果として少子化に拍車をかけている、ということなのである。したがって、少子化対策としては、子育ての環境整備、といった問題もさることながら、
若者が安心して結婚できる経済的基盤をどのようにして築きあげるのか、といった経済問題(雇用問題)の解決が先にこなければならない
 一方、少子化問題に論点を絞って考えてみると、次のことが言える。
 @日本では、長い間、人口増加が問題であったのであり、如何にして出生数を抑えるかが課題であった。
 A人口抑制策として、人工妊娠中絶を合法化し、さらに、「子供は二人まで」というキャンペーンで産児制限を奨励した。
 Bその結果、「夫婦と子供二人」という「核家族」が「標準世帯」として、世帯構成の過半数を占めるようになって来た。
 Cしかし、その後の経済情勢の変動等様々な要因が絡み合って、若者がなかなか結婚しなくなった。
 D今回、分析しなかったが、日本では、欧米等に比べて、婚外子(婚姻関係に無い男女の間に生まれた子供)は極めて少ない。したがって、結婚しない(婚姻数が減る)ということは、そのまま少子化に直結する。
 E政府も社会一般も、少子化の問題は、あまり深く考えなかった。(少子化よりは、人口増を恐れていた)。
 Fところが、ここにきて、高齢化社会の到来とともに、将来を担うべき若者の不足が、急激に問題視されるようになり、少子化問題がクローズアップされるようになってきた。

 少子化の問題は、未婚化・晩婚化の問題とも絡むし、さらには、結婚した夫婦が何人子供を持つのか、という問題とも絡んでくる。これらについては、別の機会で分析する事としたい。

参考文献: 1.「団塊が電車を降りる日」、辻中 俊樹 編著、東急エージェンシー
        2.「団塊格差」、三浦 展、文春新書
        3.「下流社会」、三浦 展、光文社新書
        4.「難民世代」、三浦 展、生活人新書(NHK出版)
        5.「少子社会日本」、山田 昌弘、岩波新書
        6.「週刊ダイヤモンド 2007年4月14日号」、ダイヤモンド社
        7.「就職氷河期世代が辛酸をなめ続ける」、宮島 理、洋泉社
        8.「文藝春秋 2007年5月号」、文藝春秋社


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