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思い出の太宰府

 福岡と言えば、有名なのが太宰府天満宮(太宰府市)。学問の神様・菅原道真公(天神さま)を祭っているので、全国から多くの学生が参拝にやって来る。
わたしが6〜8歳の頃、父が単身赴任で福岡にいたので、休みの度に福岡へ行っていた。小学1年の夏休み、両親に連れられて、初めてこの太宰府天満宮を参拝した。こんなことで勉強ができるようになるわけがないと開き直りながらも、手を合せて学業成就を祈願するわたしだった。その頃のわたしといえば、外で泥んこになるまで遊んだり、ダンボール箱とか、廃材を使って工作したりするのが大好きで、机に向かって勉強なんて好んでする方ではなかった。その時、天満宮で買った学業成就のお守りを、しばらくはランドセルにぶら下げていたが、いつしか、そのお守りはなくなっていた。何年か経って、押入れの片隅で埃にまみれて真っ黒なお守りが見つかった。そのせいか、わたしの学校の成績はあまりよくなかった。
 実は、ここ20年ほど、太宰府へは足を運んでいなかった。そんなところに、99年1〜6月にかけて延べ3ヶ月弱、太宰府市内で仕事する機会を得たので、太宰府天満宮へ再び行ってみた。天満宮の境内、周辺の道路、駅舎などが新しくなり、随分とこぎれいになったが、修学旅行生の参拝風景や、参道のお店の様子、本殿の飛梅、それに元気に駆回る白い御神馬など、太宰府天満宮の持つ独特の雰囲気は以前と変わってない。小学生の頃のわたしは気がつかなかったが、ここは厳粛な中に、活力がみなぎり、元気と勇気を与えてくれる場所だと思う。

大宰府天満宮

 ところで、太宰府天満宮での楽しみと言えば、何と言っても『梅ヶ枝餅』(うめがえもち)を食べることではないだろうか。粒あんが入った一見普通のお餅ではあるが、焼きたての味は格別。小学1年の夏休み、両親に連れられて初めて参拝した帰りに、梅ヶ枝餅を買ってもらった。まだ乳歯の残る口一杯に頬張ると、素朴ながらも香ばしい味が口一杯に広がった。そして、2回目に連れられてきて参道を通った時、わたしはまるでパブロフの犬のように、お店の看板を見るや否や、反射的に「梅ヶ枝餅を買って」と、せがんだ。菅原道真公がどんな人物なのか、太宰府天満宮がどういった場所なのか、父が説明してくれたことは、記憶のかけらもなく忘れていたのに、梅ヶ枝餅のことはしっかりと覚えていたのであった。
 20年ぶりに、参道の茶店で梅ヶ枝餅を食べた。その味は、あの幼き日の懐かしい出来事を思い起こさせてくれた。売上げを競い合っている数十軒のお店が、互いに材料や作り方の基準を厳しく定め、伝統の味を守っているというから恐れ入る。

飛梅

   「東風吹かば
     匂いおこせよ梅の花
       あるじなしとて春な忘れそ」
 これは、901年、大宰府(現・太宰府)へ冤罪により左遷されることになった道真公が、京都の住まいを発つ前に、大事にしていた庭の梅との別れを惜しみながら詠んだ有名な歌である。その後、その梅が道真公を慕って、大宰府へ飛来して根付いたと言われる。天満宮本殿前にある「飛梅」と呼ばれる老木が、それである。数千本にも及ぶ境内のどの梅の木よりも早く、この梅の木が毎年決まって最初に花を咲かせる。その年1月末、やはり、この「飛梅」が唯一咲いていた。そして、もはや散り去ってしまっただろうと思いつつ、3月初旬、再びやって来ると、華麗に咲き誇る若木に勝るとも劣らず、その魔性の木は力尽きることなく花をつけていた。現代人が忘れてしまったような素直な気持ちを、花に託した道真公の歌、それに、11世紀近くが経った今にも受け継がれ、伝え語られる飛梅伝説の真髄を、実感した思いである。
 その年の春、気がつくと、3ヶ月間に10回も、太宰府天満宮へ足を運んでいた。参拝の度に、何がしかのお願いごとをするのだが、それだけが目的ではなく、なぜか、心が洗われるような気持ちにさせてくれるこの場所へ自然と足が向いていたような気がする。どうも、わたしは飛梅のように、天神さまによって太宰府へ引き寄せられているのかもしれない。わたしの心の故郷(ふるさと)・太宰府を、皆さんにもじっくりと散策していただければと思う。
                               (99.6記)



太宰府天満宮とカップル

 旗を持つバスガイドさんの後ろに、楽しそうに話しながらやって来る修学旅行生の群れ。おみやげ屋さんのおばちゃんたちが、「ここぞ書入れ時」とばかりに、さかんに呼び込みの声を掛ける。昔から変わらぬ太宰府天満宮(福岡県太宰府市)参道の光景である。太宰府天満宮は、学問の神様・菅原道真公(天神さま)を祭っているので、全国から多くの受験生も参拝にやって来るのだ。
 天満宮の楼門前にある心字池には、人生の波乱万丈を例えた、過去、現在、未来の3つの橋が架かっている。参拝する前に橋を渡って、身が清められるようにというのが、橋の本来の意味だそうだ。バスガイドさんは、「過去の橋では振り返らないように、現在の橋ではつまずかないように、未来の橋ではころばないように」とよく案内している。また、さだまさしの『飛梅』の歌詞にもあるように、カップルがこの橋を渡ると別れることになるとか、いろんなタブーが言い伝えられているが、天満宮の方に言わせると、どれも俗人が考えるたわごとだとのこと。
 今の若者たちも、そんなことを気にしないのか、知らないのか、カップルで参拝している光景をよく見かける。一つ前の世代のわたしは、ついつい、そんなカップルたちがおみくじを引く様子を、少し離れたところから窺ってしまう。何も関係のないわたしなのだが、おみくじに書かれた運勢を読み終えてニッコリと微笑んでいる二人を見て、ホッとするのであった。

                               (99.6記)


(太宰府のみどころ)
 太宰府といえば、何と言っても学問の神様・菅原道真を祭った太宰府天満宮だが、その周辺には他にも見所がる。太宰府天満宮の周辺には多くの歴史的な史跡が集中している。源氏物語にも登場し、日本最古の梵鐘(国宝)がある「観世音寺」、日本三大戒院のひとつ「戒壇院」、大宰府政庁(都府楼)跡、664年、唐と新羅の攻撃に備えて築かれた水城(みずき)跡など、歴史ファンには見逃せないだろう。また、太宰府天満宮から徒歩二分ほどのところには、枯山水の庭がある九州で唯一の石庭苔寺「光明禅寺」がある。時間がない人もせめてここくらいは、太宰府天満宮の帰りに寄るとよいだろう。
 太宰府天満宮へは西鉄福岡駅(天神)から電車で約20〜30分、太宰府駅下車、徒歩5分。周辺の史跡巡りには、タクシー/バスの他、レンタサイクル(2〜11月)も利用できる。

 太宰府周辺の観光、レンタサイクルなどについての問い合わせ先:太宰府観光協会TEL.092-925-1880

 ・太宰府天満宮 学問の神様・菅原道真公を祭っている。本殿右前の飛梅、本殿裏の白馬は共に道真公にゆかりのもの。梅、桜、菖蒲(夜間ライトアップあり)の名所としても知られる。宝物殿、菅公歴史館、だざいふえん(遊園地)もあり。

 ・光明禅寺 枯山水の庭がある九州でただひとつの石庭苔寺。秋の紅葉も見物。TEL.092-922-4053 無休。拝観料\200
光明禅寺

 ・福岡県立九州歴史資料館 大宰府をはじめ、九州各地の歴史資料を一般公開している。TEL092-923-0404、月曜休み。入館無料。

 ・観世音寺 源氏物語にも登場する有名なお寺。国宝の日本最古の梵鐘、校倉造りの収蔵庫(拝観料\400)などがある。春はあじさい、秋は南京ハゼの紅葉が美しい。TEL.092-922-1811無休

 ・戒壇院 観世音寺の隣、日本三大戒院のひとつ。本尊の木造臚舎那仏(るしゃなぶつ)は国宝に指定されている。TEL.092-922-4559、無休

 ・大宰府政庁(都府楼)跡 奈良、平安時代に九州を納め、外国との交渉窓口となる役所(大宰府)が置かれた。その大宰府の礎石などが残り、現在も発掘作業が続く。敷地内には、大宰府展示館(TEL092-922-7811、月曜休み、入館料\150)あり。

 ・水城(みずき)跡 664年、唐と新羅の攻撃に備えて水路を持つ防衛施設「水城」が築かれた。その水城の水を流すための木樋などの一部が、大宰府政庁跡の西に残っている。

 ・大野城跡 665年、唐と新羅の攻撃に備えて四王寺山に築かれた山城。その大野城の倉庫跡と思われる礎石約70棟分などが残っている。

 ・太宰府市文化ふれあい館 発掘出土品の展示などあり。TEL.092-928-0800 第4火曜休み。入場無料。

           (99.06記、料金などは変わっている場合がありますので、ご注意ください)


(二日市のみどころ)

 太宰府の近くで、もう一つ紹介しておきたい所がある。天満宮のJR最寄駅になる二日市駅より北へ徒歩10分ほど歩いたところにある、古く万葉集にも歌われた二日市温泉(福岡県筑紫野市)だ。江戸時代以降、度重なる火災にもめげず、全盛期には数十軒の温泉宿や浴場が軒を連ねていた。現在は十数軒の旅館、ホテルと、三つの公衆浴場が営業している。その二日市温泉で人気があるのが筑紫野市が運営する「御前湯(ごぜんゆ)」。TEL.092-928-1126
 ここは黒田藩の温泉であったのが、明治維新後に公衆浴場となったところ。入浴料はたった\200。都内の公衆浴場だと385円だから、銭湯より安い値段で伝統の湯が楽しめるわけだから言うことなし。温泉でゆっくりと過ごした後は、町の散策を兼ねて二日市温泉周辺に建てられた大伴旅人、夏目漱石らの歌碑、句碑を巡り歩くのもよいだろう。太宰府観光の後は、福岡市内などで泊まるという観光客も多いだろうが、二日市温泉で一夜を過ごすのはどうだろうか。



二日市温泉


 少し足伸ばして、九州最古の寺・武蔵寺(ぶ そ う じ)、菅原道真ゆかりの天拝山(てんぱいざん)などを訪ねるのもよいだろう。二日市温泉へは、@太宰府天満宮からタクシーで約15分、A博多駅からはJR鹿児島本線で約15〜30分、二日市駅で下車、徒歩約10分、B福岡空港からは、西鉄高速バスで約20分、筑紫野バス停で下車、徒歩約5分。

 二日市温泉周辺の観光などについての問い合わせ先:筑紫野観光協会TEL.092-922-2421

 ・武蔵寺(ぶ そ う じ) 九州最古の寺。藤、ツツジの名所として有名。
武蔵寺

 ・筑紫野市歴史博物館「ふるさと館ちくしの」 発掘出土品の展示などあり。TEL.092-922-1911月曜、祝日休み。入場無料。

 ・天拝山(てんぱいざん) 菅原道真が自らの身の潔白を京へ訴えかけるため、100日間かけて、この山頂に登ったという。現在は武蔵寺前から約1km(20分)のハイキングコースとなっており、山頂からは博多湾、能古島までが見渡せる。


         (99.06記、料金などは変わっている場合がありますので、ご注意ください)


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