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渡邊さんが、事前に選考委員の子どもたちから提出された質問を読み上げ、乙一さんがそれに答える、合間に太田さんが言葉をはさむ、そんな感じで対談は進行しました。
【『銃とチョコレート』が生まれるまで】
渡:乙一さん、受賞おめでとうございます。賞をいただいた感想をお聞かせください。
乙:感想ですか‥‥。(訥々と、ゆっくりしゃべる乙一さん)この本を出した昨年は、僕が作家デビューして十年目に当たる年で。ずっと、小学校の図書館に置いてもらえるような本を出したいなあと思っていたので、そういう本がようやく出せて、こうやって賞もいただけて、本当に嬉しかったです。
渡:『銃とチョコレート』を書いたきっかけを教えてください。
乙:『銃とチョコレート』‥‥‥‥(沈黙が続き、会場思わずクスクス)、どこから話をしたらいいのか‥。
この本が出版される二、三年前に、講談社の宇山さんという編集者が声をかけてくださって。僕の好きな作家さん、綾辻行人さんや我孫子武丸さんが、よくあとがきに宇山さんのお話を書かれていて、それで僕も、作家でもなんでもなかった時代から宇山さんという方のお名前だけはうかがっていて。実際にその方にお声をかけていただいて、これはもう書くしかないと思いました。
渡:乙一さんの尊敬する作家さんは、という質問もあったんですが、今、お名前が挙がりました。綾辻さんや我孫子さん、そうした作家さんを生み出したのも、宇山さんだったわけですね。
太:編集者の仕事って、多分皆さんご存知ないと思うんですけど。
まず、作家さんに「こういうの書いてください」ってお願いに行く。その後、原稿が出来たら「面白かったですね。でももうちょっと、ここはこうしたほうが面白くなるかもしれませんよ」と云ったり云わなかったり。作家さんの本が無事に出るまで一緒に走る、伴走ランナーのような仕事です。宇山さんは本当にすごい編集者で、ここ十年、二十年のミステリー小説の流れを作った方です。
最初に宇山さんが乙さんに会いに行った時はたしか、僕や、僕の先輩の唐木という編集者も一緒で。新宿に中華を食べに行ったなあ、と今思い出しました。乙一さんが帰った後宇山さんが「あんなすごい才能に今まで声をかけなかったのは、宇山の不覚だね。もっと早く行けば良かった」と云ってましたね。
渡:ミステリーランドの企画の趣旨を聞いてからこの作品に仕上がるまで、まずどんなことを書こうか、というところから始まったと思うんですが。
乙:そうですね。「ミステリーランド」という言葉の響きが好きで。その響きから僕は、名探偵や怪盗、宝の地図なんかが出てくる少年の冒険物語を勝手に想像して、そういうのを書きたいなあと思って。
宮崎駿監督の『名探偵ホームズ』というアニメが好きで。ああいう感じの、推理とかはあんまりやらないんだけど、悪者と追いつ追われつする、そういうのを目指しました。
渡:『銃とチョコレート』というタイトルは、どうやって生まれたんですか。まず最初に(物語より前に)タイトルが生まれたんでしょうか。
乙:タイトルは、書き始める前から考えていました。『銃とチョコレート』っていう題名が出来たから、登場人物もチョコレートの名前にして。
渡:読んだ皆さんも、チョコレートメーカーの名前が多かったことに気づかれたと思います。これは、登場人物の名前を考えるのが大変だからだったとか。(会場、笑)
乙:インターネットでチョコレート店を検索して、使えそうなのを片っ端からリストアップして。小説に使った後で、初めてそのチョコレート店に行って、ああこんな店があったんだと感動して帰ってきたりもしました。
太:チョコレートは元々お好きだったんですか?
乙:大好きです。(この時ばかりは、乙一さん即答。会場、笑)
太:どこのチョコレートが?
乙:なんでも‥‥、味にはこだわらないので、コンビニで売ってる普通のチョコレートでも。
渡:このチョコに思い入れがあるからこの人物の名前に、というのは全くなくて、どんどん当てはめていったと。
乙:そうですね。この悪ガキは強そうな名前を付けようと思ったら、ドゥバイヨルってのがあったから、ちょうどいいやと持ってきて。まさかね、あんなに目立つ奴になるとは思わなかったですけど。
【ドゥバイヨルは、実は‥】
渡:ドゥバイヨルは、もしかしたら物語の途中で消えていく運命だったかもしれなかったと、うかがっておりますが。
乙:はい。いつもならわりと、小説を書く時に僕は、きっちり最後まであらすじを作るほうなんですけど、今回は途中まで書いたところで、このドゥバイヨルってキャラクターは悪ガキで面白いから目立たせようと思って、途中でストーリーを変えて。大筋は変わってないですけど、ドゥバイヨルの活躍を多くしました。
渡:とある著名な作家さんは、「登場人物が息を吹き込まれたように、自分の想像していた以上に動き出すことがあって、そうやって動き出すととても小説が良くなる」とおっしゃっていましたが、乙一さんの今のお話もその通りですね。
乙:僕の小説の登場人物は、控えめで地味なほうだと思うんですけど。ライトノベルというジャンルだとよく、傍若無人で乱暴な主人公が出てくるんですけど、そういうキャラを一回は出したいなあと思って、今回ドゥバイヨル‥‥。いつかやってみたいなあと思っていたことが出来たので、良かったですね。
渡:物語に、なくてはならない存在になってますよね。
乙:どうやったら、登場人物って動き出すんですかね。(会場、笑)僕が訊きたいんですけど。
太:それは、作家さんそれぞれかな。作家さんが心底そのキャラクターのことを好きな時って、動き出す気がしますよね。
乙:ほんとにあの、西尾維新くんとか、すごい僕はうらやましくて。どうやったらあんなふうに、登場人物が動き回るのかなあって。
太:西尾さんは、登場人物好きだもんねえ、自分の(笑)。ああ、だから、ドゥバイヨルのことは結構、好きな部分多かったんじゃないですか、乙さんも。
乙:あこがれがあったのかも‥‥、乱暴なところに。
太:乱暴ですよね、人種差別主義者だし。
乙:いいのかなと思っちゃいましたね。(会場、笑)
渡:すごい気にされてましたよね、こんなに悪者でいいんでしょうかって。
乙:ドゥバイヨルってチョコレートのメーカーから、クレームが来てるんじゃないかって。(会場、笑)
渡:ここだけの話なんですけれども、悪者の何人かは、本当に苦情があったら困るなと思いまして、メーカーを特定しない名前に変えてみたところもありました。
乙:名前、変えましたね。
3に続く→
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