105.年収格差と格差の拡大 (2008年10月10日記載)
格差社会の現状と問題点については、これまでも様々な観点からとりあげてきた。(本コラムの最後に今までの関連コラムを紹介しています)。
今回は、「年収」という観点から、格差の状況を分析する。そして、年収の二極化が進み、格差が拡大しつつある現状をデータからあぶりだしてみた。分析結果は後述するが、富裕層がますます豊かになる(「突き上げ」)現象も多少はある。しかし、そのことよりも、貧困層がどんどん増えて社会全体が貧しくなる(「底抜け」)、という方向で格差が拡大し二極化している現象がみてとれる。
なお、今回のコラムで用いたデータは、国税庁が毎年発表している「民間給与実態統計調査」をベースにして、参考文献欄に記載した週刊誌やインターネットのサイトから得られたデータ等を利用している。
1.平均年収にみる男女の年収格差:
「
まず最初に男女別平均年収の格差をみてみよう。
(1)平均年収の推移(図1-1)と男女格差の推移(図1-2):
「民間給与実態統計調査」による男女を合わせた平均年収の推移(下の図1-1)と、同じ期間の男女の年収倍率(女性の年収を“1”とした時の、男性の年収比率の推移下の図1-2)を図示する。
| 図1-1 平均年収の推移 |
図1-2 男女の平均年収比率の推移 |
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①男女を合わせた平均年収は、図1-1をみればわかるように、1997年の467万3千円をピークに減少し続けた。そして、2006年にはピークから32万4千円(6.9%)減少して、434万9千円で底をうった。2007年には若干上向いたが、今後も上昇し続けるか否か、推移を見守る必要がある。
②一方、男女の年収比率は、図1-2に示すように、1992年から1997年までは、2.1倍弱で推移したが、平均年収の減少に合わせるように、1998年以降は男女の平均年収の倍率が小さくなった。そして2002年で、1.974倍で一旦底を打った後、2005年まではほぼ、横ばいで推移し、2006年以降、また、男女差が広がる方向で推移しだした
③ここ15年の動きでみると、男女間の年収格差は、若干縮小してきたが、依然として2倍近い格差があり、これは、欧米先進諸国と比べると、極めて大きな格差である、と言える。。
(2)男性の平均年収の推移(図2-1)と女性の平均年収の推移(図2-2):
図1-2からもわかるように、男性の平均年収は女性の平均年収の2倍前後である。ここで、それぞれの絶対金額の推移を下の図2-1と図2-2に示す。
| 図2-1 男性の平均年収の推移 |
図2-2 女性の平均年収の推移 |
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①図1-1と図2-1を比べればわかるように、男女合わせた平均年収の推移と、男性の平均年収の推移は極めて酷似している。これは、男性の平均年収が女性の2倍前後である事、男性労働者数が女性労働者数の1.8倍以上である事を考えれば、ある程度、納得がいく話ではある。
②男性の平均年収は、1993年の555万1千円から1997年の577万円まで、4年間で21万9千円増えた。しかし、その後は減少に転じ、2005年までの8年間に38万6千円減少して、538万4千円で底となった。そして、2006年以降、わずかながら上昇している。(図2-1参照)。
③一方、女性の平均年収は、1992年の268万6千円から1998年のl280万円まで、6年間で11万4千円上昇した。その後、2000年まで、ほぼ横ばいで推移した後、減少に転じ、2006年に271万円で底をうつまで、6年間で9万円減少した。2007年にはわずか2千円であるが上昇したので、今後、上昇するか否か、注目されるところである。
2.年収階級別分布が示す格差の拡大:
平均年収の階級別分布の推移から、年収格差が拡大している状況を見てみよう。ここでは、年収階級を以下の5階層に分類する。
ⅰ)富裕層: 年収1,500万円以上
ⅱ)上流: 年収800万円以上、 1,500万円未満
ⅲ)中流: 年収400万円以上、800万円未満
ⅳ)下流: 年収200万円以上、400万円未満
ⅴ)貧困層: 年収200万円未満
| 図3 男女合計の年収階層別分布の推移 |
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(1)減る中流と増える貧困層(図3、表1):
男女合計の年収階級別分布の推移を右の図3に示す。推移を見やすくするために、図3では、5年毎の各階層別の該当人数を棒グラフで示している。(横軸の単位は“百万人“である)。
①図3を概観してまず、気がつくのは、貧困層が着実に増えている事である。
1992年の713万人から、2007年の1,032万人まで、15年間で1.45倍に増大している。
②また、下流も若干増えている。(1992年の1,422万人が、2007年には1,479万人となり、1.04倍)。
③中流は、1992年(1,557万人)と2007年(1,569万人)ではほとんど同じである。しかし、1997年には、1,753万人にまで急増(1.13倍)しており、1997年から2007年までの10年間でみると、89.5%と1割以上減少している。。
④上流は、中流と同じように1997年に5年前の382万人から489万人まで1.28倍に急増した後、減少に転じ、10年後の2007年には402万人となった(1997年の82.2%)。
⑤富裕層は、他の階層とは異なり、増減を繰り返しながら、2007年には大幅に増加した。(1992年は51万9千人、1997年は54万4千人に増加、2002年は51万3千人に急減、2007年には59万8千人に急増)。
⑥1997年に貧困層や中流、上流が増加したのは、給与労働者が急増した事が背景としてある。(下の表1に示すように、1992年の4,125万人が1997年には4,527万人と1.10倍に増えた)。その後は、給与労働者数はほぼ横ばいで推移している(表1によれば、2002年は4,473万人、2007年は4,542万人)。
| 表1 年収階層別構成比率の推移 |
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1992 |
1997 |
2002 |
2007 |
| 富裕層 |
1.26% |
1.20% |
1.15% |
1.32% |
| 上 流 |
9.26% |
10.81% |
9.14% |
8.86% |
| 中 流 |
37.74% |
38.73% |
36.97% |
34.54% |
| 下 流 |
34.47% |
31.28% |
33.67% |
32.56% |
| 貧困層 |
17.28% |
17.99% |
19.07% |
22.73% |
| 構成比率合計 |
100% |
100% |
100% |
100% |
| 人数合計(百万人) |
41.25 |
45.27 |
44.73 |
45.42 |
|
⑦そこで、絶対数の推移ではなくて、各階層の構成比率の推移をみてみよう。(右の表1参照)。表1から、1992年と2007年を比べると、富裕層と貧困層だけが、構成比率を増やし、中に挟まれた上流・中流・下流のいずれも、構成比率を下げている、という事がわかる。
⑧つまり、日本はこの15年間で、確実に格差が拡大したのである。しかも、表1を詳しく見ればわかるように、貧困層の構成比率が15年間で5%以上増えたのに対して、富裕層は、たったの0.06%増えたに過ぎない。これは、図1-1で示したように、平均年収が着実に減少してゆく中で、ほんのわずかな「幸運児」が富裕層の仲間入りを果たしたが、ほとんどの庶民は、15年前よりも貧しくなってしまった、ということの証明である。
⑨私は、格差社会が、もし、次の2条件を有しているならば、それは是正されなければならない大問題である、と思っている。その2条件とは、
「1.“突き抜け”(富める者が益々裕福になる)と“底抜け”(貧しいものが益々貧しくなる)で格差が拡大する」、
「2.富と貧困が世襲される(金持ちの子は、努力をしなくても金持ちになり、貧乏人の子は、努力をしても貧乏人のまま)」。
という事である。
⑩前回のコラム「104.親の経済力で決まる子供の将来」で、富と貧困の世襲問題を取り上げた。そして、今回のコラムでは、「突き抜けと底抜け」が起きているのではないか、という問題を取り上げている。図3、表1のデータからは、「突き抜け」はともかく、「底抜け」は起きているのでは、と思わざるをえない。要するに、日本は、極めて問題の大きい格差社会になりつつある、というのが私の個人的見解である。
⑪次に、この状況を男女別に見てみよう。
(2)男性:中流は減り、貧困層は増える(図4、表2):
男性の年収階層別分布について、絶対人数の推移を下右の図4に、構成比率の推移を下左の表2に、それぞれ示す。
| 図4 男性の年収階層別分布の推移 |
表2 男性の年収階層別構成比率の推移 |
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1992 |
1997 |
2002 |
2007 |
| 富裕層 |
1.87% |
1.81% |
1.73% |
1.96% |
| 上 流 |
13.63% |
16.08% |
13.54% |
13.41% |
| 中 流 |
51.11% |
51.77% |
48.76% |
45.98% |
| 下 流 |
27.31% |
23.83% |
29.12% |
29.19% |
| 貧困層 |
6.09% |
6.52% |
6.85% |
9.47% |
| 合 計 |
100% |
100% |
100% |
100% |
男性合計
人数
(百万人) |
26.58 |
28.60 |
28.11 |
27.82 |
|
男性だけに限ってみると、1992年と2007年の比較でみた場合、以下の事が言える。
①上流と中流階層の構成比率は、1992年から1997年にかけて増加した後、減少に転じ、2007年には、1992年よりは減少する。特に、中流は、15年間で構成比率は5%以上減少し(減少率では、51.1%から46.0%までで1割以上)、人数では、79万3千人(2002年の1,358万3千人から2007年の1279万人まで)も減少した(男性全体では、124万人増加しているにもかかわらず)。
②下流は、1992年から1997年にかけて、構成比率も絶対人数も、一旦減少したが、その後は大きく増加した。
③貧困層は1992年から2007年までの15年間に、構成比率も絶対人数も大きく増加した(構成比率は、6.1%から9.5%まで5割以上のアップ、絶対人数では、162万人から264万人まで、100万人以上の増加)。
④一方、富裕層の絶対人数は増減を繰り返しながら、増加した(1992年は49万6千人、2007年は54万4千人で、15年間で4万8千人増加))。構成比率は、1992年から2002年までは減少したが、2007年には増加に転じ、1992年の値を上回った。
⑤ここまでの結果をみると、中流が大きく減少し、下流と貧困層がその分増大している事がわかる。富裕層も若干増えてはいるが、全体的に底抜けの傾向が見られる。つまり、男性労働者の場合は、中流を分岐点として二極化が進んでいるが、上流以上へ移れた幸運児は極めて少なく、ほとんどは、下流以下へと転落してしまっている
(3)女性:下流が減り、中流と貧困層が増える(図5、表3):
次に、女性の年収階層別分布について、絶対人数の推移を下右の図5に、構成比率の推移を下左の表3に、それぞれ示す。
| 図5 女性の年収階層別分布の推移 |
表3 女性の年収階層別構成比率の推移 |
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1992 |
1997 |
2002 |
2007 |
| 富裕層 |
0.16% |
0.16% |
0.16% |
0.31% |
| 上 流 |
1.35% |
1.76% |
1.69% |
1.66% |
| 中 流 |
13.51% |
16.33% |
17.02% |
16.48% |
| 下 流 |
47.43% |
44.08% |
41.37% |
37.88% |
| 貧困層 |
37.54% |
37.67% |
39.76% |
43.66% |
| 合計 |
100% |
100% |
100% |
100% |
女性合計
人数
(百万人) |
14.67 |
16.66 |
16.61 |
17.61 |
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女性の年収階層みると、男性の場合とは大きく異なり、以下のごとき特徴が見て取れる。
①年収200万円未満の貧困層が、1992年から2007年にかけて大きく増加し、2007年には最大の階層となった。(構成比率は、1992年の37.5%から2007年の43.7%まで、2割近く増加し、絶対人数は、1992年の551万人から2007年の767万人まで、4割近い増加となった)。
②下流の構成比率は、1992年の47.4%から2007年の37.9%まで、2割以上減少した。一方、絶対人数は、1997年に増加した後、減少に転じ、2007年には、1992年の696万人よりも29万人少ない667万人となった。(女性の給与労働者が、1992年の1,467万人から2007年の1,761万人まで294万人も増加したにもかかわらず)。
③中流は、構成比率、絶対人数ともに15年間で増加した。(構成比率は、1992年の13.5%が、2007年には16.5%まで増加、絶対人数は、1992年の198万人から2007年の283万人まで増加)。
④上流も富裕層も1992年と2007年を比べると、構成比率、絶対人数ともに増加した。絶対人数でみると、上流は19万8千人(1992年)が29万3千人(2007年)となって1.5倍近い増加となった。
⑤一方、富裕層は、2万4千人(1992年)かた5万4千(2007年)へと、2.3倍近く増加した。
⑥以上を総括すると、結論として、以下の事が言える。
ⅰ)1992年から2007年にかけて、女性の給与労働者は大幅に増加したが、その結果、貧困層が大幅に増えた。これは、女性労働者の非正規雇用が1992年には40%未満であったものが、2007年には50%を超えた、という統計的事実と整合するものである。(雇用形態による年収格差については、後で分析する)。
ⅱ)一方、下流は減少し、その反面、絶対数は少ないものの、中流と、上流、富裕層が増えた。
ⅲ)つまり、女性労働者の場合は、「下流」を分岐点として、二極化が進んでいる、と言える。そして、中流以上へ進んだ若干の幸運な女性を除けば、ほとんどが貧困層へと転落してしまっている。
3.官民格差:
| 図6 平均年収の官民格差の推移 |
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| 図7 2006年の平均年収の官民格差 |
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次に、年収の官民格差を分析する。データは、末尾の参考文献5.「平均年収ランキング-年収プロ」の記述から引用した。そのデータの元は、以下のとおりである。
1)「特別職の職員の給与に関する法律」、
2)人事院「平成19年国家公務員給与等の実態調査の結果」、
3)総務省「平成18年地方公務員給与の実態」、
4)独立行政法人:総務省「独立行政法人の役職員の給与等の水準(概要)」、
5)総務省「期末・勤勉手当 昭和40年以降の支給月数の変化」、
6)国税庁「平成18年 民間給与実態統計調査」
(1)役人天国・官尊民卑の実態(図6):
上記のデータ元から得られるデータより、官民格差の推移を右の図6に示す。この図を見れば、日本は「役人天国」であり、「官尊民卑の国」であることがよくわかる。
①年収が最も多いのは地方公務員(2007年で729万円弱)である。国家公務員より、60万円以上、民間の男性平均よりは180万円強、民間の男女平均よりは、290万円強も多い。
②国家公務員も地方公務員よりは少ないが、民間よりはかなり多い。(2007年で663万円弱、民間の男性平均より120万円以上多く、民間の男女平均よりはは220万円以上も多い)。
③多くの地方自治体は、財政危機にあえいでいるところが多い。とくに、近年は、団塊の世代の大量退職で退職金が調達できず、退職手当債という名の借金で退職金を払っている惨状である。それにも関らず、地方公務員の平均年収が、これほど多いというのは、まさに「世の中、間違っとる!!(ちと、古い?)」、のではなかろうか。
④また、地方公務員よりは少ないとはいえ、国債の残高が800兆円を超えている現状を考えれば、国家公務員の平均年収の多さも問題にしなければならないであろう。
⑤次に、民間給与を、企業の従業員規模別にわけ、さらに、現在、問題となっている「独立行政法人」の給与も含めて、2006年のデータで比較してみよう。
(2)超大企業の男性社員と独立行政法人が公務員を上回る(図7):
民間企業の従業員規模別年収格差については、次項で分析するが、最も年収の多いのは、従業員が5千人以上の超大企業の男性社員である。また、準公務員としては、「独立行政法人」があるので、それらを加えて、2006年の官民格差を右の図7に示す。
①図7を見ると、面白い事に気がつく。官民格差とは無関係だが、民間の従業員5千人以上の超大企業では、男性社員はトップ(738万円強)であるが、女性社員は最下位(260万円弱)であることがわかる。つまり、超大企業では、男女格差がきわめて大きい、という事である。
②次に、多いのが「独立行政法人」である。小泉改革は、「独法改革」を進めて、国家機関をどんどんと独立行政法人に変えていったが、このようなデータを見ると「小泉改革」は何だったのか、と思わざるをえない。
③民間の従業員5千人以上の超大企業の男女平均年収は、560万円弱で、民間の男性平均よりはやや多いが、国家公務員よりは100万円ほど、地方公務員よりは160万円ほど少ない。これは、女性社員の平均年収がきわめて少ないためである。
4.従業員規模による年収格差:
| 図8 従業員規模別平均年収の推移 |
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前項で少し触れたが、民間企業の従業員規模別の年収格差を分析してみよう。「民間給与実態統計調査」では、従業員規模を細かく分類しているが、ここでは、規模別の比較がわかり易いように、下記の四つの分類で分析する事とする。
ⅰ)超大企業: 従業員5千人以上
ⅱ)大企業: 従業員1,000人以上5千人未満。
ⅲ)中小企業: 従業員100人以上500人未満。
ⅳ)零細企業: 従業員10人未満。。
注: 「民間給与実態統計調査」では、上記の他に、「10人以上30人未満」、「30人以上100人未満」、「500人以上1,000人未満」の三つの区分も含まれているが、ここでは、比較グラフを見やすくするために省いた。
(1)寄らば大樹の陰(図8):
右の図8に従業員規模別の平均年収の推移を示す。この図を見ればわかるように、平均年収と従業員規模は見事に比例している。「寄らば大樹の陰」、という諺がぴったりくる「年収格差」である。
①平均年収が最も多いのが超大企業。2002年の580万円から2006年の560万円へと20万円減少したものの、大企業よりは35万円以上、中小企業よりは120万円ほど、零細企業よりは220万円ほど多く、ダントツのトップである。
②次に年収の多いのが大企業である。2002年の539万円から2006年の526万円まで、13万円ほど減少したが、中小企業よりは80万円ほど多く、零細企業よりは180万円くらい多い。
③3番目は中小企業。2004年を境に450万円台から440万円台へと減少したが、それでも、零細企業よりは100万円くらい多い。。
④平均年収の最も少ない零細企業は、2002年から2006年まで、350万円前後でほぼ横ばいで推移している。つまり、零細企業は平均年収で、「下流」だということである。
(2)従業員規模と男尊女卑の関係(図9-1、図9-2):
従業員規模別の平均年収を男女別にみると、図8とは違った面白い現象に気がつく。
それを概観するために、下の図9-1に男性の、図9-2に女性の平均年収の推移を示す。
| 図9-1 男性の従業員規模別平均年収の推移 |
図9-2 女性の従業員規模別平均年収の推移 |
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①図8と図9-1を見比べると、男性の場合は、男女平均と同じ傾向である事(つまり、従業員数の多い企業ほど平均年収が多い事)がわかる。しかし、細かく見ると、平均年収の金額以外に、一つだけ違いがある。それは、超大企業の男性の平均年収は、2004年を底として上昇しており、2006年には2002年よりも8万4千円多い、738万8千円となった、ということである。
| 図10-1 従業員規模別給与所得者数(2006年) |
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| 図10-2 従業員規模別給与所得者数の構成比率(2006年) |
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②図8と図9-2を比較すると、女性の場合は、零細企業を除き、平均年収の順序が逆転していることが分かる。
ⅰ)2002年を除けば、中小企業が最も平均年収が多い。そして、わずかの差で大企業が続いている。
ⅱ)3番目が超大企業である。2006年で超大企業平均年収の男女比をみると、男性の平均年収738万3千円は、女性のそれの2.74倍も多い。
ⅲ)最下位は、やはり零細企業であるが、2006年の男性平均年収428万6千円は、女性のそれの1.77倍であり、超大企業と比べると男女差は小さい。
③図9-1と図9-2から、従業員規模別の男女比を2006年の平均年収で調べると以下の通り。
ⅰ)超大企業の男性は女性の2.74倍、大企業では2.29倍、中小企業では1.87倍、零細企業では1.77倍である。
ⅱ)つまり、従業員数が多くなるほど、「男尊女卑」の企業である、という事である。
④この原因として考えられるのは、従業員規模が大きい会社ほど昔からの伝統が強く、男女平等というのは名ばかりで、主要な管理職ポストはほぼ男性が独占している、という実態がある。また、銀行や保険会社の例に見られるように、女性の正規社員が退職すると、その穴埋めを派遣社員で補う、という雇用形態の変更も大きい、と思われる。
(3)従業員規模別給与所得者数(図10-1)と構成比率の推移(図10-2):
従業員規模別に平均年収をみると、男性の場合は、「寄らば大樹の陰」となっている状況をみてきた。そこで、ここで、従業員規模別にみた時の給与所得者が何人いて、構成比率ではどうなっているのかを分析する。2006年の給与所得者の人数については右の図10-1に、構成比率については右の図10-2に、それぞれ示す。
①超大企業に勤務している給与所得者数は、男性が211万人(構成比率で7.7%)、女性が125万人(構成比率で7.2%)、合計で336万人(構成比率で7.5%)である。
②大企業に勤務している給与所得者数は、男性が342万人(構成比率で12.5%)、女性が186万人(構成比率で10.7%)、合計で528万人(構成比率で11.8%)である。
③従業員数で“500~999人”規模の事業所に勤務している給与所得者数は、男性が199万人(構成比率で7.3%)、女性が115万人(構成比率で6.6%)、合計で314万人(構成比率で6.6%)である。人数、構成比率、ともに一番少ない。
④上記3分類の合計は、構成比率で25%前後である。つまり、給与所得者の4分の3以上は、中小零細企業に勤務しているのである。
⑤人数と比率が最大なのは、中小企業と分類した従業員規模で“100~499人“の事業所である。男性が602万人(構成比率で21.9%)、女性が361万人(構成比率で20.8%)、合計で963万人(構成比率で21.5%)。
| 図11-1 雇用形態別年収分布(2006年) |
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| 図11-2 雇用形態別給与所得者数(2006年) |
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| 図11-3 雇用形態別男女構成比(2006年) |
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⑥次に多いのが、従業員数が10人未満の零細企業である。男性が469万人(構成比率で17.1%)、女性が395万人(構成比率で22.7%)、合計で865万人(構成比率で19.3%)。ただし、女性だけをみると、零細企業勤務が最も多い。
5.雇用形態による年収格差:
女性の平均年収が男性の半分以下なのは、従来の男女格差にもよるが、それよりも、雇用形態の違いによる差が大きい。非正規雇用の社員は、正規雇用の社員に比べて年収は極めて少ない。そして、女性給与労働者の大半は、その非正規雇用で働いているのだ。ここでは、そういった雇用形態の違いによる年収格差をみてみよう。
注: ここでのデータは、総務省統計局「労働力調査(詳細結果)」(2006年平均)を用いている。
(1)非正規雇用社員は9割以上が、正社員も過半数は下流以下(図11-1、図11-2):
総務省統計局「労働力調査(詳細結果)」(2006年平均)から得られる「雇用形態別年収分布」について、右の図11-1に示す。なお、図11-1における年収階層の呼称について、「貧困層」「下流」「富裕層」の所得階層は、第2項の冒頭に記載したものと同じだが、「中流」「上流」については、年収分布データの階層区分の関係上、若干異なる。
ⅰ)富裕層: 年収1,500万円以上
ⅱ)上流: 年収700万円以上、 1,500万円未満
ⅲ)中流: 年収400万円以上、700万円未満
ⅳ)下流: 年収200万円以上、400万円未満
ⅴ)貧困層: 年収200万円未満。
また、雇用形態については、右の図11-1、-2、-3に示すように、下記説明項目での4分類とする。なお、雇用形態別の絶対人数は、図11-2に示す。
①正社員(3,441万人): 下流が38.5%(1,291万人)で最も多く、次が中流の33.1%(1,112万人)で、3番目は上流で15.1(507万人)%。貧困層も1割を超す12.8%(429万人)いる。ただし、富裕層はすくなく、わずかに0.5%(16万人)しかいない。正社員であっても、過半数を超す51.3%が下流以下である。
②パート等の短時間労働者(1,164万人): 比率では9割以上(90.9%)、絶対数では1千万人以上(1,033万人)が貧困層であり、下流も8.4%(95万人)いる。つまり、パート等の99.3%が下流以下であり、中流はわずか0.7%(8万人)に過ぎない。なお、上流も1万人いるが、富裕層はゼロである。。
③派遣・契約社員(431万人): 貧困層が45.5%(192万人)、下流が44.5%(188万人)で、両方合わせると90%(380万人)が下流以下である。それでも、8.1%(34万人)は中流である。なお、上流は1.7%(7万人)で、1万人は富裕層である。
④役員(387万人): 統計データには役員も記載されていたので、それを分析してみると、比率的には最も少ないとはいえ、6.2%(23万人)が富裕層である。ただし、貧困層も14.1%(52万人)いるのは意外な感じもするが、これは、「功なり名を遂げた」人が、名誉職として役員に留まっている、あるいは、名目上、役員になっている等の理由が考えられる。いずれにしても、パート等の貧困層とは異なり、生活に窮している人はほとんどいない、と推測される。
(2)非正規社員の過半数は女性(図11-3):
各雇用形態別の男女構成比を右の図11-3に示す。
①正社員の7割は男性で、女性は3割しかいない。ところが、パート等の場合、男性はわずか22%なのに、女性は78%を占めている。
②派遣・契約社員は、男女がほぼ半々である。
③一方、平均年収が最も高い役員では、女性は全体の4分のを占めるに過ぎない。。
④つまり、平均年収が圧倒的に低いパート等の8割近くが女性であり、逆に、年収格差が高い正社員や役員では、女性は25~30%しかいない、こうしたデータを見ると、男女格差が2倍以上に開いている背景が見えてくる。
6.業種別の年収格差:
ここで再び、「民間給与実態統計調査」のデータに戻って、業種別の年収格差を分析しよう。
| 図12-1 業種別平均年収の推移 |
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| 図12-2 2007年 業種別平均年収 |
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(1)業種別平均年収の推移(図12-1):
2002年から2006年までの業種別平均年収の推移を右の図12-1に示す。「民間給与実態統計調査」の公表データでは、2006年まで、業種を以下の10種類に分類していた。しかし、2007年には、14業種に細分化して公表されたので、2007年分は、次項で分析する。
①金融保険・不動産業: 2002年から2005年までは、化学工業に次いで2位だったが、2006年には、563万円でトップにたった。
②化学工業: 2002年から2005年まではトップであったが、2006年には、562万7千円となり、3千円の差で2位に転落した。
③金属機械工業: 2002年の4位から年々順位を上げ、2005年には2位にまで上がったが、2006年には平均年収が551万円で前年よりも下がって、3位に転落した。
④運輸通信公益事業: 2002年には3位であったが、年々平均年収が低下し、2006年には500万円を切って494万3千円となり、順位も4位である。
⑤建設業: 順位は5位で不動であるが、平均年収は2002年から2005年までは緩やかに減少した。しかし、2006年には前年よりは若干増えて451万4千円であった。
⑥その他の製造業: 2002年には7位であったが、年々平均年収が増加し、2004年にはサービス業を抜いて6位となった。2006年は427万円で6位のままである。
⑦サービス業: 2002年には6位であったが、建設業と同じように年々平均年収が低下した結果、7位に落ちてしまった。2006年には、前年うおりも増加して407万6千円となったが、7位のままである。
⑧卸小売業: 順位は不動で8位のままであるが、平均年収は低下傾向にあり、2006年で357万6千円となっている。
⑨繊維工業: 不動のブービーであるが、平均年収は2005年まではやや上昇していた。しかし、2006年には前年よりも少し下がって340万431千円であった。
⑩農林水産・鉱業: 他の9業種とは大きく離れて最下位のままではあったが、2005年までは300万円台は維持していた。しかし、2006年には、296万6千円となって、300万円台を割り込んでしまった。
⑪このように見てゆくと、上位3業種は「上流」で、下位3業種は「下流」、残りの4業種は「中流」というように分類できる。ただし。このデータは、国税局が把握している平均年収であることから、「租税捕捉率」の格差を考慮しなければならない。
⑫従来も「クロヨン」とか「トーゴサン」等で象徴されるように、給与所得者と農林水産業者、自営業者との間での「租税捕捉率」の格差が問題にされてきた。とはいっても、ここでの平均年収の差は、トップと最下位では1.90倍もあり、実態としても、ここまで大きくないかもしれないが、それなりの格差は存在するであろう、と推測される。
注1:「租税捕捉率」については、たとえば、ここをクリック。
注2:「クロヨン」とか「トーゴサン」については、たとえば、ここをクリック 。
(2)2007年の業種別平均年収(図12-2):
前述の通り、2007年からは、業種は10から14に増えた。内訳は、以下の通り。
ⅰ)「金融保険・不動産業」が、「金融・保険業」と「不動産業」に分割。
ⅱ)「運輸通信公益事業」が、「運輸・エネルギー事業」と「情報通信業」に分割。
ⅲ)「サービス業」が、「医療福祉」、「飲食店、宿泊業」、「その他のサービス業」の三つに分割。
①14業種に細分化した結果、トップに躍り出たのは「金融・保険業」で691万円、2位が「情報通信業」で630万円。細分化で新しく生まれた2業種が、1位と2位を占めた。
②その新規業種と分割された片側は、「不動産業」が424万円で8位、「運輸・エネルギー事業」が470万円で5位となっている。
③「サービス業」から分離した「飲食店、宿泊業」は、「農林水産・鉱業」よりも少なくて、273万円で最下位である。
④細分化した結果、平均年収トップの業種と、最下位の業種とでは、2.53倍に拡大した。
(3)上場企業3,945社の「業種別平均年収」(図13):
上場企業3,945社について、証券取引所の定める新業種分類33業種別の、2006年の平均年収を下の図13に示す。図13では、各業種内で平均年収がトップの企業と最下位の企業との倍率を同時に示している。
注: このデータは、参考文献1(「プレジデント 2007年12月3日号: 日本人の給料」、プレジデント社)から引用した。
| 図13 2006年 上場企業3,945社の業種別平均年収 |
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図13の左目盛りは平均年収を、右目盛りは年収倍率を表す。
①上場企業を33業種別に分けた場合、2006年のトップは「石油・石炭製品」で、平均年収は929万円。なお、この業界のトップ企業は新日鉱HDで平均年収は1,176万円、最下位企業は、日本精蝋で平均年収が554万円、その格差倍率は2.12倍とそれほど大きくない。
②2006年の最下位業種は「小売業」で、平均年収は489万円(トップの41.6%)。なお、この業界のトップ企業はファーストリテイリングで平均年収は1,110万円、最下位企業は、マルコで平均年収が273万円、その格差倍率は4.07倍であり、比較的大きい。
③2006年のブービー業種は「サービス業」。平均年収は504万円(トップの「石油・石炭製品」の54.3%)。ところが、この業界内での格差倍率は7.86倍で極めて大きい(この業界のトップ企業は「ダヴィンチ・アドバイザーズ」で平均年収は1,792万円、最下位企業は「メディカル・ケア・サービス」で平均年収は228万円。
④業界内での格差倍率が最も大きい業界は「情報・通信業」で、9.22倍。この業界のトップ企業は「朝日放送」で平均年収は1,605万円、最下位企業は「ジェイ・エスコムHD」で平均年収は174万円。
⑤3,945社全体での格差倍率は、10.30倍。トップ企業は③で述べた「ダヴィンチ・アドバイザーズ」(サービス業)で平均年収は1,792万円。最下位企業は「ジェイ・エスコムHD」(情報・通信業」で平均年収は174万円。
⑥上場企業のみで調べた今回のデータをみると、3,945社全体の平均年収額は666万円であり、「民間給与実態統計調査」による平均年収435万円と比べると、かなり高い(1.53倍)。つまり、上場企業のサラリーマン(および、サラリーウーマン)は、非上場企業と比べて相当恵まれている、という事がわかる。この事は、第4項で述べた「寄らば大樹の陰」を裏付けるデータである、とも思える。
⑦なお、3,945社全体での就業者数の総計は、419万人である。これは、国税庁が毎年発表している「民間給与実態統計調査」の1年を通して勤務した人が4500万人に上っているのに比べると、わずか1割に過ぎない。要するに、1割未満のサラリーマン(および、サラリーウーマン)は、まだまだ、恵まれた環境にあるが、その他はかなり厳しい環境に置かれている、ということであり、こうした点からも格差の存在が確認できる。
7.年代別年収格差:
ここで、年代別の年収格差を分析してみよう。
(1)年代別男女別平均年収(図14-1、図14-2、図14-3):
まず最初に、「民間給与実態統計調査」のデータに基づいて、年代別男女別の年収格差をみてみよう。
下左の図14-1に男性の年代別平均年収を、下右の図14-2に女性の年代別平均年収を、それぞれ示す。経年変化をみるために、1997年と2007年のデータを載せ、それと同時に、年代別の年収減少率(1997年から2007年の10年間の減少率)を緑の棒グラフで示す。
図14-1 男性の年代別平均年収と
10年間の減少率 |
図14-2 女性の年代別平均年収と
10年間の減少率 |
 |
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①図14-1を見ると、男性の年代別平均年収には以下の特徴がある事がわかる。
ⅰ)50代前半までは、「年齢の序列に応じて」平均年収が増えているが、そこでピークとなり、50代後半には平均年収が減少している。
ⅱ)1997年と2007年のデータを比較すると、10年間で、すべての年代で平均年収が減少している。この減少率は、緑の棒グラフで示している。
| 図14-3 男女別年代別平均年収の格差倍率 |
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ⅲ)減少率を見るとわかるが、若年層(20代と30代前半)と高年層(50代)で大きく減少している。子供の教育費や住宅ローン等、生活費がかさむ中年層(30代後半と40代)で減少率が少ないのは、せめてもの慰め、といったところであろうか。
ⅳ)減少率の棒グラフと2007年の平均年収カーブが示すように、だんだんとカーブがフラット化してきており、いわゆる「年功序列」が徐々に崩壊しているようにも思える。
②女性の年代別平均年収は男性とはまったく異なった様相を示している(図14-2参照)。その特徴を以下にまとめる。
ⅰ)平均年収のピークは若年代(1997年では20代後半、2007年では30代前半)で起きており、それ以降は年齢を重ねるにつれて平均年収が減少している(ただし、1997年では、50代前半で平均年収が若干上昇しているが)。
ⅱ)1997年と2007年のデータを比べた場合、平均年収は男性と同じように、若年層(20代と30代前半)と高年層(50代)で減少している。ただし、中年層では、30代後半と40代後半で減少率がマイナス(つまり、平均年収が増加している)となっている。
③男女の年代別平均年収を比べると、若い時はあまり格差はないが、年齢と共に、その格差は拡大している。右の図14-3に、男女別年代別平均年収の倍率格差を示す。この図から以下の特徴が言える。
ⅰ)20代前半では、男女差は2割未満であるが、20代後半には3割前後に広がる。
ⅱ)年齢が上がると共に、その格差は大きくなり、50代前半でピークとなる。
ⅲ)50代後半になると、男性の平均年収も減少に向かうので、男女の格差はやや縮小する。しかし、それでも、2倍を大きく上回る格差がある。
(2)雇用形態別年代別平均年収(図15):
参考文献7(「反貧困」、湯浅 誠、岩波新書)に記載されているデータをベースに雇用形態別年代別の年収分布を右の図15に示す。このデータは2005年の下記調査に基づくものである。
| 図15 雇用形態別年代別平均年収(2005年) |
 |
1)全労働者、短時間労働者については、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2005年)から引用。
2)派遣労働者については、構成労働者「労働力需給制度についてのアンケート調査」(2005年)から引用。
なお、短時間労働者とは、1日の所定労働時間か、1週間の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない労働者の事である。。
①全労働者でみると、平均年収は年齢とともに増加し、ピークは40代後半の593万円。50代に入ると徐々に低下し、60代になると、定年退職の影響もあってか、40万円台を切って一気に低下する。それでも、派遣労働者のピーク年収(363万円)を下回るのは60代後半になってからである。
②派遣労働者の平均年収は、50代後半まではわずかずつでも増加する(40代後半で若干低下するのを除けば)が、その上昇率は全労働者と比較すると極めて小さい。そして、60代に入ると直線状で低下する。
③短時間労働者の場合、平均年収はほとんど横ばいのままである。
④年代を通算した雇用形態別の平均年収は、以下のとおりである。
ⅰ)全労働者: 487万円。
ⅱ)派遣労働者: 292万円。
ⅲ)短時間労働者: 112万円。
⑤第5項の分析とも合わせて考えると、短時間労働者(あるいは、「パート等」)のほとんどは、いわゆる「ワーキングプア」の状態にあると言える。ただし、彼ら(彼女ら)が生計を担ってはおらず、それなりの収入を得ている家族と同居していれば、世帯単位でみた場合、貧困層やワーキングプアから、脱却する事が出来る。
⑥そういった意味からも、家族の果たすべき役割は重大であるが、現在の家族状況は必ずしもそうした役割を果たせない方向に動きつつある。このような家族の動向と問題点については、別の機会に検討する事としたい。
8.学歴による年収格差(図16):
| 図16 学歴別平均年収(2005年) |
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最後に、学歴による年収格差をみてみよう。参考文献6に記載した「平均年収、生涯賃金分析サイト」から引用したデータを用いて右の図16に示す。この平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から、そのサイトが算出したもの。
「賃金構造基本統計調査」の対象となった労働者は、2,156万人(男性1,484万人、女性671万人)で、「民間給与実態統計調査」の1年を通して勤務した労働者4,543万人(男性2,782万人、女性1,761万人)の半分ほどである。また、対象となる事業者は、5人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(5~9人の事業所については企業規模が5~9人の事業所に限る)及び10人以上の常用労働者を雇用する公営事業所から都道府県、産業及び事業所規模別に一定の方法で抽出した78,711事業所である。この内訳をみてもわかるように、ここでの調査対象労働者は、「民間給与実態統計調査」の1年を通して勤務した労働者よりは、恵まれた環境にある。
①図16を概観すればわかるとおり、学歴の高いほど、平均年収が多い。
ⅰ)「大学・大学院卒」が最も多くて677万円。
ⅱ)「高専・短大卒」「高卒」は500万円前後で、「大学・大学院卒」よりは175万円以上少ない。
ⅲ)最も低いのが「中卒」で、440万円。「大学・大学院卒」よりは237万円低く、「高専・短大卒」「高卒」よりは60万円前後少ない。
②このデータをみれば、平均年収という点から考えると、無理をしてでも、大学を卒業した方が良い、と言える。
③図16には、同じ「賃金構造基本統計調査」から得られる全労働者、男性、女性の平均年収も示している。これを見ると、男女格差倍率は1.62倍であり、「民間給与実態統計調査」における倍率約2倍よりは、やや低くなっている。
9.最後に:
今回は、「平均年収」という観点から「格差」を分析した。今回の分析から以下の事が言える。
①男女差別は相変わらず大きい。男女雇用均等法等、様々な施策は講じられてはいるが、相変わらず、女性は低賃金のまま、据え置かれているようだ。
②「突き抜け」(富裕層がますます豊かになる)はまだ確認出来なかったが、「底抜け」(貧しい人が増え、ますます貧しくなってゆく)は起きているようである。男性の場合、中流が減って貧困層が増える、女性の場合、下流が減って貧困層が増える、というところからも、こうした「底抜け」の予兆がうかがえる。
③相変わらず「役人天国・官尊民卑」は健在である。民間給与は減少しているのに、役人の給与はあまり減っていかない。
④男性の場合、「寄らば大樹の陰」で、従業員の多い企業ほど、平均年収が多い。ただし、女性の場合には、逆に超大企業ほど平均年収が低い。これは、従業員規模が大きくなるほど、女性軽視の風潮が強い事を示すのであろうか?
⑤非正規雇用が増えているが、その平均年収は、正規社員の半分にも満たないケースが多い。この事から、「正社員になる事」「正社員になったら、その地位にしがみつく事」が、平均年収を考えた場合の「最大のアドバイス」となる。
⑥業種や企業による年収格差は極めて大きい。これから職選びを考えている人は、業種や企業をよく見極めた方がよさそうである。
⑦年功序列賃金体系は、次第に崩壊しつつあるので、若い人の人生プランが描きにくい時代になってきた、と言えるであろう。
⑧学歴による平均年収の差は、いまだに歴然として存在する。今後、「大学全入時代」になった場合、この傾向がどうなるのかよくわからないところもあるが、いわゆる「肩書き社会」は残るであろうから、ブランドのしっかりしている「大学」を卒業する努力が必要と思われる。
上記の分析をベースに、これから社会に巣立ってゆく若者に、「年収の多い勤務先」を選ぶ、という観点からアドバイスを送るとしたら以下のようになるであろう。
1)今のところは、役人(とくに、地方公務員)になるのがもっとも良さそうである。しかし、最近の「公務員バッシング」や地方自治体の財政破綻不安、等を考慮に入れると、10年・20年先まで、「役人天国」が続くかどうか、状況は不透明である。
2)しかし、女性は、公務員になるのがベストである。民間企業では、たとえば、産休をとるとか、育児休暇をとるとか、といった「男女雇用機会均等法」の精神に則った行動は極めてやりにくい。ところが、公務員の場合は、安心してそういった行動をとる事が出来る。
3)男性の場合は、出来るだけ、従業員規模の大きい会社を選んだほうが良さそうである。ただし、その場合、業種選びは慎重に行った方が良い。さらに、当然の話ではあるが、企業選びは、もっと慎重に、という事。(第6項(3)⑤で述べたとおり、企業間での平均年収の格差倍率は10倍以上である)。
次回以降は、「生涯給与」や「職業別給与」といった観点から、さらには、「貧困」と「貧乏」の違い、といった事を中心に格差問題・貧困問題を考えていきたい。
参考文献: 1.「プレジデント 2007年12月3日号: 日本人の給料」、プレジデント社
2.「週刊東洋経済 2008年2月16日号: 雇用漂流」、東洋経済新報社
3.「週刊ダイヤモンド 2008年3月8日号: 働き方格差」、ダイヤモンド社
4.「週刊ダイヤモンド 2008年9月13日号: 給料全比較」、ダイヤモンド社
5.「平均年収ランキング-年収プロ」
6.「平均年収、生涯賃金分析サイト」
7.「反貧困」、湯浅 誠、岩波新書
8.「格差社会の世渡り」、中野 雅至、ソフトバンク新書
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