MACD


<MACDライン>



上の図は、赤線が株価(サインカーブとした)、青線が 12日指数平滑平均、緑線が 26日指数平滑平均である。

このとき、2本の平滑平均の差、すなわち、
12日指数平滑平均値 − 26日指数平滑平均値
のグラフを 「MACDライン」 という。
先の図では下の方に紺色の線で描いた。

12日と 26日はひとつの例であり、もちろん自由に選んでよい。
以下、短期線を n日指数平滑平均、長期線を N日指数平滑平均とする。


<そのままの意味>



MACDラインがゼロになるのは、2本の平均線が交叉するときである。
上の図に示したとおり、“基準線” として描いた赤い横線(MACDラインがゼロの位置) と MACDラインが交わるのは、ゴールデン・クロス(図中の G.C.)かデッド・クロス(図中の D.C.)が起こっているときになる。

また、MACDラインの天・底は、2本の平均線の乖離幅が最大になったときに現れることになる。


MACDとは、Moving Average Convergence Divergence の略である。

2本の移動平均線(Moving Average)が、合流(Convergence)したり、離れ(Divergence)ていったりする具合を指標化しているので、こう命名されたようだ。

MACD は、1970年代に Gerald Appel によって確立された手法らしい。
ただし、このページの終わりの方に出てくる MACDヒストグラムは、1986年に Thomas Aspray によって開発された指標である。


<勾配的意味>



上の図は、先ほどの図に、tec_macd04.gif を書き加えたもの。

この tec_macd04.gif は、ゴールデン・クロス、デッド・クロスの所をピッタリ通過し、そこでちょうど極小・極大になっているように見える。これは、偶然ではないことを示そう。


ここで、前に示した公式の出番となる。
あの公式に、s = (N-1)/(N+1)、r = (n-1)/(n+1) を代入し整理すると次のようになる。
1番目の式は、 が、En と EN を、(N-1):(n-1) に外分した点として図示できることを示している。
これより、En と EN が一致するときは(すなわち、ゴールデン・クロスやデッド・クロスのときは) もその点を通ることがわかる。

そのとき、2番目の式より、Δ = 0 なので、 の傾きがゼロ、すなわち、極大・極小になることもわかる。


さて、MACDラインを M で表すことにすると、M(0) = En[P](0) - EN[P](0) である。
よって、2番目の式から、次の式が成立。
比例定数がつくものの、本質的に、
の傾き = MACDライン
ということになる。

まとめると次のようになる。
は、En と EN の交点で極大・極小になるような平均線であり、MACDラインはその傾きを表している。


なお、MACDラインの天・底は、ΔM = 0 を意味する。
これは Δ2 = 0 と同値なので、 の変曲点で起こることになる。


<速度的意味>

ΔP(i) = P(i) - P(i+1) を、株価の速度とみて V(i) と書くことにする。
また、 を計算する際の係数を f(i) とおく。
r = (n-1)/(n+1)、s = (N-1)/(N+1) とおいて、f(i) を明示したのが次の式。

このとき、MACDラインは以下のように書ける。
頭の (N-n)/2 を除くと、これは、速度の平均である。

f(i) のグラフは、右上図のようになる(N = 26、n = 12 とした)。
少し過去の所にウエイトのピークがあるのがやや不自然ではある。
このことについて、何かうまい解釈があるのかよくわからない。

以下のような簡単なケースでは、「MACDライン=速度」 という理解で十分なようである。



右図は、途中から株価が一定の速度で下落する場合。

茶色の点線は、その速度に対応するMACDラインの値。

このまま一定の速度で下落し続ければ、MACDラインは茶色の線とほぼ一致するようになる。

途中で下落のが止まったので、MACDラインは、ゼロに戻っている(厳密にはゼロを漸近線としている)




これは、一定の速度で下落した後、一定の速度で上昇した場合。

茶色の点線は、それぞれの速度に相当するMACDラインの値である。





これは、株価が放物線状に下落する場合。

放物線は、加速度が一定なので、MACDラインは、ほぼ直線的に下げている。

厳密には、この加速度に相当する傾きを持つ直線が漸近線になる。


<数式的意味>

r = (n-1)/(n+1)、s = (N-1)/(N+1) とおくと、M = Er[P] - Es[P] である。
これに、Δ を作用させたのが次の式。

基本方程式を再掲すると、
である。これを (1) に適用して、
を得る。この式に Δ を作用させたのが次の式。
さて、(2)、(3) から、P を消去すると、
となる。


(1)、(4)、(5) から、ΔEs[P] と ΔEr[P] を消去し、再び N、n を用いて整理することで、次式を得る。
これが、株価とMACDラインを直接結び付ける差分方程式である。
【注】 もっとスマートに導けるのだろうが、方法がわからなかった。
後記:わかった。見たい人はここをクリック

ある時点から、株価 P(i) が、k次の多項式で与えられたとする。
差分は次数をひとつ下げる性質があるので、ΔP(i) は、(k-1)次式。
このとき、上の差分方程式を満たす解のひとつとして M0(i) を (k-1)次式としてとれることは明らか。

そして、差分方程式の一般解は、次式で与えられる。
定数 A、B は、初期条件(すなわち、“ある時点” 以前の株価)から決まる。

時間の経過とともに i の値は小さくなるから、
は、次第に小さくなり、M(i) は、漸近的に M0(i) に近づいていくことになる。
【注】 もともと i は 「i日前」 を表していた。ここでは、i = 0 の基準日を決めておき 、そこから先の i<0 を許容して考えている。

<シグナルライン>

MACDラインの指数平滑平均をシグナルラインという。9日指数平滑平均がよく使われる。

下図は、このページの最初の図に、シグナルラインを追加したもの。

おそらく、これは、MACDラインから売買のポイントを探るため補助的に用いられているのだろう。
つまり、MACDラインの形状を分析するのが目的であり、それ以上の意味はないと思われる。

しかし、無理に意味を付けると次のようになるだろう。
MACDラインを表す M について k日指数平滑平均を取るとすると、次のようになる。
つまり、頭の比例定数を除くと、シグナルラインは株価の 「平均の平均の平均」 線の傾きを表している。
先の図には、その 「平均の平均の平均」 線を図示しておいた。


<MACDヒストグラム>

MACDラインとシグナルラインの差を棒グラフ状に図示したものをMACDヒストグラムという。
この差はわずかだから、差を何倍かして図示することになる。
下の図の赤線がMACDヒストグラム(差を3倍して描いた)


これも無理に解釈するなら次のようになる。

r = (k-1)/(k+1) として基本方程式を再掲したのが次の式(r ではなく k を使って表した)。
この式で、P のかわりに M を代入する。
すると、右辺のカッコ内は、M とその k日指数平滑平均の差だから、MACDヒストグラムそのものである。

よって、MACDヒストグラムを H で表すと、次のようになる。
Ek[M] はシグナルラインだから、先ほどの式を使って、
となる。

とみれば、 の2回差分であり、この平均線の凹凸を調べていることになる。
たとえば、この平均線の変曲点で H = 0 となる。

とみるなら、これは、株価の加速度の平均という意味になる。
ちなみに、この平均をとる際の係数を f(i) とおくと、右図のようになっている(N=26、n=12、k=9 とした)。


<周期>

上の方の図を見ると、株価が底を入れるのとほぼ同時に MACDラインが底を打っているように見える。
これは偶然である。
MACDラインの底は、上で述べたように、 の変曲点で起こる。
ところが、 は、株価の動きより遅れている。
その遅れとは、おおむね SFT であり、次のように計算される。

サインカーブは、変曲点から 1/4 周期のところで底を打つ。たまたま、上の図で使ったサインカーブの周期が SFT の値のほぼ4倍だったので、MACDラインの底が株価の底とほぼ同時になっていたのである。

実際の株価でも、周期がわかっているなら、このことから N や n の値を決めればうまくいくことになるが、それはナンセンスだろう。あらかじめ周期がわかっているなら、何も難しい方法など使わなくても儲けるのは簡単だと思う。


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