118.人口動態からみる日本の将来  (2009年7月6日記載)

 前回は、日本の将来を探る、という観点から、日本が世界でどのような位置を占めているのかについて、過去からの変遷と未来への展望を試み、それを「117.衰退する経済大国日本」としてまとめた。そのコラムの最後に述べたのであるが、日本の将来を考える上で、人口動態からの分析は欠かせない。そこで今回は、人口動態のデータから日本の将来を分析してみたい。
 今回の分析に用いたデータは、国立社会保障・人口問題研究所の出生中位・死亡中位データである。

1.人口ピラミッドから

 日本の将来を語る上で欠かせない「枕言葉」が「少子高齢化」である。その状況を眺める上で、まず最初に、1950年から2050年までの人口ピラミッドの推移について、25年毎の状況を眺めてみよう。

1-1.高度経済成長の時代(1975年)まで

 戦後間もない1950年の人口ピラミッドと、高度経済成長が引き続いた1975年の人口ピラミッドを下の図1-1に示す。

図1-1 戦後直後と、高度経済成長直後の人口ピラミッド


(1)1950年の人口ピラミッド

 上の図1-1を見ればわかるとおり、日本の人口ピラミッドは、1950年においては、正三角形に近い形状であり、まさに、ピラミッドそのものであった。

 ただし、1920年代後半から始まった朝鮮半島や満州への進出に伴い、若い男性が軍隊に徴用され、1945年に終戦を迎えるまで、多くの前途ある青年が命を失った。その影響を人口ピラミッドで明らかに見ることができる。
 20歳から44歳までは、男性の数が女性を下回っている。とくに、25歳から34歳までを比べると、100万人以上男性が少ないのである。極論すると、この年代の成年男子100万人は、戦争の犠牲になってしまった、というわけである。

(2)1975年の人口ピラミッド

 1950年の「0-4歳」層(いわゆる「団塊の世代」とほぼ一致する)は、1975年の「25-29歳」層であり、したがって、人口ピラミッドも「25-29歳」層から上では、1950年の形状をそのまま維持して、ほぼ正三角形となっている。
 しかし、24歳以下を眺めると、どの年齢層も「25-29歳」層よりは少なく、早くも「少子化」の影響が見て取れる。

1-2.バブル経済の崩壊後から近未来(2025年)まで

 
次に、バブル経済が崩壊し、日本経済が長い低迷期に突入した2000年と、近未来としての2025年の人口ピラミッドを下の図1-2に示す。

図1-2 バブル経済崩壊後と近未来の人口ピラミッド


(1)2000年の人口ピラミッド

 この年の人口ピラミッドは、「団塊の世代」(50-54歳」層より上は正三角形、「団塊ジュニア」(「25-29歳」層)より下の世代は、ほぼ逆三角形になってしまい、その間の年齢層は凹型の矩形に近い。つまりは、少子化の影響が顕著に表れている人口ピラミッドとなっている。

 注: 49歳から下の年齢層の中で突出しているのが「25-29歳」層だが、この年齢層は「団塊ジュニア」と呼ばれるグループである。これは、年齢的に見て、団塊の世代の子供たちに当たる年齢層だからである。
 団塊ジュニアから下の世代(24歳以下)を見ると、正三角形というよりは、逆三角形に近い形状になっている。これは、後で分析するが、合計特殊出生率が著しく低下していったためである。ただし、「0-4歳」層がほんのわずかではあるが、「5-9歳」層よりは多く、逆三角形の歯止めとなっている。これは、ちょうど「団塊ジュニア」が結婚年齢に達してきたので、出生数が上向いた結果である。

(2)2025年の人口ピラミッド

 団塊の世代も「75-79歳」となってしまい、その結果、65歳以上の高齢者が圧倒的に多い事を如実に表す人口ピラミッドとなってしまう。とくに、女性の高齢者が圧倒的に多い、という事がみてとれる。
 団塊ジュニアも「50-54歳」になっており、そこから下の年齢層は、ほぼ逆三角形のままであり、少子化に歯止めがかからない状態で推移してゆくものと予測されている。この人口ピラミッドからわかるように、2025年には、少子高齢化が大きな問題としてクローズアップされてくるであろう。

1-3.将来(2050年)の人口ピラミッド

 少子化の傾向がこのまま続けば、2050年には恐ろしいほどの少子高齢社会になってしまう。その際の人口ピラミッドを下の図1-3に示す。
 図1-3の右側の図は、65歳以上の高齢者だけの人口ピラミッドである。2050年には、高齢者が圧倒的に多くなるので、85歳以上は、突出してしまう(とくに女性の場合)。そこで、65歳以上100歳以上までを、5歳ごとの年齢層に分けて別の図として示した。

図1-3 将来(2050年)の人口ピラミッド


(1)2050年の人口ピラミッド

 2050年とは、団塊の世代は100歳以上となり、団塊ジュニアも「75-79歳」層の後期高齢者となる時代である。団塊ジュニアから下の世代は、逆三角形のような形状であり、若年層ほど数が少ない。

 一方、団塊ジュニアより上の世代を見ると、85歳以上の女性高齢者が圧倒的に多い形状となっている。男性の場合も85歳以上は300万人以上となる、と予測されている。

(2)2050年の65歳以上の人口ピラミッド

 65歳以上の高齢者を人口ピラミッドで表すと、団塊ジュニアより上の世代はほぼ正三角形に近いの形状をしている事がみてとれる。
 しかし、男女の人口を比べてみると、年齢層が上がるにつれて、女性のほうが圧倒的に多くなる事がわかる。これは、後で分析するが、女性の平均寿命が男性よりも5歳以上長い結果である。

2.出産・死亡データから

 人口ピラミッドが、1950年の正三角形から、2050年の逆三角形まで、100年の間にまったく様変わりしてしまうのは、出産・死亡データがそのように推移していく結果である。団塊の世代の誕生後は出産数が急激に減って少子化となり、平均寿命が延びて高齢化社会から高齢社会となり、やがて、その長生きしていた高齢者も死亡時期を迎えて、人口が減少する時代になった。出産数が増えないままに、やがて、団塊の世代が死亡する時期になると、人口は急激に減少に向かい、超高齢社会になってしまう。
 ここでは、まず、出産・死亡データの推移をみてみよう。

2-1.合計特殊出生率の推移

 まず、最初に、合計特殊出生率の推移を眺めてみよう。前述の人口ピラミッドのベースとなっている合計特殊出生率について、1950年から2050年までの推移を、5年間毎の平均データとして下の図2-1に示す。
 注: 
合計特殊出生率とは、15歳から49歳の女子が生んだ子供の数を、15歳から49歳の女子人口の合計で除して算出され、1人の女子が生涯に生む子供の数の目安になる。      最近では、出生率といえばこの合計特殊出生率を示す場合が多い。合計特殊出生率が2.07を下回ると、人口が減少する、と言われている。

図2-1 合計特殊出生率の推移


 ①1950年から1955年にかけては、合計特殊出生率は“2.75”であり、人口を維持するのに必要な2.07を大きく上回っていた。この頃は、少子化はまったく問題とはならず、逆に人口が増えすぎる事が心配されていた。
 しかし、1948年に優生保護法が制定されて人工妊娠中絶が合法化された結果、出生数は劇的に減少し、合計特殊出生率も人口置換レベルと言われる2.07前後まで低下した。(出生数のグラフは図2-2-1を参照)。
 団塊ジュニアが結婚年齢に達した「1970-1975年」に2.07となってからは、低下の一途となり、「2005-2010年」には1.27で底をうつ。その後は緩やかに上昇する、と予測されているが、「2045-2050年」に至っても、2.07よりははるかに少ない1.60であり、人口減少に歯止めがかからない状態である。

2-2.出生数・死亡数・自然増減数の推移

 次に、出生数・死亡数と、その差としての自然増減数の推移をみてみよう。1947年から2050年までの年毎の推移を下の図2-2-1に示す。

図2-2 出生数・死亡数・自然増減数の推移

(1)出生数

 ①1947年から1949年までの3年間、出生数は260万人台を維持して、3年間合計で805万7千人に達した。この3年間に生まれた世代が「狭義の団塊の世代」なのである。
 人口急増に危機感を抱いた政府は、1948年に優生保護法を制定して人工妊娠中絶を合法化し、人口抑制に乗り出した。その効果は絶大で、1961年には160万人を割り込むほどになった。
 その後緩やかに上昇に転じ、団塊のジュニアが結婚年齢に達してからの1973年に209万2千人でピークに達した。(1966年に136万1千人まで、急減したのは、この年が「丙午」だったためである)。
 1974年以降、出生数は減少一途となり、1990年前後には、120万人前後まで減少した。1990年代は120万人そこそこで推移した。
 そして、2000年代に入ってからは、減少に歯止めがかからなくなり、2050年には50万人をも下回るようになる、と予測されている。

(2)死亡数

 ①1947年の113万8千人から1955年の69万4千人まで急激に減少した。その後、1979年までは、若干の変動はあるものの70万人前後で推移した。
 1980年以降は、緩やかに上昇に転じ、2039年に166万3千人でピークとなると予測されている。2040年以降は、死亡数も減少となり、2050年には160万人を割り込んで159万3千人、というのが、国立社会保障・人口問題研究所の予測である。

(3)自然増減数

 ①1970年代後半からは、出生数は減少し、死亡数は増加し続けた。その結果、2005年にはついに、出生数が死亡数を下回るようになり、人口が減少する時代となった。
 出生数と死亡数の差はその後も広がるばかりで、人口の自然減少幅は年々拡大し続けた。人口の自然減少がピークとなるのは、2046年(111万6千人の減少)と予測されており、2047年以降、人口の自然減少幅は徐々に小さくなってゆく。

2-3.平均寿命の推移

 「少子化」の原因は、出生数の減少に歯止めがかからないためである、という事であるが、「高齢化」の原因は、平均寿命が著しく伸びている事による。そこで、ここでは、平均寿命の推移を分析する事とする。
 合計特殊出生率の場合と同じく、1950年から5年ごとの平均寿命の推移を下の図2-3に示す。

図2-3 平均寿命の推移

 ①「1950-1955年」には、男性の平均寿命は61.6歳であったが、その後、順調に伸び、20年後(「1970-1975年」)には、70歳を突破し、65年後(「2015-2020年」)には80歳を突破するものと予測されている。そして、「2045-2050年には、83.3歳まで、100年間で21.7年も平均寿命が延びる、というのが今の予測である。
 これに対し、女性の平均寿命は、「1950-1955年」には65.5歳で男性よりも3.9年長いだけだったのが、年々、男性を上回って平均寿命が延びるようになり、35年後の「1985-1990年」には、早くも80歳を突破する。そして、90年後の「2040-2045年」には90歳を突破して90.4歳に達し、「2045-2050年」には90.9歳になる、と予測されているのである。その時点での男女の平均寿命の差は、7.6歳にまで広がっている。
 こうした男女の平均寿命の差の広がりが、人口ピラミッドの高齢者の部分に男女間で大きな差を作り出すのである。

2-4.人口の推移

 こうした出生数・死亡数・平均寿命の推移の結果、日本の人口は、1950年から2050年まで、5年ごとのデータで下の図2-4のように推移すると予測されている。

図2-4 人口の推移

 ①人口は男女ともに2005年までは増え続けるが、同時に、男女の人口差も増え続ける。
 2010年以降、男女ともに人口は減少に向かう。しかし、男女の人口差は300万人から400万人へと増えた後、2040年の430万人をピークに、男女差は縮小に向かう。
 そして、2050年には男女差は408万人gとなる、と予測されている。

3.年齢構成別人口から

 第1項、第2項と、少子高齢化が進んで、若者は減少し、高齢者は増える、そして、人口は減少してゆく、というのが日本の将来を眺めてきた。
 少子高齢化が進むと、現在の社会システムそのものが成立しなくなる。それは、生産活動を担い、経済活動を推進する「生産年齢人口」が少なくなり、彼らに支えられる「従属人口」が増えて、支えきれなくなるからである。そのような苦境を切り抜けるには、「従属人口」の一部も支える側に回らなければならず、そのためには、現在の社会システムの再構築が必要となる。
 それでは、生産年齢人口と従属人口がどのように推移するのか、年齢構成別人口の推移を眺めてみよう。


3-1.年齢3区分別人口の推移

 人口問題を考える場合、人口を下記の三つの年齢区分に分けて考えるのが一般的である。
  (1)年少人口: 15歳未満の人口
  (2)生産年齢人口: 15歳以上65歳未満の働き盛りの人口(実際に、働いているか否かは問わない)
  (3)老年人口: 65歳以上の人口
   注: 最近は、65歳以上75歳未満を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と区分する場合もある。

 この年齢3区分別人口の推移を下の図3-1に示す。
 

図3-1 年齢3区分別人口の推移

 図3-1を一瞥すればわかるように、2000年以降は「生産年齢人口」は減少の一途となり、また、「年少人口」も、1985年以降は緩やかに減少している。一方、老年人口は、増加の一途となっている。

(1)生産年齢人口(15才以上65歳未満)(図3-1の
赤の実線

 ①働き盛りとして、社会を担う役割を期待されている生産年齢人口は、1950年の4980万人から1995年の8710万人まで、順調に増加し続けた。
 ところが、少子化が進んで、若者が少なくなった結果、2000年以降、生産年齢人口も、減少に向かう。
 そして、減少傾向は歯止めがかからず、2050年には、5230万人まで減って、1950年のレベルにまで逆戻りする、と予測されている。この人数は、人口全体のわずか51%であり、支える側の人口と支えられる側の人口がほぼ等しくなる、という危機的状況が予測されている。

(2)年少人口(15歳未満)(青の実線

 ①年少人口を見ると、出生数の大幅な減少にもかかわらず、1950年の2960万人から1980年の2750万人までは、若干の減少のみで推移した。
 しかし、1985年以降は緩やかに減少に向かい、2050年には1150万人となって、1950年の4割弱にまで減少する、と予測されている。

(3)老年人口(65歳以上)(図3-1の黒の実線

 ①老年人口は、1950年にはわずか414万人だったが、その後、緩やかに上昇し、1980年には1千万人台を突破して、1056万人となった。
 その後、上昇率は速まり、2000年には2千万人台を超えて、2186万人となり、2015年には3千万人台を超えて3312万人になると予測されている。
 しかし、その上昇テンポも次第に鈍り、2045年の3907万人でピークとなり、2050年には若干減少して3863万人となる、というのが国立社会保障・人口問題研究所の予測である。

3-2.従属人口指数の推移

 生産年齢人口の扶養負担の程度をあらわすための指標として従属人口指数がある。従属人口指数とは、生産年齢人口に対する年少人口と老年人口の相対的な大きさを表す指数である。年齢3区分別人口が図3-1のように推移した場合、従属人口指数は、下の図3-2のように推移する。

 注: 従属人口指数とは、年少人口(0~14歳未満)と老年人口(65歳以上)の和を生産年齢人口(15歳~65歳未満)で除したものを100倍した数字のこと。簡単に言えば生産可能人口に対する非生産人口の比率のようなもので、「従属人口指数が高くなる」という事は、働く人が減り、働かない(働けない)人が増える、という事で、経済活動は停滞し、経済的には衰退に向かう、という事を示している。
 なお、年少人口(0~14歳未満)を生産年齢人口(15歳~65歳未満)で除したものを100倍した数字は、「年少人口指数」と呼ばれ、老年人口(65歳以上)を生産年齢人口(15歳~65歳未満)で除したものを100倍した数字は、「老年人口指数」と呼ばれている。

図3-2 従属人口指数の推移


 ①図3-1から推測できる通り、1950年から1970年までは、従属人口指数は減り続ける。これは、生産年齢人口は大幅に増えるのに、年少人口は若干減少気味で推移し、老年人口は緩やかな上昇に留まっているからである。この期間は、「人口ボーナス」を十分享受できた時代であり、そのおかげで校で経済成長を達成できた、とも言える。。
 その後、1970年から2000年までは、従属人口指数は45~50%の間で、ほぼ横ばいに推移する。この間は、生産年齢人口は増えるもののその増加ペースは鈍る。その一方で高齢化が進展し、老年人口が急激に増え始め、老年人口指数は10%そこそこから25%にまで増加する。しかし、少子化も進展するので、年少人口指数は35%くらいから20%強にまで減少してゆく。この期間は、「人口ボーナス」から「人口オーナス」へと切り替わる時期であり、経済活動は徐々に停滞に向かい、高度成長期から安定成長期、そして、低成長期へと変遷してゆく時期である。
 2000年以降は、従属人口指数は上昇の一途となり、1990年の43.7%を底として、2050年には、その倍以上の95.9%になると予測されている。つまり、2050年には、働く人口と働かない(働けない)人口とがほぼ同数になる、とくに、老年人口指数でみると、2050年には73.8%であり、4人の生産人口で3人の老年人口を支えなければならない、という事となり、現実問題としてはきわめて困難な話である。したがって、この頃には、生産年齢人口の上限は、65歳ではなく、75歳くらいに引き上げられているであろう、つまり、定年はなくなり、働ける間は働いている、という時代になっているであろう、と思われる。
 21世紀前半の日本は「人口オーナス」(労働人口が減少する一方で、老年人口が増大し、年金・医療・介護といった負担が増大して勤労世代の生き方を圧迫する時代)の時代に突入してしまうのである。この間、現状のままで放置すれば、、経済活動は停滞から縮小へと向かわざるをえなくなり、現行の社会保障制度が破綻してしまうであろう。それを回避する一つの手段が、前述の定年制度の延長(または撤廃)である。
 注: 「人口ボーナス」と「人口オーナス」については、私のコラム「
88.世界の人口爆発と少子高齢化」の中で説明しているので、ここではふれない。

図3-3-1 世帯構成の推移
図3-3-2 世帯主が65歳以上の世帯構成の推移


3-3.世帯構成の変化と独り暮らしの増加

 少子高齢化が進んで「支えるべき人口」と「支えられるべき人口」とが段々拮抗してくる、という危機的状況と並行して、もうひとつ、危機的な症状が現れてくる。それは、高齢者を中心に「独り暮らし人口」が増大する、という事である。そして、その前提としては、高齢者においては、夫婦二人だけで暮らす世帯が主流になってくるという現象である。これについては、私のコラム「
81.独り暮らし社会」の中で分析したので、細かくは触れないが結論だけを記すと以下のようになる。

(1)独り暮らし(単独世帯)の推移

 国立社会保障・人口問題研究所の報告書より、世帯構成の1975年から2025年までの推移を右の図3-3-1に示す。

 ①図3-3-1をみればわかるように、高度経済成長の頃は、いわゆる標準かぞく(夫婦と子供から構成される世帯が4割以上を占めており、社会政策が標準世帯をターゲットとして立案されるのは当然であった。
 しかし、バブル経済が崩壊する頃からは、単独世帯が増えてきて、標準世帯はもはや主流ではなくなってきた。
 とくに、2010年以降は、単独世帯と夫婦のみ世帯の合計が5割を超えるようになり、子供と同居していない家族が一般的になってしまう、と予測されているのである。
 これをさらに、世帯主が65歳以上の世帯に限って調べてみると、次項で述べるように「単独世帯」と「夫婦のみ世帯」が3分の2以上になってしまう。

(2)世帯主が65歳以上の世帯構成の推移

 右の図3-3-2に、2000年から2025年までの、世帯主が65歳以上の世帯構成の推移を示す。

 ①世帯主が65歳以上の高齢者世帯に限ってみると、2000年の時点ですでに、6割強の世帯が、単独世帯か夫婦のみの世帯であり、子供や親等と同居している世帯は4割にも満たない。
 さらに、2020年になると、単独世帯が夫婦のみ世帯を上回ってしまい、2025年には、7割上の高齢者世帯が、単独世帯、または、夫婦のみの世帯なのである。

(3)高齢者を誰が世話するのか?

 3-2項までの分析では、高齢者を支える若者がどんどん少なくなる、という話であった。しかい、ここでの世帯構成を分析でわかるように、若者(というか、その高齢者の子供)と同居している高齢者世帯は、現時点ですでに4割、2025年には3割に過ぎないのである。

 3割強の世帯では、介護が必要となった場合、いわゆる「老々介護」とならざるをえないのであり、さらに言えば、残りの3割から4割は、介護を必要とする場合、誰か第三者に頼らざるをえない状態なのである。
 施設介護に頼るにしても、必要とされるだけの施設数を設置し、そこに、必要とされるだけの介護要員を配置する、というのは、財政面からも、マンパワーの面からも不可能であろう。
 したがって、2025年頃に想定される事態に対応するためには、現在とは全く違った社会制度に改編されていなければ、多数の介護難民が社会問題としてクローズアップされてくるであろう。

4.少子高齢化が招く日本の暗い将来

 前回のコラム(「117.衰退する経済大国日本」)で、経済面を中心に分析し、“日本の将来は、経済的には貧しくなりながら、格差は拡大し、しかも、一人暮らしの高齢者が増えてゆく、という極めて厳しいものである”、と記載したが、人口動態の面からも、日本の将来は暗いと言わざるを得ない。
 私のコラム「
82.2025年の少子高齢化と地方自治体」の中で、「少子高齢化の風景」を記載したが、それを以下に再掲する。

(1)ニュータウンのスラム化、ゴーストタウン化
 大阪府の豊中市・吹田市にまたがり、日本初のニュータウンとして名高い「千里ニュータウン」は、人口減少と少子高齢化から生じるに悩まされている。1970年代以降、ニュータウンの人口は4万人近く減った。そして、15歳未満の人口は約13%、65歳以上の人口は25%と少子高齢化が進んでおり、「地元を歩くと高齢者しか見当たらない」という状況だ。
 都心から電車で1時間、のどかな多摩丘陵に広がる「多摩ニュータウン」でも同じような減少が起きている。1971年に完成したこのニュータウンは、東京都の四市にまたがり、人口20万人を擁する日本最大のニュータウンであったが、現在は、古い団地の高齢化や空き室の増加が顕著となっている。入居答辞は30~40代だった人々がいっせいに高齢化する一方、子供たちは成人して都心へと移っていった結果である。最も古い団地群を抱え、ニュータウン人口が6割を占める多摩市では、入居が始まった1971年と比べて、36年後の今は、高齢者人口の比率は4.9%から17.2%と4倍近くに跳ね上がったのに対して、15歳未満の若年人口は、25.3%から12.1%へと半減している。そのため、市内の小中学校は、2001年までに6校が統廃合されてしまった。
 また、こうしたニュータウンのみならず、都市の老朽マンションも問題である。そこに住む人達は高齢化し、また、一人暮らしが増えている。その結果、老朽化したマンションを建て替えるわけにもいかず、財力のある人は立ち退いて空き家が増え、貧乏な老人ばかりが住む「スラム」になりかねない。
 このように、古い住宅街やマンションを中心に、そこに取り残される高齢者の数が増え続け、そこに住む若者の数は減り続けている。その結果、少子高齢化が著しい地域では、空き家や老朽住宅・老朽マンションが増え、小中学校は減り、商店街はさびれ、地域がスラム化・ゴーストタウン化していきつつある。

(2)さびれゆく地元の商店街
 地域住民の減少に加え、商店主の高齢化による経営難や、少子化による後継者不足といった問題のほかに、大型店の進出が重なって、今や、各地の商店街は消滅の危機に襲われている。1994年には、約100万店あった個人商店は、その後10年間で約28万店も減って72万店となってしまった。いわゆる「シャッター商店街」は全国で増え続けているのである。
 千葉県館山市では、商店街を救うために職員有志が「共通商品券」を購入するというケースも出始めた。また、茨城県ひたちなか市では、2002年から約2億円の費用をかけて市内商店街の改修を行った。3分の2を県と市が補助し、残りの3分の1を商店街が自己負担してのである。しかし、こうした試みが成功するかどうか、いまはまだ未知数である。
(3)活力低下と財政負担の増加
 今後、少子高齢化が進むと、労働力人口の減少に伴って税収不足が生じ、高齢者の増加によって年金や医療費等の福祉関連の財政負担が急激に増えてゆく。そのため、体力の無い自治体は財政難に直面してしまう可能性が高く、、第2・第3の夕張市が生まれる恐れが強い。
 横浜市の場合、2000年に15歳未満の若年人口と65歳以上の高齢人口が13.9%と同率になり、その後は高齢人口が増大し、若年人口は減少している。このため、高齢者への扶助費は増加の一途をたどっている。例えば、特養老人ホームの待機者は約2,800人にのぼっており、今後、事業費が10億円かかる100床級の施設を毎年9ヶ所ずつ増やさないと追いつかない。
 東京都足立区は、1960年代から東京都の2割、約3万3千戸もの低所得者向けの都営住宅を受け入れてきた。現在、この低所得層がいっせいに高齢化し、生活保護給付額が区税収入を上回る335億円にものぼっている。その受給者の26%が70歳以上の高齢者である。
 東京都台東区と荒川区にまたがる山谷地区の高齢化問題も両方の区にとって、重大問題となりつつある。山谷地区は、元々は日雇い労働者の町として名高いが、地元の簡易宿泊所には、病気などで動けなくなった高齢の労働者が溢れかえっている。現在、簡易宿泊所の宿泊数は約5,300人。そのうち60歳以上の高齢者は65%、そしてその半数が生活保護受給者である。


5.社会制度の再構築

 今の日本の税制や社会保障制度は昭和30年代後半から10年以内でほぼその骨格が出来上がった。その頃は、高度経済成長が軌道に乗り始めたころであり、人口も「人口ボーナス」を享受できる時代(生産年齢人口が順調に増加し、従属人口指数が低下する)であった。
 ところが、今はそれらの条件が完全に逆転している。
 経済は、右肩下がりであり、人口ボーナスは消滅して人口オーナスに苦しめられる時代となってしまった。
 また、当時は、フローでは豊かになりつつあったが、ストックは極めて乏しい状況であった。
 ところが、今は、フローは縮小傾向にあるが、ストックはかなり持っている。。
 したがって、現在の制度がそのままでは機能しないのは当然であり、抜本的改革による再構築が求められている。
 それでは、再構築された社会制度とは、どのような制度になっているのであろうか?
 制度設計そのものは、私には無理だが、その根底となるべき「理念」を思いつくままに書きあげると、以下のようなものであろう。

 ①物の生産でフローを稼ぐのではなく、ストックの有効利用で、必要なフローを生み出す。言い換えれば、形のある物、使えば減る物に主体を置くのではなく、形のないもの(というか事象?)、使っても減らないもの(事象?)に価値をおく活動を主流とする。
 ②65歳以上の高齢者も十分「働ける」ように、労働環境を整備する。
 高齢者同士が支えあえる社会システム(共同生活のできる環境、交通インフラ等々)を作り上げる。
 ④ライフサイクルの再構築を可能にする。ライフサイクルを構成する項目としては、以下の四つが考えられる。
   A..趣味(自分の好きな事をする)、B.労働(生活費を稼ぐために働く)、C.社会貢献(社会の役に立つ事をする)、D.学習
  今までのライフサイクルは、おおざっぱに言うと、以下のような組み合わせであった。
  ⅰ)年少人口該当期: ほとんどが、学習と趣味、まれに労働、社会貢献。
  ⅱ)生産年齢人口該当期: ほとんどが労働、たまに趣味、学習、社会貢献。
  ⅲ)老年人口該当期: 趣味が主流で、まれに労働、学習、社会貢献。
 ⑤ライフサイクルの再構築のためには、まず、各年代毎に社会貢献の必要性、重要性、を社会の課題として教育しなければならないが、そのうえで、
  ⅰ)年少人口該当期にもある程度の社会貢献活動を行う。
  ⅱ)生産年齢人口該当期には、労働ばかりではなく、学習や社会貢献にも時間が割けるようする。
  ⅲ)老年人口該当期には、四項目がうまくバランスするようにする。
 ということである。
 ⑥応能負担と応益負担の在り方を見直す。小泉構造改革によって累進税率の最高税率がどんどん引き下げられ、高額所得者の負担減となってしまった。利益を受けるものがそれに見合った負担をするという応益負担の考え方ももちろん重要ではあるが、経済全体が停滞してゆく中では、負担能力のある者が、受益分を超えて負担してゆく、という応能負担の考え方を大幅に取り入れる必要があるのではなかろうか?そのためには、そのような負担の在り方が公平公正である、という価値観が醸成されなければならないであろう。
 ⑦「官」と「民」の間に、「公」というグループを確立する。「官」は、利益や採算を度外視して公共の福祉を追及する、一方、「民」は、公共の福祉に反しない範囲で利益の追求を最優先する。それに対し、公共の福祉と利益の追求のバランスを取りながら、中道をいくのが「公」である。今でも、「公益法人」や「NPO」「NGO」といった組織があるが、こういった組織が発展的に成長する事により、「公」というグループが生まれてくる事を期待したい。

 こうした社会制度の再構築を通じて、100年に一度と言われる経済危機を乗り切り、戦後60年を過ぎて完全に行き詰った現在の体制を再生させてほしい、と強く願っている。

6.最後に

 今回は、日本の将来を探るために、人口動態を中心に将来を展望してみたを試みた。その結果、日本の将来はこのままではあまり明るいとは言えない、というよりも、むしろ、日本の将来は暗い、と言わざるを得ない。この現状を打破するには、5項で軽く触れたような社会制度の再構築が絶対に必要となる。そうした、見直しの中で、新しい価値観が生まれ、公平公正な税制、社会保障制度が生まれ、新しい希望に満ちた日本が生まれる事を切に望むものである。


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参考文献: 1.国立社会保障・人口問題研究所の予測データ

人口問題のコラムは以下の通りです。

4.長寿社会を考える  5.人口減少社会(1)   6.人口減少社会(2)  
17.人口の減少  81.一人暮らし社会 82.2025年の少子高齢化と地方自治体
83.老人大国三つの不安(1):老人医療 88.世界の人口爆発と少子高齢化
89.G7とBRICsの少子高齢化の概要 90.G7とBRICsの人口動態:現状と将来
91.G7とBRICsの少子高齢化:現状と将来
94.日中韓・スウェーデンの少子高齢化(1):人口推移
95.日中韓・スウェーデンの少子高齢化(2):人口ピラミッドと年齢階級別人口の推移
96.人口動向と経済成長: 日米の比較から
97.少子高齢化対策と外国人労働者の受け入れ(1): 少子高齢化と外国人入国者の状況
98.少子高齢化対策と外国人労働者の受け入れ(2): 外国人登録者の状況と不法滞在者
99.少子高齢化対策と外国人労働者の受け入れ(3): 外国人労働者の状況と不法就労
100.少子高齢化対策と外国人労働者の受け入れ(4): 留学生の状況と卒業後の進路(1)
101.少子高齢化対策と外国人労働者の受け入れ(5): 留学生の状況と卒業後の進路(2)
118.人口動態からみる日本の将
130.進む少子高齢化と薄れる親子のつながり


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