106.生涯賃金格差  (2008年10月22日記載)

 前回は、「年収」という観点から、格差の状況を分析した。そして、富裕層がますます豊かになる(「突き抜け」)現象も多少はあるが、そのことよりも、貧困層がどんどん増えて社会全体が貧しくなる(「底抜け」)、という方向で格差が拡大し、二極化している現象がみてきた。
 そこで、今回は、働き始めてから定年で退職するまでにどれくらいの賃金をかせぐのか、という事に焦点を当てて、生涯賃金格差として分析してみる。
 なお、今回のコラムで用いたデータは、参考文献欄に記載した週刊誌やインターネットのサイトから得られたデータ等を利用している。

1.働き方で生じる大きな格差

 まず最初に、パート、アルバイト、のみならず、派遣社員や契約社員等が急増した結果生じている「働き方の多様化」がもたらした格差を、「働き方格差」として分析しよう。

図1 雇用形態別平均生涯賃金

(1)雇用形態別格差(図1)

 「パート等の短時間労働者」、「派遣社員、契約社員といったフルタイムで働く非正規社員」、それと、「正社員」が22歳から60歳までに手にする事の出来る「生涯賃金」の推計値を右の図1に示す。
 このデータは、厚生労働省の「賃金構造基本調査」2006に基づき、週刊東洋経済の編集部が推計したもので、参考文献1(「週刊東洋経済 2007年5月19日号: 未来時給」)に載っているものである。(賞与等は含むが、退職金は含まれない)。


 ①正社員であれば、2億円を超す生涯賃金をもらう事ができる。そして、2006年には、前年をわずかながら(103万円)でも上回っている。
 一方、フルタイムで働く派遣社員や契約社員の場合には、正社員の約半分の1億円そこそこである。2005年の推計値では、それでも正社員の半分以上(50.1%)であったが、2006年の推計生涯賃金は、低下したために、正社員の半分以下(49.6%)になってしまった。
 ③パート等の短時間労働者の場合には、その派遣社員や契約社員の半分以下でしかない。2005年の推計値では、「派遣・契約社員」の44.5%、「正社員」の4分の1以下(22.3%)の生涯賃金しかもらえていない。2006年なると、推計値は前年よ下がるので、格差も拡大している。
 ④
図1からわかるように、ざっくり言えば、生涯賃金は次のようになる。
  ⅰ)正社員で働き続ける事が出来れば、60歳で退職するまでに、2億円強。
  ⅱ)派遣社員や契約社員として、60歳まで働き続けた場合は、1億円強で正社員の半分。
  ⅲ)パート等の短時間労働でしか働かなかった(働けなかった?)場合は、5千万円弱で、派遣社員や契約社員の半分、そして、正社員の4分の1
 このように、
働き方(あるいは雇用形態)での平均生涯賃金の格差は、4.62倍もあり極めて大きい


(2)男女別働き方別格差(図2)

 参考文献3(「週刊ダイヤモンド 2008年3月8日号: 働き方格差」)では、男女別にどのように働いてきたかによって得られる生涯賃金の推計値が記載されている。それをまとめて下の図2に示す。この図は、厚生労働省の「賃金構造基本調査」2006に基づき、みずほ総合研究所が推計したデータ(参考文献2に記載されている)に基づいて作成されたものである。ここでは、男女の働き方を以下のように、13種類に分類して、生涯賃金を推計している。
 1)男性の場合:
  1-1)生涯正社員: 20歳から59歳まで正社員として働き、60歳で退職。
  1-2)正社員転換1: 20代は週40時間労働の非正社員として、30歳から59歳までは正社員として働き、60歳で退職。
  1-3)正社員転換2: 20代は週25時間労働の非正社員として、30歳から59歳までは正社員として働き、60歳で退職。
  
1-4)生涯非正社員1: 20歳から59歳まで週40時間勤務の非正社員として働き、60歳で退職。
  1-5)生涯非正社員2: 20歳から59歳まで週25時間勤務の非正社員として働き、60歳で退職。
 2)女性の場合:
  2-1)生涯正社員: 20歳から59歳まで正社員として働き、60歳で退職。
  2-2)正社員転換1: 20代は週40時間労働の非正社員として、30歳から59歳までは正社員として働き、60歳で退職。
  2-3)正社員転換2: 20代は週25時間労働の非正社員として、30歳から59歳までは正社員として働き、60歳で退職。
  
2-4)生涯非正社員1: 20歳から59歳まで週40時間勤務の非正社員として働き、60歳で退職。
  2-5)生涯非正社員2: 20歳から59歳まで週25時間勤務の非正社員として働き、60歳で退職。
  2-6)子育て30歳で退職、40歳で再就職1: 20歳代は正社員として勤務。40歳で正社員として再就職、59歳まで働き、60歳で退職。
  
2-7)子育て30歳で退職、40歳で再就職2: 20歳代は正社員として勤務。40歳で週25時間勤務の非正社員として再就職、59歳まで働き、60歳で退職。
  2-8)子育て30歳で退職(専業主婦で再就職せず): 20歳代は正社員として勤務。30歳で子育てのため退職してからは、再就職しなかった

図2 男女別働き方別平均生涯賃金


 最も生涯賃金が多いのは、生涯正社員として勤務した男性の場合で、2億3千2百万円。
 次が生涯正社員として勤務した女性の場合で、1億7千8百万円。これは同じ条件の男性の76.7%であり、大きな男女格差がついていることがわかる
 ③3位は、「男性正社員転換1」。女性の生涯正社員より200万円だけ少ない1億7千6百万円。そして、「男性生涯正社員」の75.9%である。
 ④
同じ条件の「女性正社員転換1」の生涯賃金は、1億3千3百万円で5位、「男性正社員転換1」の75.6%。生涯正社員と同じような男女格差がみられる
 ⑤
4位は、男性正社員転換2で1億6千9百万円。「男性正社員転換1」より、7百万円少なく、「女性生涯正社員」より9百万円少ないだけである
 同じ条件の「女性正社員転換2」の生涯賃金は、1億2千5百万円で6位、「男性正社員転換2」の74.0%。ここでも、生涯正社員、正社員転換1と同じような男女格差がみられる
 7位は、「男性生涯非正社員1」で9千9百万円。「男性生涯正社員」の42.7%に過ぎない。
 同じ条件の「女性生涯非正社員1は8千2百万円で第9位。「男性生涯非正社員1」の82.8%であり、依然として男女格差はあるが、生涯正社員や正社員転換1・2よりも男女格差が小さい。
 8位は、子育てのため30歳で一旦退職し、40歳で正社員として再就職した女性で、9,100万円。30代に勤務していなかっただけで、「女性生涯正社員」の半分強(51.1%)に減ってしまう。女性にとって、子育てとは、かなりの「機会損失」を伴う作業だという事がよくわかる。
 10位は、男性生涯非正社員2」で6,200万円。「男性生涯非正社員1」の62.6%、「男性生涯正社員」の26.7%に過ぎない。このようにみてゆくと、非正社員という働き方は、経済的にみると極めて不利であることがよくわかる。
 同じ条件の「女性生涯非正社員25,200万円で第12位。「男性生涯非正社員2」の83.9%であり、生涯非正社員1の場合と同じく、依然として男女格差はあるが、生涯正社員や正社員転換1・2よりも男女格差が小さい。
 11位は、子育てのため30歳で一旦退職し、40歳で週25時間勤務の非正社員として再就職した女性で、5500万円
30歳代は働かなかったものの、20歳代は正社員として働いていたので、「女性生涯非正社員2」よりは、わずか3百万円だが、生涯賃金は多い。この事からも、非正社員という働き方は、収入面からみて極めて割が合わない働き方であることがよくわかる。
 最下位は、20歳代は正社員として勤務したが、子育てのために30歳で退職し、そのまま専業主婦となった女性。生涯賃金はわずか3千万円。女性にとって子育ては大きな機会損失をもたらす、ということが⑨、⑫とともに、よくわかるデータである。
 60歳まで働き続けた場合、最小(子育てのため30歳で一旦退職し、40歳で週25時間勤務の非正社員として再就職した女性)と最大(生涯正社員であった男性)では、
4.46倍もの開きがある。

2.正社員間での大きな格差

 前項の働き方格差で、最も恵まれていた生涯正社員でも、細かくみてゆくと大きな格差が存在する。そのあたりの状況を参考文献9の「独立行政法人 労働政策研究・研修機構/統計
情報/ユースフル労働統計 -労働統計加工指標集-:2008年」から得られるデータに基づいて分析してみよう。
 ここで用いた
生涯賃金は、「賃金構造基本統計調査」のデータに基づいて、独立行政法人労働政策研究・研修機構が推計(毎月の基本給や残業手当など、決まって支給する現金給与、年間賞与の総額から推計した)し、『ユースフル労働統計-労働統計加工指標集-2008』の中で公表されたもの。


2.1.転職なしの労働者の場合

 まず最初に、転職をしないで一つの企業を勤めあげた労働者(標準労働者)の生涯賃金について、男女別、学歴別、従業員規模別に分析する。
  注: 標準労働者とは、学校卒業後直ちに就職して59歳まで同一企業に継続勤務した労働者の事。

 

図3 標準労働者 男女別学歴別平均生涯賃金 (2005年)

(1)2005年のデータで見る男女格差、学歴格差(図3)

 標準労働者が60歳退職するまでの平均生涯賃金について、2005年のデータを男女別学歴別にまとめたものを右の図3として示す。青い棒グラフは男性、ピンクの棒グラフは女性を示す。学歴については、以下の4分類になっている。
 1)大学・大学院卒
 2)高専・短大卒
 3)高卒
 4)中卒。

 図3を見れば、男性優位、学歴優位であることがすぐわかる。平均生涯賃金が最も多いのは、「男性・大学・大学院卒」で、3億円の一歩手前である2億9,450万円。
 同じ「大学・大学院卒」でも、女性の場合は、高卒の男性よりも少なくて、4番目まで順位が落ちる。平均生涯賃金は男性の86.7%の2億5,520万円である。
 ③2番目は、「男性・高専・短大卒」で2億6,340万円(トップの89.4%で、金額にして3,110万円少ない).
 同じ高専・短大卒」でも、女性の場合は、男性の「高卒」や「中卒」よりも少なくて、6番目まで順位が下がり、2億1,530万円である。これは、同じ「高専・短大卒」の男性の81.7%で、金額も4,810円もすくない。
 ⑤
僅差の3番目が「男性・高卒」で2億5,910万円、2位よりも430万少ないが、4番目の「女性・大学・大学院卒」よりは390万円多い。
 ⑥
同じ「高卒」でも女性の場合は、7番目で、2億円には手の届かない1億8,990万円。これは、「男性・高卒」の73.3%に過ぎず、かなりの男女格差がある事がわかる。
 4番目から4千万円近い差があるが、5番目は「男性・中卒」の2億1550万円。トップである「男性・大学・大学院卒」の73.2%で、金額にして7,900万円も少なくなっている。
 同じ「中卒」でも女性の場合は、最下位で、1億4,800万円。これは、「男性・中卒」の68.7%に過ぎず、トップである「男性・大学・大学院卒」の約半分(50.3%)である。
 ここまでの分析から以下の事が言える。
  ⅰ)男女格差・学歴格差は歴然として存在している。
  ⅱ)ただし、「高専・短大卒」と「高卒」の差は、男性の場合少ないが、女性の場合には大きい。
  ⅲ)学歴による男女格差を比べると、学歴が高くなるほど小さくなる。(「中卒」の男女格差は68.7%、「高卒」の男女格差は73.3%、「高専・短大卒」の男女格差は81.7%、「大学・大学院卒」の男女格差は86.7%、であり、学歴が高くなるにつれて男女格差は改善されてくる)。
 ⑩正社員・標準労働者の平均生涯賃金を、男女別・学歴別で比較した場合、最小(女性・中卒)と最大(男性・大学・大学院卒)とでは、
格差倍率は1.99倍であり、意外と小さい

図4 標準労働者 男女別学歴別平均生涯賃金の推移

(2)男女格差、学歴格差の推移(図4)

 標準労働者の男女別学歴別平均生涯賃金の推計値について、1990年から2005年までの推移を右の図4に示す。図4を眺めると、1990年代末から、生涯賃金推計値は減少しつつあることがわかる。
 全体で八つあるカテゴリーは、下記の五つのグループにまとめる事ができる。

 ①「男性・大学・大学院卒」: 2億9千万円弱から3億2千万円強の間で、他のグループを大きく引き離して、常にトップであった。
  ⅰ)生涯賃金の推計値は、1990年代を通じて、3億円を超えており、とくに、1992年から1997年までは、3億2千万円を上回っていた。
  ⅱ)しかし、バブル経済の崩壊から始まった「失われた10年」の間に賃金が低下し、それに伴って生涯賃金の推計値は、1998年から減り始めた。そして、2002年には3億円を切り、2003年の2億8,860万円で底を打つまで減少し続けた。
  ⅲ)その後、やや持ち直したが、2005年でも3億円の大台には届いていない。
 「男性・高専・短大卒」、「男性・高卒」、「女性・大学・大学院卒」の三つのカテゴリー: この三つのカテゴリーは、2億5千万円前後から2億9千万円強の範囲内で、激しく順位を争ってきた。
  ⅰ)「女性・大学・大学院卒」は、2002年に一度だけ、この三つの中でトップに出たことはある。しかし、ほとんどは、僅差ではあるが、最下位であった。
  ⅱ)「男性・高卒」「男性・高専・短大卒」を上回った時期もあった。このことは、男性の場合、高専や短大を卒業しても、生涯賃金でみれば、あまり効果はない、という事を示している。
 ③「男性・中卒」と「女性・高専・短大卒」:
  ⅰ)この二つのカテゴリーでは、1990年を除けば、常に、「男性・中卒」が上位であった。
  ⅱ)つまり、女性は、「高専・短大卒」であっても、生涯賃金では、中卒の男性よりは少ない、という事であり、女性は経済的に冷遇されている、ということを如実に示している。
 ④
「女性・高卒」: 常に下から2番目で、2億円前後、しかし、2000年以降は、他のカテゴリーと同じように、生涯賃金推計値は減少する一方である。
 ⑤
常に最下位は、「女性・中卒」である。2002年までは、1億6千万円を上回っていたが、2005年には、1億5千万円をも下回った。

図5 標準労働者 従業員規模別男女別学歴別平均生涯賃金 (2005)


(3)2005年のデータで見る従業員規模別、男女別、学歴別格差(図5)

 標準労働者の生涯賃金について、さらに、従業員規模別に細分化した場合の推計値(2005年)を金額順に右の図5に示す。青い棒グラフは男性、ピンクの棒グラフは女性を示す。「賃金構造基本統計調査」では従業員規模別に以下の基準で、3分類している。
 1)大企業: 従業員数 1,000人以上。データラベルは薄い竹色。
 2)中企業: 従業員数 100人~999人。データラベルは薄い黄色
 3)小企業: 従業員数 10人~99人。データラベルは薄い紫色
注: 「賃金構造基本統計調査」のデータは、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(約62,000事業所)の常用労働者に関して、有効回答を得た事業所(約46,000事業所)の集計結果をとりまとめたものである。このため、従業員数が10人未満の「零細企業」に関するデータはない

 図5を概観すると、まず以下の3点が確認できる。
  ⅰ)企業規模が大きいほど生涯賃金が多い。
  ⅱ)男女差は歴然として存在する。
  ⅲ)高学歴であるほど生涯賃金が多い。
 上記3点のうち、決定的に重要なのは、企業規模である。
  ⅰ)トップから5位までがすべて大企業である。特に、トップから4番目までは男性で学歴順になっている。
  ⅱ)大企業の場合、女性は大学・大学院卒でも、中卒の男性より少ない。つまり、大企業では、それだけ「男尊女卑」が強い、という事である。
  ⅲ)6位から9位まではすべて中企業であり、小企業は、10番目でやっと出てくるに過ぎない。
 ③中企業の場合大学・大学院卒の女性は7位で、男性の大学・大学院卒(6位)よりは少ないが、高専・短大卒の男性(8位)よりは多い。
 ④
ところが、小企業の場合には、大学・大学院卒の女性は13位で、男性の大学・大学院卒(10位)はもとより、高専・短大卒の男性(12位)よりも少ない
 ⑤中卒の場合
には、大企業に勤務できた男性を除いて、生涯賃金の推計値は極めて少ない。中企業・男性・中卒が17位で2億円強、そして、20位、21位、23位、24位(最下位)と下位のほとんどは中卒で占められている。。
 上記の分析から、生涯賃金という観点からみた場合、勤務先としては以下のように選んだほうが良い、と言える。
  ⅰ)男性の場合は、まず、大企業を目指すべきである。つまり、まさに「寄らば大樹の陰」なのである。
  ⅱ)女性の場合にも、同じ事が言えるが、ただ、大学・大学院卒の女性の場合、大企業に勤めると、中卒の男性よりは生涯賃金が少ないので、プライドが許さないかもしれない。
  ⅲ)中企業の場合、「男性・高専・短大卒」と「男性・高卒」の差は小さい(260万円)。したがって、中企業に勤務しようとする男性の場合、高専や短大卒の学歴はあまり有効でない、と言える。。
  ⅳ)学歴は高ければ高いほど、平均生涯賃金は多くなる。したがって、なんだかんだと言っても、世の中の実態は「学歴社会」である、ということである
 企業規模別、男女別、学歴別にみた場合、平均生涯賃金が最小の「小企業・女性・中卒」と、最大の「大企業・男性・大学・大学院卒」とでは、
同じ正社員でも、2.75倍の開きがある

2.2.転職した労働者の場合 

図6 一般労働者 男女別学歴別平均生涯賃金 (2005年)

 次に、一旦就職した後、転職をした(転職後も正社員として勤務)労働者(一般労働者)の場合を分析しよう。結論を先に言えば、日本の労働市場は閉鎖的である、と言われているが、ここでの分析を見る限り、転職をした労働者(一般労働者)の生涯賃金推計値は、転職をしなかった労働者(標準労働者)よりは少ない。

(1)2005年データで見る男女格差、学歴格差(図6、表1)

 一般労働者が60歳退職するまでの平均生涯賃金について、2005年のデータを男女別学歴別にまとめたものを右の図6として示す。青い棒グラフは男性、ピンクの棒グラフは女性を示す。学歴は、標準労働者と同じ4分類である。。

 図6と図3を比べると、以下の表1に示すように、一般労働者の方がすべての分類で、生涯賃金が少なくなっている。(一般労働者の生涯賃金を“1”とした時の標準労働者の倍率を表1に示す)。

表1 一般労働者と
標準労働者の格差倍率
性別 学歴 標準/
一般
男性 大学・大学院卒 1.067
高専・短大卒 1.191
高卒 1.259
中卒 1.171
女性 大学・大学院卒 1.185
高専・短大卒 1.298
高卒 1.501
中卒 1.341

 ②両者の差が最も小さいのは、男性の大学・大学院卒で、標準労働者の生涯賃金は、一般労働者のそれの1.067倍である。
 次が、男性の中卒で、1.171倍、3番目が女性の大学・大学院卒で、1.185倍である。
 ④差が最も大きいのが、女性の高卒で、1.501倍も差がついている。
 男性と女性を比べると、女性の方が差が大きい事が見て取れる。女性の場合は、転職すると、男性の場合に比べ、それだけ、生涯賃金において不利になる、ということがわかる。
 正社員・一般労働者の平均生涯賃金を、男女別・学歴別で比較した場合、最小(女性・中卒)と最大(男性・大学・大学院卒)とでは、格差倍率は2.50倍である。
 ⑦標準労働者と一般労働者を合わせて考える
と、最小(一般・女性・中卒)と最大(標準・
男性・大学・大学院卒)との格差倍率は、2.67倍にまで広がる。


(2)従業員規模別を加味した場合(表2)

表2 規模別を加味した一般労働者と
標準労働者の格差倍率(標準/一般)
性別 学歴 大企業 中企業 小企業
男性 大学・大学院卒 1.027 1.014 1.099
高専・短大卒 1.134 1.133 1.145
高卒 1.123 1.211 1.217
中卒 1.189 1.112 1.067
女性 大学・大学院卒 1.167 1.140 1.207
高専・短大卒 1.203 1.275 1.272
高卒 1.414 1.438 1.339
中卒 1.404 1.275 1.161

 規模別を加味した場合の一般労働者と標準労働者の生涯賃金推計値の比率を右の表2に示す。(一般労働者の生涯賃金を“1”とした時の標準労働者の倍率を表1に示す)。

 規模別に細分化した場合、両者の差が最も小さいのは、中企業の男性の大学・大学院卒で、1.014倍、次が大企業の男性の大学・大学院卒で、1.027倍、3番目が小企業の男性の中卒で、1.067倍。いずれも、男性である。
 逆に、両者の差が最も大きいワースト3は次の通り。ワースト1位は中企業の女性・高卒で1.438倍、ワースト2位は大企業の女性・高卒で1.414倍、ワースト3位は大企業の女性・中卒で1.404倍
 ③従業員規模別を加味した場合でも、女性の転職は、男性の転職に比べ、生涯賃金という観点からは不利になる、ということがよくわかる。
 ④
そうは言っても、女性の大学・大学院卒の場合は、中企業か大企業に勤めれば、転職しても格差は小さい。
 従業員規模別、一般・標準労働者別、男女別、学歴別の平均生涯賃金を、最小(小企業・一般・女性・中卒)と最大(大企業・標準・男性・大学・大学院卒) の
格差倍率として算出すると、3.19倍となる。


3.男性一般労働者が定年後も働き続けた場合の生涯賃金(図7)  

 男性の一般労働者について、定年退職後も働き続けた場合の生涯賃金(定年退職までの賃金総額に、退職金を加え、さらに定年後も平均的な引退年齢まで働き続けて獲得する賃金)を学歴別にまとめたものを下の右の図7に示す。なお、このデータは「賃金構造基本統計調査」、「就労条件総合調査」、「国勢調査」といった資料を用いて、2003年の推計値として発表されたものである。
 注: 女性の場合のデータがないので、ここでは男女格差の分析はできない。

図7 男性一般労働者 学歴別引退までの平均生涯賃金 (2003年)
図8 男性一般労働者 規模別学歴別引退までの平均生涯賃金 (2003年)

 なお、このデータでの学歴は、「大学・大学院卒」、「高卒」、「中卒」の3分類であり、「高専・短大卒」は含まれていない。

 ①「大学・大学院卒」の男性一般労働者:
  ⅰ)定年まで(新規学卒で就職してから転職しつつ定年で退職するまで)に獲得する賃金は2億7,250万円。
  ⅱ)退職金は2,610万円。
  ⅲ)定年後完全に引退するまでに獲得する賃金は4,750万円。
  ⅳ)総額で3億4,620万円。
 「高卒」の男性一般労働者:
  ⅰ)定年まで(新規学卒で就職してから転職しつつ定年で退職するまで)に獲得する賃金は2億590万円。
  ⅱ)退職金は2,210万円。
  ⅲ)定年後完全に引退するまでに獲得する賃金は2,520万円。
  ⅳ)総額で2億5,320万円。「大学・大学院卒」の73.1%

 ③「中卒」の男性一般労働者:
  ⅰ)定年まで(新規学卒で就職してから転職しつつ定年で退職するまで)に獲得する賃金は1億8,520万円。
  ⅱ)退職金は1,640万円。
  ⅲ)定年後完全に引退するまでに獲得する賃金は2,260万円。
  ⅳ)総額で2億2,410万円。「大学・大学院卒」の64.7%
「高卒」の88.5%
 ④引退までの総額では、学歴格差はますます拡大
する。とくに、中卒と高卒の格差はそれほど大きくないが、大学・大学院卒との格差は際立って大きい事がわかる。


(4)規模別に細分化するとよくわかる「寄らば大樹の陰」(図8)

 従業員規模別に細分化したデータを右の図8に示す。

 図8をみれば、今までに何度も言ってきた「寄らば大樹の陰」という諺を思い出させる。
 同じ学歴で規模別の格差比率を下の表3に示す。小企業の生涯賃金を“1”とした時の、中企業・大企業の倍率を示す。この表を見ると下記するごとく学歴が高いと、規模が大きいほど、格差倍率が大きい事がわかる。

表3 同一学歴での
規模別の格差倍率率
学歴 小企業 中企業 大企業
大学・大学院卒 1.000 1.265 1.524
高卒 1.000 1.147 1.451
中卒 1.000 1.118 1.420

  ⅰ)大学・大学院卒 中企業は小企業の1.265倍、大企業は小企業の1.524倍、中企業の1.205倍の生涯賃金を獲得している。
  ⅱ)高卒 中企業は小企業の1.147倍、大企業は小企業の1.451倍、中企業の1.264倍の生涯賃金を獲得している。
  ⅲ)中卒 中企業は小企業の1.118倍、大企業は小企業の1.420倍、中企業の1.270倍の生涯賃金を獲得している。
 ③最も生涯賃金の少ない小企業の中卒・男性・一般労働者の生涯賃金を“1”とした時の、規模別・学歴別の生涯賃金の倍率を、下の表4に示す。この表を見ると、生涯賃金という観点からは、高学歴よりは、大企業に勤める事の方が良い(収入が多くなる)、という事がわかる。まさに、寄らば大樹の陰」である

表4 規模別学歴別の格差倍率
学歴 小企業 中企業 大企業
大学・大学院卒 1.334 1.688 2.034
高卒 1.073 1.231 1.556
中卒 1.000 1.118 1.420

  ⅰ)「中卒」でも、大企業に勤務すれば、定年までの生涯賃金のみならず、引退までの生涯賃金も、大学・大学院卒で小企業に勤務した人よりも、あるいは、「高卒」で小企業や中企業に勤めた人よりも、多いのである。(図8、表4参照)。
  ⅱ)「高卒」の場合でも、大企業に勤務すれば、定年までの生涯賃金のみならず、引退までの生涯賃金も、大学・大学院卒で小企業に勤務した人よりも、、多いのである。(図8、表4参照)。
  ⅲ)「大学・大学院卒」で大企業に勤務していた人は、「中卒」で小企業に勤務していた人の2倍以上の生涯賃金を獲得できる。規模別、学歴別格差が重なると、引退までの平均生涯賃金でみると、2倍以上という格差が生まれるのである。
  ⅳ)しかし同じ「大学・大学院卒」という学歴であっても、小企業に勤務した場合には、上述のごとく、大企業に勤務した「中卒」や「高卒」の人に、生涯賃金という面では負けてしまうのである。
 ④
上記の分析からわかるように、統計データを見る限り、生涯賃金という観点では、学歴よりも重要なのは、大企業に勤務する、ということなのである。
 一般労働者・男性の引退までの生涯賃金を規模別、学歴別に比較すると、最小(小企業・中卒)と最大(大企業・大学・大学院卒)とで、
格差倍率は2.03である。


4.業種別に見た時の生涯賃金格差

 参考文献2(「週刊東洋経済 2007年10月6日号)には、35業種1020社について生涯賃金を推計した結果が載せられている。その業種別の結果を生涯賃金順に下の図9に示す
 注: このデータは、週刊東洋経済編集部が、厚生労働省「「賃金構造基本調査」を基に業種ごとの賃金カーブを作成し、それと各社が有価証券報告書で公表している平均年齢と平均年収を用いて、業種ごとに推計したものである。(なお、ここでの生涯賃金は、22歳から60歳までの年収を合計したもの)。

図9 業種別平均生涯賃金 (2006年)

 上場している3,885社の平均生涯賃金は、2億1,540万円。この平均値を上回っているのは19業種、下回っているのは16業種である。

(1)4億円を上回ってダントツの2業種

 
22歳から60歳までの平均生涯賃金が4億円を上回っている業種は、放送業と広告業である。
 ②放送業: 上場全10社の平均生涯賃金は4億4,620万円で、全業種平均の2倍以上。この業界のトップは朝日放送で5億5,847万円、最下位(第10位)は新潟放送で3億419万円である。
 ③広告業: 上場企業はたったの3社で、平均生涯賃金は4億290万円業界トップは電通で4億8,575万円、最下位(第3位)はアサツー・ディ・ケイで2億9,106万円である。
 ④放送業がこれだけの賃金を払えるのは、規制業種だから、という事のほかに、番組制作を制作プロダクションに極めて安い値段で下請けに出している、という業界特有の構造があるからである。こうした下請けプロダクションでは、今、問題となっているワーキングプア並みの賃金で働いている人が大勢いるのである。したがって、この業界は、極めて問題が多い業界である、とも言える。

(2)2億5千万円から3億円までの7業種(3位から9位)

 第3位は、「石油・石炭製品」(14社)であるが、3億円にわずかに届かない2億9,777万円、2位とは1億円以上の差がある。この業界トップは新日本石油で4億2,255万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)。
 第4位は、わずかの差(219万円)で「海運」(17社)の2億9,558万円この業界トップは商船三井で4億2,864万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)。
 ③第5位は、「証券」(40社)で2億5,498万円、第4位からは4千万円以上差をつけられている。この業界のトップは外資系のスパークス・グループで5億5,412万円、最下位(第40位)は大洸ホールディングズで1億6,148万円。トップと最下位では、3.38倍の格差がある。なお、4大証券では、大和証券グループ本社がトップ(業界では3位)で3億8,195万円である。
 ④
第6位は、僅差(138万円)で「電力・ガス」(25社)の2億5,360万円この業界トップは中部電力で2億9,648万円、最下位(第25位)は東邦ガスで2億234万円。トップと最下位の格差は、1.47倍であり、最小である。これは、公益企業として規制が強いために、格差が生まれにくいという業界の特徴を示している、と思われる
 ⑤
第7位は、さらに僅差(128円年)で「空運」(6社)の2億5,232万円。この業界トップは全日本空輸で3億1,133万円。日本航空は第2位で2億8,454万円である。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)。
 第8位は、145万円差で「その他金融」(56社)の2億5,087万円。この業界トップはプリヴェ企業投資ホールディングズで5億4,027万円。最下位企業のデータはないので不詳だが、トップ企業の平均生涯賃金が平均の2倍以上であることから考えると、この業界のトップと最下位との格差は極めて大きいものと考えられる
 第9位は、わずか16万円の差で「情報・通信」(348社)で2億5,071万円この業界トップは野村総合研究所で4億3,009万円、最下位(348位)はジェイ・エスコム・ホールディングズで7,689万円。トップと最下位の格差倍率は、5.59倍。なお、ジェイ・エスコム・ホールディングズは、データに載っている3,885社の中で下から2番目(3,884位)の少なさである

(3)平均値(2億1,540万円)から2億5千万円までの10業種(10位から19位)  

 第10位は2億5千万円に71万円及ばない2億4,929万円の「鉱業」(7社)。この業界トップは国際石油開発帝石ホールディングズで3億6,266万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)
 第11位は、31万円の差で「医薬品(52社)」の2億4,898万円。この業界トップは第一三共で3億7,346万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)。
 ③第12位は、2億4471万円の「不動産」(128社)。この業界トップはパシフィックマネジメントで5億6,027万円、最下位(128位)は「やすらぎ」で1億918万円。トップと最下位では、5.13倍の格差がある。なお、パシフィックマネジメントは全産業で3番目の多さである。
 ④
第13位は、2億4,276万円の「保険」(11社)。この業界トップはT&Dホールディングズで3億3,169万円、最下位(11位)はアドバンス・クリエイトで1億4,761万円。トップと最下位の格差は、2.25倍と比較的小さい
 ⑤
第14位は、「倉庫・運輸関連」の2億3,178万円。この業界トップは東京汽船で3億5,111万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)
 第15位は、「鉄鋼」(56社)で2億2,496万円。この業界トップはJFEホールディングズで4億1,885万円、最下位(56位)は「シンニッタン」で1億5,908万円。トップと最下位では、2.63倍の格差がある。JFEホールディングズは純粋持ち株会社で、在籍するすべてホワイトカラーで総合職。したがって、業界2位の太平洋金属(2億7,373万円)を大きく引き離してトップである。なお、新日本製鐵は、2億4,768万円で業界第14位
 第16位は、「電気機器」(308社)の2億2,405万円。この業界トップはキーエンスでダントツの6億3,486万円(これは、全産業の2位である)、業界2位はアクセルで3億9,688万円で、トップとは2億5千万円以上の開きがある。最下位(308位)は「トミタ電機」で1億2,500万円。トップと最下位では、5.08倍の格差がある。なお、ソニーは業界7位で3億3,125万円、キャノンは業界10位で3億769万円、松下電器産業は業界24位で2億7692万円。そして、私が勤務していた東京エレクトロンは業界4位で3億4,231万円である
 第17位は、「化学」(216社)の2億2,176万円。この業界トップは日本高度純化学で3億6,596万円、最下位(216位)は「新輝合成」で1億2,682万円。トップと最下位では、2.89倍の格差がある。
 第18位は、「卸売」(389社)で2億1,694万円。この業界トップは三井物産で4億8,495万円、最下位(389位)は「タイセイ」で7,722万円。トップと最下位では、6.28倍の格差があり、極めて大きい。なお、第2位は住友商事(4億6,983万円)、第3位は三菱商事(4億6,575万円)である。

 第19位は、「銀行」(96社)で2億1,679万円。この業界トップは三菱UFJファイナンシャル・グループで3億5,091万円、最下位(96位)は「福島銀行」で1億3,509万円。トップと最下位では、2.60倍の格差がある。

(4)2億円から平均値(2億1,540万円)までの7業種

 第20位は、「建設」(215社)で2億1,516万円。この業界トップは日揮で3億3,753万円、最下位(215位)は「コーアツ工業」で1億4,205万円。トップと最下位の格差、2.38倍であり、極めて小さい。ちなみに、大手ゼネコンのなかでトップは、鹿島(業界3位)で3億2,059万円、次は、大成建設(業界5位)で3億1,463万円。
 第21位は、「機械」(250社)で2億1,269万円。この業界トップはセガサミーホールディングズで3億2,383万円、最下位(250位)は「郷鉄工所」で1億4,018万円。トップと最下位の格差は、2.31倍であり、極めて小さい。ちなみに、「重工御三家」は次の通り。三菱重工業は2億5,603万円(21位)、IHIは2億4,771万円(38位)、川崎重工業は2億2,162万円(95位)。なお、コマツは2億8,327万円(4位)である。
 ③第22位は、「精密機械」(53社)で2億1,072万円。この業界トップはニコンで2億8,473万円、最下位(53位)は「川澄化学工業」で1億3,929万円。トップと最下位の格差は、204倍であり、極めて小さい。ノーベル賞の田中耕一さんが勤めている島津製作所は業界5位で2億6,466万円。
 ④
第23位は、「非鉄金属」(43社)で2億998万円。この業界トップはDOWAホールディングズで2億6,099万円、最下位(43位)は「エヌアイシー・オートテック」で1億5,394万円。トップと最下位の格差は、1.64倍であり、極めて小さい。
 ⑤
第24位は、「輸送用機器」(106社)で2億879万円。この業界トップはトヨタ自動車で3億294万円、最下位(106位)は「エイケン工業」で1億2,677万円。トップと最下位の格差は、2.39倍であり、比較的小さい。なお、ホンダは業界5位で2億6,240万円、日産は22位で2億3,351万円、三菱自動車は60位で2億484万円。
 第25位は、「プルプ・紙」(27社)で2億765万円。この業界トップは日本製紙グループ本社で2億8,478万円、最下位(27位)は「大村紙業」で1億5,145万円。トップと最下位の格差は、1.88倍であり、極めて小さい。
 第26位は、「金属製品」(98社)で2億307万円。この業界トップは住生活グループで3億1,658万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)。

(5)2億円未満の9業種

 第27位は、「サービス」(363社)で1億9,951万円。この業界トップはダヴィンチ・アドバイザーズで6億9,582万円、最下位(363位)は「メディカル・ケア・サービス」で7,460万円。トップと最下位では、9.33倍の格差があり、ダントツの大きさである。なお、ダヴィンチ・アドバイザーズは全産業でもトップであり、メディカル・ケア・サービスは全産業でも最下位(3,885位)である。つまり、サービス業界には、全産業3,885社で各社ごとの平均生涯賃金を比較した際の、トップ企業と最下位企業が含まれているのだ。
 第28位は、「ゴム製品」(21社)で1億9,751万円。この業界トップは東海ゴム工業で2億4,590万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)
 ③第29位は、「食料品」(153社)で1億9,668万円。この業界トップは日清製粉グループ本社で3億1,597万円、最下位(153位)は「一正蒲鉾」で1億434万円。トップと最下位では、3.03倍の格差がある。なお、キリンホールディングズは業界第2位で3億105万円、アサヒビールは第3位で2億9,307万円である。
 ④
第30位は、「陸運」(66社)で1億9,652万円。この業界トップは阪急阪神ホールディングズで3億2,732万円。最下位(66位)は「センコン物流」で1億1,606万円。トップと最下位では、2.82倍の格差がある。
 ⑤
第31位は、「ガラス・土石製品」(71社)で1億9,502万円。この業界トップは日本電気硝子で2億7,600万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)
 第32位は、「水産・農林」(10社)で1億9,357万円。この業界トップはマルハグループ本社で2億6,694万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)
 第33位は、「その他製品」(116社)で1億9,306万円。この業界トップはバンダイ・ナムコ・ホールディングズで4億91万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)。ちなみに、任天堂は業界2位で3億5,854万円である。
 第34位は、「繊維製品」(81社)で1億8,097万円。この業界トップはワコール・ホールディングズで2億8,073万円。(なお、最下位企業のデータはないので不詳)。
 ⑨最下位(第35位)は、「小売」(384社)で1億7,918万円。この業界トップはファーストリテイリングで3億1,658万円
、最下位(384位)は「かんなん丸」で1億797万円。トップと最下位では3.93倍の格差がある。


(6)業種別トップ企業と最下位企業、および、格差倍率(表5)

 
上記で説明してきた、各業種ごとのトップ企業と最下位企業、および、各業種内での格差倍率を下の表5に示す。

表5 業種別トップ企業と最下位企業、および、格差倍率
業 種 (該当企業数) トップ企業 最下位企業 格差倍率
企業名 生涯
賃金
企業名 生涯
賃金
1.放  送 (10社) 朝日放送 55,847 新潟放送 30,419 1.84
2.広  告 (3社) 電通 48,575 アサツーディ・ケイ 29,106 1.67
3.石油・石炭製品(14社) 新日本石油 42,255
4.海  運 (17社) 商船三井 42,864
5.証  券 (40社) スパークス・グループ 55,412 大洸ホールディングズ 16,418 3.38
6.電力・ガス (25社) 中部電力 29,648 東邦ガス 20,234 1.47
7.空  運 (6社) 全日本空輸 31,133
8.その他金融(56社) プリヴェ企業投資
ホールディングズ
54,027
9.情報・通信 (348社) 野村総合研究所 43,009 ジェイ・エスコム・
ホールディングズ
7,689 5.59
10.鉱  業 (7社) 国際石油開発帝石
ホールディングズ
36,266
11.医 薬 品 (52社) 第一三共 37,346
12.不 動 産 (129社) パシフィック・マネジメント 56,027 やすらぎ 10,918 5.13
13.保  険 (11社) T&Dホールディングズ 33,169 アドバンスクリエイト 14,761 2.25
14.倉庫・運輸関係(44社) 東京汽船 35,111
15.鉄  鋼 (56社) JFEホールディングズ 41,885 シンニッタン 15,908 2.63
16.電気機器 (308社) キーエンス 63,486 トミタ電機 12,500 5.08
17.化  学 (216社) 日本高純度化学 36,596 新輝合成 12,682 2.89
18.卸  売 (387社) 三井物産 48,495 タイセイ 7,722 6.28
19.銀  行 (96社) 三菱UFJフィナンシャル・グループ 35,091 福島銀行 13,509 2.60
20.建  設 (215社) 日揮 33,753 コーアツ工業 14,205 2.38
21.機  械 (250社) セガサミー・ホールディングズ 32,383 郷鉄工所 14,018 2.31
22.精密機器 (53社) ニコン 28,473 川澄化学工業 13,929 2.04
23.非鉄金属 (43社) DOWAホールディングズ 26,099 エヌアイシー・オートテック 15,394 1.70
24.輸送用機器(106社) トヨタ自動車 30,294 エイケン工業 12,677 2.39
25.パルプ・紙 (27社) 日本製紙グループ本社 28,478 大村紙業 15,145 1.88
26.金属製品 (98社) 住生活グループ 31,658
27.サービス (363社) ダヴィンチ・アドバイザーズ 69,582 メディカル・ケア・サービス 7,460 9.33
28.ゴム製品 (21社) 東海ゴム工業 24,590
29.食 料 品 (153社) 日清製粉グループ本社 31,597 一正蒲鉾 10,434 3.03
30.陸  運 (66社) 阪急阪神ホールディングズ 32,732 センコン物流 11,606 2.82
31.ガラス・土石製品(71社) 日本電気硝子 27,600
32.水産・農林 (10社) マルハ・グループ本社 26,694
33.その他製品 (116社) バンダイナムコ・ホールディングズ 40,091
34.繊維製品 (81社) ワコールホールディングズ 28,073
35.小  売 (384社) ファーストリテイリング 41,106 かんなん丸 10,797 3.81
上場全3885社の中で ダヴィンチ・アドバイザーズ 69,582 メディカル・ケア・サービス 7,460 9.33

 ①全企業の中でトップと最下位の企業は、ともに、サービス産業に属している。サービス産業は、非正規社員が大勢いて、従業員別にも格差が大きいが、企業によっても格差が大きい、ということである。
 ②格差が最も小さいのは、規制が強い公益部門の「電力・ガス産業」である。
 ③表5に示すように、、上場企業の正社員の間でも、平均生涯賃金の推計値で9倍以上(9.33倍)の格差がある、というのは驚きでもある。

9.最後に

 今回は、「平均生涯賃金」という観点から「格差」を分析した。ここでいう「平均生涯賃金」とは、その年度の厚生労働省「「賃金構造基本調査」を基に各年齢毎の平均年収を加算して得られたものである。したがって、平均年収の変動と同じトレンドで変動する。
 ここまでの分析から、以下の事が言える。

 働き方(あるいは雇用形態)での平均生涯賃金の格差は、4.62倍もあり極めて大きい
 60歳まで働き続けた場合、最小(子育てのため30歳で一旦退職し、40歳で週25時間勤務の非正社員として再就職した女性)と最大(生涯正社員であった男性)では、4.46倍もの開きがある。
 正社員であっても、細かく見てゆくと、大きな格差がある
  ⅰ)標準労働者(転職なし)の平均生涯賃金を、男女別・学歴別で比較した場合、最小(女性・中卒)と最大(男性・大学・大学院卒)とでは、格差倍率は1.99倍であり、意外と小さい

  ⅱ)
標準労働者を企業規模別、男女別、学歴別にみた場合、平均生涯賃金が最小の「小企業・女性・中卒」と、最大の「大企業・男性・大学・大学院卒」とでは、同じ正社員でも、2.75倍の開きがある
  ⅲ)一般労働者(転職あり)の平均生涯賃金を、男女別・学歴別で比較した場合、最小(女性・中卒)と最大(男性・大学・大学院卒)とでは、格差倍率は2.50倍と、標準労働者の場合よりも大きくなる。
  ⅳ)標準労働者と一般労働者を合わせて考えると、最小(一般・女性・中卒)と最大(標準・男性・大学・大学院卒)との格差倍率は、2.67倍にまで広がる。
  
ⅴ)従業員規模別、一般・標準労働者別、男女別、学歴別の平均生涯賃金を、最小(小企業・一般・女性・中卒)と最大(大企業・標準・男性・大学・大学院卒) の格差倍率として算出すると3.19まで広がる

 これを業種別データに基づいて、企業別に比較すると、上場企業の正社員の間でも、平均生涯賃金の推計値で9倍以上(9.33倍)の格差がある

 私は、就職する場合、年収がどうとかはあまり考えなかった。いわんや生涯賃金についてまではまったく考えた事はなかった。しかし、前回、今回と分析した結果を見る限り、どの企業に(あるいは官庁に)就職するか、という事が、所得格差に大きな影響を及ぼしている、という事がよくわかる。
 働き方から生ずる格差は、自己責任という面もあるが、社会情勢や経済政策等々の、本人とは関係のないところに主たる原因がある、とも言える。
 しかし、業種別・企業別に生まれている格差は、どのように解釈すればよいのであろうか?

 次回には、「職業別給与」といった観点から、格差問題を分析してみたい。


参考文献: 1.「週刊東洋経済 2007年5月19日号: 未来時給」、東洋経済新報社
         2.「週刊東洋経済 2007年10月6日号: 日本人の未来時給」、東洋経済新報社
         3.「週刊ダイヤモンド 2008年3月8日号: 働き方格差」、ダイヤモンド社
         4.「週刊ダイヤモンド 2008年9月13日号: 給料全比較」、ダイヤモンド社
         5.「
サラリーマンの生涯年収・生涯賃金特集-年収ラボ
         6.「
平均年収、生涯賃金分析サイト
         7.「反貧困」、湯浅 誠、岩波新書
         8.「派遣のリアル」、門倉 貴史、宝島新書
         9.「独立行政法人 労働政策研究・研修機構/統計情報/ユースフル労働統計 -労働統計加工指標集-:2008年


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