歩け! 歩け!

2001/01/28 日曜日

運動療法
運動で血糖コントロールがよくなるのは
運動療法は医師の許可を得てから
どんな運動をどれくらい行うのか
歩け! 歩け!
運動療法・・・私の場合

運動療法主治医のOKが必要です  
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運動することによって、体がインスリンに反応しやすくなります。
運動療法によって、糖尿病が驚くほどよくなる患者さんも少なくありません。

しかし、運動だけでは血糖値は下がりません。食事療法や薬物療法などと組み合わせて、初めて威力を発揮します。
また、やり方を誤ると、合併症を悪化させたり、心筋梗塞など循環器に障害をきたすこともあります。

運動療法の実施にあたっては、主治医に相談して、正しく、楽しく、マイペースでできるものを選んで、継続しましょう。

 

運動で血糖コントロールがよくなるのは  
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たとえ安静にしているときでも、体内ではさまざまな臓器が活動しており、ある程度のエネルギーは消費されています(基礎代謝)。その際に消費されるブドウ糖量は、健康な人でも、1分間に体重1kgあたり2〜3mgと、ごくわずかです。ところが、ひとたび運動を始めると、安静時の数倍から約20倍のエネルギーが消費されると考えられています。

運動することで需要が増大した分のエネルギーの補給は、運動を始めた最初の5〜10分間は、主に筋肉内のグリコーゲンをブドウ糖に分解して使われます。
それ以上運動が続けられると、血液中の脂肪酸やブドウ糖が使われることになります。その結果、血糖値が低下します。
ところが、血液中には脂肪酸が4g(36kcal)、ブドウ糖はたかだか20g(80kcal)しか存在しないため、間もなく血液中の脂肪酸やブドウ糖でもまかないきれなくなり、血液中のエネルギーを使い果たす前に、体内のエネルギー貯蔵庫である肝臓と脂肪組織からエネルギーの補給が行われるようになります。
その際、肝臓では貯蔵していたグリコーゲンがブドウ糖に分解されるとともに、脂肪組織では中性脂肪が遊離脂肪酸に分解されて筋肉の細胞に送られます。

こうした複雑なメカニズムの調節は、インスリン、グルカゴン、カテコールアミンなどのホルモンの相互作用を中心として、自律神経の働きや各臓器のホルモンに対する反応などによって行われていると考えられています。

運動療法の急性効果(運動中や運動直後の治療効果)

  • GLUТ4

筋肉細胞の中には、GLUТ4(糖輸送担体4)と呼ばれるブドウ糖を通過させるための蛋白質があります。これがインスリンの作用で細胞の表面に移動します。この蛋白質が細胞の表面に顔を出すと、その部分から血中のブドウ糖が細胞内に取り込まれます。これがインスリンによって血糖値が下がる機構の一つとなっています。

運動の継続は、この蛋白質の量を増やし、活性化しますので、DMでインスリン分泌が不足気味でも、筋肉にブドウ糖が取り込まれやすくなります。
また、運動の最中や直後にも血糖値は下がります。

DMでは、GLUТ4の細胞表面への移動の効率が悪く、血糖値が下がりにくい理由の一つとなっていますが、筋肉の収縮によって、GLUТ4がインスリンの働きを介さずに細胞の表面に移動することが報告されています。したがって、インスリン分泌の悪いDMでも、筋肉運動によってブドウ糖が筋肉に取り込まれ、効率よく血糖値が下がるのです。

  • 誤った運動はマイナス効果を呼ぶことも

運動時のエネルギー代謝は、インスリン、グルカゴン、カテコールアミンなどのホルモンの相互作用を中心として、自律神経の働きや各臓器のホルモンに対する反応などによって調節されています。
しかし、DM患者の場合には、必ずしもこのメカニズムがうまく働いてくれません。

DM患者では、インスリンが欠乏しているときに運動をすると、ケトーシスを起こしたり、肝臓からのブドウ糖の放出が亢進し、筋肉でのブドウ糖利用が阻害され、血糖値はけっして低下しません。

反対にインスリン作用が過剰なときに運動をすると、筋肉でのブドウ糖のとり込みがなおさら亢進して、同時に肝臓でのブドウ糖の放出が抑制されるため、低血糖を起こしやすくなります。

また、激しい運動をした場合には、カテコールアミン、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモンなどが過剰に分泌されるため、それに反応して肝臓でのブドウ糖の放出が著しく亢進し、運動中や運動後に、かえって血糖値が上昇するという結果を呼ぶことになります。

このように、運動の急性効果は、運動の仕方によって、DMの治療上、プラスにもマイナスにもなり得ます。
運動療法は、専門家の適切な指導のもとに、病状に合わせて適切に行われることが大切です。

  • 運動による血糖低下作用は、半日から1日は持続する

運動による筋肉細胞へのブドウ糖とり込み量の増大は、運動中だけでなく、運動後も、しばらくの間、持続します。(効果のキャリーオーバー現象)

IDDM患者が運動終了後10数時間たってからでも低血糖を起こす場合があるのも、運動の効果のキャリーオーバーによるものです。

運動療法の慢性効果(運動の継続による体質改善効果)

インスリン抵抗性を改善する効果

運動を継続して行うと、IDDM、NIDDMのいずれにおいても、インスリン抵抗性を改善し、治療効果を上げることがわかっています。

  1. 筋肉にみられる変化
    • 運動によって筋肉内の毛細血管床が増加する(循環がよくなる)
    • 運動を続けることによって筋肉が発達し、量が増すためにエネルギーの消費量が多くなる
    • 筋肉繊維の構成が変化して、エネルギーを消費しやすい状態になる
    • 筋肉細胞内の糖輸送担体(GLUT4)の数が増加し、その働きが活性化する
  2. 脂肪組織にみられる変化
    • NIDDM患者の多くは肥満を伴っています。特に内臓脂肪蓄積型の肥満は、インスリン抵抗性の原因となりやすいのです。
      近年の研究では、脂肪細胞から放出されるTNF−α(腫瘍壊死因子)や遊離脂肪酸が、筋肉や肝臓でのインスリン抵抗性を起こすことが推定されています。
      したがって、肥満を解消すること、すなわち過剰な脂肪を減らすことが、インスリン抵抗性の改善につながります。
    • 肥満の解消のためには、食事療法により摂取エネルギーを減らし、運動療法によりエネルギー利用を高め、全体としてエネルギー量をマイナスにします。
      食事量を減らすだけでは基礎代謝が低下するため、筋肉や骨の量(除脂肪体重)が減ってしまいますが、運動療法を併用すると、基礎代謝の低下が防止され、除脂肪体重も維持されます。
      運動は、皮下脂肪よりも内臓脂肪を減少させる効果が大きいことがわかっています。
  3. 耐糖能、血糖コントロール、脂質代謝を改善する効果
    • 長期にわたって運動療法を継続すると、インスリン抵抗性が改善され、その結果耐糖能(ブドウ糖を利用する能力)の改善がみられます。
      特に肥満型のNIDDM患者で、高インスリン血症を伴っていて、軽い耐糖能異常を示しているようなケースでは、継続的な運動を実行することによって、病状を改善することができます。
    • NIDDMの場合は、継続的に運動をすることによって空腹時血糖値やグリコヘモグロビン(HbA1c)値の低下がみられます。
  4. 脂質代謝異常を改善する効果
    • DM患者は脂質代謝異常を伴うこと、すなわち血漿中の中性脂肪値(トリグリセリド値)やLDLコレステロール値が高値で、HDLコレステロール値が低値であることが少なくありませんが、運動は運動筋でのリポタンパクリパーゼ(中性脂肪を分解する酵素)を活性化するため、血漿中の中性脂肪値を低下させ、さらにはHDLコレステロール値を上昇させます。
  5. 動脈硬化を予防する効果
    • DM患者は健康な人に比べて、若くして動脈硬化を発症することが多いのですが、これはDM患者は血糖値が高いことに加え、インスリン抵抗性とともに肥満や脂質代謝異常、高血圧、高インスリン血症などの、動脈硬化になりやすいリスクを背負っている場合が多いためです。
      運動はこれらのリスクを改善するため、動脈硬化の予防に役立つと考えられています。

インスリン依存型(IDDM)の人の運動療法

運動を継続して行うとインスリン抵抗性が改善されるため、体内で必要とされるインスリンの量を減らすことができます。
そのため、IDDMでは注射するインスリン製剤の量を減らすことができますが、空腹時血糖値やHbA1cなどの改善など、つまり血糖コントロールの改善は期待できません。

その理由としては、

  1. 運動することにより、皮下のインスリン吸収が変化し、予想外の血糖変動をすること
  2. 運動時の血糖の変動が、インスリン補充状態によって異なること
  3. 運動によって起こる低血糖に対する恐れから、摂取エネルギー量を増加させやすいこと

などがあげられます。

IDDMの場合は、血糖コントロール改善を目的とするのではなく、インスリン注射の減量、心肺機能の改善、精神面での好影響、社会との良好なかかわりなどの点から運動療法をとり入れていくことがよいと思われます。

最近の研究では、運動療法をしているIDDM患者のほうが、運動療法をしていない患者に比べ、寿命が長いことが示されています。

運動の糖尿病予防効果

運動はまた、糖尿病になりやすい状態にある人を糖尿病から予防する効果もあります。
予防効果の点では運動量が多いほうが高いようですが、たとえ週に1回の運動であっても効果があることが確かめられています。
境界型糖尿病といわれている人や、肥満の人、高血圧の人、家族に糖尿病の患者がいる人など、糖尿病発症のリスクが高い人は、食事上の注意はもとより、十分な運動を生活習慣にとり入れておきましょう。

 

 

運動療法は医師の許可を得てから  
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次のような場合は許可されない場合があります。

  • 空腹時血糖値が300を超えているような場合・・・血糖値をさらに上昇させることもあます。
  • 糖尿病性網膜症が進んでいる場合・・・網膜出血の危険などがあります。(眼科医と相談)
  • 糖尿病性腎症によるむくみや高血圧があり、血清クレアチニン値が上昇している場合
  • 関節に障害がある場合
  • 足に傷がある場合
  • 慢性心不全などがある場合

どんな運動をどれくらい行うのか  
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筋肉の動きが大きい運動を、少なくとも週5日以上続けましょう。
運動の血糖改善効果は、運動開始後、7日から14日ぐらいであらわれますが、運動を3日以上継続して休むと、今まで蓄積されてきた運動効果が失われます。したがって、週1回のゴルフは、DMの運動療法としてはあまり有効ではありません。
運動は、
毎日継続してこそ治療に役立つのです。

ウォーキング(速歩)、水中歩行、水泳、自転車エルゴメーターなど、有酸素運動をしましょう。激しい運動は逆効果です。また、優劣を競う運動は無理をしやすいため、好ましくありません。

運動中の低血糖に注意

インスリンや血糖降下薬を使用している人は、運動中や運動後に低血糖を起こす恐れがありますので、注意が必要です。
また、食前の運動も低血糖を起こす恐れがありますので、必ず食後に運動してください。
また、インスリン注射は、運動前は腹部にするのが原則です。腕や太腿に注射すると、運動によってインスリンの吸収が促進され、急激に血中インスリン値が上昇して、低血糖を引き起こすことがあります。

いつもと違う特別な運動をしたり、運動時間が長くなるときは補食をとりましょう。
登山、ハイキング、スキーなど、長時間運動を継続して行うことがあらかじめわかっているときは、運動の前の食事を1〜2単位多めにとりましょう。
運動中には、低血糖を防ぐため、30分ごとにジュースやビスケットなどの補食(指示エネルギー量以外で、低血糖を予防するためにとる食べ物)をとります。水分もこまめにとり、脱水に注意します。

また、運動による血糖値の低下は、運動を終えてから数時間後でも起こることがあります。運動をするときは、ペットシュガーやブドウ糖などを常に用意しておき、低血糖状態が予測されたら、ただちにとるようにします。

 

歩け! 歩け!  
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運動強度が適切で、かつ手軽で、お金もかからず、長続きする運動は、ウォーキング(速歩)です。
ぶらぶら歩きでは効果がありません。1分間に70〜90mの速歩を毎食後に20〜30分行うと、1日で合計60〜90分の歩行量となります。
運動量は1日の通算で構いませんが、1回の持続時間は最低でも15分としてください。1回の持続時間があまり短いと、通算時間が長くとも効果が期待できません。
1回の持続時間は1時間以内が安全です。

食後30分から1時間ぐらいの血糖が上がる時間帯に開始するのが効果的です。

効果的な運動の強さは、「人と話しながら続けられる程度」です。
運動の強度は脈拍数と比例するので、1分間の心拍数を目安として運動量をモニターします。(秒針付の時計で6秒間、手首での脈拍を数え、その数を10倍する。又は10秒間で6倍)
強度の割合は、その人の
最大運動強度の6割が最適であるといわれます。

年齢に見合う自覚的運動強度のとらえ方と一般的目安
(個人の体力によって多少異なる)

強度の
割合
1分間あたりの脈拍数(10秒間の脈拍数) 主観的運動強度
60歳代 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 感じ方 体の様子
100% 155
(26)
165
(28)
175
(29)
185
(31)
190
(32)
最高にきつい 体全体が苦しい。
90% 145
(24)
155
(26)
150
(25)
150
(25)
175
(29)
非常にきつい 無理。100%と差がないと感じる。
若干言葉が出る。息がつまる。
80% 135
(23)
145
(24)
150
(25)
160
(27)
165
(28)
きつい 続かない。やめたい。喉が渇く。
70% 125
(21)
135
(23)
140
(23)
145
(24)
150
(25)
ややきつい どこまで続くか不安。緊張。汗びっしょり。
60% 120
(20)
125
(21)
130
(22)
135
(23)
135
(23)
やや楽である いつまでも続けられる。充実感。汗が出る。
50% 110
(18)
110
(18)
105
(17)
120
(20)
125
(21)
楽である 汗が出るか出ないか。
フォームが気になる。
40% 100
(17)
100
(17)
105
(17)
110
(18)
110
(18)
非常に楽である 楽しく、気持ちが物足りない。
30% 90
(15)
90
(15)
90
(15)
90
(15)
90
(15)
最高に楽である 動いたほうが楽。まるで物足りない。
20% 80
(13)
80
(13)
75
(12)
75
(12)
75
(12)
   

運動中に脈拍数を測るときは、時間がかかると測定中に脈拍数が下がってしまうので、運動直後の10秒間を測り、6倍して1分間の脈拍数を求めるとよい。

運動療法・・・私の場合  
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私は主にウォーキングをしています。

最初は家を中心に円を描くように近所の道を歩いていましたが、今は片道15分くらいのところに目的地を設定して、往復することにしています。
家を中心に近くを円を描くコースだと、適当に切り上げてしまうこともありますが、家から離れていくコースでは、嫌でも同じ距離を戻らなくてはなりません。私にはこのほうが向いているようです。
目的地には、それぞれ商店街やスーパー、書店などを設定しています。ついでに買い物もすませられるという寸法です。その代わり、帰り道は大荷物をえっちらおっちら運ぶことになりますが。

腰に万歩計、足元はウォーキングシューズ、夏は日除け帽子と汗拭き用タオルを追加します。そして、歩く時はいつも七つ道具の入った小型のショルダーを斜め掛け(ひったくり防止)していきます。

  • 低血糖に備えて缶ジュース、ペットシュガー、補食
  • 糖尿病手帳
  • ポケベル代わりのPHS
  • 買い物用の小銭
  • テレホンカード
  • 軽量の折畳傘
  • 買い物に備えてリュックになる手提げ袋

毎晩、歩いた歩数をヴァーチャル・ウォーキングのサイトとエクセルの血糖値記録表に記録しています。