■ サッカーシューズとは何か?
 ここでは、シューズの種類と選び方を紹介します。
 ときどき、「高学年はスパイクシューズでなければならない」という話を耳にしますが、これは間違った噂です。サッカーのルールはイングランド協会などが決めるもので、原題を"Laws of the game"と言います。この中の『第4条 競技者の用具』の中に、サッカーシューズについての記述があります。
 原文そのままを引用すると、
Law 4 - The Players Equipment
Safety
A player must not use equipment or wear anything which is dangerous to himself or another player (including any kind of jewellery).
Basic equipment
The basic compulsory equipment of a player is:
・a jersey or shirt
・・・・・・
・footwear
 おわかりでしょうか。ただ、"footwear"だけ、です。つまり、競技規則は「靴を履きなさい」と言っているだけで、どんな靴かという指定は無いのです。

 

■ シューズの種類
 ルール上はどんな靴を選んでも良いのですが、実際にお店に行けば色々なシューズが並んでいて迷ってしまいます。迷うだけなら良いのですが、どれを買えばいいのかわからないこともある。そこで、まず、サッカー用品のお店(船橋の”セリエ”や津田沼の”B&D”など)に並んでいるシューズの種類と見分け方を紹介します。
サッカーシューズというと誰でも思い浮かべるのがこのタイプでしょう。最も一般的なスパイクシューズです。靴底に12本前後の円柱スタッドが並んでいます。
スパイクシューズの一種です。スタッドが金属で出来ていて、脱着(交換)可能です。なぜ交換するかというと、ヨーロッパではピッチごとに芝の長さが大きく違い、スタッドの長短が軸足の安定に影響するからです。
これもスパイクシューズの一種です。マルチスタッドシューズと呼ばれるタイプです。円柱スタッドが20本以上並んでいます。
これもスパイクシューズの仲間です。スタッドが円柱ではなくブレード(刃)状のタイプです。横方向の安定が得られます。
トレーニングシューズ、いわゆる”トレシュ”です。英語では"Astro-turf shoes"と呼ばれます。靴底がゴム系の素材で出来ています。私達はその名前からトレーニング専用のシューズと思っていますが、サッカーの母国イギリスでは次のように紹介されています。「様々なピッチ条件に一足のみで対応する場合はこのシューズを選択すべき。特に固いピッチ(土など)でプレーする場合は最良のグリップを得られる。またこのシューズはシーズン最初の乾燥して固い草のピッチで使用される」。ちなみに、"Astro-turf"とは欧米における『人工芝』の通称です。アメリカ・ヒューストンにある有名なアストロドームで、世界で初めて、人工芝が採用されたため、このように呼ばれています。
トレシュに似ていますが、こちらはフットサル用のシューズです。体育館での使用を考慮して床面に跡がつかないような素材が使われています。そのため、これをトレシュ代わりに外で使うと、あっというまに靴底がすり減ってしまいます。
 お気づきかもしれませんが、本来、サッカーシューズは使用するピッチの状態(土か芝か、柔らかい芝か固い芝か人工芝か、など)に合わせて種類が分かれています。トレーニングではこれ、試合ではこれ、などという分け方は間違いです。どこでこうなってしまったのかは解りませんが、おそらく舶来品が珍しかった時代に勘違いしてしまったのが今に至るまで続いているのではないでしょうか?

 

■ 突き上げ感
 さて、ヨーロッパでは、たとえ芝のピッチであっても小学生年代の子どもにスパイクシューズを履かせることは(特別な試合やトレセンなどを除くと)ありません。スパイクシューズは(未経験の保護者の方にも是非一度履いてみて欲しいのですが)つよい突き上げ感があります。サッカーシューズのニューモデルのうたい文句の多くは『突き上げ感の緩和』ですが、それを謳うこと自体、突き上げ感が存在していることの証拠です。
 スパイクシューズの突き上げ感の原因は接地面積が小さいことによります。
 昔はスタッドの最低直径がルールで決められていましたが、今はその部分はルールから削除されているようです。
 例えば、子ども用のシューズについて考えてみると、(前に紹介したアシックスのゴム製スパイクの場合)片足に直径約10mmのスパイクが16本あります。総面積は約13cm^2です。子どもの足の面積をだいたい120cm^2とすれば1/9です。ちなみにトレシュは(種類によって違いますが)足裏の1/4くらいの接地面積ですが、小さな突起が密集しているため、実用上の面積は足裏の半分くらい、60cm^2くらいと考えていいでしょう。
 子どもの体重を30kgとすると、足に掛かる圧力は、
裸足の場合、0.25kg/cm^2
トレシュの場合、0.5kg/cm^2
スパイクの場合、2.3kg/cm^2です。
2.3kg/cm^2の圧力というのは、厚さ6mm、1m四方の鉄板を14cm変形させるほどの力です。
もちろん裸足の場合は筋肉が薄いために衝撃は直に骨に掛かるので、実際には、裸足よりトレシュの方が小さな圧力になります。
 子どもの骨は非常に柔らかく簡単に変形してしまいます。特に踵の骨が変形した場合、最終的には組織の壊死につながることがあります。踵の骨の壊死が原因で、毎年、日本全国で1〜2名の子が足を切断するという大変不幸なことになっています。たしかにトレシュでは滑るかもしれませんが、滑って怪我したからと言って、人生を棒に振るわけではありません。スパイクとトレシュの両方を用意するのは大変かもしれませんが、練習ではなるべくトレシュを着用してください。
 またスパイクシューズについてもなるべく足にやさしいものを選びたいものです。推薦するとすれば、アシックスのアウトソールのスパイクがゴムでできているタイプ(普通はプラスチックで出来ている)か、マルチスタッドタイプです。
 流行のブレードタイプはヨーロッパの芝での着用を前提に開発されていて、グリップ感が良好な分、足への負担も大きくなっています。

 

■ サッカーシューズの起源
 ちょっと脱線してサッカーシューズの起源のお話しをしましょう。
 サッカーのスパイクシューズの起源は1920年まで遡ります。この年、ドイツ、ニュールンベルグ近郊のヘルツォーゲンアウラッハでユダヤ系靴職人のクリストフ・ダスラーの息子のルドルフ・アドルフ兄弟が靴製造の会社”ダスラー兄弟商会”を設立しました。兄ルドルフが販売を、弟アドルフ(アディ)が生産を担当しました。
 そして1926年、最初のサッカーシューズを発売します。
 3年後の1929年には今日のスパイクシューズの原点となる世界初のくぎ止めスタッド付きサッカーシューズ発売しました。
 その後も次々と革新的なサッカーシューズを世に送り出した”ダスラー兄弟商会”でしたが、1948年、兄弟ゲンカが原因で2人は別々の会社を興します。兄ルドルフ・ダスラーは彼の名前からとった”ルーダ”という会社を興しますが、のちに、より躍動感のある名前が欲しいという事から発音が似た”プーマ”に替えました。そして弟アディ・ダスラーは”アディダス”を設立し今日に至っています。
 ちなみに、アディダス、プーマと並ぶ世界的サッカーブランドの”ナイキ”は、1963年、オレゴン大学で陸上コーチをしていたビル・バウワーマンと中距離選手フィリップ・ナイトが日本のオニツカタイガー社(現アシックス)製品の輸入販売を始めるために興した会社です。のちに契約問題からアシックス製品を販売できなくなったナイキは独自の商品開発・販売を始め今日に至っています。

 

■ シューズの選び方
 さぁ、話しを戻しましょう。ここからはシューズ購入の際の具体的な注意点です。
1. 店に行く時間は午後にする。朝と夕方では、足のサイズが5〜10mmぐらい差がでるので、足が大きくなる午後に買くこと。
2. 数ヶ月で買い替えるつもりで、適切なサイズのものを選ぶ。購入後にクッション性を向上させるサッカー用インソールを装着する場合は適正サイズより1サイズアップしたものを購入します。
3. 靴先が広く指が自由に動くこと。
4. 靴底は曲がりやすく、なおかつ、しっかりしていること。
5. 試着の際は両足ともはくこと。人間の足は左右でサイズが違う。
6. 試着するときはかかとで地面を叩いて、先端の『あまり』をしっかり見る。
7. 足を踵にしっかり密着させてから、面倒でもしっかり紐を締める。アッパーや、履き口がきつくなく足が前に滑らないか確認する。
8. 爪先は痛くないか?(爪先から靴の先端まで5〜10mm位のあまりがあるか)  
 9. 親指と小指のつけね部分はフィットしているか?
10. 足の甲が圧迫されたり、食い込んだりしないか?逆に甲と靴の間に隙間がないか?
11. くるぶしがトップラインにあたっていないか?
12. かかとを浮かして、シューズが逃げないか?
13. 足の土踏まずの位置、形、靴の内側のアーチの位置、形はあっているか?ちなみに靴の型を『ラスト』といいますが、ナイキ、アディダス、ミズノは特にことわりがない場合、細い形状です。プーマは比較的幅広のラストを使用していますので、大足家系の我が家ではプーマばかり使用しています。
14. 片足で立って、きつくなったりしないか?

 

■ シューレースの結び方
 靴と言えばシューレース (靴紐)。今度は靴紐のお話しです。
 シューレースには、断面が円形の丸型、板状の平型、そしてその中間の型があります。丸型は全体を均一に締め上げやすく、ねじれても違和感がないのが特徴です。欠点はほどけやすいこと。平型は、弾力性があるので、締めすぎてもさほど窮屈に感じずにすみ、緩みにくいといった特徴があります。
 サッカーシューズは平型が一般的です。丸型はスニーカーに多いですね。シューレースが切れて新しいものを購入する際は紐の断面形状に注意してください。
 ところで、子ども達の中にはしばしばシューレースがほどけてしまう子がいます。こういう子達のシューレースを見てみると、多くの場合、シューレースの通し方を間違っていることが原因になっています。正しい通し方は『穴の上から紐を通す』ということです。
  上の写真は『オーバーラップシューレーシング』という結び方です。シューレースを通す穴の上から下へ交互に通していますよね。この結び方はシューレースが緩みにくく締め付けがよいので、陸上短距離やサッカーのような激しい動きのあるスポーツに向いています。
 上の写真は『アンダーラップシューレーシング』という結び方です。さっきの結び方と違い、今度は穴の下から上へ通していますね。コチラの結び方は弾力性に富む一方でやや緩みやすいという欠点があります。日常履くスニーカーや陸上長距離などに向いた結び方です。
 コーチはアンダーラップの子を見かけると(オーバーラップに)直してくるよう伝えていますが、保護者のみなさんも一度、お子さんのシューレースを確認してあげてください。

 

■ 靴の手入れ
 最後に靴の手入れについて。
 シューズを買うと手入れの方法を記した紙もついてきます。具体的な方法はそちらをご参照下さい。
 ここで、保護者の皆さんに是非お願いしたいのは、シューズやボールの手入れは子ども達自身にさせてやって欲しいということです。サッカーはプレーヤー自身がプレーを選択するスポーツです。つまり、自立や自律、判断力が重要になるのです。大好きなサッカーをする準備は是非本人にさせてやってください。それが自発的な態度を育てる第一歩だと思います。すでにそこからサッカーの練習は始まっているのです。
 コーチ達は子ども達に「汚れたままのシューズを履いている子、汚れたままのボールを使っている子はけっして上手くならない」と伝えています。泥だらけのシューズを見かけたときは、「綺麗にしなさい」とひとことだけ注意して、あとは本人に任せてやってください。何年生から、というのでははなく、幼稚園児の内から、そういう習慣を身につけさせてやってください。よろしくお願いします。

 

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