ふたりの時間

 


 

夕方、部活が終わり、怜と竜華は部室のソファに座っていた。

正確に言うと、竜華がソファに座り、怜は竜華にひざまくらをしてもらっていた。

いつものスタイルだ。

他の部員は皆もう帰宅している。

おそらく校内に残っているのも2人だけだ。

部活が終わった後にこうして2人でのんびり過ごすのが日課となっていた。

それは2人にとって、とても心地良い時間だった。

 

しばらく竜華の太ももの感触を楽しんでいた怜が突然起き上がる。

「竜華、そういえばな」

「なんや、どないしたん?」

「ウチの一巡先見えるやつあるやん?」

「うん」

「あれな、日常生活でも出来るようになったわ」

「えぇ!?マジで!?」

「マジやで」

得意気に言う怜。

そんな怜に、竜華が疑問を投げかける。

「でも、日常生活の一巡先ってなんやの?」

「その人の次の行動が見えるんや」

「そうなん?じゃあ私の次の行動見れるん?」

「見れるで。ええの?見るで?」

「ええよ」

怜は対局中の時のような鋭い目つきで竜華を見つめた。

が、次の瞬間、怜は竜華から目をそらし、仄かに頬を染めた。

「…………」

「怜?どないしたん?」

「…………」

「怜…?」

「………竜華、ウチにエロい事しようとしとるやろ」

「なっ…、そ、そんなんせえへんよっ」

「嘘や、しようとしとる。見えた」

「み、見えた、って、絶対嘘やろ!」

「疑うん?」

「いや、疑うっていうか、そんな事せえへんし」

と、竜華が言い終わる前に、怜はさらに顔を赤くして狼狽する。

「えっ…嘘やん…竜華…ホンマに…?」

「え?何が?」

「そ、そんな事までするん…?竜華、大胆やなぁ…」

「ちょっと待ちぃ!どんなんが見えとんの!?」

「え…えぇ…っ、嘘……そ、そんなんされたら…ウチ壊れてまうわ…っ」

「ちょ…何言うてんの!」

「さ、さすがにそんなの入れへんやろ!いやや…ウチ壊される…!!」

「怜!ちょっと!落ち着き!」

竜華は怜の肩を掴んでガクガクと揺さぶる。

それでやっと怜は元の世界に戻ってきた。

 

 

お茶を一口飲み、怜は深呼吸する。

「ふぅ、怖かったわー」」

「まったく、怜はたまに暴走するなぁ」

「いや、ホンマに見えたんやで」

「そんな訳あらへんやろ」

「…どうしてそう思うん?」

「え…だって、そんな…エロい事とかせえへんし」

竜華がそう言うと、怜は少し不満顔になる。

そして竜華のスカートの裾をつまんで、不貞腐れた様に言う。

「……せえへんの?」

「え?」

「なんで何も…せえへんの…?すればええやん…」

「へ……?怜…何言って…」

顔を真っ赤にしてそっぽを向く怜。

どうやら拗ねているようだ。

それを見て、竜華はピンときた。

「怜…もしかして…」

「…………」

「…それってエロい事してもええよ、って事なん?」

「………言わせんなアホ」

さらに顔を赤くして、消え入りそうな声で呟く怜。

そんな怜が可愛くて、竜華は怜を力いっぱい抱きしめる。

「竜華…苦しい…」

「あぁ…!ご、ごめんな…!」

「知らん…竜華のアホ…」

「ホンマごめんてー」

「竜華のアホ……鈍感……巨乳…」

褒め言葉が一つ混ざっていた。

すっかり拗ねてしまった怜を、竜華は優しく胸に抱きしめ、髪を撫でた。

柔らかい胸に包まれて、怜はゆっくりと目を閉じる。

少し機嫌を直したのか、怜は弱々しく竜華に抱きつく。

そして手をそのまま下へ。

「え…ちょっと…怜っ」

「…なに?」

「な、なんでお尻触るん」

不思議そうな顔をして首を傾げる怜。

「あかんの?」

「え……いや…あかん、やろ…?」

「ええやん、減るもんやなし」

「怜…エロ親父っぽいで…」

「ありがとう」

「いやいや、褒めてないし」

「そっか」

「ってかやっぱ次の行動が見えるのって嘘なんやろ?」

「あ、それはホンマやで」

「え?そうなん?」

「うん」

「ってか『それはホンマ』って、やっぱさっきのは嘘やったんやな…」

「ちなみに次、竜華はウチにチューするで」

「……………」

「……………」

頬を赤く染める怜。

竜華の頬はもっと赤い。

そう言われてしまったら仕方がない。

もう、するしかない。竜華は決心した。

竜華は緊張しながら、怜の頬に手を添える。

そして、キスをした。

初めての唇は予想してたよりずっと柔らかだった。

10秒ほどして、唇が離れる。

「竜華…」

「怜…」

見つめあう二人。

二人の間に甘い空気が漂う。

「竜華……、あかんで、女の子同士でチューなんてしたら」

「なっ…!?」

「…嘘や。照れ隠しや」

「もう…っ」

「な?次の行動当たったやろ?」

「怜は……ズルいわ…」

「竜華はちょろいなぁ」

「なっ……ちょろいってどういう意味や!」

「簡単って事や」

「な…っ」

「可愛いって事や」

「うっ…そ、そんなんでごまかされたりせえへんからな…っ」

「竜華可愛いで」

「と、怜の方が何倍もかわええわっ」

 

 

そしていつものひざまくらスタイルに戻る。

竜華の心臓は、ドキドキがおさまる気配がなかった。

それに比べ、怜はもう既にいつも通りに戻ったように見える。

竜華はなんだか悔しかった。

怜にももっとドキドキして欲しかった。

怜が不意につぶやく。

「あ、次見えた…」

「え……何?何が見えたん…?」

「竜華がおっぱい見せるわ」

「へ……?」

ジッと上目使いで竜華を見つめる怜。

その視線に、竜華はたじろぐ。

「おっぱい……」

「ちょ…何言うて…」

「あかんの…?」

「うっ……」

「あかんの…?」

(そんな顔でお願いされたら……ずるいわ…ホンマずるいわ…)

竜華は恥ずかしそうに制服をまくり、大きな胸を露出させる。

怜の視界いっぱいに竜華の胸が広がる。

しばらくそれをまじまじと観察する怜。

「…………」

「……恥ずかしくて…死にそうや…」

「…………」

「と、怜……もうええ…?」

「…ブラは?取らへんの?」

「っ………」

予想はしていた事だが、やはりそう来た。

だが、竜華が怜の言う事を拒否出来るはずもなく。

観念した竜華は、ぺろん、とブラをずらす。

触らずとも分かるほど柔らかい胸が顔を出した。

それを見て、怜が大げさに驚いてみせる。

「ほ、ホンマに見せたで、この子…」

「ちょ…怜が見せろ言うたんやん!」

「見せろ、なんて言うてへんでー」

と言いながら、怜はその胸に手を伸ばす。

「ん…っ」

「相変わらずやらかいなぁ。大きいなぁ」

「や…そんな……ん…っ、触ったら…っ…」

「何食べたらこんなになるん?」

「そ、そんなん知らん…っ、てかお風呂とかでいつも見てるやん……ん…んぁ…や…」

「そやったっけ?」

なおも触る、というか揉むのをやめない怜。

徐々に触る手つきにも熱が入る。

「もう…ん…ぁ…やぁ…」

「ホンマ大きいなぁ。手におさまらんわ。羨ましいわ」

「そんな…ん……怜のだって、…ぁ……可愛いで…」

「そんな事あらへんよ」

「ってか、そろそろ触るのやめへん…?」

「なんで?」

「だって、これ以上されたら…その……」

「……………」

「ちょ…なんで黙るん?」

怜は胸を触る手はそのままに、ゆっくりと胸に顔を近づけて、

はむ、と竜華の乳首を口に含んだ。

そして2度、3度と舌で先っぽを転がす。

「ん、ぁ…!や…あん…!」

さっきまでとは明らかに違う声色で、妙に色っぽい声を出す竜華。

その声を聞いて、怜は乳首から口を離し、顔を赤くして俯いた。

「……怜?」

「さ、さすがに…これは…ちょっと恥ずかしすぎるわ…」

「自分でしといて何言うてんねん!ってかそろそろ本気で止めっ」

「分かった」

と、言いつつ胸を触る手は止まらない。

「ん…あ…ちょ……んんっ…全然分かってへんやん!」

「だってやらかいから…」

「理由に…ぁ…!なってへん…!」

「……しゃーないなぁ。じゃあやめたるわ」

「…ハァハァ…もう」

「ごめんな、ちょっといじめすぎてもうたわ」

「もう、怜はホンマにまったく…」

「じゃあ次な」

その言葉に竜華の顔が引きつる。

「え……次って?……ちょ…もうええやろ…?」

「次はおめ…」

「それはあかん。あかんで」

「ちぇ」

「『ちぇ』やあらへん」

「……ってか今は見せられる状態やないもんな」

「え?」

「濡れとるやろ?」

「なっ………!?」

顔を真っ赤にして絶句する竜華。

口をぱくぱくさせてフリーズしている。

「図星やった?」

「で、デリカシーがない…!怜はデリカシーがないわ!普通そんなん口に出して言わんわ!」

「そう?ってか濡れてるのは否定せえへんのやな?」

「っ……そ、そんなん…あんなされたら、そうなるに決まっとるやん!悪い!?」

「逆ギレかー」

「ってか今の怜、ただのセクハラ親父やで!」

「そんな褒められると照れるわー」

「褒めてない!」

と、次の瞬間、怜がドアの方を振り返り言った。

「あ。…大変や」

「…どないしたん?」

竜華は次は何を言ってくるのかと、警戒しながら聞き返す。

だがそれは予想外の言葉だった。

「もうすぐセーラが来る」

「え?セーラもう帰ったで?」

「ホンマや。はよおっぱいしまった方がええで」

「え?え?」

「ほら、いつまでおっぱい出しとんねん」

「え?え?え?」

戸惑いながら乱れた制服を直す竜華。

ちょうど制服を直し終わった頃、ガラッと部室のドアが開いた。

帰ったはずのセーラが、本当に入ってきた。

「お、二人まだ残ってたん?」

「セーラ帰ったんちゃうん?」

「駅まで行ったんやけど、忘れ物に気付いて戻ってきたんや」

「そうなんや」

そんなやり取りの横で竜華が驚いたように怜を見る。

「え、怜……まさか本当に次の行動が見えて…?」

「え?だからそう言ってるやん」

「………っ」

「??」

話の見えないセーラだけが不思議そうな顔をしていた。

 

「ってかこんな時間まで二人で何してたん?」

「今なー、ウチ、竜華にエロい事されててん」

「なっ…!」

セーラの問いに、さらりと嘘をつく怜に驚愕を隠せない竜華。

それを聞いて、セーラは疑う事すらせずに笑う。

「竜華エロそうやもんなー」

「超エロかったで」

「やっぱりー?」

「もう引くくらいエロかったわ」

「さすが千里山のエロ担当やな」

「エロ魔人や」

本気か冗談か分からない事を言う二人。

「ちょ、なんなん、二人とも!」

 

 

 

「ほな、俺、帰るな」

しばらく話をした後で、セーラがそう言った。

「え?一緒に帰らへんの?」

「今日な、家で用事があんねん。せやからはよ帰らな」

「そうなんや。気ぃつけて帰りや」

「おう、あんがとー」

セーラは部室を出る前に、ちらりと竜華を見た。

いたずらっぽく笑い、そして小声で竜華に話しかける。

「竜華、あんまり無茶したらアカンで」

「な、何をや?」

「見つからんようにせなアカンでー」

「だ、だから何をやっ?」

「あはははー」

セーラは笑いながら帰っていった。

怜が竜華に訊ねる。

「??セーラ、なんやって?」

「無茶したらアカン、って…」

「無茶?」

「見つからんように、って…」

「あぁ、エロい事の話か」

「ってかさっきの何なん!?エロい事されてたのは私の方やん!」

「ごめんなー、まさか信じるとは思わんかった」

「いや、セーラは簡単に信じるやろ…」

「んー」

「なんや?」

「とりあえず…さっきの続きでもしようか?」

「な…っ、せえへんよ!」

「せえへんの?」

「だ、だって…ここやと誰が来るか分からんし…鍵かからんし…声出せへんし…シャワーないし…」

「………………」

「な、なんやの…?」

「やっぱ竜華はエロいなぁ」

「なっ、ど、どういう意味…!?」

「可愛いって事や」

「だ、だからそんなんでごまかされたりせえへんからなっ」

「好きやで」

「うっ………?」

「好きやで、竜華」

「な、何を突然…ってか…その……私も…、好きや…」

「ありがとう」

「こ、こちらこそ…?」

 

 

 

夕焼けで赤く染まった教室で、ふたりの時間は続く。

それは二人にとって、とても心地良い時間だった。

 


 

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