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嘔吐下痢症 ノロウイルス どうすればいい? (2013.1.23 更新)

ーー ノロウイルスによる小児の嘔吐下痢症について ーー

吐いてから今これを見ている方は最後のまとめをどうぞ

突然吐いた! → 受診して下さい。でもその前に・・・その後でも

 嘔吐の原因はいろいろあります。胃腸が悪くて吐く、咳がひどくて吐く、頭痛がひどくて吐く、急に熱がでて吐く、喘息で吐く、未熟なために吐く(乳児期の溢乳など)、薬がいやで吐くなどさまざまな理由があり、原因によって治療薬も異なります。ここでは、熱もなく突然吐くという症状から起こることが多く小児に最も多く流行する嘔吐下痢症について説明します。



嘔吐下痢症って?原因は?


 ウイルスが原因でかぜと同じく移る病気で感染性胃腸炎の一つです。小児科では嘔吐下痢症と呼ばれることが多く、冬の前半はノロウイルス(過去にSRSV、ノーウォーク様ウイルスなどと呼ばれていたものとほぼ同じもの)が多く、症状の重いロタウイルスは後半に多い傾向があります。ノロウイルスは介護施設や老人ホームで集団感染が起こり有名になりましたが、食中毒としても一年中認められ、生ガキの食中毒が有名です。小児では昔から毎年冬になると家族内、託児所、保育園、幼稚園などで人から人へ感染を起こして流行し、「おなかのかぜ」としてよく認められる病気です。潜伏期は1〜2日ほどで、文字通り吐いたり下痢したりする胃腸炎ですが、最初が最も状態が悪く、ぐったりして、顔色が悪くなり、おなかを痛がったり吐いたりします。ノロウイルスの場合、多くは熱がないか微熱程度で、数日から1週間程度で治癒します。


もっと詳しく! どうすればいい?(ノロウイルスが原因の場合)

※以下に書かれた回数、時間、症状は平均的な目安であり、個人差があります。

 数時間前まで元気で食欲もあったのに、突然、顔色が悪くなり熱もなく嘔吐が始まるパターンが多く見られます。発症(嘔吐)直前の食欲は低下もあれば、逆に亢進していることもあり、実際に嘔吐が始まる前の食事を食べ過ぎていることもあります。嘔吐が始まった時、腸は動きが止まってしまって動かない状態(機能性麻痺性イレウス)で自分の胃液すら流れません。微熱(時に高熱)や、腹痛や下痢もあります。下痢は数日前から認める場合や嘔吐が治まってから認めるなどのバリエーションがあります。 嘔吐は食べたものを大量に吐き、回数が多い場合はしだいに黄色い胃液が主となります。発症から3〜7時間程度は周期的に腹痛や吐き気が襲ってきて、数回(1〜10回程度)吐きます。この間は、最も吐き気が強く、吐き気止めの薬を使っても症状はなかなか改善しません。最初の6時間ほどは、水分を与えても全部吐いてしまいますので、絶飲食とし、何も与えないようにして様子を見ます。この時点での脱水はごく軽度で気にするほどではありません。(最初は何も与えないという指導はしばしば省略されることがありますが、嘔吐して間もない場合はとても大事なことです)
 6時間程度経過すると、嘔吐はおさまってきます。ぐったりする一番の原因は、脱水よりも吐き気や腹痛による所が大きいので、吐き気がおさまると大半は元気が戻ってきて顔色も改善します。腸の動きは自分の胃液ならなんとか流れるくらいに回復していますので、ここから水分をごく少量ずつ様子を見て与えます。吐き気止めの薬は座薬からシロップや粉薬に変更できます。初めのうちは固形物は与えてはいけません。脱水は軽度なので、水分としては、処方でもらうことができるソリタT顆粒(乳児も可)、アクアライト(乳児も可)、麦茶、リンゴ果汁などで結構です。乳児なら母乳かやや薄め(70-80%)に作ったミルクでも良いでしょう。軽症では理想的な飲料に固執する必要はありません。中等度以上の脱水では大塚製薬のOS-1というORS(経口補水飲料)がよいでしょう。幼児なら、5〜10cc程度から始めましょう。体温と同じ程度に暖めたものが最も刺激が少なくて良いのですが、室温でもダメということはありません。なかには一気飲みしてしまうお子さんもおられますが、水分を取るペースが速いとまた吐いてしまいますので、最初はあせらずに分けて与えることがポイントです。母乳の場合はこのようにすることは難しいので、最初は吐かないように短時間で授乳をやめて、徐々に多く与えるようにしましょう。少々の試行錯誤はかまいません。深夜/早朝でよく眠っていれば、起きてから水分を与えてもかまいません。でも起きてすぐの一気飲みは避けましょう。朝の胃腸は敏感です。
 12〜24時間ほど経過して、食べ物を欲しがるようなら固形物を与えてみます。ポイントは柔らかくて消化の良いもの(流動食)を少量から始めることです。はじめはすりおろしたリンゴ、ポタージュスープ、葛湯、おかゆなどのやわらかいもの(噛まなくてよいもの・箸よりスプーンの方が食べやすいようなもの、柑橘系はダメ)が良いでしょう。次に、よく煮込んだうどんやそうめんなども胃腸をスムースに通過しやすく、回復期に合う食べ物です。初めのうちは食べる量を食欲の半分ぐらいにおさえて分けて与えてみるようにしてみましょう。食事が順調なら吐き気止めは必要ありません。普通の食事には2〜5日かけて戻して行きましょう。おなかの動きは3−7日ほどで回復します。すぐに元気になることもありますが、見た目(元気になったこと)と腸の回復とはズレがありますので気をつけましょう。12時間以上たっても嘔吐や腹痛を繰り返し認めるとき、ノロウイルスの場合は、多くは飲み物の量が多いかペースが早い、もしくは食べ物が不適切であることが原因です。

※ロタウイルス(ノロウイルスではありません)ではこれより症状が重く注意が必要です。嘔吐・食欲不振も長引き、下痢も量が多く頻回におこり、熱も高く倦怠感が目立っておりなかなか元気になりません。発症2〜3日目で点滴が必要なことも少なくありません。特に初めのうち(半日ほど)は区別がつきにくいため、嘔吐・食欲不振が続いて下痢も激しい場合はこまめに通院して診察を受けましょう。なお、白色便は全てに認められるものではなく、3人に1人程度です。便を使ったロタウイルスの検査があり、当クリニックでも行っていますが、流行中の場合、半日ほど経過していて症状が典型的なら、ノロウイルスとは診察で鑑別可能です。



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この表は最も多く観察される経過を図にしたものです。症状はウイルスや個人差で異なる場合もあります。

水分摂取の目安(2008.3.8 乳幼児向けから幼児向けに変更しています)
 以下の表は「幼児ではどのくらい与えるか」という時の参考にしてください。学童だとこの2倍でも良いでしょう。「はじめは少しずつから」という説明では受け取り方が様々なので表にしてみました。覚えやすいように「1時間あたり10ml増」にしています。(一般的なコップで1cm入れると15cc程度)実際はウイルスの種類でも違ってきますし個人差もかなり大きいのです。なるべく多くの方が失敗しないようにと考えて作成したもので、すべての人に合う最適な量というわけではありませんので、厳密に守る必要はありません。はじめはこれぐらい慎重にとお考えください。

幼児の場合の目安(学童なら体重を考慮して以下の2倍程度でも良いでしょう)
最初の嘔吐から(時間) 6 7 8 9 10 11 12
飲み始めから(時間) 0 1 2 3 4 5 6
1時間あたりの投与量(ml) 10 20 30 40 50 60 70
累積量(ml) 10 30 60 100 150 210 280

 上記の量は一度に与えるのではなく、初めのうちは一口ずつ分けて与えましょう。1時間あたり40〜70mlが飲めるようになったら、あとは飲みたいだけ飲ませてみる(self demand)ようにしてみても良いでしょう。途中で嘔吐した時は2〜3時間ほど待って10ml/回程度から始めましょう。
6時間後であっても嘔吐が治まっていないときは水分補給ができないこともあります。この場合は、絶飲食で最後の嘔気嘔吐から2〜3時間症状が改善していることを水分を始める目安にしましょう。
与えすぎによる嘔吐とは混同しないことが大事です。適切に対応しても嘔吐が続く場合は医療機関を受診しましょう。


どうして移るの?予防は? (保育園や幼稚園の関係者の皆様へ)

 発病した子供の唾液、吐物、下痢便の中にウイルスがいて、これが原因で感染します。嘔吐で発症が明らかとなることが多いため、集団内で蔓延します。お漏らしするほどの下痢の場合やおむつからはみ出てくる場合も同じく感染源となります。便が出たら早めにおむつ交換する(感染源は早く取り除く)方が良いでしょう。吐いた後の迅速な次亜塩素酸ナトリウム(0.02%〜1%)による消毒、吐物の後始末時やおむつ交換後の使い捨て手袋の使用と念入りな手洗いが重要です。市販の塩素系漂白剤は、次亜塩素酸ナトリウムをほぼ5〜6% (50000〜60000ppm)含んでおり、ノロウイルスの不活化に利用出来ます。(成分表示の確認が必要です)食べ物の場合は、85度以上で1分間の加熱が有効とされています。次亜塩素酸ナトリウムによる消毒に適した濃度は、フローリングでは200ppm(0.02%)、吐物や下痢便のしみ込んだじゅうたんなどでは1000ppm(0.1%)-5000ppm(0.5%)程度必要でしょう。また、フローリングでもしぼった雑巾ではダメで、十分に浸すように使用することも重要です。酸性物質があると塩素が発生しますので注意が必要です。ちなみに200ppm(0.02%)〜500ppm(0.05%)程度なら一時的に皮膚に付着してもほとんど問題ありません。誤って飲み込んだ場合は牛乳を飲ませましょう。原液が皮膚に付着したら速やかに水で洗い流します。もし園児が原液を飲んだ場合は救急車で小児の入院が可能な病院へ直行しましょう。でもそういうことがないように冷暗所で厳重に管理して下さい。


脱水になるかも!

 脱水が急速に進行するのは、量の多い水様下痢が続くにもかかわらず、嘔吐が数日程度長引いて水分補給ができないような場合です。冬の後半に流行するロタウイルスの嘔吐下痢症ではしばしばこのような状態になります。(ノロウイルスによる嘔吐下痢症では多くは嘔吐が治まってからの水分補給のみで十分です)泣いてもあまり涙が出てこなかったら脱水、口の中が乾燥気味ならかなり脱水が進んでいます。脱水のために下痢が一時的に軽快(偽の回復)することもあります。この場合は点滴または入院治療が必要です。



まとめ

  • 潜伏期は1〜2日ほど。
  • 冬に突然吐く時は嘔吐下痢症が最も多い。
  • 吐き気があるのが一番つらい。
  • 吐き始めてから6時間程度は何も与えない。
    (この間の脱水は軽度で心配ない。与えても吐くだけ。)
  • 水分摂取開始のもう一つの目安は吐気が止まって3時間後。
  • のどが渇いてどうしてもほしがるときはスプーン一杯で乗り切る。
  • 吐き気が落ち着いたら、少量の水分を少しずつ与える。
    飲み過ぎているといつまでもだらだらと吐いてしまう。
  • 食べ物は水分が十分取れるようになってから柔らかくて消化の良いものを少しずつから与える。
  • 12〜18時間後も吐いたりおなかを痛がる場合は、飲み方や食べ方が不適切なことが多い。
    (6〜12時間以降の嘔吐や腹痛は食餌療法が適切にできているかどうかの評価と考える)
  • 元気があれば大丈夫。(点滴が必要な元気な脱水の子などいない)
  • 水分と固形物を上手に与えれば多くはすぐに元気になり、3~7日で徐々に回復する。
  • 嘔吐・腹痛・下痢・発熱が続く時はもう一度受診を。
  • 市販の家庭用漂白剤のうち、次亜塩素酸ナトリウムを5〜6%含む塩素系なら希釈して消毒が可能。



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