127.苦境に立つテレビ(4):視聴者離れ? (2)  (2010年6月3日記載)

 前回は、テレビが視聴者から見離されつつあうのではないか、という事を、視聴時間等の量的側面から分析した。その結果、テレビの視聴時間全体は近年は横ばいではあるが、世代別にみると、若者はテレビ離れをしている、しかし、高齢者はテレビ依存を強めているという実態を見る事が出来た。
 今回は、量的側面ではなくて、視聴態度等の質的観点から分析する。

図1-1 個人視聴か集団視聴か
図1-2 テレビ所有台数(1世帯当たり)

 テレビ放送が始まった頃は、テレビ受信機が少なかったし、放送される番組も少なかったので、みんなで特定の番組を熱心に視聴する、という視聴態度が一般的であった。別の言葉でいいかえれば、「集団で」「選択的に」視聴していた、という事である。しかし、各家庭がテレビ受信機を複数台所有するのが一般的になり、放送局の数も増えて放送番組も増えてくると、個人で視聴する(個人視聴)、なにかをやりながら視聴する(ながら視聴、漠然視聴)、といった視聴態様が生まれてきた。さらに、リモコンの登場により、CMが始まると、次々とチャンネルを切り替える(ザッピング)ようになった。つまり、テレビの視聴態度が、個人化し、拡散し(いろいろな番組を次々と眺める)、希薄化(ながら視聴、漠然視聴)してきている、という事である。

 そこで、最後の参考文献に記載した書籍やURLから引用したデータに基づいて、そうしたテレビ視聴態度の変化から、視聴者のテレビ離れの状況を分析してみた。


1.NHK放送意向調査のデータから

 まず最初に、参考文献1(「テレビと日本人」)に記載されている「NHK放送意向調査」のデータから、視聴態度の推移状況をみてみよう。
 注: 「NHK放送意向調査」は、全国の16歳以上の男女を対象にNHK放送文化研究所が実施している調査である。


1-1個人視聴か集団視聴か(図1-1、図1-2)

 右の図1-1に1970年から2002年まで、個人視聴・集団視聴の割合がどのように推移してきたかを示す。そして、その下の図1-2に、1世帯当たりのテレビ所有台数の推移を示す。

 テレビが普及したての頃は、テレビは家庭に1台で、居間とか茶の間とか家族が集まる場所に置かれるのが当たり前であった。したがって、テレビは家族全員でみるものであり、個人でみる、というのは極めて例外的であった。
 しかし、テレビがほぼ全家庭に普及して複数台を所有する家庭が増えるにつれて、テレビを個人でみる傾向が強まってきた。
 1970年には、37%の世帯で、テレビを複数台所有していた。そして、21%の人が個人でテレビを見ている、と答えている。しかし、62%の世帯では、テレビが1台しかなかった。そのせいもあってか、71%の人が集団でテレビを見ている。
 1977年には、テレビを複数台所有している世帯の割合は44%に増えた。このためもあってか、個人視聴の割合は26%に上昇し、一方、集団視聴は61%に減少した。
 1979年と1982年の調査データをみると、2台のテレビを所有している世帯の割合が、テレビを1台しか持たない世帯の割合を上回るようになった。その結果か、個人視聴の割合は3分の1を超えて、36%、39%と4割に迫る勢いで増加した。その一方で、集団視聴の割合は59%、56%と徐々に減少した。
 1992年のデータを見ると、テレビを所有していない世帯はゼロ%となり、テレビを3台以上所有している世帯の割合が、44%でトップとなった。テレビを1台しか持っていないという世帯はわずか20%であり、8割の世帯で複数のテレビを所有するようになった。こうした事情を反映してか、集団視聴の割合が50%を下回った(49%)。そして、個人視聴は41%となって、集団視聴に迫る勢いである。
 2002年のデータでは、その傾向がさらに強まっている。3台以上テレビを所有している世帯の割合が50%となり、個人視聴と集団視聴の差がさらに縮まった(個人視聴は44%、集団視聴は46%)。
 こうのようなテレビ視聴の個人化は、ラジオの聴取携帯の変遷に通ずるものがある。ラジオも放送が始まった頃は、茶の間の主人公であり、一家団欒の中心であった。しかし、テレビ放送が始まった1960年代には、すでに、一家団欒の中心ではなくなっていた。そして、1970年代には、深夜放送に見られるように、アナウンサーとリスナーとの「私的コミュニケーション」が主役となってきた。
 ただし、テレビの場合、一家団欒の主役ではなくなったとしても、ほとんどの家庭では居間の中心に置かれており、集団視聴が今後も大きな割合を占めるであろう、と思われる。とはいっても、テレビが昔のように家族みんなで楽しむ、というパターンは少数化し、各個人がそれぞれ別々のテレビで自分の好きな番組をみる、というようになっていくであろうし、現在はもうそうなっていると言いきれるのではなかろうか? 家族のつながりが希薄化し、それぞれがばらばらに過ごすという家族のありかたの変化が、テレビを視聴する態度にも影響しているのであろう。

図1-3 漠然視聴・選択視聴の推移
図1-4 年代別漠然視聴の推移

 「NHK放送意向調査」では、2002年までのデータしか得られないので、現在のテレビ視聴態様については、別の調査データで分析する事としたい。

1-2漠然視聴か選択視聴か(図1-3、図1-4)

 テレビの見方として、自分の見たい番組を選んで最初から最後まで見るという「選択視聴」と、なんとなくいろいろな番組を見るといった「漠然視聴」とがある。その両者の見方の割合がどのように推移したのかを右の図1-3に示す。そして、その年代別の状況を図1-4に示す。


  テレビのチャンネルを切り替えるワイヤレスリモコンは1980年代後半から急速に普及した(1987年の54%か、1992年には87%まで上昇)。このワイヤレスリモコンの普及により、「番組が面白くなくなったら、次々とチャンネルを切り替える(いわゆる、「ザッピング」をする)」という人が急激に増えた(1992年で、81%もの人が、ザッピングをする、と答えている。
 こうしたザッピング視聴の登場によって、「なんとなくいろいろな番組を見る」といった「漠然視聴」の割合が増えていった。
 ③図1-3を見ると、「漠然視聴」は、1982年の21%から2002年の28%へと上昇している。これは、前述のワイヤレズリモコンの普及により、ザッピングが多くなってきたためである、と言えるであろう。。
 一方、「選択視聴」は、1982年の77%から2002年の66%まで、11%も減少している。これは、ザッピングの影響もあるであろうし、番組の数や種類が多様化して、好きな番組を一本に絞れない、といった事もあるのかもしれない。
 ⑤図1-4を見ると、60代を除いて、すべての年代で「漠然視聴」の割合が増えている事がわかる。ただし、70歳以上は増えたとは言ってもわずか2%であることをみれば、60歳以上の高齢者では、漠然視聴の割合は、1982年から2002年の20年間で、あまり変化していない、と言えるであろう。つまり、高齢者は、昔から今まで、視聴態度はあまり変わっていない、という事である。
 50代より若い人は、若くなればなるほど、漠然視聴の割合が高くなる(ただし、16-19歳は除く)。つまり、若い人ほど、1982年から2002年までの20年間で、なんとなくいろいろな番組を見るようになった、という事であろう。
 1982年の20代は2002年に40代になっている。そのような見方をして、図1-4を見ると、以下の事が言える。
  ⅰ)1982年の16-19歳: 2002年には30代後半であり、この20年間で「漠然視聴」が26%から35%へ、9%増えている。
  ⅱ)1982年の20代: 2002年には40代、「漠然視聴」は、27%から30%へと3%だけ上昇した。
  ⅲ)1982年の30代: 2002年には50代、「漠然視聴」は、18%から24%へと6%上昇。
  ⅳ)1982年の40代: 2002年には60代、「漠然視聴」は、18%のままで変わっていない。
  ⅴ)1982年の50代: 2002年には70代、「漠然視聴」は、19%から22%へと3%だけ上昇。
 上記の分析から、20年たったら、少しではあるが、漠然視聴する割合は増えてきた、という事がわかる。

1-3.NHK放送意向調査のデータから言える事

 上記の図1-1から図1-4までの分析で以下の事が言えるであろう。


図2-1 「一人だけで見たいか」「他の人と一緒に見たいか」
図2-2 男性年代別 「一人だけで見たい」
図2-3 女性年代別 「一人だけで見たい」

 テレビは、家族が集まってみるものから、個人個人が一人で好きな番組を見るものへと変わっていった。これは日本が豊かになり、各家庭で複数台のテレビを持てるようになった結果でもある。
 テレビの見方も、好きな番組を選んでみる、という見方から、なんとなくいろいろな番組を見るという見方へと変わってきた。ただし、この傾向は若い人ほど顕著であるが、60歳以上の高齢者の場合にはそれほどでもない。


2.NHK「日本人とテレビ 2005」のデータから

 次に、NHKが1985年から5年毎に実施している「日本人とテレビ」の調査データから分析してみよう。ここでの分析データは、参考文献2.(「日本人とテレビ 2005]から引用したものである。

2-1.テレビを「一人だけで見たい」か、「他の人と一緒に見たい」か(図2-1)

 テレビを「一人だけで見たい」のか、それとも「他の人と一緒に見たいのか」、という設問に対する答えの1985年から2005年までの推移を図2-1に示す。

 「一人だけで見たい」という人の割合が、調査の度ごとに増加しているのに対して、「他の人と一緒に見たい」という人の割合は、調査の度ごとに減少している。一方、「どちらとも言えない」という人の割合は微増である。
 1995年の調査までは、「一人だけで見たい」人の割合は、「他の人と一緒に見たい」人の割合よりは少なかった。ところが、2000年の調査では、「一人だけで見たい」人の割合が、「他の人と一緒に見たい」人の割合を上回り、2005年の調査では、その差がさらに広がった。
 「どちらとも言えない」という人の割合は、2005年には29%まで増えて、「他の人と一緒に見たい」人の割合30%とほぼ並んだ。
 図1-1では、実際に「一人でみている」のか「他の人と一緒にみている」のかの推移を調べたが、それと、図2-1とを見比べると、希望と実際の差がわかって面白いと言えば面白い結果が得られた。


2-2.男性の年代別「一人だけで見たい」人の割合の推移(図2-2)

 テレビを「一人だけで見たい」男性の年代別割合の、1985年と2005年の比較を右の図2-2に示す。

 図2-2をみてまず気がつくことは、グラフの両端(つまり、20代と70歳以上)で、テレビを「一人だけで見たい」という人の割合が、1985年から2005年までの20年間で大幅にふえた、という事である。
 グラフの中央部に当たる30代から60代でも増えてはいるが、せいぜい1~4%の増加に過ぎない。それに対し、20代で8%、70歳以上で9%の増加であり、両端での増え方は、中央部の倍以上である。
 これは、何を意味するのか、社会学的に分析すると面白いテーマになるであろう。素人の私としては、若者は孤独を好むようになり、高齢者は、孤独に慣れようとしているのではないか、と感ずるのである。

2-3.女性の年代別「一人だけで見たい」人の割合の推移(図2-3)


 テレビを「一人だけで見たい」女性の年代別割合の、1985年と2005年の比較を右の図2-3に示す。

 図2-3を見ると、男性との違いが良く分かる。40代を除けば、テレビを「一人だけで見たい」という人の割合が、1985年から2005年までの20年間で大幅に増えている、という事である。
 年代別の増加分を見ると、20代で5%、30代で10%、40代はマイナス3%、50代で13%、60代で9%、70歳以上で20%である。
 50歳以上の女性が、一人でテレビを見たい、と思うのは、もしかしたら熟年離婚に通ずるものがあるのかな、と思ったりすると、男性高齢者の私としては、ちと寂しいというか、悲しい気持ちになってしまう。
 図2-3と図2-4を比べると、40代の男女は、テレビを「一人だけで見たい」という人の割合が、1985年から2005年までの20年間でほとんど変化していない、という事がわかる。
 その一方で、70歳以上の男女では、テレビを「一人だけで見たい」という人の割合が、1985年から2005年までの20年間で、大きく増えている。
 こうした、トレンドの背後に何があるのか、社会学者の分析が待たれるところではある。

2-4.テレビに満足か不満か(図2-4)

 テレビに満足しているか、不満を感じているか、について、1985年から2005年までの推移を右下の図2-4に示す。

図2-4 テレビに満足か不満か
図2-5 年代別 テレビに満足か不満か

 「テレビに十分満足している」という人の割合は、1985年の14%から、若干ではあるが減少傾向にあり、2005年には12%となった。
 「テレビにある程度満足している」という人の割合も、1985年の69%からじりじりと低下し、2005年には64%となった。これと、十分満足を足し合わせたものを「満足」とすると、「テレビに満足している」人の割合は、1985年の83%から、20年後の2005年には76%となって、7%減少した。。
 一方、「テレビにまったく不満である」と「どちらかといえば不満である」を合わせたものを「不満」とすると、「テレビに不満である」人の割合は、1985年の14%から、2000年の20%まで、20年間で6%増加した。
 つまり、ここ20年間で、視聴者は、だんだんとテレビに不満を抱くようになってきたのである。

2-5.年代別「テレビに満足か不満か」(図2-5)

 「テレビに満足か不満か」、について、年代別に、1985年と2005年を比較したグラフを右の図2-5に示す。(黒の実線は2005年のデータ、赤の点線は1985年のデータ
 注1: 「満足」とは、「十分満足」と「どちらかといえば満足」の合計である。
 注2: 「不満」とは、「まったく不満」と「どちらかといえば不満」の合計である。

 赤の点線(1985年のデータ)と黒の実線(2005年のデータ)を比べると、この20年間の変化で、年代層ごとに、大きな特徴が見て取れる。まず、44歳以下の年代層を見てみよう。
  ⅰ)16-19歳: 満足度がわずかではあるが(2%)減少し、不満度も同じだけ(2%)減少した。総体的には、大きな変化はなかった、という事であろうか。
  ⅱ)20-24歳: 満足度がわずかではあるが(3%)増加し、不満度はその2倍(6%)減少した。総体的には、あるていど、満足度が高まった、という事であろうか。
  ⅲ)25-29歳: 満足度は7%増加し、不満度は8%減少した。総体的には、満足度が高まった、と言えるであろう。
  ⅳ)30-34歳: 満足度はわずかではあるが(3%)増加し、不満度は1%だけ減少した。総体的には、満足度がわずかに高まった、と言えるであろう。
  ⅴ)35-39歳: 満足度も76%のままで変化が無く、不満度も19%のままで変化していない。つまり、この20年間でまったく変化していない年代層である。
 ⅵ)40―44歳: 満足度はわずかではあるが(4%)増加し、不満度もその分(4%(だけ減少した。総体的には、満足度がやや高まった、と言えるであろう。
 つまり、44歳以下では、テレビへの満足度は変化がないか、ややが高まっている、と言える。ところが、45歳以上の年代層を見ると、これと逆の結果になっている事がわかる。
  ⅰ)45-49歳: 満足度は大きく減少(15%)し、不満度も二桁以上(11%)増加した。総体的に言って、テレビへの不満が大いに高まった、と言えるであろう。
  ⅱ)50―54歳: 満足度は大きく減少(17%)し、不満度はそれ以上(18%)増加した。総体的に言って、テレビへの不満が大いに高まった、と言えるであろう。
  ⅲ)55―59歳: 満足度はさらに大きく減少(18%)し、不満度はその分(18%)増加した。総体的に言って、テレビへの不満が大いに高まった、と言えるであろう。
  ⅳ)60―64歳: 満足度は大きく減少(16%)し、不満度はそれ以上(17%)増加した。総体的に言って、テレビへの不満が大いに高まった、と言えるであろう。
  ⅴ)65―69歳: 満足度は大きく減少(14%)し、不満度はそれ以上(16%)増加した。総体的に言って、テレビへの不満が大いに高まった、と言えるであろう。
  ⅵ)70歳以上: 満足度は一桁台ではあるが減少(9%)し、不満度はそれ以上(12%)増加した。総体的に言って、テレビへの不満が大いに高まった、と言えるであろう。
 つまり、45歳以上では、すべての年代にわたって、テレビへの不満が大いに高まったのである。結局のところ、今の若者(44歳以下)は、20年前の若者よりは、テレビに満足しているが、逆に、今の高齢者(45歳以上)は、20年前の高齢者よりはテレビに不満である、ということが分かる。
 少し、視点を変えて、この20年間で一つの年代層に含まれる人々のテレビへの満足度がどのように変化したかを見てみると、上記とは若干異なる風景が見えてくる。
  ⅰ)1985年の16-19歳(2005年には、35-39歳): 満足度は、90%から76%へと14%減少し、不満度は9%から19%へと10%増加した。つまり、テレビに不満を大いに感ずるようになったのである。
  ⅱ)1985年の20-24歳(2005年には、40-44歳): 満足度は、88%から81%へと7%減少し、不満度は11%から15%へと4%増加した。つまり、この年代も、5歳若い年代ほどではないが、テレビに不満を感ずるようになったのである。
  ⅲ)1985年の25-29歳(2005年には、45-49歳): 満足度は、75%から73%へと2%減少したが、不満度も23%から20%へと3%減少した。つまり、この年代は、20年経ってもテレビへの満足度にはあまり変化していない、と言える。
  ⅳ)1985年の30-34歳(2005年には、50-54歳): 満足度は、72%から66%へと6%減少し、不満度は24%から30%へと同じだけ(6%)増加した。つまり、この年代も、テレビに不満を感ずるようになったのである。この年代は、1985年の調査でも、2005年の調査でも、満足度が最も低く、不満度が最も高い、という特徴がある。
  ⅴ)1985年の35-39歳(2005年には、55-59歳): 満足度は、76%から69%へと7%減少し、不満度は19%から28%へと9%増加した。つまり、この年代も、テレビに不満を感ずるようになったのである。
  ⅵ)1985年の40-44歳(2005年には、60-64歳): 満足度は、77%から71%へと6%減少し、不満度は19%から24%へと5%増加した。つまり、この年代も、テレビに不満を感ずるようになったのである。
  ⅶ)1985年の45-49歳(2005年には、65-69歳): 満足度は、88%から77%へと11%減少したが、不満度は9%から20%へと同じだけ増加した。つまり、この年代は、テレビへの不満度は変わらなかったが、テレビへの満足度は減ってきたのである。
  ⅷ)1985年の50-54歳(2005年には、70歳以上): 満足度は、83%から80%へと3%減少したが、不満度は12 %から15%へと大きく減少した。つまり、この年代は、テレビへの不満が大いに高まった年代である。
  ⅸ)1985年の55歳以上(2005年には、70歳以上): 1985年の55歳以上の人も20年後には70歳以上のカテゴリーに含まれるので、2005年の70歳以上は厳密に言うと、1985年の50歳以上がすべて含まれる事となる。これらの年代層すべてについて、ⅷ)と同じ事が言える。
 上記④で分析した、一つの年代層に含まれる人々のテレビへの満足度が20年間でどのように変化してきたかをまとめると、以下の事が言える。
  ⅰ)すべての年代層で20年後の満足度は、減少している。
  ⅱ)「25-29歳」層を除けば、すべての年代層で、20年後の不満度が増加している。
  ⅲ)結論としては、国民すべてが、20年間で、テレビに満足しないようになり、不満を感ずるようになった、という事である。

3.NHK個人視聴率調査(関東地区)データから

 NHKでは、毎年2回、6月と11月に全国で1週間にわたって、個人毎にテレビの視聴状況をサンプル調査している。
 1955年から2000年までの6月調査分について、関東地区の視聴率トップ10の番組が、参考文献1(「テレビと日本人」)に載っている。そして、2004年から2009年までの毎年6月調査の結果は、NHK文化放送研究所のHPで公開されている。その両者のデータをもとに、人々がよく見るテレビ番組の視聴率とジャンルががどのように変化してきたかを以下、分析する。


3-1.視聴率トップと10位の番組の視聴率の推移(図3-1)

図3-1 視聴率トップと10位の視聴率の推移

 1955年から2009年までの、視聴率トップと視聴率10位との視聴率の推移を右の図3-1に示す(1955年から2000年までは5年毎、2004年から2009年までは毎年)。

 視聴率トップの番組の視聴率を見ると、1955年の調査時には49%という圧倒的な数字だったが、その後は、次第に減少し、2004年の15%まで、3分の1以下となってしまった。
 2005年に31%に急上昇したのは、2006年ワールドカップの予選中継があったからである。(詳しくは次項以下で分析する)。
 2006年以降は、15%前後となっている。2005年のデータは一時的現象と考えられるので、1990年以降、トップの視聴率は15%前後で「安定」している、と言える。
 一方、視聴率第10位の番組の視聴率を見ると、1955年には33%と高かったが、以降は減少傾向となり、今では、大体10%そこそこで推移している。
 視聴率トップと10位の番組の視聴率の差を見ると、1955年の16%から1980年の11%まで、10%以上あったが、その差は年々小さくなり、2005年の例外データを覗くと、5%前後までに縮小した。
 図3-1をみて言える事は、テレビ放送当初の頃の一つの番組にワット人気が集中する、という傾向が薄れ、人気番組が「ドングリの背比べ」で視聴率争いをしている、という事である。
 こうした傾向は、前項で分析した、テレビ視聴の個人化とも相まって、テレビ番組への視聴者個人のこだわりが反映されるようになってきた、という事であろうし、それがまた、テレビへの不満を高める要因にもなっている、と言えるであろう。
 つまり、テレビは元々、マスを対象として一方的に番組を「垂れ流す」わけであるから、個人個人の要求に応える体制にはなっていない。そこに、テレビ危機の根本があるのであり、インターネットに食われてゆく原因が潜んでいるのである。

3-2.視聴率トップ10番組の分別内訳について

表1 視聴率トップ3の
番組分野の推移
表2 視聴率トップ10の
番組の分野別内訳の推移

トップ


2位


3位

1955 舞台中継 映画 舞台中継
1960 クイズ ドラマ バラエティ
1965 スポーツ ドラマ 報道
1970 報道 報道 映画
1975 報道 報道 スポーツ
1980 バラエティ 報道 スポーツ
1985 ドラマ スポーツ 報道
1990 スポーツ ドラマ アニメ
1995 ドラマ ドラマ ドラマ
2000 スポーツ ドラマ 報道
2004 報道 報道 報道
2005 スポーツ スポーツ 報道
2006 ドラマ 報道 バラエティ
2007 ドラマ ドラマ 報道
2008 ドラマ ドラマ アニメ
2009 アニメ 報道 バラエティ
舞台
中継
映画 スポ
ーツ
クイズ ドラマ バラエ
ティ
音楽 報道 アニメ ドキュ
メンタ
リー
1955 5 2 2 1
1960 2 3 3 1 1
1965 1 2 3 1 1 2
1970 3 2 2 3
1975 2 1 2 1 4
1980 1 2 1 1 2 3
1985 1 1 2 1 2 3
1990 1 2 1 1 3 2
1995 1 4 3 2
2000 1 1 3 2 1 2
2004 1 3 1 1 3 1
2005 1 2 2 1 3 1
2006 4 2 3 1
2007 2 2 3 1 2
2008 1 3 3 2 1
2009 1 2 4 1 2
合計 5 11 16 9 37 22 9 38 11 2

 1955年から5年毎(2004年からは毎年)に機械的に収集してきたデータではあるが、トップ10に含まれる番組の分野を分析すると、ある程度のトレンドがみてとれる。
 まず視聴率トップ3の番組内訳を下左の表1に示す。
 そして、視聴率トップ10の番組内訳を下右の表2に示す。

 放送開始間もない時期の1955年には、テレビ独自で開発した番組よりは、舞台中継や劇場用映画など、既存の娯楽文化を借りてきたものが多かった。
 ところが、5年後の1960年以降は、舞台中継は姿を消し、ドラマを中心にテレビ局が独自に用意した番組が中心となる。
 1955年以降の視聴率トップ10番組の分野を見ると、何といっても、「報道」と「ドラマ」が東西の正横綱とも言える地位を占めている事がわかる。報道はテレビ本来の使命とも言えるわけであるから、これは望ましい傾向であると言えよう。
 ただ近年の視聴率トップ10の傾向をみると、「報道」が減って、かわりに「バラエティ」や「アニメ」が顔を出しているのはいかがなものであろうか? テレビ広告費の収入が減少し、番組制作費が削減される中で、低コストで作れるバラエティ番組を、目先の経費削減だけのために流しているとしたら、結局はテレビ離れを助長するのではないか、と危惧される。
 トップ10の具体的な番組名の一覧表については、右をクリックしてください: トップ10の番組一覧表



4.現代テレビ考2009、2010のデータから

 最後に、スカパーJAST(株)が、インターネットを使って、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)と関西圏(大阪、京都、兵庫、奈良)の20歳以上の男女に実施しているアンケート調査の結果をみてみよう。(2009年は男女520人ずつ、2010年は男女500人ずつ、対して、各年の1月に行った)。

図4-1 あなたにとって「テレビとは何ですか」

4.1.あなたにとってテレビとは(図4-1)

 “あなたにとって「テレビとは何ですか」”、という質問に対する回答をグループ別にまとめて、2009年と2010年で比較して右の図4-1に示す。


 2009年・2010年で、もっとも多い回答が「情報源」というもので、2009年で22.6%、2010年で26.6%であった。テレビのニュースや天気予報等が情報源になっている、という事である。
 次が、「娯楽・趣味・楽しみ」というもので、20%前後になっている。テレビのお笑い番組や映画番組等で楽しんだりしている、という事であろう。
 3番目が、「暇(時間)つぶし」というものだった。とくにする事もない時に、テレビでもみるか、といったところなのであろう。その割合をみると、2009年の18.9%から2010年には16.4%へと若干低下している。
 四番目に多いのが、テレビは「必需品」である、という回答であり、2009年・2010年と11%前後の比率を占めている。これは、「なくてはならないもの」「水や空気のようなもの」といった回答も含めた結果であるが、調査対象の1割強の人が「テレビは必需品」である、と答えているのは頼もしい限りと言えようか。
 また、テレビは「無駄」である、という答えは、2009年で3.4%、2010年で2.3%と極めて少ない。その一方で、テレビは「息抜き」である、とか、「友達のようなもの」である、という回答も合わせると、2009年で12.9%、2010年で6.5%となっている。
 以上の分析から、テレビが市民生活の中に根付いてきている様子が見て取れる。しかし、その実態と言えば、「必需品」という捉え方は1割強であり、「情報源」として有効性を認めている人たちも4分の1前後である。つまり、テレビを積極的に受け入れているのは、調査対象の3分の1強の人たちである、と言える。
 その一方で、「娯楽」とか「暇つぶし」、あるいは、「BGMのようなもの」といった消極的に評価している人たちは4割強であり、積極的に評価している人たちよりやや多い。こうした事を鑑みると、「テレビは絶対に必要である、とまでは言わないが、テレビの無い生活は考えられない」というのが、多数派の意見と言えるのではなかろうか?

4-2.帰宅したらまず何をしますか(男女別)(図4-2)

図4-2 帰宅したらまず何をしますか(男女別)
図4-3 帰宅したらまず何をしますか(年代別、男女別)(2010年)

 “誰もいない自宅に帰宅された時、まず最初に何をしますか”、という質問に対する回答をみると、「テレビをつける」と「パソコンをつける」といった回答が群を抜いている。この男女別の状況を右の図4-2に示す。

 女性の場合、6割弱が、「まずテレビをつける」、と答えている。そして、「まずパソコンをつける」、と答えた女性は、その半分の3割弱である。
 一方、男性の場合、「まずテレビをつける」、と答えているのは5割前後であり、女性と比べると1割ほど少ない。そして、、「パソコンをつける」と答えている(4割強)。
 男女ともに、「帰宅したらまずテレビをつける」、と答えているが、男性の場合は、「まずパソコンをつける」という人も、4割以上いる。男性は、テレビもみるが、パソコンも、という事なのであろう。
 そこで、年代別にみるとどうなっているかを、分析してみよう。

4-3.帰宅したらまず何をしますか(男女別年代別)(図4-3)

 帰宅後何をするかについて、男女別・年代別の状況を右の図4-3に示す。(このデータは、2010年のデータである)。男女ともに、すべての年代で、「まずテレビをつける」という人の割合が、「まずパソコンをつける」という人の割合を上回っているが、その差は、年代別で微妙に異なっている。

(1)20代の場合

 男性の半分は「まずテレビをつける」が、「まずパソコンをつける」という人も46%おり、両者はほぼ拮抗している。そして、この二つを合わせると96%であり、20代の男性はほとんどが、帰宅したらまず「テレビをつける」か「パソコンをつけるか」しているのである。
 一方、女性は、「まずテレビをつける」が53%で「まず「パソコンをつける」の36%を引き離している。しかし、この両者を足しても89%であり、11%の人は別の事をしている。

(2)30代の場合

 男性は53%が「まずテレビをつける」、そして、41%が「まずパソコンをつける」と答えている。両者の差は12%であり、パソコンははかなり劣勢である。しかし、両者を合わせると94%であり、30代の男性もほとんどが、帰宅したら、テレビかパソコンのどちらかのスイッチをオンにするのである。
 女性は、「まずテレビをつける」が63%であり、年代別で一番多い。「テレビをつける」人は26%であり、テレビ派が圧倒的に多い。それでも、両者の合計は20代女性と同じく89%であり、11%の人は別の事をしている。

(3)40代の場合

 男性の55%が「まずテレビをつける」と答えており、
50代と並んで、男性の中では一番多い。そして、「まずパソコンをつける」と答えたのは40%であり、男性の中では最も少ない。しかし、この二つを合わせると95%であり、40代の男性もほとんどが、帰宅したらまず「テレビをつける」か「パソコンをつけるか」しているのである。
 女性の場合、「まずテレビをつける」が54%、「まずパソコンをつける」が38%、合わせると82%であえい、18%は、それ以外の事をするのである。

(4)50代の場合

 40代と同じく、55%の男性が「まずテレビをつける」、そして、「パソコンをつける」のは41%であり、合わせると96%となる。やはり、50代の男性もほとんどが、帰宅したらまず「テレビをつける」か「パソコンをつけるか」しているのである
 一方、女性の62%が「まずテレビをつける」のであり、「まずパソコンをつける」という50代の女性は21%と、年代別のなかでは最も少ない。そして、この両者を合わせても83%であり、17%は、それ以外の事をするのである。

(5)60歳以上の場合

 男性は、帰宅したら「まずテレビをつける」割合は20代と同じく50%であり、年代別の中では最も少ない。一方。、「まずパソコンをつける」割合は44%で、20代に続いて多い。そして、両者の合計は94%であり、60歳以上の男性もほとんどが、帰宅したらまず「テレビをつける」か「パソコンをつけるか」しているのである。
 62%の女性は、「まずテレビをつける」、そして、24%が「まずパソコンをつける」と答えているが、その両者を合わせても86%であり、60歳以上の女性14%は、それ以外の事をするのである

(6)年代別・男女別データからわかる事

 ①男性の場合:
  ⅰ)年代に関係なく、帰宅したら「まずテレビをつける」か、「パソコンをつけるか」している。
  ⅱ)「まずテレビをつける」という割合が最も少ないのが20代と60歳以上で、50%である。
  ⅲ)「まずパソコンをつける」と言う割合が、一番多いのが20代で46%、その次が60歳以上で44%。つまり、男性の場合、若者と高齢者がパソコンに馴染んでいるのである。
  ⅳ)参考資料4(現代テレビ考 2009)のデータをみればわかるが、2009年のデータでは、60歳以上の男性の56.7%が「まずパソコンをつける」と答えており、「まずテレビをつける」の35.6%を大きく上回っていた。

図4-4 ながら視聴している割合(男女別・年代別)

 ②女性の場合:
  ⅰ)年代に関係なく、11~18%の割合で、帰宅したら「まずテレビをつける」か、「パソコンをつけるか」以外の事(たとえば、音楽を聴く、家族や知人・友人に電話する等)をしている。
  ⅱ)「まずテレビをつける」という割合が最も少ないのが20代で53%、60歳以上で、次が40代で54%である。逆に、「まずテレビをつける」という割合が最も多いのは30代の63%である。
  ⅲ)「まずパソコンをつける」という割合が最も少ないのは50代で21%、逆に最も多いのは40代で38%である。

4-4.ながら視聴(図4-4)

 テレビを「ながら視聴」しますか、という質問に対する答えを、男女別・年代別にまとめたものを右の図4-4に示す。
 男性も女性も90%以上が「ながら視聴」をしている。とくに女性の場合は、95%強が「ながら視聴」をしている。さらに男女別・年代別に細かく見てゆくと、以下のようになる。

 「ながら視聴」をしている割合がもっとも高いのは「30代女性」であり、2009年で99.0%、2010年には100%が「ながら視聴」をしている。。
 それに次いでいるのが「30代男性」(98%前後)、「20代男女」(94~97%)である。
 50代女性の2009年データを除けば、男女ともに、高齢者ほど、「ながら視聴」をする割合が低下している。
 60歳以上の男性は、「ながら視聴」をしている割合は9割以下である。

 それでは、「ながら視聴」をしている人は、なにをしながらテレビをみているのであろうか?次に、そこを分析しよう。

図4-5 ながら視聴の内訳(男女別)
図4-6 ながら視聴の内訳(男女別、年代別)

4-5.ながら視聴の内訳(男女別)(図4-5)

 テレビを「ながら視聴」する場合、何をしている事が多いですか、という質問に対する答えを、男女別にまとめたものを右の図4-5に示す。

 女性の場合、もっとも多いのが「食事をしながら」で7割強である。そして、次に多いのが「インターネットをしながら」で7割弱。ただし、両者の差は、2010年にはわずか0.2%となってしまった。
 一方、男性の場合、もっとも多いのが「インターネットをしながら」で7割前後である。そして、次に多いのが「食事をしながら」で6割弱。ここでも、両者の差は、2010年には2009年よりも縮まったが、それでも10%以上ある。。
 ③“「料理」をしながら”と、“「ごろ寝」をしながら”を比べると、男女差がはっきりと出ている。
  ⅰ)男性の場合は、3割前後が”「ごろ寝」をしながら”テレビをみている、と答えており、“「料理」をしながらテレビを見ている”、と答えたのは、10%にも満たない。
  ⅱ)一方、女性の場合、“「ごろ寝」をしながら”テレビを見ている、と答えたのは男性の場合とほぼ同じ3割強であるが、“「料理」をしながらテレビを見ている”、と答えたのはそれよりも1割前後多い4割強となっている。

4-6.ながら視聴の内訳(男女別、年代別)(図4-6)

 「ながら視聴」の「男女別」「年代別」の詳細データを右の図4-6に示す(このデータは、2010年のデータである)。その内訳を細かくみてゆくと、以下の事が言える。

(1)インターネットをしながら

 20代・30代の若者は、男女を問わず、8割以上が、「インターネットをしながら」テレビをみる、と答えている。
 男性の場合には、20代から60歳以上まで、年齢を重ねるにつれて、割合は下がっている。50代の男性は、「食事をしながら」以下であり、60歳以上では5割未満となって、「食事をしながら」を大きく下回っている。
 女性の場合には、40代・50代と、“「インターネットをしながら」テレビをみる”割合は低下しているところは男性と同じトレンドであるが、60歳以上の女性は、反転増加している。

(2)食事をしながら

 男性の場合は、年代を問わず、6割弱で同じである。
 一方、女性の場合は、30代・50代は75%強であるが、20代・40代では7割前後であり、さらに60歳以上になると、6割弱となって、男性とあまり変わらない。また、50代女性では、「インターネットをしながら」を20%以上、上回っている。
 60歳以上のみで比べると、「食事をしながら」の比率は、男女同じである。ところが、「インターネットをしながら」の割合は、女性のほうが男性を19%も上回っている。つまり、高齢者の女性は、男性よりもはるかにインターネットに親和性をもっているのである。

(3)ごろ寝をしながら

 性別・年代別でもっとも多いのが20代女性の49%、次が20代男性の37%である。“「ごろ寝」をしながらテレビをみる”というと、なんとなく、オジサンを思い浮かべるが、20代の女性ががトップ、そして、2位が20代の男性とは、意外な結果である。
 20代以外では、男女別・年代別にかかわらず、3割前後となっている。

(4)料理をしながら

 男性の場合、30代は11%と1割を超えているが、他の年代ではすべて一桁であり、とくに、60歳以上ではたったの2%である。
 女性の場合も、30代が最も多くて5割弱(48%)である。そして、最も少ないのが20代で3分の1(33%)、他の年代は4割強である。

4-7.「ながら視聴」の結果から

 インターネットによる回答である、という事を考慮しても、図4-4~図4-6の結果は極めて興味深い。

 男女ともに95%前後が「ながら視聴」している、という事は、それだけ熱心に見たい番組がない、という事の裏返しとも思われる。とくに、30代女性のほとんどが、「ながら視聴」である、ということは、この年代の女性が子育てや家事。共働き、等々で最も大変な年代である、という事を示しているのであろう。
 複数回答の結果ではあるが、男女ともに、「インターネットをしながら」というのが、7割前後であるが、その割合は、女性のほうが多い、というのは、ある意味、驚きである。とくに、60歳以上の女性の割合が、60歳以上の男性の割合よりも多い、というのも意外な結果ではある。
 20代女性の半数近くが「ごろ寝をしながら」、と答えて、男女別・年代別のトップになった、というのも、私にとっては意外であった。しかし、女性の年代別の中では、「料理をしながら」という割合が最も低かったのは20代である。この事は、晩婚化により、20代女性は独身が増えている、という事を示すものとも思われる。
 男性では、「料理をしながら」というのは最も高い30代でも11%、最も低い60歳以上ではわずか2%である。時代が変わって、男性も料理をするようになってきた、とはいっても、やはり、「男子厨房にはいるべからず」という「守旧派」が圧倒的多数、という事であろう。


5.最後に

 今回はテレビが視聴者から見離されつつある、という状況を視聴態度等の質的なデータで分析してきた。その結果、ここ20年くらいの間に、視聴態度に大きな変化が生じている事がわかった。これは、茶の間が家庭の中心だった時代が終わり、家族がばらばらになってきている時代の風景を反映したものである、とも考えられる。現代は、ある意味、家族崩壊の危機であり、家庭消滅の時代でもあるが、それが、テレビのあり方にも大きく影響していると思われる。
 今回の分析からみえてきた風景を下記にまとめてみよう。

 テレビは、家族みんなで見るものから、個人個人が自分の好みの番組をみるものへと、変わりつつある。
 テレビは、見たい番組を選んでじっくり見る(選択視聴)ものだったが、今では、なんとなく見る(漠然視聴)もの、あるいは、何かをしながら見る(「ながら視聴」)ものになってしまった。そして、インターネットでのアンケートである事を割り引いても、インタネットをしながらテレビを見る人が極めて多い。
 テレビに対する満足度を20年前と比べると、若年層(44歳未満)ではやや好転したが、中高年層(45歳以上)では悪化した。また、これを「一つの年代層に含まれる人々のテレビへの満足度が20年間でどのように変化してきたか」という観点からみると、ほぼ全員が不満に感ずるようになってきた。
 インターネットを介した調査ではあるが、帰宅したら、「まずテレビをつける」という人は、男女を問わずすべての年代で5割を超えているが、次いで多いのが「パソコンをつける」であり、パソコンがテレビに次いで、日常生活の風景に溶け込んできたように思える。
 テレビとは何か、という質問に対しては、「情報源」と答える人が2割強でトップであり、少しの差で「趣味・娯楽」、「暇つぶし」と続いている。視聴者としては、まず、テレビから様々な情報を得たいと思っており、次いで、息抜きを求めている、というところであろうか。

 このような風景から言えるのは、テレビ視聴者側の環境(テレビに対する期待とか家族構成等も含め)は大きく変わってきたが、番組を提供する側の体制がそれに対応できていないのではないか、という事である。それが、テレビ離れをうみ、広告の減少をもたらしたのではないだろうか?。
 要するに、テレビは、家庭の中心から、個人の嗜好の対象へと移りつつあり、パソコンと同じような立場になってきた、ということではなかろうか。テレビ局がこうした変化に対応した番組作りや番組の供給体制を作り上げる事ができなければ、テレビはインターネットに負けてしまうと思われる。


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参考文献: 1.「テレビと日本人」、田中 義久、小川 文弥 編、法政大学出版局
        2.「日本人とテレビ 2005]
        3.「最新 放送メディア入門」、稲田 植輝、社会評論社
        4.現代テレビ考 2009、スカパーJSAT(株)
        5.
現代テレビ考 2010、スカパーJSAT(株)
        6.「放送業界の動向とカラクリがよくわかる本」、中野 明、秀和システム
        7.「図説 日本のマスメディア」(第二版)、藤竹 暁、NHK Books
         8.
NHK放送文化研究所
        9.「放送の20世紀、NHK放送文化研究所監修、NHK出版


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