122.苦境に立つテレビ業界(1):テレビ局の経営状況  (2010年1月15日記載)

 2回続けて、新聞業界の現状を分析してきたが、今回は矛先を変えてテレビ業界を分析してみよう。
 実は、テレビ業界も、収入の伸び悩みと減益に苦しんでおり、その将来は、明るいとはお世辞にも言えない状態なのだ。東京キー局5社のうち、TBSとテレビ朝日、テレビ東京の3社が、2009年3月期決算の当期利益で赤字に転落してしまった。そして、日本テレビも大幅な減益となった。ただ、フジテレビだけは、大幅な減収でありながら(持株会社に再編した関係からか)、前期並みの利益を確保するという結果となった(これは、ライブドアから受け取った309億円の和解金を特別利益として計上した結果である)。
 そこで、今回は、各社がホームページで公表している決算短信の資料を中心にテレビ局の経営状況をながめ、民間放送業界の現状を分析する事とする。

 今回のコラムに用いたデータ等は、最後の参考文献に記載した書籍やURLから引用した。

1.売上の伸び悩みと減益に苦しむ五大キーテレビ局

図1-1 五大キーテレビ局の売上推移
図1-2 五大キー局の当期利益(税引後利益)の推移

 最初に各社がホームページで公表している決算短信の資料から、売上と当期利益(税引後利益)、収入構造、広告収入等を分析する
 各社の決算短信は、文末の参考文献欄に記載したURLをクリックすれば参照可能。
 各社によって過去何年間のデータが保存されているかに差があったが、そこで得られたデータで分析した。
 (日本テレビは2000年3月期から2009年3月期までの10年間、TBSは2001年3月期から2009年3月期までの9年間、テレビ東京は2003年3月期から2009年3月期までの7年間、フジテレビとテレビ朝日は2004年3月期から2009年3月期までの6年間のデータとなっている)。

1-1五大キー局の売上の推移(図1-1)

 まず最初に五大キー局の売上の推移を見てみよう。決算短信から得られたデータに基づき売上の推移を右の図1-1に示す。

 図1-1を見ると、5社の合計では、2004年3月期から2008年3月期までは増収だった事がわかる。
 ところが、2008年秋に起きた「リーマンショック」に引き続く世界同時不況の影響もあってか、2009年3月期には一転、減収となった。2008年3月期と比べると、金額では591億円、比率では4.6%の減収であった。
 各社別にみると、TBS以外の4社は、2004年3月期から2008年3月期までは、若干のばらつきはあるものの増収傾向であった。しかし、2009年3月期では4社そろって減収となった。
 なお、フジテレビの単体売上数字は、決算短信によると、1,762億円で2008年からは急減している。これは、2009年3月期に誕生したフジ・メディア・ホールディングズの関係で大幅に減ったものである。
 図1-1の「フジテレビ」の売上3,479億円は、決算短信の数字を基に、前年度との継続を考えて算出したものである。
 TBSは、他社を尻目に、2009年3月期には、前年度をわずか14億円ではあるが上回り、9年前の2001年3月期と同じレベルに回復した。

1-2五大キー局の利益の推移(図1-2)

 売上では、マクロ的にみれば、ほぼ横ばいとも言える状況であったが、当期利益でみると、まさに波乱万丈といった変動ぶりである。売上の推移で用いたのと同じ決算短信からのデータに基づき当期利益の推移を右の図1-2に示す。

(1)5社合計の利益の推移

 5社の合計でみると、2006年3月期に一旦落ち込み、翌年回復したが、その後、再び下落し、2009年3月期には、リーマンショックの影響もあってか、大きく落ち込んだ
 5社合計の利益が2006年3月期に落ち込んだのは、フジテレビの利益が大きく落ち込んだ(前期と比べると、金額で180億円落ち込み、75.6%もの減収となった)からである。
 フジテレビが、2006年3月期に大幅な減益となったのは、2005年に起きた「ライブドア騒動」の結果、345億円もの投資有価証券売却損を、特別損失として計上した結果である。
 注: ライブドア騒動とは、ライブドアの堀江社長(当時)がフジテレビの経営権奪取を目指して、親会社のニッポン放送の株式を買い占めた事件である。詳しくは右をクリック: ニッポン放送の経営権問題

(2)各社ごとの利益の推移

 日本テレビ(NTV)
  ⅰ)2000年3月期から2002年3月期までは、300億円を超す利益を計上しており、売上高利益率も10%を超して「優良会社」であった。
  ⅱ)ところが、2003年以降は減益傾向に転じ、2007年3月期に一旦増益になったものの、大きく利益を減らした。
  ⅲ)とくに、2009年3月期の利益は32億5千万円で、10年前(2000年3月期)の322億6千万円のほぼ1割という惨状である。
  ⅳ)会社側では、2008年3月期から続く減益の理由として「サブプライムローン問題」に端を発した経済不況による広告収入の減少ををあげている。

 
東京放送(TBS):
  ⅰ)2001年3月期の171億円から、2004年3月期の40億3千万円まで、直線状で減少したが、その後は増益に転じ、2008年3月期には171億7千万円となって、2001年3月期のレベルまで回復した。
  ⅱ)ところが、2009年3月期には一気に38億円という赤字に転落してしまった。その要因として、決算短信を見ると、広告収入の落ち込みがあげられている。ただ、売上だけをみると、若干の増収であるにも関わらず大幅減益による赤字転落とは、なんとなく釈然としない。
  ⅲ)しかし、広告収入は極めて利益率の高い収入であり、その減少は、ストレートに利益の減少を招く。広告収入については、項を改めて分析する。
 
フジテレビ
  ⅰ)2006年3月期に58億4千万円と、前期比180億円と大きく落ち込んだ事はすでに述べた。その翌年にはすぐに前のレベル(230億円強)まで回復したが、2008年3月期にはまた151億2千万円となって、前期比87億8千万円の減益となった。
  ⅱ)2009年3月期もほぼ横ばいであるが、これは、冒頭で述べたように、ライブドアから受け取った和解金309億円のおかげであり、これがなければ赤字に転落していただろうと思われる。
 
テレビ朝日
  ⅰ)2004年3月期から毎期上下動を繰り返してきたが、2009年3月期にはついに20億8千万円の赤字を計上してしまった。
  ⅱ)この原因として、決算短信で会社側があげているのは、やはり広告収入(とくに、スポット広告収入)の落ち込みである。
 
テレビ東京
  ⅰ)2003年3月期から2006年3月期までは着実に利益を増やし続けたが、翌期からは、一転減益に転じ、2009年3月期にはついに、24億1千万円の赤字となってしまった。
  ⅱ)決算短信を見ると、業績不振の原因として会社側があげているのは、他社と同様、経済不況による広告収入の減少である。

1-3減益の原因

 上記でみたとおり、五大キーテレビ局は2009年3月期に未曽有の「不況」に直面した。その原因として、どの会社も、広告収入の落ち込みをあげている。そこで、次項では、広告収入の減少が、なぜ、利益の減少に直結するのか、テレビ局の収入構造を分析してみよう。
 減益のもう一つの原因としては、2012年から完全移行する地上デジタル放送のための設備投資があげられる。この点については、別の機会に分析してみたい。

図2 五大キーテレビ局の収入構造 
(1)テレビ放送事業収入 (1-1)放送収入 (1-1-1)タイム広告収入
(1-1-2)スポット広告収入
(1-2)番組販売収入等
(2)その他事業収入

2.五大キーテレビ局の収入構造

 民間テレビ局の本業はテレビ番組を一般視聴者向けに放送する事であるが、だからといって視聴者から代金を徴収していない。(NHKの場合は、「受信料」として、強制的に徴収しているので、民間放送局とは根本的に異なる。それでは、どこから収入を得ているかというと、右の図2のように説明できる。
 収入源は、まず「テレビ放送事業収入」と「その他の事業収入」に二分される。

 (1)テレビ放送事業収入 テレビ番組の放送とそれに関連する事業により得られる収入で、「放送収入」と「番組販売収入等」に二分される
  (1-1)放送収入 テレビ番組の放送そのものから得られる収入で、「広告収入」とも呼ばれる。具体的には、その番組に伴うタイム広告収入と、番組の間に流されるスポット広告収入とに二分される。
   (1-1-1)タイム広告収入 「タイム広告」とは、スポンサー企業の名前が提供番組の前後・途中で紹介されるタイプのCMである。このCMを流す対価として得られる収入が、タイム広告収入である。
   (1-1-2)スポット広告収入 「スポット広告」とは、基本的に番組と番組の区切りの1分間(ステーション・ブレイク、略して「ステブレ」)に流されるCMである。通常、この1分間に15秒単位で4本のCMを流すそうである。スポットCMのほとんどは、このスポットCMであるが、他にパーティシペーション・スポット(略してPTスポット)と案内スポットがある。
  注: PTの一例としては、ある番組の提供スポンサーが必要な予算をすべて賄えきれない場合、そのスポンサーの了承のもとに、何社かのスポンサーを募り、彼らのCMを番組中に流す。そのCMをPTスポットCMと呼ぶ。
  (1-2)番組販売収入等 テレビ番組を系列のローカル局等に販売する事により得られる収入や、スタジオを運用する事により得られる収入等。
  注: キー局、準キー局、ローカル局等の関係については、項を改めて解説する。
 
(2)その他事業収入 テレビ局では、番組の放送以外にも様々な事業を展開しており、それらの事業から得られる収入である。具体的には以下のようなものがある。
  ⅰ)映画、音楽、美術及びスポーツ事業、イベント事業等から得られる収入
  ⅱ)出版物の販売、ビデオソフト等の企画・制作・販売等、ノベルティ商品の販売
  ⅲ)不動産事業収入(土地及び建物の賃貸事業収入)等々

3.五大キーテレビ局の収入構造別収入金額の推移

 それでは、上記収入構造別の収入金額がどのように推移しているのかを五大キーテレビ局でみてみよう。

図3-1 五大キー局合計の収入構造別収入金額の推移 

3-1.五大キーテレビ局合計の収入構造別収入金額の推移(図3-1)

 2004年3月期から2009年3月期までの6年間について、五大キー局を合計した場合の収入構造別収入金額の推移を右の図3-1に示す。


 「タイム広告収入」は、2004年から2007年までは、微増微減を繰り返していたが、2008年からは連続して微減となった。それでも、5千億円台はキープしており、2004年からの6年間はほぼ横ばいであった、と言える。
 一方、「スポット広告収入」は、2004年から2005年にかけて大きく増加した後は、年々減少しており、とくに、2009年には4千億円台ぎりぎりまで減少した。ピークの2005年3月期から2009年3月期までの4年間で、金額で868億6千万円、減少率で17.7%、と大きく減少した。
 第1項で、広告収入の減収が減益を招いたといったが、図3-1からわかるように、大きく減ったのはスポット広告収入であって、タイム広告収入は、まだまだ、頑張っている。これは、タイム広告のスポンサーは比較的長期契約に基づく企業が多くて、景気変動の影響が少ない、とみられているためである。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)は、2004年から2009年まで、ほとのど横ばいのままで推移している。
 テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入」は、2004年から毎年増加し続けており、2008年までは、広告収入の落ち込みをカバーする勢いであった。しかし、2009年には、広告収入の減収を補うほどには増えなかった。
 「その他事業収入」の利益率は、「広告収入」の利益率よりはかなり低く売上はなんとかカバーできても、利益まではカバーできない。それが、売上が微減であるにもかかわらず、利益が大幅に減少した理由であろう。

図3-2 日本テレビ(NTV)の収入構造別収入金額の推移

3-2.日本テレビ(NTV)の収入構造別収入金額の推移(図3-2)

 日本テレビのデータは、2000年3月期から2009年3月期までの10年間が得られたので、その10年間の収入構造別収入金額の推移を右の図3-2に示す。

 タイム広告」収入は、2000年から2002年まで増加したが、2003年以降は減少に転じ、2009年までじりじりと減り続けた。(2002年のピーク値1,593億5千万円が2009年には1,332億七千万円となり7年間で、260億8千万円(減少率16.4%)減少した。
 一方、「スポット広告収入」は、2000年から2001年までは増加したが、2002年以降は減少に転じ、2005年に若干盛り返したものの、2009年までほぼ直線状で減り続け、2009年3月期には934億円となって、1千億円台をも割り込んでしまった。2001年3月期ののピーク時(1355億6千万円)と比べると、2009年3月期までの8年間で、421億6千万円(減少率31.1%)も減少した。
 日本テレビの場合、スポット広告は大きく落ち込んだが、タイム広告も落ち込んでしまった事がわかる。これが図1-2で示すように、大幅減益になった主要な理由と思われる。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)も、金額は少ないものの、2001年のピーク時(122億9千万円)から、2009年まで上下動を繰り返しながらも減少し、2009年3月期には103億5千万円となった。
 一方、テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入(日本テレビの決算短信によれば、不動産賃貸事業収入、ノベルティ商品の販売、ビルマネジメント収入、プロサッカー事業収入等)」は、2000年の99億3千万円から、若干の上下動はあるものの増え続け、2009年には407億5千万円となって、400億円台を突破した。
 日本テレビの場合、広告収入が大きく落ち込み、「その他事業収入」で売上の落ち込みは、ややカバーできたものの、利益面ではカバーできず、大幅な減収になった、と考えられる。




図3-3 東京放送(TBS)の収入構造別収入金額の推移

3-3東京放送(TBS)の収入構造別収入金額の推移(図3-3)

 東京放送(TBS)のデータは、2001年3月期から2009年3月期までの9年間が得られたので、その9年間の収入構造別収入金額の推移を右の図3-3に示す。

 タイム広告」収入は、2001年から2007年までは、2003年を除き増加し、2007年には645億9千万円でピークとなった。しかし、2008年からは減少に転じ、2009年には595億2千万円で600億円を割り込んだ。(2007年から2年間で50億7千万円(7.8%)減少)
 一方、「スポット広告収入」は、2001年の1,093億円から、2007年の1,030億5千万円まで、小幅な上下動を繰り返しながらじりじりと下がり続けた。ところが、2008年からは減少幅が拡大し、2009年に859億円まで減少してしまった。(2年間で171億円(16.6%)減少)
 TBSの場合は、2007年までは、広告収入はほぼ横ばいで推移したが、それ以降広告費が急激に減少した2007年のサブプライムローン問題に端を発した世界不況の影響をもろにうけたものと推測される。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(TBSの場合は、「番組製作等」)も、2001年3月期の717億5千万円から2007年3月期の772億6千万円までは増加傾向であったが、2008年からは減少一途となり、2009年3月期には727億2千万円となった。
 一方、テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入(TBSの決算短信によれば、映像・文化事業(各種催物、ビデオソフト等の企画・制作、野球興行等)収入、不動産事業収入等)は、2001年の386億3千万円から2003年の235億6千万円まで落ち込んだ後、増加に転じ、2009年には546億2千万円と大幅に増加した。
 TBSは、“赤坂不動産”と揶揄されるほど、赤坂での不動産事業を拡大しているが、広告収入の落ち込みはカバーできても、利益面ではカバーできていないようで、これが赤字転落の一大要因と思える。
 注: TBSの不動産事業は、2008年までは50~60億円というレベルであったが、2009年には187億円と一気に3倍に増えた。


図3-4 フジテレビの収入構造別収入金額の推移

3-4.フジテレビの収入構造別収入金額の推移(図3-4)

 フジテレビのデータは、2004年3月期から2009年3月期までの6年間なので、その6年間の収入構造別収入金額の推移を右の図3-4に示す。

 タイム広告」収入は、2004年から2009年まで、ほぼ横ばいと言える状況であった。
 一方、「スポット広告収入」は、2004年から2005年にかけては増加したが、2005年以降は減少に転じた。とくに、2009年には1,200億円台も割り込んで1,139億円6千万円となった。これは、2005年のピーク値(1,406億4千万円)と比べると、266億4千万円(18.9%)減少した。
 注: フジテレビ単体の2009年3月期の売上は、前述のごとく、1,762億円で2008年からは急減しているが、ここで取り上げた広告収入については、前年まとでの比較を可能にするために、決算短信の連結決算の項目に記載されている数字を用いた。
 フジテレビの場合、広告収入が落ち込んでいるにも関わらず、利益は減っていないが、それは何度も述べているライブドアからの和解金309億円を特別利益として計上したからであり、もし、それが無かったとしたら、単純計算で150億円の赤字となっていたのだ。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)は、2004年の284億円から少しは上昇し、2009年には314億2千万円となった
 一方、テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入(フジの決算短信によれば、テレビ放送番組の企画制作・技術・中継事業等の収入、オーディオ・ビデオソフト等の製造販売、音楽著作権管理等の収入、通信販売、生花販売による収入、および、人材派遣、動産リース、ソフトウェア開発、出版等による収入等々))は、2008年に急増した後、一気に476億8千万円となって、前年比150億円近く落ち込んだ。これは、フジ・メディア・ホールディングズの関係でそうなったものと思われる。

図3-5 テレビ朝日の収入構造別収入金額の推移

3-5.テレビ朝日の収入構造別収入金額の推移(図3-5)

 テレビ朝日のデータは、フジテレビと同じく、2004年3月期から2009年3月期までの6年間なので、その6年間の収入構造別収入金額の推移を右の図3-4に示す。

 タイム広告」収入は、2004年3月期の888億3千万円から2009年3月期の962億8千万円まで、増加を続けた。(増加額74億5千万円、増加率8.4%)
 一方、「スポット広告収入」は、2004年から2006年にかけて増加し、2006年3月期には1千億円を突破して1,008億6千万円となった。だが、2007年以降は減少に転じ、2009年3月期には860億5千万円まで減少してしまった(減少額148億1千万円、減少率14.7%)
 テレビ朝日の場合、「タイム広告収入」は増え続けたものの、「スポット広告収入」が、減少してしまい、広告収入合計でみると、減少傾向となってしまった。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)は、2004年の130億9千万円から少しづつ上昇し、2009年には138億円となった
 一方、テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入(テレビ朝日の決算短信によれば、イベント事業、ビデオ・DVD販売、出版、出資映画事業、ショッピング事業、放送用機器等の販売等)は、2004年3月期の104億4千万円から順調に伸び続け、2009年には、248億円となって、2004年の倍以上(2.4倍)に成長した。
 テレビ朝日の場合、業績不振の原因は、スポット広告収入の大幅な減少である事は明らかである。


図3-6 テレビ東京の収入構造別収入金額の推移

3-6テレビ東京の収入構造別収入金額の推移(図3-6)

 テレビ東京のデータは、2003年3月期から2009年3月期までの7年間なので、その7年間の収入構造別収入金額の推移を右の図3-6に示す。

 タイム広告」収入は、2003年3月期の584億5千万円から、翌年に減少したものの、2007年3月期の634億8千万円まで、増加し続けた。しかし、2008年からは減少に転じ、2009年には600億円を割り込んで599億1千万円となった
 一方、「スポット広告収入」は、2003年から2006年にかけて増加し、2006年3月期には287億9千万円となった。だが、2007年以降は減少に転じ、2009年3月期には244億7千万円まで減少してしまった(減少額43億2千万円、減少率15.0%)
 テレビ東京の場合、広告収入は2008年から減少に転じ、2009年3月期には大きく落ち込んだ、という事がわかる
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)は、2003年の80億8千万円から2006年の91億5千万円までは、増加傾向であったが2007年に落ち込んでからは60億円台後半で推移している
 一方、テレビ放送事業収入以外の収入(テレビ東京の場合は、「ライツ事業収入」と呼んでおり、決算短信によれば、“放送番組の周辺権利を利用した事業、映画出資事業、イベント事業、音楽著作物の管理等”となっている)は、2003年3月期の65億3千万円から順調に伸び続け、2009年には、165億7千万円となって、2003年の2.5倍に成長した。
 こうしてみると、テレビ東京の赤字転落の原因は、広告収入の落ち込みが主な原因である、と言えるであろう。

4.五大キーテレビ局の収入構造別構成比率の推移

図4-1 五大キー局全体の収入構造別構成比率の推移

 ここで、広告収入がテレビ局の主要収入源である事を確認する意味でも、収入構造別構成比率の推移を見てみよう。


4-1.五大キーテレビ局全体の収入構造別構成比率の推移(図4-1)

 タイム広告収入」の構成比率は、2004年から2009年まで40%~41%台で推移しており、この6年間、ほぼ横ばいのままである。
 スポット広告収入」の構成比率は、38%前後であったものが、2009年には、32.9%にまで低下した。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)の構成比率は、この6年間、ほぼ11%前後のままである。
 テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入」の構成比率は、2004年の9.2%から年々上昇し、2009年3月期には15.0%となった。
 つまり、五大キーテレビ局全体の構成比率の推移でみると、2004年から2009年までの6年間、スポット広告収入の構成比率が減少し、その減少分を「その他事業収入」で補った、という事である。





図4-2 日本テレビ(NTV)の収入構造別構成比率の推移


4-2.日本テレビ(NTV)の収入構造別構成比率の推移(図4-2):

 タイム広告収入」の構成比率は、2002年の3月期に50%を突破して以来、2005年3月期までは、50%を超えていた。その後は若干低下し、2009年には48.0%である。
 スポット広告収入」の構成比率は、2005年3月期までは40%を上回っていたが、2006年以降は低下傾向となり、2009年2月期には33.6%まで低下した。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)」の構成比率は、若干の変動はあるものの、4%弱でほぼ横ばいで推移している。
 テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入」の構成比率は、2000年の3.4%から、若干の上下動はあるものの、上昇を続け、2009年3月期には、14.7%まで拡大した。
 NTVの場合は、広告収入(とくにスポット広告収入)が大きく落ち込み、それを放送事業以外の事業収入でカバーしている、という事情がみてとれる。

















図4-3 東京放送(TBS)の収入構造別構成比率の推移


4-3.東京放送(TBS)の収入構造別構成比率の推移(図4-3):

 タイム広告収入」の構成比率は、2001年3月期から2008年3月期までは、じりじりと上昇傾向であったが、2009年3月期には2%近く下落した。
 スポット広告収入」の構成比率は、2001年3月期から2008年3月期までは、じりじりと下落傾向であったが、2009年3月期には一気に5%近く下落した
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組製作収入等」)の構成比率は、2001年から2009年まで、ほぼ横ばいで推移した。
 テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入」の構成比率は、2001年から2003年まで低下したが、2004年以降はじりじりと上昇を続けた。そして、2009年には一気に20.0%となった。
 TBSの場合、2001年から2008年までは、構成比率にそれほど大きな変動はなかった。ところが、2009年3月期に、広告収入(とくにスポット広告収入)が大きく下落し、それを放送事業以外の事業収入でカバーした、という事である。このへんの事情は前述のNTVと極めて似通っている。













図4-4 フジテレビの収入構造別構成比率の推移


4-4.フジテレビの収入構造別構成比率の推移(図4-4):

 タイム広告収入」の構成比率は、2004年から2008年まで低下気味で推移した後、2009年に3%以上増加した。
 スポット広告収入」の構成比率は、2004年から2005年にかけて上昇した後、2006年以降はじりじりと低下した。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)」の構成比率は、2004年から2009年にかけて若干上昇した。
 テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入」の構成比率は、2008年に増加した後、2009年にはそれ以上落ち込んだ。
 フジテレビの場合、NTVやTBSとは異なり、2009年には、広告収入の構成比率は、前年よりは増加した。。








図4-5 テレビ朝日の収入構造別構成比率の推移


4-5.テレビ朝日の収入構造別構成比率の推移(図4-5):

 タイム広告収入」の構成比率は、2004年の45.0%をピークに2008年までは低下傾向であったが、2009年には若干盛り返して、43.6%となった
 スポット広告収入」の構成比率は、2004年の43.0%から2006年までは上昇したが、2007年以降下落に転じ、2009年3月期には40%を割り込んで39.0%となった。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)」の構成比率は、6%前後で、ほぼ横ばいのまま推移した。
 テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入」の構成比率は、2004年の5.3%から年々上昇を続け、2009年には10%を超えて11.2%となった。
 テレビ朝日の場合、構成比率でみると、スポット広告収入が減少し、それをその他事業収入」の伸びで補っている。これは、NTVやTBSと同じパターンである








図4-6 テレビ東京の収入構造別構成比率の推移


4-6.テレビ東京の収入構造別構成比率の推移(図4-6):

 タイム広告収入」の構成比率は、2003年の60.1%からじりじりと低下気味で推移し、2009年には55.7%となった。
 スポット広告収入」の構成比率は、2003年の24.9%から2006年の26.6%までは上昇し続けたが、2007年以降は逆に低下に転じ、2009年には22.8%まで下がってしまった。
 テレビ放送事業収入のうち、広告収入以外の収入(「番組販売収入等」)」の構成比率は、2003年の8.3%から2009年の6.1%まで、途中で若干の上下動はあるものの、低下した。。
 テレビ放送事業収入以外の「その他事業収入」の構成比率は、2003年の6.7%から年々上昇を続け、2009年には15.4%となった。
 テレビ東京の構成比率は、放送事業収入のすべての項目(タイム広告収入、スポット広告収入、番組販売収入等)が減少し、それを「ライツ事業収入」の伸びで補っている。これは、他の四局には見られないパターンである。

4-7.広告収入がテレビ局の収入に占める割合:

 ここまでみてきたように、広告収入がテレビ局収入の中で極めて大きな比重を占めている事がわかる。
  ⅰ)五局の合計でみると、2004年3月期にはの89.5%で、その後減少したとはいっても、2009年3月期でも84.0%を占めている。
  ⅱ)日本テレビ(NTV): 2000年には91.6%、その後減少したが、2009年で81.6%。
  ⅲ)東京放送(TBS): 2001年には59.6%、2009年で53.3%。TBSの場合は、他の4局と違い、広告収入の比率はそれほど大きくない。
  ⅳ)フジテレビ: 2004年には77.2%、2008年で75.5%と減少していたが、2009年に78.3%へ上昇した。この理由は何度も述べているフジ・メディア・ホールディングズとの関係でそうなったものと思われる。ただ、フジテレビの場合、広告費全体でみると、それほど大きな落ち込みとはなっていない。
  ⅴ)テレビ朝日: 2004年には88.0%、2009年には82.6%。
  ⅵ)テレビ東京: 2003年には85.0%、2009年には78.5%。
 その広告収入がじり貧傾向になったわけであるから、テレビ局の業績が悪化するのは、ある意味当然である、といえる。
 テレビ局としても広告収入の減少に対して漫然としているわけではなく、広告収入の確保を目指して努力はしている。しかし、その努力は、どうも、視聴者の期待を裏切る方向で行われているようなのだ。
 その一つの例が、最近多くなった「パチンコ業界」や「消費者金融業界」の広告放送である。これらは、テレビの全盛期には、テレビ局が広告を流す事を拒否していた(と言われている)業界なのだ。でも、背に腹は代えられず、金のために節を曲げた、というわけだ。
 もう一つの例は、恥も外聞もかき捨てた視聴率確保戦術である。やらせ等の問題は論外として、最近多いのが、番組内で別の番組を宣伝するために、その番組の主演タレントをゲスト出演させて番組の紹介をさせる、という極めて不自然な手段だ。このようなやり方で視聴率が上がると思っていたら、ジャーナリストとしての感覚を疑わざるをえない。
 テレビの本分は、ジャーナリズムでなければならない。そのための、視聴率アップ作戦、広告収入確保作戦の実施を望みたい。

5.テレビ広告費の推移

図5 テレビ広告費と名目GDPの推移

 五大キーテレビ局は、広告収入(とくにスポット広告収入)の減少で、業績が悪化し、テレビ朝日、テレビ東京、TBSの3社が、2009年3月期には赤字に転落した事をみてきた。そこで、電通が公表している資料から、テレビ広告費の推移をみてみよう。
 1985年から2008年までのテレビ全体の広告費の推移と、名目GDPの推移を右の図5に示す。

 1985年、テレビ広告費は1兆630億円で、1兆円をわずかに上回っていた。その後、バブル経済の発生に歩調を合わせるように増加し、1991年に1兆6,790億円で一旦ピークをうった。
 名目GDPもその間、323兆5千億円から468兆2千億円まで、ほぼ直線状で増加した。
 バブル崩壊の後、テレビ広告費は、下落に転じ、1993年に1兆5,890億円で底を打ってから再び上昇に転じた。そして、1997年に2兆円を突破して2兆80億円で2度目のピークとなった。
 名目GDPは、1992年以降も緩やかに上昇を続け、テレビ広告費が2度目のピークとなった1997年に、515兆2千億円でピークとなった。
 1998年以降2004年までは、テレビ広告費の増減と名目GDPの増減とは歩調が合っている。つまり、名目GDPが減少するとテレビ広告費も減少し、名目GDPが増加すると、テレビ広告費も増加した。
 ところが、2005年以降は、テレビ広告費は、名目GDPの変動とは無関係に、下落の一途をたどっている。
 とくに、2007年から2008年にかけては、名目GDPが上昇したにもかかわらず、テレビ広告費は、大きく下落した(金額で890億円、前年比下落率で4.5%)。
 つまり、テレビ広告費は、景気変動だけではなく、それ以外の要因でも下落したわけである。

6.テレビ広告費下落の要因:

 テレビ広告費が減少した理由を正面から分析したデータは、私はまだみつけていないが、大きく以下の2点を指摘したい。
  (1) テレビ広告は、自社の売り上げ増に、本当に役に立っているのだろうか、という疑問がスポンサー企業に生じている。
  (2)インターネットの普及につれ、スポンサー企業が、インターネットを使った広告に重点を移し始めた。
 こうした点を以下、分析してみよう。

図6-1 自動車購入者の購入のきっかけ

6-1.テレビ広告費の効果(図6)

 テレビ広告の効果を直接測定したデータは見つけられなかったが、参考文献9.「テレビCM崩壊」
にアメリカの事例が載っていたので、それを右の図6に示す。
 図6-1は、自動車購入者が自動車を購入するにあたって何をきっかけとしたのかを複数回答で求めたものである。

 図6をながめると、自動車の購買にあたって、アメリカの例ではあるが、テレビ広告はあまり役に立っていない事がよくわかる。
 トップの口コミの半分以下という衝撃的数字であり、新聞広告やダイレクトメールにも及ばない。
 こうした広告効果に対する疑問がもとなり、日本でも、スポンサー企業が景気動向にかかわらず、テレビ広告費を出し渋るようになったのではなかろうか?

6-2.テレビ広告に対する疑問:

 参考文献1.「マスゴミ崩壊」には、2008年下期以降、広告費を削減した結果、業績が向上した、という皮肉な事例が紹介されている。そのいくつかを下記に再掲する。

 アサヒビールは、2008年12月期連結決算で、売上が0.1%減少したにもかかわらず、最終利益が0.5%増加して、8年連続で過去最高を更新した。その理由として、広告費や販売促進費等を削減した事をあげている。
 包装餅・包装米飯のトップメーカーであるサトウ食品工業は、2009年4月期決算で、売上が5%減少の258億円にとどまったものの、純利益は27%増の6億円となった。これは、テレビCMや販促企画を抑制したために、売上は減ったが、コスト削減が効果を発揮したからである。

6-3.媒体別広告費構成率の推移(図6-2):

図6-2 媒体別広告費構成率の推移

 媒体別広告費構成率の推移を、電通の資料から分析してみよう。
 右の図6-2にその結果をまとめて示す。図6-2の上段では1985年から2006年までの、下段には2005年から2008年までの結果が掲載されている
。その理由は、電通が、2007年に「日本の広告費」の推定範囲を2005年に遡及して改訂したからである。
 ここで取り上げた媒体は、以下の7種類である。
 (1)4大媒体と言われる「新聞」「雑誌」「ラジオ」「テレビ」
  (1-1)新聞: 全国日刊紙、業界紙の広告料および新聞広告制作費
  (1-2)雑誌: 全国月刊誌、週刊誌、専門誌の広告料および雑誌広告制作費
  (1-3)ラジオ: 全国民間放送の電波料および番組制作費とラジオCM制作費[注:事業費は含まない]
  (1-4)テレビ: 全国民間放送の電波料および番組制作費とテレビCM制作費[注:事業費は含まない]
 (2)SP広告、プロモーションメディア広告: これは、下記の7項目に分類される。
  (2-1)屋外広告: 広告板、ネオン等
  (2-2)交通広告: 交通機関等の広告
  (2-3)折込広告: 新聞に折り込まれるチラシ広告
  (2-4)DM: ダイレクトメールの郵送料・配達料
  (2-5)フリーペーパー・フリーマガジンの広告料
  (2-6)POP広告: POP(店頭販促物)の製作費
  (2-7)電話帳広告
  (2-8)展示・映像その他: 展示会、博覧会、広告用映画・ビデオ等の費用
 (3)衛星メディア関連広告: 衛星放送、CATV、文字放送などに投下された広告費(媒体費および番組制作費)
 (4)インターネット広告: インターネットサイト上の広告掲載費(モバイル広告を含む)および広告制作費(バナー広告等の制作費および企業ホームページの内、商品/サービス・キャンペーン関連の制作費)

 テレビ広告費が全体の広告費に占める構成比率をみてみると、1985年から1991年(テレビ広告費が一旦ピークに達した年)までは、30%前後でほぼ横ばいで推移した。
 1992年から1997年(再びピークとなった年)までの構成比率は、テレビ広告費は変動していたが、じりりじりと上昇していた。
 1998年から2006年までも、構成比率そのものは、34%前後でほぼ横ばいのまま推移した。
 しかし、2007年の見直しを反映した下段の図からは、2005年から2008年にかけて緩やかではあるが減少気味である事がみてとれる。
 ニューメディアとして登場した衛星メディア関連広告をみると、その構成比率は徐々に増加はしているものの極めて少なく、経営が苦しいであろうことを推察させる。
 一方、インターネット広告の構成比率は、1996年に0.03%で初登場して以来、順調に上昇している。
 インターネット広告の構成比率を他の媒体の構成比率と比べてみると、
  ⅰ)1999年には、衛星メディア関連広告を追い抜いた。
  ⅱ)2004年にはラジオ広告を追い抜いた。
  ⅲ)2007年の見直しを反映させると、2006年には、
雑誌広告を追い抜いた。
という事がわかる。
 インターネット広告は、この調子でいくと、数年後には、新聞広告を追い抜くものと思われる。
 これまでのところ、インターネット広告は、新聞・雑誌・ラジオの広告を食って伸びており、テレビ広告を減らすところまでには至っていないようにもみえる。しかし、将来を展望すれば、テレビ広告がインターネット広告に食われるのは火を見るよりもあきらかではなかろうか?

7.負のサイクルに入ったテレビ局:

図7 テレビ局の負のサイクル


 ここまでみてきたように、テレビ局の主要収入源は広告収入であるが、それが減少していることがわかった。実は、広告収入の減少はテレビ局にとってはまことに嫌な負のサイクルを招くのである。そのサイクルを右の図7に示す。

 広告収入が減ると、テレビ局は利益確保のためにコスト削減に着手する。コスト削減でもっとも手っ取り早いのは番組制作費を削る事である。。
 番組制作費を削ると、当然のことながら、粗製乱造につながり、番組の質を低下させる。
 番組の質が低下すると、テレビ局の命とも言える視聴者が減り、視聴率が低下する。
 視聴率の低下は、スポンサー企業を益々テレビCMから遠ざけ、広告収入をさらに減少させる。こうして、テレビ局にとって、もっとも避けなければならない「負のサイクル」が完成してまうのである。

 
注: 視聴率について
 

 視聴率(しちょうりつ)とはあるテレビ番組をその地区のテレビ所有世帯のうち何パーセントが視聴したかを表す推定値であり、一つの指標である。視聴率には個人視聴率と世帯視聴率があるが、一般的に視聴率といえば世帯視聴率のことを指す。
 視聴率と広告収入とは関連があり、視聴率が高ければ広告収入も増えるようになっている。そのため、テレビ局は視聴率のアップに血眼になるわけである。
 しかし、ここでの視聴率は世帯視聴率であり、スポンサー企業にとってはたして広告効果はあるのかという疑問が生まれ、個人視聴率を対象にするべきではないか、という意見が出てきた。
 日本国内における世帯視聴率は、長い間、「ニールセン」と「ビデオリサーチ」の2社が測定していたが、2000年3月に「ニールセン」が日本国内における視聴率調査から撤退した。その結果、今では、「ビデオリサーチ」の測定した結果のみが用いられることとなった。「ニールセン」の撤退の理由は個人視聴率導入に関して民放キー局と意見が対立したからだとされる。
 民放キー局が反対したのは、個人視聴率の導入がテレビ視聴者の本当の関心がどこにあるかを明らかにし、結果として広告収入の減少につながるのではないか、という後ろ向きの発想のためであったと思われる。しかし、それが、結果として、視聴者のテレビ離れを招いたのではないかと思われ、まさに墓穴を掘った反対であった、と言わざるをえない。

8.最後に

 今回はテレビ局の経営状況について、キー局の決算短信をベースに分析した。
 テレビ局は、今までまさに「わが世の春」を謳歌していた。テレビ局員の給与はトップクラスで、生涯年収もトップクラスである。しかし、「奢る平家は久しからず」。いま、テレビ局に対して、衰退を告げる鐘の音が、二つの方向から鳴り始めた。
 一つは、ここで取り上げた収入の減少であり、もう一つは、地デジ対策をはじめとする経費の増大である。
 この笛の音を打ち消すために、テレビ局は、なりふり構わぬ経営努力を始めたが、すでに述べたごとく、どうも本質を外れているようである。

 的を外れた経営努力の結果がもたらした一つの例が、TBSの視聴率の崩壊であろう。(参考文献1.「マスゴミ崩壊」に記載されている事例を以下に紹介する)。

 2009年4月から、TBSは視聴率アップを目指して番組を大幅に改編した。
 ②ところが、4月9日、前代未聞の大事件(?)が発生した。その日の全番組の視聴率が一桁台に留まったのだ。しかも、その日の最高視聴率7.2%を記録したのは「水戸黄門」の再放送だったのだ。
 こうした全日一桁台の視聴率という惨状は、その後も何度か発生し、TBSはついに、またまた、番組の大改編に追い込まれた。
 つまり、2009年3月期で38億円という大幅な赤字決算に落ち込んだ状況を克服すべく着手した「改革」が、視聴者本位という本来の的から外れていたために、かえって、視聴者離れを増幅させる、という皮肉な結果を生み出してしまったのだ。

 次回は、キー局とローカル局の関係、テレビ局と番組制作会社(プロダクション)の関係等を中心にテレビ業界の危機を分析してゆきたい。

参考文献: 1.「マスゴミ崩壊」、三橋 貴明、扶桑社
        2.「図説 日本のマスメディア」(第二版)、藤竹 暁、NHK Books
        3.「最新 放送メディア入門」、稲田 植輝、社会評論社
        4.「2011年 新聞・テレビ消滅」、佐々木 俊尚、文春新書
        5.「新聞・TVが消える日」、猪熊 建夫、集英社新書
        6.「10年後、新聞とテレビはこうなる」、藤原 治、朝日新聞社
        7.
        7-1.日本テレビ決算短信
        7-2.TBSホールディングズ決算短信
        7-3.フジ・メディア・ホールディングズ決算短信
        7-4.テレビ朝日決算短信
        7-5.テレビ東京決算短信

        8.電通:「日本の広告費
        9.「テレビCM崩壊」
、Joseph Jaffe (織田 孝一 監修)、翔泳社 


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