『The Mathematics of Money Management』 について


p.46

ここで示されている幾何平均の近似式は、Latane と Tuttle の論文でも使われているもの。


p.52

このページの下の方で、1.067^2 と 1.025^4 を比較しているのは変だと思う。
単に、1.067 と 1.025 を比べる以上の議論は不要に見えるが。


p.66

ここの議論が正しいのかよくわからない。
もっともらしく見えるけれど、数学的に正確な根拠があるかどうか…。


p.91

In so doing, you will have ended up selling your shares at a higher price than the average price over the next 24 months.

なんでだろ〜? この場合、売値は単純平均と同じになると思うが。


p.116

N(Z) = 1 - N(Z) というのは、プログラマー流の書き方か? 数学的には間違い。

あと、Y = 1/(1 + 2316419*ABS(Z)) とあるが、これは .2316419 の誤植。つまり、0.2316419 である。


p.117

… and doing away with the -Z provision (i.e., doing away with "If z < 0 then N(Z) = 1 - N(Z)").

そうすると、Z<0 では、「Z 以下になる確率」 を求めていることになる。
p.139 で実際にそういう意味で計算している。


p.128

この表、129番目のトレード結果が抜けている。平均と分散の値から逆算を試みたがうまくいかない。平均と分散に計算誤差があるか、ほかのトレード結果に誤植があるのだろう。


pp.136-137

確率を求めるところの説明がおかしい。これでは、確率そのものではなく、確率の累積になってしまう。


p.140

表の ASSOCIATED PROBABILITY のところが、確率そのものではなく、確率の累積になっている。
ラルフ・ビンスは、一貫してこの間違いをしている。「確率」 の総和が 7.9791… になっているのに、とくにおかしいとは思っていないらしい。

最適 f 値も、この間違った 「確率」 から計算している。


p.144

最適値を f = 0.744 としているが、これは、上記の間違いに基づくもの。
正しく計算すると、f = 0.51 〜 0.53 くらいになるはず。
正確に決まらないのは、Z = -3 に確率密度を割り当てる方法がいくつか考えられるため。


p.146

shrink = 0.5、stretch = 1.6 のとき、f = 0.262 になるとしているが、これも上記の間違いに基づくもの。
正しく計算すると、f = 0.16 〜 0.17 くらいになるはず。正確に決まらない理由は上に同じ。


p.151

式 (4.01) の初めの方は、
{(J % 2)*4-2}
とカッコが必要。p.152 の計算もカッコを付けるべき。


p.154

式 (4.04) は、KURT が偶数でないときを考えて、
Y = 1/(|X-LOC|^KURT+1)
と絶対値を付けるべき。p.156 で付けているが、この段階ですでに必要。


p.155

Figure 4-3 は、まちがい。グラフが右に移動すべきなのに、左に移動している。


p.157

式 (4.07) に sign(X) とあるのは、sign(X-LOC) の誤植と思われる。
そうでないと X = LOC で不連続になって不自然。
また、この式は、X = LOC では定義されない。その場合、C=1 にすることを断るのが正しい。

ところで、この式は、ラルフ・ビンスの発明なんだろうか? それとも、統計学でよく使われるもの?


p.164

表で、X = 0.0 のときの N'(X) の値が 1 になっているが、これはおかしい。0.9942699833 が正しいはず。
LOC = 0.02 なので、X = 0.02 なら N'(X) は 1 になる。

他の所の値は正しいのに、X = 0.0 のところだけ間違っているのは解せない。コンピュータで計算させる場合、ここだけミスが出るはずはないのに。


p.166

式 (4.12) は、C が X の「値」 なのか 「添え字」 なのかで混乱がある。

あと、どうして右辺で 「C まで」 と 「C-1 まで」 の和の平均を取るのか、よくわからない。統計学的にそうすべき根拠があるのかな?


p.168

SKEW を 0.01 刻みで調べて 0 としているが、正当なのか不明。SKEW の値がわずかに違うだけで、分布はかなり異なってくるし、最適 f 値への影響も大きいようだ。

一概には言えないが、最適 f 値に与える影響をみると、LOC が 0.01 変化するのと、SKEW が 0.0001 変化するのが同じくらいになることもある。

よって、SKEW については、他のパラメータよりも高い精度で求める必要があるかも知れない。


pp.168-169

計算手順を説明しているが、これも、「確率」 の代わりに 「確率の累積」 を用いているようだ。


p.169

f = 0.206 を最適値としているが、上記の間違いに基づいていると思う。ただし、この値を再現することはできなかったので、本当のところはわからない。ラルフ・ビンスの計算手順が少々不明。

正しく計算した場合の最適 f 値も、確定するのが困難。-3σ に確率密度を割り当てる方法がいくつか考えられ、それによって答えが大きく異なるため。


p.187

式 (4.18) では、最後の Σ の前に「/」の記号(わり算の記号)が抜けている。


pp.197-198

「損失に下限がない場合は破産の確率が1になる」 と主張しているようだが、厳密には正しくないと思う。
下限がない場合でも、損失が大きくなればなるほど、その発生確率が急速に小さくなっていくなら、破産の確率が1にならないこともあり得るはず。

まあ、これは、あげ足取りみたいなことだけれど。


p.205

The first is where we set the variable Z in Equation (3.01)

誤植。(3.01) → (3.21) だろう。


p.214

このあたりの数式は、1冊目と同じ誤りがあると思う。詳細は1冊目のところを参照。要するに、確率のかわりに確率の累積を使っているのがおかしい。

オプションについては、理論も実践もよく知らないので、はっきりしたことは言えないが、どうもラルフ・ビンスの言っていることに正当性があるとは思えない。


p.244

和の記号のところで、j = 1 + 1 とあるのは、j = i + 1 の誤植。


p.249

一番上の表の L1 と L2 の列は、なぜか、0.5 を掛けていない。
したがって、このまま計算すると 0.5*L1 と 0.5*L2 が求まることになる。
そして、p.257 の最後のところで 0.5 で割ることにより調整を行い L1 と L2 を求めている。

何故こんなまわりくどいことを事をするのか、よくわからないが。


p.251

一番下の注釈の最後、infinite とあるのは、finite だろう。


p.259

真ん中あたりに、L2 = δV/δM とあるのは、L2 = -δV/δM の誤植。


p.259

式 (6.06a) から V を計算しているが、ちょっと式をいじれば、
V = - (L1*E+L2)/2
が成り立つとわかるので、ここから計算する方が早そう。まあ、どうでもいいことだが。


p.263

下の方で、いきなり、S という記号がでてきて面食らう。
Σ Xi を S とおいているらしいが、p.259 では M だった。


p.267

Figure 7-1 は不正確な図に見える。
efficient frontier は、通常、図の左下の角 (0, 1) を通らないと思う。


p.268

横軸を V としている所があるが、ここでは標準偏差にしないと意味が通らない。
p.272 あたりでは横軸を分散にしている。そのときどきで都合のよい方を使っていて、わかりにくい。


p.272

式 (7.06a) の根拠が示されていない。前後の文脈からみても、あまりに唐突。以下のようなことではないかと思うのだが、真相は不明。ここは明らかに説明不足であり、本書の中で、もっとも記述が不親切なところだと思う。

無リスク資産を含めて考える(そうでないとうまく行かないと思う)。無リスク資産の金利を Rf とし、E = AHPR - 1 とおく。
この本では幾何平均の近似値として次式が使われている。
 … (1)
そして、(1) を最大にする条件を考えると次の式が成立する(導出は難しくない)。
 … (2)
ところが、式 (7.06a) は、V = E を主張している。これは、(2) で、Rf ≒ 0 と近似したうえ、E についての2次の項を落としているのだろうか? 
ちなみに、この本で (7.06a) を使うのは Rf = 0 の場合である(p.279 の non-interest-bearing cash を導入して以降は、実質的に、無リスク資産の金利をゼロとして考えているのと同じ)。
しかし、Rf = 0 としても、V = E は正確には成立していないはず。おそらく、(7.06a) は近似式なのだろう。


なお、幾何平均の近似として、次式(ここで示した)を使うと話がスッキリする。
 … (3)
(3) を最大にする条件を考えると次の式が成立する(これも導出は難しくない)。
 … (4)
ここで Rf = 0 を採用すれば、V = E が正確に成り立つ。


p.273

Geometrical optimal portfolio is one where a line drawn from (0,0), with slope 1, intersects the AHPR efficient frontier.

これは、横軸を分散 V、縦軸を E とした場合の話だろう。ちゃんと図に書き入れて欲しいものだ。


p.277

Figure 7-5 で GHPR に対して直線を引いているのは、誤りだろう。意味をなさないはず。
直線を引いても意味はないので、このページの最後のあたりから次ページの初めにかけての議論はおかしいと思う。

また、式 (7.11) の P は、P^2 の間違い。標準偏差ではなく、分散だから。


p.279

Savings Account の 0.03014%は、3.014%の誤り。パーセントに直すとき 100倍するのを忘れたらしい。

しかし、そこを直したとしても、ここの解では正しくないと思う。
ラルフ・ビンスは、式 (7.06a) の E = V から解を求めているが、ここの問題では、Savings Account の金利が高いため、E = V を使うのは無理である。先に述べたように、式 (7.06a) は、無リスク資産の金利がゼロというようなケースでないと誤差が大きい。

そもそも、このページで説明されているような、iteration によって解を求める必要はない。
無リスク資産があるので効率的フロンティアは直線であり、接点ポートフォリオを求めてしまえば、あとの計算は簡単かつ直接的にできる。

幾何平均の近似式として次の2つが考えられる。
 … (1)

 … (2)
(1) を使うなら、これを最大にするポートフォリオは、下表のようになる。
Toxico10.628%
Incubeast10.976%
LA Garb32.947%
Savings Account45.449%
(2) を最大にするポートフォリオなら下の表。
Toxico9.387%
Incubeast9.694%
LA Garb29.101%
Savings Account51.818%
いくら何でも p.279 の解は違いすぎるだろう。


p.280

ここから NIC を導入しているが、使わない方がわかりやすいと思う。

Toxico、Incubeast、LA Garb のウエイトを X1、X2、X3 として、NIC のウエイトはそのまま NIC で表す。
p.282 以降でやっていることは、
X1 + X2 + X3 + NIC = S
という条件を付けて、幾何平均を最大にするポートフォリオを求めている。
しかし、S は任意に大きく取れるわけだし、NIC は幾何平均(あるいはその近似式)に寄与しない。
ならば、何も拘束条件は付けずに、X1、X2、X3 を任意に動かして幾何平均を最大にしているのと同じことである。

そして、この本では、 E = V を幾何平均最大の条件としている。ここでは、NIC を使っているため無リスク資産の金利はゼロである。その場合、上の方で書いたように、 「E = V」 と 「E - V/2 の最大化」 は同値である。

結局、何も拘束を付けずに次の式を最大にすればよい(記号は第 6 章のもの)。
各 Xi での偏微分をゼロとおくと、簡単な連立1次方程式になる。
ここの例なら、
である。これを解けば p.282 の解が出てくる。この方が速くてわかりやすい。
要するに、金利をゼロとみなして計算しているだけである。


そして、金利をゼロにして計算する理由は、こういうことだろう。
横軸に標準偏差、縦軸に収益率をとったのが右図。
無リスク資産の金利を Rf とし、Toxico、Incubeast、LA Garb からなる効率的フロンティアを C とする。

現物で買うなら、Rf から C に接線を引くことになる。

いま、仮に、差金決済が認められているとする。つまり、証拠金ゼロで売買が可能。その場合、売買とは関係なく、常に総資産に対して金利 Rf がついてくる。

ならば、金利を無視して考えてから、最後に金利分だけ上乗せして E や σ を計算してもよい。
金利ゼロとみなしたとき、キャッシュを含めた効率的フロンティアは、図中の青線 L1 である。
そして、金利を上乗せしたのが、赤線 L2 である。証拠金ゼロで売買できる場合、この L2 が効率的フロンティアになる。

本来は、L2 で考えるべきなのだが、ラルフ・ビンスの場合、やっていることは E - V/2 の最大化なので、L1 上で考えても最終的には正しいポートフォリオ構成が求まってしまう(これは偶然であり、本当は L2 で考える方が好ましい)。

結局のところ、ラルフ・ビンスのいう unconstrained とは、差金決済ありという場合のポートフォリオ理論にすぎないと思う。


pp.283-284

ここで f$ に対する損益率を考えるとしているが、ちょっとおかしいと思う。

ここのページの記号を使って、おおざっぱに説明してみる。
普通に考えると、まず、次式を最大にする yi を求める。
そして、各証券を yi ×資金 だけ買うことになる。

一方、ラルフ・ビンスの手法は、次のようなものだと思われる。
まず、各証券の fi$ を求める。
つぎに、損益を fi$ に対する比で表す。つまり、xi/fi$ である。
各証券のウエイトを ti とすると、次式を最大にする ti を求める。
ti が決まると、各証券を、
資金÷(fi$/ti) = (ti/fi$) ×資金
だけ買うことになる。

しかし、これでは、yi の代わりに ti/fi$ を使っているだけであり、最終的な答えはまったく同じになる。つまり、ラルフ・ビンスのやっていることは無意味だと思う。

1冊目の本では、拘束条件があったため少し違いがあった(つまり、最初の式で Σ yi = 1 とするとの2番目の式で Σ ti = 1 とするのは異なる意味を持つ)。この本では、unconstrained として拘束条件を外したため、違いがなくなってしまったのである。


pp.288-289

ここで、ラグランジュ定数について、L1 = -2、L2 = 0 といっているが…。
L2 = 0 は、拘束を外したのだから当たり前。問題は、L1 = -2 である。

これは、E - V/2 を最大にする場合なら成立する。
なぜなら、
δ(E - V/2) = 0 → δE - δV/2 = 0 → δV/δE = -2
となるから。

どうも、この本では、幾何平均の近似式として 1 + E - V/2 を採用した方がスッキリすることが多いと思う。


p.289

式 (7.13) を近似式として与えているが、以下のようになることは簡単に示せる。
Rf を無リスク資産の金利とする。

(A) 現物株式などの場合。このときは、constrained で考える必要がある。

右図のような場合である。接点 T における収益率の平均と分散を E、V とする。

幾何平均の近似として、
… (1)
を使った場合は、
となる。この式は、Latane と Tuttle の論文にも書いてある。

近似として、
… (2)
を使うなら、
となる。これは、(7.13) と同じだし、ここで示した式とも同じ。

(B) 証拠金ゼロという場合。ラルフ・ビンスのいう unconstrained である。

右図の赤線が効率的フロンティア。青線との接点 T (これは先ほどの T とは異なる点である)における平均と分散を E、V とする。

近似として (1) を使った場合は、
となり、近似として (2) を使うと、
となる。


p.305

このページで説明されている scenario planning method によって資金配分を決めるのは、純理論的に考えると、少々奇妙なところがある。

いま、1回ごとの確率分布は正確にわかっているものとし、仮に 100回ごとに資金配分を決めるとする。1回ごとの確率分布がわかっているので、最適 f 値を使った場合における、100回後の最終損益の確率分布も計算できる。
その計算された確率分布に基づいて、scenario planning method を使うと、「すべての資金を active equity にするべき」 となる(これは簡単に証明できる)。つまり、初めに求めた最適 f 値をそのまま総資金に対して使えということで、まあ当然である(そうでなければ初めの最適 f 値が最適ではなかったことになり、理論的におかしい)。したがって、理屈っぽく考えると scenario planning method は意味をなさない。

scenario planning method が意味を持つのは、1回ごとに予想されている確率分布と、100回後の最終損益として予想されている確率分布に整合性がない場合のみなのである。


p.308

式 (8.02) は、ここの話と合っていないように見える。
この式は、P%を運用資金から完全に引き上げる場合には正しい。
しかし、P%を active → inactive と移すだけならこうはならないはず。

次ページの式 (8.03) についても同様。


p.316

式 (8.05) の fi と Wi の定義がよくわからない。

そもそも、式 (8.04a) の f というのは少しおかしいと思う。
ここは、f ではなく、p.289 などに出てくる q を使うところじゃないのか?
そうでないと、話が合わないような気がするが…。


p.321

式 (8.08) は意味不明。普通に考えれば、次のようになるはず。
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