| 本格ミステリ大賞 |
本格ミステリ作家クラブ(2000年に発足、綾辻さんも発起人の一人)が選出した、その年の本格ミステリ・ベスト1。数人の選考委員の合議によってではなく、全候補作を読んだクラブ会員の投票によって大賞作品を決めるのが特徴。
公式サイトは、こちら。
会員のアンケートを集計し、予選委員が候補作5作を選定(1月末)。会員は、候補作を全て読んだ上で選評を付けて投票する(締め切りは5月頃)。
公開開票式(5月中旬)で大賞決定。授賞式は6月中旬。
会員の選評はすべて季刊誌「GIALLO」(光文社)および公式サイトに掲載される。なお、賞の対象となるのは長編(または連作短編)。本格ミステリ短編のベストについては、大賞発表と同時期に刊行される『本格ミステリXX(年)』(講談社ノベルス)なるアンソロジーの収録作という形で選出される。
アンソロジーについては、こちらのページで。
(以下、( )内は候補作の刊行年。選考は刊行の翌年行われる)
第1回本格ミステリ大賞(刊行年は2000年/選考及び結果発表は2001年)
壷中の天国 倉知淳
評論・研究部門:日本ミステリー事典 権田萬治・新保博久
特別賞:鮎川哲也
最終候補作 |
予選候補作 |
(予選委員:執行部が兼任)
[感想]有効票は会員の約半数。もっと多くの人に投票してもらわないと、公平さに欠けるのではないかと思った。棄権票についても選評と併せて雑誌に掲載してほしかった(翌年から同一誌上に掲載)。
『奇術探偵〜』を「収録作の過半数が過去の作品だから」という理由で評価の対象から外した人が多かったのは、大変残念。「人ではなく作品を選ぶ」賞だったはずなのに‥。
その道何十年の巨匠と新人の作品を、同一の俎上に載せ、平等に評価することの難しさを感じた。
第2回本格ミステリ大賞(刊行年は2001年/選考及び結果発表は2002年)
ミステリ・オペラ 山田正紀
評論・研究部門:乱視読者の帰還 若島正
最終候補作 |
予選候補作 |
(予選委員:我孫子武丸、末國善己、千街晶之、野間美由紀、法月綸太郎)
[感想]『ミステリ・オペラ』ぶっちぎり。推理作家協会賞とW受賞と相成った。芦辺氏の『時の密室』(候補外)を推す声が多く、候補作を選定する難しさを感じた。
第3回本格ミステリ大賞(刊行年は2002年/選考及び結果発表は2003年)
オイディプス症候群 笠井潔
GOTH リストカット事件 乙一
評論・研究部門:探偵小説論序説 笠井潔
最終候補作:オイディプス症候群 笠井潔 (16票) |
予選候補作:アイルランドの薔薇 石持浅海 |
(予選委員:我孫子武丸、円堂都司昭、末國善己、野間美由紀、山田正紀)
[感想]読者サイドでは大賞受賞作(この時点では『GOTH』だけだった)を「意外」と感じた人が多かったようだ。現在の「本格」のスタンスを象徴するようで興味深くもあるが。ちなみにネット上の読者投票(有効得票数14)では、母数は少ないながら『聯愁殺』が過半数の支持を得てトップだったことを並記しておく。
有効投票数が相変わらず会員数の半数以下なのはどうしたものか。5/20追記。開票作業の不手際が見つかり、オイディプスも同時受賞という大どんでん返し。呆然。こんなことがあってよいのか。
第4回本格ミステリ大賞(刊行年は2003年/選考及び結果発表は2004年)
葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午
評論・研究部門:水面の星座 水底の宝石 千街晶之
特別賞:宇山日出臣・戸川安宣
最終候補作:赫い月照 谺健二 (10票) |
予選候補作:おさかな館 霞流一 |
(予選委員:浅羽莢子、円堂都司昭、笠井潔、川出正樹、山田正紀)
[感想]この年は、このミス、本ミス、協会賞、すべて『葉桜〜』一色だった(文春は2位)。本賞でも堂々の一位。短編集にとっては少々不利な感のある現システムの中で『スイス〜』が健闘。特に、自作がノミネートされている歌野さんが『スイス〜』に投票していたのは印象的だった。
第5回本格ミステリ大賞(刊行年は2004年/選考及び結果発表は2005年)
生首に聞いてみろ 法月綸太郎
評論・研究部門:天城一の密室犯罪学教程 天城一、日下三蔵編
最終候補作:暗黒館の殺人 綾辻行人 (13票) |
予選候補作:天城一の密室犯罪学教程 天城一 |
(予選委員:笠井潔、川出正樹、柴田よしき、千街晶之、山田正紀)
[感想]京都組の新刊本が立て続けに出て「惑星直列」と云われた2004年。「本ミス」「このミス」1位の『生首〜』が僅差で競り勝った。
この年から、開票式に読者10名をご招待という夢のような企画が始まる。
第6回本格ミステリ大賞(刊行年は2005年/選考及び結果発表は2006年)
容疑者Xの献身 東野圭吾
評論・研究部門:ニッポン硬貨の謎 北村薫
最終候補作:ゴーレムの檻 柄刀一 (7票) |
予選候補作:三百年の謎匣 芦辺拓(次点、追加候補) |
(予選委員:倉知淳、柴田よしき、杉江松恋、村上貴史、山田正紀)
決定した候補作者から候補辞退の申し入れがあったときを想定し、次点の作品を「追加候補」とした。
[感想]2005年は『容疑者Xの献身』一色であった(ベスト10三冠、直木賞、本格ミステリ大賞)。この作品は本格か?という論争も一部で起きたが、結果には影響しなかった(もっとも、開票時は五作品かなり接戦であった)。東野氏の「直木賞の選考委員が本格ミステリーを認めたことにもなるわけで」という言葉が印象的。
第7回本格ミステリ大賞(刊行年は2006年/選考及び結果発表は2007年)
シャドウ 道尾秀介
評論・研究部門:論理の蜘蛛の巣の中で 巽昌章
最終候補作:顔のない敵 石持浅海 (7票) |
予選候補作:綾辻行人(原作) 月館の殺人 |
(予選委員:黒崎緑、杉江松恋、辻真先、戸川安宣、村上貴史)戸川安宣委員は選考会欠席
[感想]候補作外の作品を評価する選評がいくつか見られたが、「本格」の捉え方が各人かなりばらつきのある現状を考えると、どの五作を選んでも不満は出るのだろう。その場合は、無言の棄権ではなく「該当作なし」という票を投じてほしい。
第8回本格ミステリ大賞(刊行年は2007年/選考及び結果発表は2008年)
女王国の城 有栖川有栖
評論・研究部門:探偵小説の論理学 小森健太朗
最終候補作:インシテミル 米澤穂信 (6票) |
予選候補作:愛川晶 道具屋殺人事件 |
(予選委員:黒崎緑、辻真先、法月綸太郎、山前譲、横井司)
[感想]15年ぶりの江神シリーズ第4長篇が、巷の予想通り大賞を受賞。ホラー風味を交えながら本格者をも唸らせる作品をコンスタントに発表し続ける三津田氏も健闘、今後が楽しみ。
第9回本格ミステリ大賞(刊行年は2008年/選考及び結果発表は2009年)
完全恋愛 牧薩次
評論・研究部門:「謎」の解像度 円堂都司昭
最終候補作:完全恋愛 牧薩次 (23票) |
予選候補作: |
(予選委員:有栖川有栖、近藤史恵、法月綸太郎、山前譲、横井司)
[感想]辻真先(牧薩次)・連城三紀彦、二人のベテランが存在感を見せつけた。後輩作家たちの希望の星となる活躍に、拍手。
ただ、「作家ではなく作品を選ぶ」という大元の前提(だと自分が思っていたもの)がいつの間にやら無効化している現状には、疑問を感じないでもない。既受賞作家へのハードルが高くなっていたり、選評で著者の以前の作品を引き合いに出したり。ダメとは云わないまでも、少々腑に落ちない。
(最終更新日 2009/07/26)
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