笠ヶ岳
2013年(平成25年)8月

メ モ
飛騨の名峰笠ヶ岳に初めて登ったのは昭和47年の夏のことだった。太郎兵衛平から北ノ股岳や黒部五郎岳、三俣蓮華岳を越えて4日目の朝頂上に立ったが、この山行は天気に恵まれず2日目以降は展望のない霧の中の山歩きで、笠ヶ岳の山頂でも視界は白い霧に閉ざされたままだった。足取りも重くクリヤ谷ルートを槍見温泉に向かって下って行ったが、皮肉にもその途中から青空が覗き始めて天気は回復してきたのだった。

それ以来41年が過ぎ去ったこの夏、再び笠ヶ岳に向かうこととした。
ルートは1泊2日の笠新道としたが、お盆までの夏山シーズンは山小屋はもちろんのこと麓の駐車場も満車になって車を止めるのは困難と言うことだった。そこで時期をずらして8月下旬の平日をウォッチしていたところ、ちょうど28、29日の水、木あたりが都合が良さそうだった。
27日に仕事を終えて帰宅してから準備をし、家を出発したのは午後10時半。体の疲れはあったがこの機会を逃すともう二度と行けなくなるのではないかという思いから、眠気を押さえて第二京阪、名神、東海北陸道を走り、高山、平湯を経て新穂高温泉の駐車場に着いたのは翌日の午前3時だった。走行距離は約340km。駐車場はかなり混んではいたものの、奥の方に幾つかの空きスペースがあったのでホッとする。夜明けまであまり時間がないので少しでも疲れを取るためにすぐ横になった。この笠ヶ岳には日帰りで登る人も多く、ヘッドライトをつけて早々と出発して行く人もいた。
少し微睡んで目を覚ましたのは5時頃で、既にまわりは明るくなっていた。今日は山頂近くの山小屋までなのでそれほど急ぐことはなかった。3時頃までに着けばよいと考えて支度をして5時45分に駐車場を出発した。

行 程  
28日 新穂高無料駐車場−笠新道登山口−杓子平−稜線出会−笠ヶ岳山荘(泊)
29日 笠ヶ岳山荘−笠ヶ岳(往復)−抜戸岳−杓子平−笠新道登山口−新穂高無料駐車場

天 候 28日 晴れのち曇り
29日 晴れのち時々曇り


8月28日
新穂高の無料駐車場。8月末の平日にもかかわらず90%ほどの混みようです。5時45分に出発。このあたり標高は1050mほどなので山頂まで標高差約1800mの登りとなる。

蒲田川を仮橋で渡る。恵橋というその橋は架け替え中のようだった。正面に笠ヶ岳から抜戸岳にかけての稜線が見えるが笠ヶ岳は雲の中。

25分ほどでゲートに着く。念のために登山届けを出しておく。

穴毛谷から笠ヶ岳方面を見る。天気予報では今日は晴れの良い天気だったはずだが、雲の様子を見ると少し不安定な感じがする。

穴毛谷出会いを過ぎてしばらく行ったところで振り返ると、クリヤノ頭方面と思われる険しい稜線が見えた。

新穂高から登山口までは変化の少ない車道が続く。この道は過去3回ほど歩いているが、40年ほど前のことで全く記憶にない。

駐車場から1時間15分かかって7時に笠新道登山口に着く。標高は1350m。

噂に聞く急登が始まる。しかし、確かに山の斜面の傾斜はきついが道はつづら折りにつけられているため勾配はそれほどでもなく、ゆっくりと着実に登って行けば何とかなりそうだ。

8時15分に標高1700mを通過。1時間に300mほどの登りか?

視界の利かない樹林の中を1時間半ほど登ったところから焼岳が望まれた。
一定のリズムで歩き続けて順調に高度を稼いで行く。今のところ天気もまずまずのようです。


9時に杓子平までの中間地点を通過。標高は1920m。登山口からここまで2時間かかっているのにあと1時間半で杓子平まで行けるのだろうか?

中間地点から10分ほど登って行くと頭上が明るくなり灌木帯が近づいてきたことが分かる。

視界もよくなり焼岳や乗鞍岳が見えてくる。

9時40分にゴロゴロした岩場で休憩する。正面には稜線付近を雲で覆われた槍・穂高が見える。
先ほどまで見えていた青空はいつの間にか雲に隠れてしまった。

標高は2200mを越え、灌木の中の道となる。見上げると稜線らしきものが認められたが、そこまでにはまだ200mは登る必要がある。

途中で休憩を入れながら、ミヤマアキノキリンソウやシモツケソウ、サラシナショウマ、ハクサンフウロなど夏と秋の花々が咲く道を登ってようやく稜線に近づいた。

11時30分に杓子平に到着。しかし主稜線には雲がかかっており、抜戸岳や笠ヶ岳は見えなかった。お腹もすいてきたので杓子平から少し進んだキャンプ地跡で休憩し昼食を取る。

大休止してから稜線に向かって登山再開。コバイケイソウの群落を見ながら登って行く。

 
登る途中で杓子平を振り返る。右上の稜線付近に休憩したところが見える。

稜線までの道程は長く、登っても登っても道は霧の中に果てしなく続く。

杓子平から登り続けること1時間半ほどでようやく稜線に達し、そこから少し下って縦走路に合流した。

稜線の縦走路から杓子平を見おろす。

14時5分、抜戸岩を通過。

稜線を歩くこと50分ほどでようやく山小屋が見えてきた。このあと休憩を入れながら登っていったが、テントサイトから小屋までの一登りが非常にしんどく、ようやく小屋に辿り着いたのは午後2時45分。

平日にもかかわらず小屋はそこそこの人で賑わっていた。割り当てられた部屋は2階の”白山”で、上段の右端だった。1人1枚の布団を確保できて一安心。

5時半ごろから夕食を戴いたあと寝る準備をしてくつろいでいると急に外が明るくなってきた。小屋から出てみると霧が晴れて明るい夕空が広がっていた。

歩いてきた稜線も姿を見せ始めていた。

小屋の裏側に行ってみると、ちょうど夕日が沈んで行くところだった。
綺麗な夕景を見ることができてここまで登ってきた甲斐があったとつくづく思う瞬間でした。

やがて日は沈み、そのあとは明日の好天を予想させるように空や雲が茜色に染まる。
光の祭典が終わってまわりが再び霧に閉ざされてから小屋に入り、少し早いが明日の好天を願って眠りについた。

8月29日
昨夜はすぐに寝入ったが夜半に目を覚ましてそのあとはうとうと状態。
4時頃に起きて外に出てみると雲一つない星空だった。そこで試しにその星空を写真撮影。午前4時20分ごろの東の空です。
太陽のように光っているのは月齢21の月でおうし座にあります。その左にはぎょしゃ座の五角形。
また右下の方には三ツ星で有名なオリオン座が横たわる。左下の方にある明るい星はふたご座の中の木星です。

 
上の写真よりも地平線に近い位置の空。上にオリオン座、左上に木星が見えます。
オリオン座の左上の赤いベテルギウスと写真下のシリウス、左下のプロキオンを結べば冬の大三角形となる。
ベテルギウスは終末期の巨星で明日にも大爆発を起こすかも知れず、そうなると冬の大三角形も見ることができなくなります。
夏にこのような冬の星座を見ることができるのも早起きの賜物です。

 星の撮影に夢中になっているうちに5時近くになったので食堂へ行って朝食を戴いた。
食べ終わったのは5時過ぎ。日の出は5時25分ごろと言うことだったので笠ヶ岳の山頂でご来光を迎えることとした。
15分ほど頑張って頂上に着いたのと中岳の肩から朝日が昇るのとは殆ど同時だった。

笠ヶ岳山頂の三角点。標高2897.5m。

槍ヶ岳を開山した播髀辮lゆかりの山頂の祠。

以下は山頂からの展望です。
まず南アルプスと中央アルプス方面の眺め。

甲斐駒ヶ岳の後に富士山

乗鞍岳と御嶽山

焼岳

加賀の白山と雲海に映る笠ヶ岳の影

黒部五郎、薬師、剱、立山、水晶、鷲羽などの北アルプスの峰々。
眼下には小笠と山小屋。

大展望を満喫した笠ヶ岳から山小屋に6時に戻る。既に大勢の登山者は出発したあとだった。
私も支度をして6時20分に出発した。今日は無風快晴のいい天気でこれからの稜線歩きが楽しみです。


槍・穂高を見ながらテントサイトを通り過ぎて往路を戻る。
道端の岩には”サヨナラ”の文字が書かれてあった。さようなら笠ヶ岳。

播髟スを見下ろす。その向こうには穂高連峰が連なる。

播髟スと緑ノ笠。
背後には焼岳、乗鞍岳、御嶽が続く。左遠くには中央アルプス。


笠ヶ岳を振り返る。
晴天の下で山頂を踏むという念願を果たすことができて本当によかった。

抜戸岳を目指して稜線を行く。

抜戸岩を通過。

笠ヶ岳を振り返る。名峰の名に恥じない山容です。

行く手遠くには北ノ俣岳、黒部五郎岳、薬師岳、水晶岳など北アルプス最深部の山々が連なる。
遠くには大日岳、剱岳、立山も見える。

抜戸岳も近づいてきた。

今日歩く稜線上で唯一のお花畑。8月末と言うこともありチングルマはこのような状態。

しかし僅かではあるがまだ開花中のものもあった。

チングルマの群落の中にはハクサンイチゲも見ることができた。

笠ヶ岳を振り返る。
穴毛谷を隔てて焼岳、乗鞍岳、御嶽山の火山が連なる。


 抜戸岳に取り付く。

  7時40分に杓子平への分岐に着く。写真を撮りながら来たので少し時間がかかってしまった。しかし天気も良いしこのまま下ってしまうのは勿体ないので、左手に見えるピークまで行ってみることにした。

杓子平への分岐付から笠ヶ岳を振り返る。均整のとれた立派な山容です。
(画像をクリックすると拡大されます)

 抜戸岳を巻いて行く。
無名のピークは標高2790mほどのところで7時50分に着いた。
写真はそこからの笠ヶ岳。(画像をクリックすると拡大されます)

目の前には抜戸岳が大きい。標高2813mでここより少し高い。

北の眺め。黒部五郎、薬師が見える。

無名のピークから戻って抜戸岳には8時10分着。

暫しの間景色を眺めてから杓子平に向かう。

杓子平に向かう。先ほどまで湧きあがっていた雲は跡形もなく消えていた。

見飽きるほど眺めた槍・穂高。

昨日辛い思いをした坂道を軽い気分で下って行く。
振り返って仰ぎ見ると登りはやはりきつそう。

杓子平が近づいてきました。

晩夏の日差しをいっぱいに浴びたコバイケイソウの群落。

ミヤマリンドウもあちらこちらに咲いていた。

ハクサンボウフウの群落。

再び笠ヶ岳が姿を現す。

9時15分に杓子平に戻る。ここでこのあとの下りに備えて大休止。

正面には抜戸岳。右手に下ってきた道が見える。

堂々とした山容の笠ヶ岳。ここで本日の見納めとなった。

杓子平を9時35分に出発。下りはのんびりと花を観賞しながら行く。写真はミヤマアキノキリンソウ。

盛夏の花シモツケソウ。

競い咲くミヤマアキノキリンソウとシモツケソウ。

清楚な感じが好ましいソバナ。

樹林帯になってからは、ゴロゴロ岩場で休憩したのみで急坂を下り続ける。

杓子平から2時間半かかって12時5分に登山口に戻る。

新穂高温泉への道から笠新道の尾根を振り返る。
あんなに急な斜面を登り下りしてきたんだなあと感慨深く眺めた。

新穂高への帰途、穴毛谷から笠ヶ岳を見たが稜線はすでに雲に覆われていた。明日以降の天気予報は台風の影響もあり曇りや雨の日が続くようだった。夏の終わりのひと時の晴れ間を運良く掴むことができた幸運な山行だった。

午後1時にゲート着。下山届けを出して新穂高に向かう。
無料駐車場には13時15分着。帰途深山荘の露天風呂に浸かり、新穂高を2時に出発して家に帰り着いたのは7時だった。


コースタイム
往  新穂高無料駐車場(5:45)−笠新道登山口(7:00-7:05)−(休憩10分)−中間点(9:00)−(休憩10分2回)
    −杓子平(11:30-11:50)−稜線出会(13:20)−笠ヶ岳山荘(14::45)
復  笠ヶ岳山荘(5:10)−笠ヶ岳(5:25-5:50)−笠ヶ岳山荘(6:00-6:20)−2790m峰(7:50-8:00)−抜戸岳(8:10-8:15)
    −杓子平(9:15-9:35)− (休憩10分)−中間点(11:00)−笠新道登山口(12:05-12:15)−新穂高無料駐車場(13:15)

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