2007年


大奥(2007.1.1)★★★

何やら巷で話題のこの映画。前から見たかったワケではないが、まあ評判も悪くないみたいなので。時代劇はあまり好きではないんやけど、新春のなま暖かい風を浴びながら久々に原付を飛ばした。以下、内容。「女は女を裏切るもの」とか怖い言葉をさらりと言ってのける雰囲気はさすが大奥。言った本人が裏切られるというオチは予想通りかな。西島秀俊はそんなにみんなが好きになるほどの男かいな…と。及川光博はマゲが気になってしまった。無表情でもかっこいいなあとは思うけど。江戸幕府政治の裏舞台にこんなことがあったというのは史実らしい。大人にとっては歴史の勉強になるのかも。でも井川遥、ちょっと弱すぎるし頭悪すぎる。仲間由紀恵もそんな井川の肩なんかもたなくていいのに…。ちょい役のギバちゃんは室井さんになってて、竹中直人も「うるさいキャラ」が良かった。豪華キャストなのがすごかったと思う。常に気丈に振る舞っていた仲間由紀恵が火事で逃げるところで初めて笑顔になるんやけど、そこが印象的やったなぁ。役者と役のイメージぴったし。でもあの目の覚めるような青い着物はどうなんやろう。あんな染料当時あったんかなぁというくらい現代的やった。それ以外の着物とか、紅葉の景色はめっちゃ綺麗やったけど。というわけで、ドラマ版よりはドロドロしてなくて、悲恋にスポットが当たってるらしい。まぁまぁやったかな〜。でも音楽は良かった。チェロとかティンパニって怖い音が出せていいなぁ。あと、しょうもないけど大奥のメインテーマ、「風の中のす〜ばる〜」に聞こえるんやけど、そういう人居ないかな。


どろろ(2007.2.1)★★★★★

妖怪たちが気持ち悪くて良かった。どろろの台詞には短いながらもストレートなメッセージが盛り込まれており、なんか「めっちゃいい奴」だった。百鬼丸がどろろと川辺で別れたあとの「生きてみやがれ」という台詞が良かったと思う。他にも、「国境なんかない」とか憎しみを消す決心が印象的だった。心臓が戻っても胸の痛みが消えない百鬼丸に人間の感情を見た。百鬼丸の心を動かしたのはどろろとの友情と私は解釈した。柴咲コウはあまり好きではなかったが、こういう役なら今後も見たいと思う。原作の漫画はあまり覚えてないが、どろろは女設定やったんかな。終盤の泣きまくりのどろろが良かったと思う。 また悪役のヨコ分けぴっちり鼻デカ兄やんも意外なほど非情な役回りで楽しめた。妖怪たちとの戦闘シーンの迫力ある映像もさることながらやはりストーリーが秀逸。手塚治虫はさすがである。エンドロールの「フェイク」は1番サビから。桜井さんは映画を見てからこの曲を作ったのか、歌詞と映画の内容がよく合っていたと思った。百鬼丸の体もまだ全部戻ってないし、続編あるならぜひ観たい。


マリーアントワネット(2007.2.1)★★

だる〜い感じで淡々と進んで行ったのでラストがすごいのかと思ってたのにかなり拍子抜け。キルスティンダンストの際どいショットだらけで、何を訴えたいのか正直よくわからなかった。ルイ16世は逃げないでここに残ると決心してから顔付きが変わり急に頼もしくなったように見えた。窮地に陥ると本気出せるタイプなのか。前王もマリー母も恋人もその存在価値が不明やし、マリーの内面が描かれているわけでもなくストーリーに一貫性が無かったように思う。綺麗な宮殿とか自然は良かったけど、もう少し歴史的背景か、政略結婚に利用されたマリーの人生における心の機微を描いて欲しかった。


それでもボクはやってない(2007.2.1)★★★★★

裁判を体験したことは無いが非常にリアリティがあり、終始次の展開が気になる構成になっていた。判決後の弁護人側の気持ちが気になるところである。実際の裁判のシステムでおかしいと感じる点は多々あったが、裁判官が途中で変わり、かなり被告人に不利になったことが被告人の立場で考えると最も納得行かなかった。次の裁判官の悪人ぶりが怖かった。主人公の加瀬亮に似てる知り合いが居て、声まで似ていたので重なる部分がたくさんあっておもしろかった。鈴木蘭々は久しぶりに見たが、なんか大人っぽくなっていて好印象。


天国は待ってくれる(2007.2.15)★★★★

序盤は男女の友情をテーマにしたよくある話というストーリーだが、普通のことを普通に描くという映画もなかなかいいと思いながら観ていた。終盤の剛志の台詞「お前らの結婚式が見たい」で泣けてきた。派手では無いが、ドラマとしてはおもしろいと思うし、主人公たちそれぞれに共感できる部分もあった。薫の心境ってあまり想像しにくいのだが、宏樹のプロポーズの答えはYESでもNOでもどっちでもアリかなと思っていた。自分の心の奥に自分も見ないようにしている感情を近くに居る人に指摘されるのって、けっこうよくある話だと思う。そういう演技が良かったかな。イノッチを映画で観るのは初めてだと思うが、表情がワンパターンやと突っ込みたくなった。清木場俊介の気丈な振る舞いは良かった。こういう強がりタイプの弱い部分ってすごく惹きつけられる。岡元綾も不幸な表情がよく似合う。笑っていても哀愁が漂いまくっていた。「メトロに乗って」しかり、不幸なキャラクターが定着しつつあるのだろうか。主役がそういう地味〜な感じだったので、ベテラン群が占めている脇役が光りまくっていた。蟹江敬三といしだあゆみみたいなオトンとオカン最高。両者ともさすがの演技だった。戸田恵梨香はミサミサにしか見えなかったが、演技は○。脇役ってメインには出てこないけど、脇役の支えが無いと作品としての締まりが無くなると思うので脇役は非常に大事だとこの作品を観て感じた。イノッチと清木場俊介が作中に歌った曲が流れるのだが、映画の役が歌を歌うというのはなかなかいいと思った。柴咲コウとかが今後そういうのしそう。


蒼き狼 地果て海尽きるまで(2007.3.8)★★★

一言で言うと「男ってアホやなぁ」という映画である。そういうメッセージがそこかしこに散りばめられていた。反町隆史は最近あまり観ていなかったが「年食ったなぁ…」という印象。でも、この役にはぴったりだったと思う。よい演技だった。菊川怜も気丈な女性役がぴったり。しかもモンゴルの衣装がめちゃ似合っていた。松山ケンイチはどう見てもLにしか見えなかった…この作品でも結局死んでしまうし。史実なのかはわからないが、「血」とか「友情」とか「家族愛」みたいなのがテーマで、思ったよりもおもしろかった。それにモンゴルロケの壮大な景観がよかったと思う。Araという新人女優の表情や演技もよかったと思う。かわいいというよりかっこいい女性という役柄とイメージだ。松方弘樹もシブかった。最期、えらくあっけなかったけど。戦利品が女っていうあの時代とか地域柄は、理解し難いが、真実なんだとしたらすごい世界やったんやろうなぁ。「子どもに罪は無い」っていう台詞が途中で出てくるが、ずっと父親に愛されなかったジュチは可哀想やし、そういう息子の気持ちに気づかないで自分の疑心暗鬼だけで生きているテムジンの不器用さには「アホやなぁ」と思いつつも、共感してしまう面もあった。なんというか、架空の人間ドラマを見たければ、おもしろいと思う。


バブルへGO!タイムマシンはドラム式(2007.3.1)★★★★

コミカルな笑いがふんだんに盛り込まれていて、ストーリーもわかりやすくテンポもいいので、あっと言う間に終わった気がした。どうしても映画じゃないとダメか?と問われれば決してそんなことはないと思うが、バブル期の人々や街並みの様子がよくわかるので歴史の勉強だと思えば、その臨場感は価値があるように思う。広末涼子はまだまだアイドル路線健在だなと思った。舞コさん姿が良かったかな。阿部寛はいろんな役を演じていて、役者としての懐の深さを窺い知ることができた。軽いノリの方が生き生きしてたかな。薬師丸ひろ子は気丈な性格と一瞬見せる笑顔がとても素敵だった。役柄だけを観るとこの夫婦の相性はすごくピッタリでバランスが取れていると思う。そしてこの映画にはチョイ役がかなり豪華なのもお楽しみ。森口博子や飯島直子、八木亜希子が良かった。劇団ひとりもなかなか良かった。ちょっと前の時代に流行った小道具が満載で、リンドバーグの歌や初代ゲームボーイが懐かしかったなあ。


ドリーム・ガールズ(2007.3.1)★★★★

バブルよりも展開が更に速く、呆然としてしまったが、最後の歌やLISTENは感動的だった。2時間ほとんどずっと歌を聴かされるので洋楽に興味が無ければ辛いと思うが、迫力満点で歌う彼女たちを目の前に圧倒されっぱなしだった。台詞がいきなり歌になるのでややミュージカルの要素が入っていると思う。でもノリのいい曲を中心に、ライブに参加しているような錯覚に陥ることができる。作品中の歌を収録したCDが欲しいと思った。ストーリーは「Ray」と似ていたかな。女性の視点からの描写が中心だったが「あ〜こういうこと考える女性は多いだろうな」と頷けた。名声と仲間意識、裏切りと友情がかなりわかりやすく描かれていたので入りこみやすかった。それにしても彼女たちのパワーは素晴らしい。あんなふうに気持ち全開で歌えたら爽快だろうなあ。


さくらん(2007.3.1)★★

ストーリーがよくわからんかった。当時のああいう立場の人達の心理を描きたかったのか…。土屋アンナは声がかすれているため、叫んだりするとヒステリックに聞こえる。顔もあまり好みでもないし、感情移入はできなかったかな。菅野美穂の体当たり演技は結構良かったけど、やはり声にドスがほとんど無いので、迫力という点では今ひとつ。大奥でもそうだった。妖艶な表情は土屋アンナより上手かな。女優陣では夏木マリが迫力で抜きんでていた。成宮寛貴は髷がしっくりこないし、男性陣はみんな似たような顔だからかキャラクターがつかみにくかった。良かったのは椎名林檎の音楽。純和風な映像にロックのビートと彼女のけだるいが力強い存在感のある歌はなんとも不思議で空虚な空気感をかもしていた。いっそ椎名林檎が主役やった方が良かったのでは?土屋ファンには悪いけど…。


アンフェア the movie(2007.3.29)★★★

テレビのドラマを見ていなかったので、話の筋や雰囲気を初めから知っていたわけではなかった。予告を見て、なんとなく面白そうかなと思ったのがきっかけ。鑑賞者の想像を作中の役者がわざわざ口にしてしまう台詞回しや、とにかく奇をてらうだけのストーリーはややチープな感じがした。印象深いのは濱田マリの「金は人と違って裏切らない」と江口洋介の「復讐には復讐を」というメッセージ。篠原涼子だけがあまりにも善人すぎて多少浮いていたような気もする。ただ冒頭からエンドロールのあとまで気が緩むことはなく集中して見ることができたのは豪華な役者陣の支えがあったからだと思った。どんどん色んなことが起きるので目が離せない感じ。不可解な点がありすぎていちいち知りたいともあまり思わないのだが、ラストの篠原涼子の行動の意味を誰か教えて欲しい。カオルちゃんの台詞棒読みは×。また、私の見る映画の成宮寛貴はいつも可哀想な役なので同情。江口洋介はかっこよかった。


蟲師(2007.3.29)★

気持ち悪いグロテスクな映像や派手なCGを期待していたのだが、あまりそういう描写はなく、淡々と地味な展開。現代ではないのはなんとなくわかるが時代設定が曖昧なので、ストーリーにのめりこめなかった。オダギリジョーの洋服に違和感。漫画の内容と割り切って考えればいいのであろうが、オダギリジョーと大森南朋の「普通の人空気」が妙に現実的なので、残念ながらどっちつかず感の方が強まってしまった。BGMが薄いので上映中には会場で寝ていたおっちゃんのいびきが思いっきり響いていて、「まあそうなってもおかしくはないかあ」と思っていた。江角マキコの声の演技はかなり不気味なので、そこは○だと思った。おねいさん、怖いです。しかし、ここまで登場人物の人間関係がわかりにくいのはまずいと思う。どうでもいいが、この作品しかり、予告編の「東京タワー」しかり、オダギリジョーの子役はみんな顎にホクロついてないといかんねやろなあと気付いてしまった。今回のジョーは片目を隠していることと髪の色で、ゲゲゲのウエンツとかぶる。


アルゼンチンババア(2007.3.29)★★★

テンポが軽く、ずっと意外な展開続きなので、眠たくはならなかった。見る前は結末を全く考えていなかったが、うまくまとめたなと好印象。主人公の堀北真希の視点が中心なので、物語の後半でアルゼンチンババアと打ち解けていく過程は感情移入しやすかったかな。堀北真希はセーラー服が似合う。彼女は若いのに怒りや泣きの演技が巧い。未成年の喫煙や飲酒を肯定的に描写しているのがやや気になる(教育上の観点)。アルゼンチンタンゴのシーンを見ていると、その情熱的な音楽とババアの情熱的な性格が重なった。


ステップ・アップ(2007.3.29)★★★★

不良少年と金持ち女子高生がダンスを通じて心を通い合わせるという、まあありがちな青春ドラマやけど、ダンスが題材というところで予告の時点で絶対観たいと思っていた。大まかな筋は↑の通りなのだが、裏切り、家族の理解、事故による友人の死、恋愛などさまざまな切口を通して夢を実現していく過程を高校生の視点でみずみずしく描いている。発表会の母親の「ブラボー」に不覚にも泣いてしまった。クライマックスを観ながら、高校生たちの文化祭でやる劇の題材としてピッタリやなと考えていた。また主人公のダンサーのダンスがすごくかっこよく、大音響のダンスミュージックに合ったキレのある動きを大画面で見られるのは大迫力であり、それだけでも大満足。主題歌の倖田來未の曲もサウンドだけは作中に登場する曲と近くかっこいいものだったなと思った。ただ日本語はやはりこういう曲には合わないようである。映画本編のあとに、その倖田來未の曲でダンスをする日本人の若者8名から1人を投票するというイベントがあったので、しっかり参加しておいた。夜中の駅とかでストリートダンスの練習してる姿をよくみかけるんやけど、彼らはどこで発表してるんやろう。そういう機会があったら観てみたいなと思ってるんやけど。


ホリデイ(2007.3.29)★★★★★

恋愛に失敗した女性二人が衝動的に取った休暇で互いの家を交換し、そこで新たな出会いを見つけるドタバタラブコメディという予告を見て絶対観たいと思っていた作品。思いつきで家を交換(しかも外国)するという勢いの良さがこの映画のウリである。この日に観た5作品ではこれがいちばん面白かった。「スクールオブロック」が最高だったジャックブラックの違う演技が見られるというのも私にとっては大きな魅力だった。個性溢れるキャラクターの中でいちばん輝いていたのはキャメロン・ディアスだろう。彼女の恋人も作中で彼女自身に伝えるのだが、むちゃくちゃおもろい性格なのだ。そして表情もかわいい。彼女自身は35歳で見た目もそれ相応なのだが、ひとつひとつの身のこなしがすごくアクティブで見ていて飽きなかった。現実主義的で自分の弱さをしっかりさらけだせる割り切った振る舞いがかっこよかった。イヤミな子どもっぽさではなく、甘えでもなく、自分をしっかりわかっていて、いつも本気。弱音も吐きまくるけど、はっきりしていて台詞に説得力がしっかりあって。こんな女性が居ったら、尊敬する。上司にしたい。15歳から悲しくても涙が出なかった彼女の目から涙がこぼれるシーンは、おもいっきりもらい泣き笑いしてしまった。もう一人の女性、ケイト・ウインスレット。相手のジャックブラックもそうなのだが、こっちはキャメロンとは正反対の性格。好きな相手が振り向かないのに、ずっとしがみついていて、うまくいかないって分かっているのに、自分の心には嘘をついて…。このあたりも共感できた。家を交換した直後の彼女のはしゃぎっぷりはかなりおもしろくて、幸せそうな笑顔が印象的。主人公の二人だけではなく、いい台詞がふんだんに盛り込まれていて、「うわぁー、これ女やったら言われたらめっちゃ嬉しいやろうなー」と思いながら勉強してた。コミカルなキャラクター全員に拍手!おもしろかった。


ゲゲゲの鬼太郎(2007.5.1)★★★

私自身、水木しげるの原作の漫画も幼少期に持っていたしかなりの妖怪通なので、主に原作との違いを述べる。この映画版はキャストの妙がウリの映画なので、ストーリーはあまり期待していなかったが、やっぱり期待以上ではなかった。随所に笑いがちりばめられているので暖かい目で見れば笑えると思う。原作の鬼太郎は妖怪の不思議さとコミカルさに環境問題や人間のエゴを織り混ぜた社会派漫画だと認識しているのだが、そういう描写は少なく、恋愛が絡んだり敵も味方もキャラクターで押そうという空気がよくない意味で現代風やったかな。田中麗奈の猫娘の怖い顔バージョンがもうちょっと見たかった。彼女の女優根性はさすが。この方、意外と若いのね。全体的に、大泉洋のねずみ男と輪入道の西田敏行が持って行き過ぎな感があってウエンツの影が薄い。でも、毛針を使ったあとの鬼太郎の姿は原作に忠実だったのは良かったかな。ろくろ首のYOUも似合ってた。目玉おやじはCGでもさすがの貫禄。ばばあとじじいにはもうちょい活躍して欲しかったかな…。輪入道ってダイヤモンド妖怪で鬼太郎の味方なんかしないのに単なる車輪になってたのはちょっといただけない。また、敵側の天弧と空弧の設定もよくわからない。九尾の狐みたいやったけど、天弧はいい人なんか?あと閻魔さまも中村獅堂の顔が変わり過ぎていて、エンドロールまでわからんかった…。総じて、原作とは別路線やし、やや子ども向けなので、大人の鑑賞には少し耐えられないかも。鬼太郎に両目がしっかりあるのも髪で隠す意味が無くてかなり違和感があった。でも、あれを原作通りにするとやっぱりちょっと怖くなってしまうんやろうな。


スパイダーマン3(2007.3.29)★★★★★

かなり面白かった!!!今回のテーマは許し。主要人物がたくさん死んでしまうのはかなりショックやったけど、しっかり引き込まれる脚本はさすが。サムライミ監督の他の作品も観てみたくなった。アクションシーンはどうしたらあんなにスピーディーでヒヤヒヤするシーンが思いつくんやろうなあ。息を飲みまくり、手に汗握りまくり、背筋が凍りまくりやった。スパイダーマンシリーズは善と悪が完全に分かれているわけではなく、それぞれが両方を行ったり来たりする。悪事を働く動機の描写もしっかりしてるし、敵役にも感情移入できるような描き方が他の作品にあまりない魅力だと思う。ピーターも浮気するし、ブラックになるし。サンドマンの迫力が最高だった。ドラクエのゴーレムってこんな感じなんやろな。火炎放射器を浴びて割れたり泥になるところなんかは、土の弱さを見たような感じ。あの素粒子なんちゃらの機械の説明がもう少し詳しいといいかな。ハリーがピーターにあんなにひどいことをされたのに協力するっていうところがちょっと理解できないといったようなツッコミどころも無くはないけど、あまり気にならないくらい見せ場がしっかりしているので良かったと思う。最後の2vs2の戦闘シーンがいちばんすごかった。映画の冒頭で1と2のシーンが少し流れるので、ちょっと思い出すことができた。次回作はもう無いんやったかな。また創って欲しい。心なしかMJことキルスティンダンストが前作よりも美人になったように思えた。マリーアントワネットの効果か?


パイレーツオブカリビアン ワールド・エンド(2007.5.31)★★

私が通勤で使っている路線上にあり、家からもけっこう近くて比較的大きな映画館に私はよく行くのだが、そこでは今年6回観ると1回タダになるポイントカードが発行され始めた。それがたまっていたのを先週思い出して5月までが使用期限だったことがあわててこれを観に行ったいちばんの理由。同時期にやっていて終わりそうだった「バベル」と迷ったのだが、中高生にパイレーツが大人気なので話題先行も含めミーハーな私としては不評と聞いていてもこっちを選んでしまったのだ。しかし、1も2も観ていないので、ストーリーがさっぱりわからない。映像は確かに迫力があるし、音楽も素晴らしいのだが、肝心のストーリーやキャラクターがぼんやりなので(1&2に描いてあることなのだろう)、前半の展開がつかめず珍しくウトウトしてしまい、更にわからなくなるという悪循環に陥ってしまった。あと…なんか妙にちょこちょことギャグが入るのだが、私にとっては「これっておもろいの?」って思う感じでほとんど笑えなかった。まぁ好きな人には好きなのかもしれんけど。とりあえず、ジャック・スパロウが何人も同時に出てくるのはなぜなのだ。東インド会社が出てきたから、あ、世界史の勉強になる〜と思ったのだが、そんなことはなく何が言いたいのかよくわからんかった。なーんか予定調和な描写が多過ぎると思うし、出てくる人ほとんどの見た目が泥だらけでいかにも荒海で生きてますみたいなんも、魚人間たちの不気味さも好きになれなくて。でっかくなってカニになってしまった怖い顔のおねえさんはなんであんなことになったのかとかわからんし、最後、子どもが出てくるんやけど、それっていつのときの?っていう疑問もあるし…。そもそも評議会が何のために開かれたのかよくわからなかったし。教訓。シリーズものを3(完結編)だけみるのはやめた方がいい。でも最後の戦闘シーンはかなりすごかった。どうやって撮ってるんやろうって思う迫力。この戦闘シーンはCMで観たところである。かなり長いんやけど、途中で予期せぬ休憩が入ったからか、ずーーーっと画面に釘付けになっていた。どんだけぇ〜っていうところも比例して満載やねんけど。渦潮に飲み込まれた船がまた復活するのは…アリなんかいな。ていうか、生き返ってええんかいな!そもそも海賊モノって食わず嫌いなのかも。アドベンチャーファンタジーとかもダメらしい。ハッピーエンドがダメなのか?ああ、ダメだ。ダメだししか出てこない…。1&2を観た人はおもしろいと思う(フォローになってない)。


眉山(2007.6.1)★★★★

原作者のさだまさしはあまり聴かない歌手であること、松嶋菜々子はそんなに好きな女優でないこと、宮本信子は「マルサの女」が印象的な映画であること、予告を観た限りでは地味やな〜という印象だったこと…というこれらの事前情報からあまり観ようとは思っていなかったのだが、周囲で「眉山」が気になるという人が予想外に多かったこと、大沢たかおが出ていると知ったこと、スマスマでたまたま主演の二人がビストロに出ていたこと、「パイレーツオブカリビアン」で消化不良に陥ってしまったこと…などの理由からその日は「眉山」を観る気満々に。というか迷ってる時間は実際無かったのだが。蒲田の商店街の奥にある渋い映画館で金曜の夕方の回だったからか観客は私を含め4人くらい。たまにはこういうのもいい。経営的には大丈夫なのか心配になってしまうが。観てみたら、すごくよかった。宮本信子の言葉は少ないが芯が強く、たまには弱く、それでいて潔く、更にさりげない演技に参りました。台詞は一言なのに、視線と表情、声であんなに迫力たっぷりに感情を伝えられるなんて…凄まじい域である。かっこよすぎる。大沢たかおも松嶋菜々子も良かったけど、宮本信子のオーラと比較すると彼らは彼女の3分の1くらいだと思った。「眉山」というのは徳島に実在する山なのだが、作中でこの山がクローズアップされることはそんなにない。でも母娘の心の中には(特に母には)思い出と共にいつも「眉山」があったのだ。表には出てこないが、バックグラウンドとしての存在の大きさと、山という何か大きな暖かいイメージは宮本信子の演技と共通するものがあると見終わってから感じた。こんなタイトルをこの物語につけるなんてさだまさしのネーミングセンスはかなりユニークだと思う。年齢層に関係なく根強いさだファンが多いのもなんとなくうなづける。こういう描き方が日本人は好きなんやろうな。奥ゆかしいというか表に出てくるものと本心はちょっと違うというか。あまり泣ける泣けるという前評判を仕入れてしまうと肝心なところで冷静になってしまったりするので、最近はあまりそういうことを期待しないように心懸けているのだが、今回もそれが功を奏して、思い切り泣いてきた。母が病院で倒れたときと、阿波踊りで父と母が目を合わせたときの母の表情、そしてラストのメッセージカードである。あ〜スッキリ。母娘関係というのは、父娘や父息子や母息子とは違う何かライバル意識みたいなものがあるのだろうか。私自身はあまり実感しないのでわからないのだが、この映画はそういう女性心理を余すところなく鮮やかに十分表現されていたように思う。そのあたり、さだまさしの凄さなのかもしれない。徳島に足を運んだことは無いが、行く機会があればぜひ「眉山ロープウェイ」からの景色を楽しみたい。なんか最近の邦画って九州より四国が舞台の作品多くないかな。セカチューもUDONもこれも。がばいばあちゃんは佐賀やけどそれ観てないし。宮本信子の演技を観ていて思ったのは「皆まで言わずとも気持ちを伝えることができる」ということ。私は職業柄か、なんでも全部言葉で説明しようとするのだが(実際この日記もそうだが)、そういうのとはまた違う表現方法もあるんやなぁと思った。でもそういうのって言葉を瞬時に選ばないといけないから難しい。痛いところを衝かれても顔に出してはいけない、言葉にしてはいけない。ん〜現実的にはやっぱりそういう人間にはなかなかなれないと思うけどなんか世の中にはそういう人も居るかもしれないなと思った。特に年配の女性ってそうかも。もうちょっと周囲を観察してみよう。●後日談●珍しくyahooの映画批評みたいなコメント集を読んだのだが、けっこう厳しめの評価なのね。確かに不倫が美化されて描かれているとか、別れてもずっと好きでいて欲しいなんて傲慢という批判もあるやろう。でもそういう負というか弱いところがあるのが人間でやっぱり譲れないところはそれぞれあっていいと思う。母はそれでも強くて慕われていたし。感情なんやから常識や倫理で割り切れない部分だってあるやろうし。「そうなってしまったら、もうどうしようもない」ということだ。まぁうちのオカンが観たら、すごい酷評しそうやけどね…。


憑神(2007.7.1)★★★

妻夫木聡主演&浅田次郎原作という時点で「観よう」と思っていた作品。舞台は幕末。主人公は代々将軍の影武者として生きてきた家系。時代は私のいちばん好きなところだった。3人の神様に憑かれるのだが、西田敏行の貧乏神はまだしも、赤井英和の疫病神のエピソードではちょっと寝てしまった。最初の2人の神様の話ではギャグが多分に盛り込まれている。まぁそこそこおもしろい。西田敏行の演技に負けてしまう。物語の核心に触れるのは、最後の神、死神の少女に出会ってからだ。「死」を意識することで、武士として、上様(将軍)に仕える立場の自分の生き方を模索するようになる主人公。私がこの時代が好きな理由は「江戸時代から明治時代になるときに、それまで民衆が大切に守っていた家や忠誠心などが全く無意味になるところ」である。つまり、当時の日本人は価値観を180度無理矢理変えさせられるのだ。今まで「いい」と思っていたことが、「悪い」と判断されるようになる。今まで信じていたものが、虚構に変わってしまう。そんな状況に普通の人間は耐えられるのだろうか。耐えられないから、戊辰戦争も西南戦争も起きたんだと思う。今回の主人公もその葛藤に悩む。そこが私にとっては共感ポイントだった。結局、武士として納得の行く形で最期を迎えてしまう主人公。映画としてもそれまでのギャグとは違いラストシーンはけっこう壮絶だった。この映画は、主人公の人の良さにスポットを当てているのだが、「神」という未知で万能の存在に対する、はかなく弱く寿命の短い人間の存在を主張している。「死」を想ったときに、どう生きるかがメインテーマなのだろう。私はそう感じた。浅田次郎氏が取り上げるわけだ。そういう部分も含め、史実を知っているとより楽しめる作品だと思う。私はおもしろかった。死神の「おつや」がかわいかったしね。妻夫木聡は、これからも追いかけて損はない俳優だと思った。


西遊記(2007.7.19)★★

ドラマは全く観てなくて、興味も無かったんやけど、なんとなく観てしまった。多部未華子の素っ気ない感じが「姫」感があってよかった。 香取慎吾はうるさすぎ。ウッチャンのアクションはさすが。なんでこんなに軽やかに動けるんやろうなぁ。すごい。伊藤淳史は全然見せ場ないんやけど、こんな役で本人は満足なんかな。深津絵里はなんかいい雰囲気。ストーリーは、まぁまぁかな〜。酷評されてるほどでは無いと思うけど、大人の観賞にたえられるともあまり思わない感じ。私は単純なので、その点まぁまぁ止まりだったけど。金角・銀角の加賀丈史と岸谷五朗のメイクがすごかった。銀角はめっちゃ闘ってるのにあの最期はちょっと可哀想。金角も弱いやん!!。銀角と悟空の空の戦闘シーンは迫力があったと思う。色んなところに笑いが入ってるんやけど、あんまり笑えないのが×。ウッチャンがいちばんおもろい。でも、終盤三蔵法師が「負けても何も失うものは無い」と言う場面があって、その台詞はよかった。「生きることは戦い」なんやってさ。逃げたらアカンとも言うてたよ(アカンとは言うてないけど)。元の「西遊記」の物語をあまり知らないので、ちょっとネットで調べてみた。もう少し勉強してみようと思う。


キサラギ(2007.7.19)★★★★★

あまりどういう映画かご存じ無い方がほとんどだと思うので少しストーリーを説明。ある若い女性アイドルが自殺し、その1年後にネットで知り合ったそのアイドルのファンの男性5人が追悼会という名目でオフ会を開く。そこで事件の真相が暴かれる…というのが筋。キャストは小栗旬・小出恵介・ユースケサンタマリア・ドランクドラゴンの塚地・香川照之。めちゃめちゃ豪華。…で、オフ会だから、集まった人から少しずつ打ち解けていって、全員集合したら「まずは自己紹介〜」みたいなノリが非常にリアルで笑ってしまった。HNがみんなほんまに変やし。そこで楽しい会が続いている途中、その中の1人がアイドルが自殺したという事件の真相を語り始める…。結局この5人は何かしら事件に関わっていた人物であり、本人の父親と幼なじみと友達とマネージャーと熱烈なファンだったのだ。最初から色んなところに伏線が貼ってあり、ユースケの話の流れから犯人を捜していくのだが、容疑者がどんどん入れ替わって行くストーリーに釘付けになった。合間合間にしっかり笑える台詞や演技もふんだんに盛り込まれていて会場中が思い切り笑っていた。本気でおもしろかった。結局最後はいちばん大事なファンの手紙を抱えて死んだというオチだったのだが、ちゃんとそこにオチをつけるあたりがニクイ。隣で観ていた女性は泣いていた。ただ、最後の最後で終始シークレットだったこのアイドルの顔が出てくるのだが、あれは出さなくてよかったんじゃないかと思う。美化されたイメージだけでよかったんやないかな。またそのさらにあとに謎が出されて終わるのでしっくり来ないのだが、それはそれでまたおもしろい。しっかり笑えるしテンポもいいし、キャストの演技もいいし、なんか愛も感じられるし、いい映画だった。かなりお薦めである。


傷だらけの男たち(2007.7.26)★★★

この作品は香港映画でハードボイルドサスペンス。以下、あらすじ。恋人が堕胎手術のあとに自殺してしまい、絶望する警察官ポン。ポンは警官を辞め、アルコール依存症の私立探偵になる。ポンの警官時代の上司であるヘイはある女性と結婚するがその女性の父親はかつてヘイの家族を惨殺した過去を持つ。ヘイは復讐の念から妻に近づき、彼女の父親を殺し完全犯罪を成し遂げる。もちろん女性にはそれを気づかれないように。そのヘイの妻から「なぜ父が殺されたのか」を調べて欲しいと頼まれるポン。ポンが調べていくうちに真相が明らかになっていく…。そのうちにポンの恋人の浮気も明らかになり…。このあとは予想のできる最悪な結末を迎える。こういう映画やと思ってなかったけど「傷だらけの男たち」という名前にひかれて観た。初めから犯人がわかっていてそれを追求していくストーリーだが、かなり緊迫感のある音楽と映像なので(怖いくらい)飽きなかった。R-12やからやけど、けっこう殺人のシーンが悲惨。目を背けたくなる感じだった。でも、ヘイを演じるトニーという中国人の役者の表情がいい。結局ヘイは妻とは通じ合えないまま、疑われたまま死なれてしまうのだが、全ては自業自得。密室トリックとか、色んな事件の犯人とか、中国人の名前が似ていて誰か不明とか、よくわからない部分もたくさんあるけど、ミステリはミステリで、結局男たちの心情を映すのがメインやと思うし、それはそれでしっかり描かれていたのでよかったと思う。感情移入はあまりできないけど、ドラマとしておもしろかった。ポンは金城武が演じている。彼は中国語完璧なのね。「インファナルアフェア」という映画のチームが作ったらしくヤフー映画レビューを観てみると「そっちがよかった」という意見も多数あった。そのタイトルも覚えておこう。


舞妓HAAAN!!!(2007.8.1)★★★★

予告を初めて観たときから、興味があって、やっと観られた。阿部サダヲ氏の新境地満載で、彼のためにあるような作品だと思った。作品コンセプト通り、舞妓の魅力は余すところなく表現されていた。予告で見ていた柴咲コウの白塗り化粧を楽しみにしていたのだが、駒子さん姉さんの方がかわいかったように思う。駒子さん姉さんのまん丸な輪郭と、普段優しく笑うと細くなる目、それからあの京言葉…タンカを切るときの芯の強さも迫力があった。ストーリーはまああって無いようなものだが、途中の駒子さん姉さんとのデートのときに主人公が発する「こんな偏った趣味でも自分は好きなんだと言えるようになった」という台詞が力強くて好きである。生前の植木等氏が出演されていて、驚いた。彼はこの映画が映画出演の最後であった。エンドロールのあとにも植木さんに関して一言添えられている。展開がめちゃくちゃ速いので飽きることは無いが、あまりにも漫画っぽいので、リアリティはほとんど無い。まぁそれでも阿部サダヲ氏の気持ち悪い演技が存分に発揮されているので、そこが笑えれば楽しめると思う。私は楽しめた。生瀬勝久やMr.オクレ、山田孝之などチョイ役が充実しているし、柴咲コウ、堤真一などもなかなかアホな役なので、シリアス面以外を観たい人にはお勧めである。


ドルフィンブルー フジ、もう一度、宙へ(2007.8.2)★★

たまたま映画館に着いたのがこの作品の直前だったため、初めは観る気が無かったのだが、「ピアノの森」の前で終わるとわかったので、ついつい衝動的にチケットを買ってしまった。実話を元にしているようなので、それほど展開としては派手ではないが、沖縄の景色やイルカの生態、水族館の飼育係の様子などがかなりリアルに描かれているので、沖縄に行ったような気分になれた。飼育係の仕事はめちゃくちゃ大変だ。松山ケンイチ氏はやはりLのイメージが強いので、それ以外の役はどうもしっくり来ない…。まぁ普通という感じ。登場人物それぞれのイルカへの愛はかなり感じられるけど、フジ役のイルカの演技がいちばん良かった。途中で永作博美が結婚する場面が出てくるのだが、そのエピソードの意味はあまり無いように思う。この映画に恋愛の要素は不要ではないか。中頃にフジの壊死し始めた尾びれを切り落とす手術のシーンがあるのだが、痛々しかった。原因不明の病気というのは怖い。ブリジストンもよくあそこまでやったよねぇ。すごいお金かかってそう。松山ケンイチ氏や水族館、イルカが好きならいいと思うけど、そうでもなければまぁまぁかな…。


ピアノの森(2007.8.2)★★★★

予告ではアニメやし、なんかよく分からない展開だったので、そのときに観たいとは思わなかったのだが、やっぱりピアノの話は観とくか…と思い立って行ってきた。時間をしっかり調べなかったのでお目当てのこの作品の前に「ドルフィンブルー」を観賞。結論から言うと、この作品、よかった。泣けた。ピアノを弾く少年2人を中心にストーリーが展開するのだが、この2人がまた対照的な性格なのだ。ピアノを通して、人間性に触れているいい作品だと思う。練習は辛いけど、自分はピアニストになるんだ…という夢を持つ少年。辛い練習など意味が無いと感じ、誰からも教わることなく自由に弾く少年。最終的に彼らは同じピアノコンテストに出場することに。なぜピアノを弾くのか、感動するとはどういうことなのか、自分らしくあるというのはどういうことなのか。生きる上での重要なテーマがあったように思う。しかもわかりやすい。またショパン、ベートーベン、メンデルスゾーンのピアノ曲もたくさん聴けるのでそういう意味でもけっこう楽しめた。エンドロールで知ったのだが、上戸彩の声優はかなりがんばっていたように思う。好感触。キャラも含め、絵がイラストみたいなタッチなので、あまり好きでは無かった。それでも引き込まれたのは上戸彩のおかげかも。この映画を観ていて感情移入したのは「お前はお前のピアノを弾け!」というメッセージ。コンテストという大一番の勝負の場で彼はみんなにそう言う。彼はコンテストでの演奏の初め、人真似で演奏するが、途中で気づく。これは自分らしくない。そこから一転。森で弾いている自分の姿をイメージして、自分らしさを発揮する。しかしもちろんコンテストの規定から外れたため入賞はできない。そこで悔しがる彼もまたいい。この映画を観ながら自分の経験を振り返らざるを得なかった。私もコンテストではないがピアノの発表会に数回出たことがある。練習が嫌いで発表会なんて出るのも嫌だった。それは周りに男が少ないというのも理由のひとつだった。小学3年か4年のときに「ゆかいな鍛冶屋」という曲で発表会に出た。おそらくそれが私にとって発表会に出た最後の機会だ。大して練習を積んでいなかったため、練習の段階では前日も当日もノーミスで通せなかった。「もう自分には弾けない」と思いながらの本番だった。そして予想通り「弾けない」ところで間違えた。先生からは「間違えても気にせず通しなさい」と言われていた。普通だったらそうするのだ。でも、何故か知らないが、私はミスしたところで、もう一度少し前から戻って弾いた。先生の指示を無視したということになる。でも、2回目はうまく弾けたのだ。それが嬉しかった。だから20年近く前の出来事なのに覚えている。完璧に演奏することがもちろん理想であるし、演奏者はそれを目指さないといけない。しかし、満点なんて無いのだ。そして発展途上であり続けるのもまた当たり前。本番という勝負の場でいきなり今までとは違うことだってよく起こる。よくも悪くも。そういうのをクリアしないまでも、結局自分に勝てるかどうかは勝負してみないとわからない。言ってしまえば、勝たなくてもいい。今の自分はそう思う。前を向くかどうかが大事なのだ。子どもにピアノを習わせている親や、ピアノが好きな子どもにはすごく観て欲しい映画である。多分楽しく弾きたくなると思う。敷かれたレールに乗るだけの音楽に生命は感じられない。オリジナリティの存在に早く気づけたら、音楽はすごく楽しい。


怪談(2007.8.9)★★

…なんか「怪談」の字だけでも怖いな…。予告では、そこそこ怖そうで、でも黒木瞳が美しくて、女の恨みに苦しむ男の姿なんて、ワクワク!と思っていたし、「ぴあ」などの雑誌でコメントを読んでみても「ストーリー重視でホラー要素は少ない」とか書かれていたから、楽しみだったのだ。でも、冒頭に「監督 中田秀夫」の文字を見たとき、この作品の監督が「リング」の監督であることを忘れていたのだ。まぁでも大丈夫やろと思っていて…。生きているときの黒木瞳は美人やしかわいいし。ものすごいワガママ女やけど、こういう人も居るわなぁ程度で見ていた。でも、開始40分くらいの、豊志賀(黒木瞳の役名)が死んだのに新吉に会いに来て籠の中で消えるところ…。新吉が豊志賀が居なくなった…と思って座布団を触っているときに、白い手が新吉の手をつかむ!ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ(私の心の叫び)。その場面、かなり不意だったので、目に焼き付いてしまった。「かまいたちの夜」をやった人にはわかると思うが、「かまいたちの夜」でなんかの女性(ペンションの奥さんだったかな)が風呂場で死んでいるシーン、血塗られた白い腕がドアからはみ出すところに似ていた。そのシーンのあと、残り1時間20分は、恐怖まみれ。最初のシーンであまりの怖さに半泣きになったので、その時点で帰りたくなったのだが、我慢して見る。「リング」シリーズでこの監督の怖い場面の出し方はけっこう慣れていたつもりなので「来るぞ来るぞ」と感じたら、まぶたを閉じ、セルフブラインドで見ていた。それでも、音が怖いねん。「どーん!」とか「ばーん!」とか…。ええ加減にせえ!(ある意味心の叫び)「来るぞ来るぞ」も音でわかる。もうそういう状態になったら、普通のシーンでも怖い。いつ来るかわからんからセルフブラインドの時間も長くなる。まぶたが疲れる。あと、この監督は「リング」シリーズもそうやけど、たいてい怖い場面は幻覚という設定なのだ。ホラー映画なんて、貞子しかり、ほぼそういう幻覚が怖い映像になっているのだと思うが、この作品は幻覚に「気持ち悪い要素」も加えていてズルい。リアリティが無いとはいえ、幻覚なのだからリアルとも言える。ヘビとか虫とかあかんがな。つまり、そういう精神状態というのを映像にするのが上手いんやろうな。見ている人がどういう映像で恐怖心が増すのかを心得ているからであろう。で、最後の池…。水の中から手が出るのはもう「リング」で十分や。しかも最後長いしね。すごい音と映像が一瞬じゃないっていうのが怖い。ものすごい疲れた。こんなに途中で帰りたくなった映画もあんまり無いなぁ。終わったあとは「がんばった」感が残るのも他には無い。ストーリーは、まぁ読みやすいから、やっぱりストーリー重視やなくて映像重視なんやと思う。古典の雰囲気もちゃんとあるし。村上ショージはちょっと笑ってまうけど。瀬戸朝香は和服着てても、なんか雰囲気が現代やからあんまり合わないと思った。井上真央は似合うけど、童顔やから怖くはないかな…。 その点、黒木瞳はさすがの演技と表情。笑ってても怖いです。無表情も怖いです。新吉は「この先、女房を持ったら必ずやとり殺す。」って言われてるのに、なんで女と付き合うねん…。モテるんはわかるけど、アホすぎる。なんか出てきそうで(音楽も盛り上がって)、でも、何もなくて(音楽も消えていって)、その直後に、ばーん!とかめちゃむかつく。ビックリするわい。というストーリーだが、色んな場面で悪寒と寒気は十分得られるかと思う。ホラーが嫌いならテレビでも見ない方が無難かと。私、なんで映画館で「前の方の席で」って言うてもうたんやろ…。


トランスフォーマー(2007.8.16)★★★

いや〜すごかった。映像が。怖い描写があるかと思ったけど、そういうのは全く無く、ただアクションがものすごいだけとも言えるかな。ストーリーはオマケ程度で、映像が100%売りの作品だと思う。ストーリーに関してあえて言うなら「地球外生命体と人間の共感」とか「人間もまだまだ捨てたもんじゃないでしょ」っていうメッセージかな。スピルバーグだけあってETと同じだわ。ET観たことないけど。ラスト…海の中に入れるんやったら結局最初の北極と同じことになるやんかと思った。それやったら何の解決にもなってないんとちゃうかな。こういう問題ををどうするかが大事やのに、そこまでは脚本家も監督も考えなかったらしい。夢を見るだけじゃダメやのに。こういう結末がちょっと残念。そんな解決策では世の中通用しないのに。ま、それが言いたいことやないんやろうけど。しかし、この映像にはすごく技術と執念と金がかかってると思う。あとトランスフォーマーへの愛情もよくわかる。ロボット好きとか機械好きなら、かなり感動するんちゃうかなぁ。動きが滑らかで、CGなのはわかるけど、どうやって撮ったんやろう。最新技術というのはすごい。監督たちの想像力もすごい。「怪談」もそうやけど、非現実的な映像というのが映画の醍醐味のひとつなんやと思う。作り手の「何を映像として伝えたいか」がスクリーンを通してダイレクトに響くところが映画の良さなのだ。そういう意味ではこの作品もわかりやすい。頭空っぽでも楽しめると思う。色んな機械がこんな動きしたら…、こんな形だったら…想像を膨らませることはおそらく誰にでもあるやろう。でもそれをこんなに時間と金をかけて映画にできるのは、もはやスピルバーグだけなのではないか。彼の頭の中は、こんなふうなのだと垣間見える。そこがおもしろいと思った。でもそこに「かっこいい」とか「すごい」と思わない人は、この映画は何も残らない作品になると思う。たぶんスピルバーグは日本のトランスフォーマーが大好きで…そこから自分流にしっかりアレンジしてこの作品を世に出したのだ。作中に「日本人の作った機械」を賞賛する場面がいくつかあることからもそれが伺える。でも日本人はおそらくここまで具体的に色んなことを考えつかないだろうと思う。私も小学生のときにトランスフォーマーのおもちゃで遊んだものだったが、映画の冒頭にお馴染みのマークが出てきたときは嬉しかった。最後の方の戦闘シーンは画面が複雑すぎて誰が味方で敵かよくわからなかったし、敵と味方の名前があまり出てこないので覚えられなかったのがやや残念。こういう近未来的な映像がすごいなと思ったのはトム・クルーズの「マイノリティ・リポート」以来である。