ブログ「かんにんブクロ」で書いた"胃幽門狭窄症"の総集編です。

胃幽門狭窄症(1)…


2008年9月18日の午後、私は突然激しい腹痛に襲われた。

とにかく痛いのだ。我慢できない痛さなのだ。今まで経験した事のな い激痛に耐えられず、床に伏してうめき続けた。

まるで大男が私の胃をわしづかみにして、雑巾みたいに絞っているか の様な痛さだった。救急車で病院に運ばれた。

病院に着くと、すぐ痛み止めの注射が打たれた。その後、医師が私の 腹部を押したりした後、レントゲンを撮った。

医師は“胃幽門狭窄症”という文字を書いて私に見せて言った。

「食べた物が腸にいかず、胃が膨れ上がっている状態です。鼻から管 を入れて胃の中のものを全部取りのぞきます」

即入院となった。



胃幽門狭窄症(2)…


左の手には点滴を打たれ、胃の中のものを取りだす為、右の鼻から胃 の中まで管がはいっている。私は全く動けない状態になった。

当然食事はなし。胃の中をからっぽにする為、咽は乾くけど水は一滴 も飲めなかった。

朝、昼、夕の食事の時間、同室の患者が食べてる食器の音を、私は聞 いているだけだった。

病室の天井を見たままの状態が2日間続いた。

主治医が言ったとうり、胃の中のものは少しづつ出ていって、最後は 黄色い胃液が出て来た。

3日目の夕方、やっと鼻から入れられた管と点滴がはずされ、食事が 出た。しかし、食事といっても重湯と具が入っていない味噌汁とジュ ースの流動食。この食事は2週間続いた。



胃幽門狭窄症(3)…


入院8日目の9月25日、胃の内視鏡検査があった。

胃カメラを飲むのは初めてだったが、“口からだけでなく鼻からも行 える”という病院のパンフレットを見ていたので安心していた。

鼻からのは“苦痛が少ない”“吐き気が起きにくい”“モニターを見 ながら会話ができる”という特徴がある。

しかも私は鼻から胃に管を入れるのはもう経験してる。


ところが口からの胃カメラだったのだ。のどからカメラが入っていく 時、何度も「ウェッ!」「ウェッ!」と吐き気をおこした。苦痛と不 快感で、モニターを見る余裕など全然なかった。


内視鏡を胃に入れ、モニターを見ながら主治医は言った。

「よく今までがまんしましたね、胃が変形してますよ」

私は眼をつぶったまま“どうでもいいから早く終わってくれ”と祈る ばかりだった。


翌日の夜、私はナースセンターに呼ばれた。

主治医は胃カメラで撮った写真を見ながら説明してくれた。

「胃が変形して、胃の出口が上の方にあるので、食事の後は食べたも のが腸にいく様に、右側を下にして横になって下さい」


なんて事を言うのだ!。私の胃の出口は上の方にあるのか!。



胃幽門狭窄症(4)…


内視鏡検査でわかった事は、胃の変形の他“胃潰瘍”もあった事だ。

胃の変形を、写真で見せてくれた後、主治医は私にわかりやすい様に 絵を描いて説明してくれ「胃を切るのはもったいないから、これ以上 悪くならないうちに治しましょう」と言った。


入院生活は、午前8時の朝食、12時の昼食、午後6時の夕食。食後と 寝る前にきちっと薬を飲む事。そして食後の休養・安静・十分な睡眠 をとるという規則正しい生活だった。


数日過ぎると、スプーンで重湯や味噌汁を飲み込むだけの流動食は、 物をかんで食べてないし、物足りなくなってきた。でも、早く治そう とがまんした。



胃幽門狭窄症(5)…


入院して10日もすると、同室の患者さん達は、次々と退院していっ た。私のいる病室はベッドが4つ。今、3つのベッドに誰もいない。 残ったのは私一人になった。

昼間の明るいうちはいいが、夜になると病室にたった一人はいやなも んだ。夜中、救急車のサイレンの音が聞こえたりすると、救急車でか つぎこまれたあのつらかった事を思い出したりした。


一週間位で退院できると思っていたので、「いつごろ退院できそうで すか?」と主治医に聞くと「さんざん痛めてきた胃は、そう簡単には 治りませんよ、もう少し頑張ってください」と言われてしまった。


朝、昼、夕の食事は待ちどうしいが、流動食は物足りなくて、食べて もすぐ腹が減った。空腹をがまんできなくなると、ラウンジにある自 動販売機でホットミルクティーを買って飲んだりした。


朝食後は、休養・安静した後、ラウンジで新聞を読んだり、あとはベ ッドで本を読んだり、絵を描いたりの毎日だ。

「具合はどうですか?」と聴診器を腹にあてにくる看護婦さんには 「絶好調!」と答えた。早く退院したかったからだ。


3つ空いていたベッドも、次から次と入院してきた為、すぐいっぱい になった。その中の一人、私の隣のベッドにいる私と同世代の男性は 自分のベッドのカーテンを開けっ放しだ。

何度か話しをする事ができた。腸が伸びてしまっているらしい。

この病院は2回目の入院だというから私より先輩だ。


そして入院13日目の日、私の退院は10月3日に決まった。



胃幽門狭窄症(6)…




退院前日の午後、レントゲン検査があった。バリュームを飲んでの胃 透視だが、過去何度も経験している。ただ、昨日の夕食から何も食べ たり飲んだりしていないので、腹が減った。レントゲン検査が午後2 時過ぎに終わった為、私だけ遅い昼食となった。


昼食後ラウンジに行くと、私の隣の男性は、点滴もはずされてくつろ いでいた。私が明日退院する事も知っていた彼は、夕方、しばらくベ ッドにもどってこなかった。


午後6時、看護婦さんが夕食を運んできた。

「おー、すげぇー!」

私は思わず叫んでしまった。

ご飯とおかずの、いつもと違うメニューだったからだ。

入院して初めてご飯らしい食事だ。久しぶりにかんで食べて、おなか も一杯になった。2週間、重湯と具の入っていない味噌汁だったので 嬉しかった。そしてとても旨かった。


食後ベッドで横になっていると、病室の入口で、隣の男性が看護婦さ んに叱られている声がした。無断で外出し、看護婦さんに見つかって しまったらしい。見ると、手にスーパーの袋を持っていた。何やらい ろいろ買って来た様だった。


頼んでもいないのに、私に大福を買ってきたので、大好きな大福をあ りがたく頂戴した。


夜、主治医に呼ばれてナースステーションへ行った。

ここでも、曲がってしまった胃の形を、再び図に描いて説明してくれ た。

「2回目の内視鏡検査は、10月23日ですから、病院に来て下さい。
退院しても、お粥とかやわらかい物をよくかんで食べてくださいね。
それから、胃の出口がふさがらない様に、おもちは食べない様に…」

え〜!!さっき大福を食べてしまった〜。



胃幽門狭窄症(7)…


10月3日退院の日、朝食前から身の回りを整理した。

さて、大福をくれた隣の男性に、何かお礼の品をあげようと思ったが 何もない。しかたなく、ティッシュと、残り数分間きり見れないテレ ビカードをあげた。

そうそう、昨夜大福を食べたが、別に身体に異常はなかった。


昼前、同室の患者さんたちにあいさつをした後、ナースステーション に行き、看護婦さんと主治医にあいさつをして退院した。

約2週間の入院生活はやっと終わった。


退院しても酒は一滴も飲まなかった。

(正確には、退院しても酒は1ヵ月間だけ一滴も飲まなかった)


●10月23日、2回目の内視鏡検査で病院へ行った。

 胃は曲がったままだった。


●11月6日、内視鏡検査の結果、悪性の細胞はなかった。ピロリ菌が いたので、ピロリ菌除菌の薬を1週間飲む事になった。


●11月26日、胃の薬が残り少なくなったので病院へ行った。


今だに通院の生活だが、薬のおかげで胃は良くなってきている。

体重も4kg増えた。


胃潰瘍は7年前に、胃に穴があく寸前までいったが、薬で治した事が ある。その後、胃炎の薬を飲み続けてきたが、半年前頃から一切飲ま なくなってしまった。今回、その付けが回ったのかもしれない。

胃にやさしい食事と生活をする事が大事だとわかった。


食後は横になるのがくせになって、今日も、右側を下にして横になっ た。そのうち、牛になるかもしれない。

そういえば来年の干支はうしだなあ。そろそろ年賀状を書かなくちゃ あ……






胃幽門狭窄症(8)…


そして2009年…


え〜?、まだ「胃幽門狭窄症」終わってないの?

スミマセン終わってませんでした。


●4月8日

胃の変形を調べる為、胃のレントゲン検査があった。


●4月23日

胃の薬がなくなってきたし、レントゲン検査の結果を知る為、病院へ 行った。

「こんにちはー」私は元気よく診察室へ入って行った。

主治医は、机の上にあるモニターを見ていた。

私の方を振り向くと「先日はお疲れ様でした」と言った。

先日は?何の事…あっそうか、胃のレントゲン検査の事か…。

モニターには、なにやら“まんまるく膨らんだ胃らしき画像”が写っ ていた。“あれー?胃の形してないなぁ…”

主治医が説明しなくても大体わかった。


「yamacさん、胃は変形したままですねー」

別の角度から見た胃の形も見せてくれた。あきらかに、普通の胃の形 をしていない。胃の出口が上の方にある。(イラストはこちら


主治医は、今回も私に解り易い様に、図を描いて説明してくれた。

「治るんですか?」

「治りません。でも、これ以上悪くならない様にしましょう。胃の調 子はどうですか?」

私が胸やけが少しあるくらいですと言うと、

「薬はガスターDだけにします。胃の調子が良かったら、薬は飲まな くていいです。これで卒業です。次は9月に来て下さい」

「え〜?今年の9月ですか?」

「そうです。9月で1年になりますから…」


胃は曲がったままだが、約7ケ間の通院も今日で終わった。

そして、入院中主治医が言った言葉を思い出した。

「さんざん痛めてきた胃は、そう簡単には治りませんよ」と。


でも、今では何でも食べられる様になった。

体重も退院した時より10kg増えて、顔も丸くなってきた。

ハッピーエンドだ。(完)


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