買戻特約の登記がある不動産の取引・担保提供について

買戻特約の意味や登記の方法などにつきましては、こちらをご参照ください。

ここでは、買戻特約の登記がある不動産について、
買戻権者(元売主)をA、
現所有権登記名義人をB、
Bから買おうとしている人をC、
融資をしようとしている人をDとし

(1)現所有者BがCに売却する
(2)現所有者Bがこれを担保に提供し、Dから融資を受ける
(3)買戻権者Aが買戻権の実行を見こし、Cに売却する
(4)買戻権者Aが買戻権の実行を見こし、これを担保に提供しDから融資を受ける
(5)買戻期間満了後に、現所有者BがCに売却する

以上の各場面の注意点をご紹介します。

1 現所有者Bが売却する場合

買戻特約が登記された不動産の売買は、言うまでもなく、大きなリスクがあります。

Aの買戻特約登記が残ったままでBからCが買うと、たとえCが所有権の登記名義を取得しても、後日Aが買戻し権を行使すると、Cは所有権を失います。Cとしては、購入前に登記記録を自由に閲覧することができたわけで、AB間の買戻特約の存在を容易に知り得る立場にあったからです。

宅地建物取引業者が仲介する売買契約だと、契約書の中に、「売主Bは、その責任と負担において、引き渡しまでに、所有権の行使を妨げる一切の負担を、除去抹消する」旨の条項があるのが一般的です。Aの買戻権登記も、決済前に売主Bが抹消すべき負担に含まれます。なお、「所有権の行使を妨げる一切の負担」の典型例は、売主がかつてローンを組んだ際の抵当権です。

そこで、Bによる売却の前提として、買戻特約の抹消についてAの確約と登記への協力を取り付けておくべきです。BC間の決済に際しては、Aも立ち会うか、少なくとも買戻特約登記の抹消に必要な書類の原本を決済場所にて準備しておく必要があります。

司法書士による登記申請としては、
(1)買戻特約の抹消登記(事前抹消もできます)
(2)売主Bから買主Cへの所有権移転登記
を連件で同時に申請することとなります。

2 現所有者がこれを担保に提供し融資を受ける場合

現所有者Bが、買戻特約が登記されている不動産を担保にDからお金を借りる場合、Dにとって、大きなリスクがあります。仮にDが金融機関の場合、融資実行後も買戻特約が残るのであれば、融資を承認しないものと思われます。

DがBに融資をし、抵当権の設定を受けたとしても、後日Aが買戻権を実行すると、Bの所有権がAに復帰します。これに伴い、Dの抵当権は、法律上当然に消滅します。

この場合のDの抵当権は当然に職権抹消されるわけではなく、Aと共同で抵当権抹消の登記を申請します。Dがこの抹消登記に協力しない場合、Aが抵当権抹消登記請求の訴えを起こし、Aが勝訴すれば(普通はが勝ちます)、Aのみで抵当権抹消登記を申請できます。いずれにしても、Dは先に登記を備えたAに劣後する地位になってしまいます。

Dとしては、そもそも事前に登記記録を自由に閲覧することができたわけで、AB間の買戻特約の存在を容易に知り得る立場にありました。買戻特約の存在を知りつつ融資をし抵当権の設定を受けたということは、買戻実行に伴う抵当権消滅のリスクを認容した上で融資をしたものと評価されてしまうのです。

そこで、融資実行時点で買戻特約の登記がある不動産を担保に融資を実行する際は、前提として、買戻特約の抹消についてAの確約と登記への協力を取り付けておくべきです。

司法書士による登記の申請としては、
(1)AB買戻特約の抹消登記(事前抹消もできます)
(2)Dの抵当権・根抵当権の設定登記
を連件で同時に申請することとなります。

3 買戻権者が買戻権の実行を見こし、売却する場合

買戻権者は「買戻しの実行により所有権を取り戻せる立場の人」にすぎません。
ご本人のお気持ちとして「自分の所有不動産だ」という意識がいかに強くても、
買戻し実行の前は、まだ「所有者」ではありません、他人の物です。

よって、買戻権者AからCへの売却は、他人の物を売買するに等しい行為です。

このような他人物売買は、AC間の合意としてはできます。しかし、所有権登記名義がAではないため、Aは決済の前提として、Bから所有権登記名義を取得する義務を負います。

Aが本当に買戻権を行使してくれなければ、買主Cは、お金を払っても売主Aから不動産の所有権を取得できないリスクがあります。

そこで、決済の前提としてAが自らの負担において買戻権を行使し所有権を復帰させることをAC間の売買契約に盛り込むのが望ましいです。また、買戻特約の抹消登記につきBの協力を取り付けておくべきです。AC間の売買決済に際しては、Bも立ち会うか、少なくとも買戻特約登記の抹消に必要な書類の原本を決済場所にて準備しておく必要があります。

CからAに支払われる代金を使ってAが買戻し権を行使する場合における
司法書士による登記申請としては、
(1)買戻しによるBからAへの所有権移転登記
(2)売主Aから買主Cへの所有権移転登記
を連件で同時に申請することとなります。

なお、買戻特約の登記は、登記官が職権で抹消します(不動産登記規則174条)。

4 買戻権者が買戻権の実行を見こし、これを担保に提供し融資を受る場合

買戻権者は「買戻しの実行により所有権を取り戻せる立場の人」にすぎません。
ご本人のお気持ちとして「自分の所有不動産だ」という意識がいかに強くても、
買戻し実行の前は、まだ「所有者」ではありません、他人の物です。

よって、買戻権者AによるDへの担保提供行為は、他人の物を担保にお金を借りようとするに等しい行為です。

他人物の担保提供は、上記3の売買とは異なり、無効です。
例えば、所有者ではないAを抵当権設定者、融資をしたDを抵当権者とする登記の申請は、却下されます。

そこで、AD間の抵当権・根抵当権設定の前提として、Aが自らの負担において買戻権を行使し所有権を復帰させることをAD間の金銭消費貸借契約か担保設定契約に盛り込むのが望ましいです。また、買戻特約の抹消登記につきBの協力を取り付けておくべきです。AD間の融資実行に際しては、Bも立ち会うか、少なくとも買戻特約登記の抹消に必要な書類の原本を決済場所にて準備しておく必要があります。

DからAに交付される貸付金の一部を使ってAが買戻し権を行使する場合における司法書士による登記申請としては、
(1)買戻しによるBからAへの所有権移転登記
(2)AD間の抵当権・根抵当権の設定登記
を連件で同時に申請することとなります。

なお、このケースは、借り換えのスキームとして活用できます。

5 買戻期間満了後に、現所有者が売却する場合

買戻期間満了後であれば、現所有者Bとしては、Aに買戻しをされる心配はないため、何の支障もなくCに売却できそうにも思えます。

しかし、この場合でも、買戻特約の登記を抹消するには、買戻権者Aの協力が必要です。

買戻し期間が満了し、買戻権は延長もされないから、買戻権は当然消えているはず、ではあります。それでも、実体法上消滅した権利について、登記記録上も抹消させる手続は、権利を主張する人とその負担を受ける人の共同申請が原則です。このことは、住宅ローン完済後、実体法上消滅している抵当権の抹消登記に、銀行が抹消登記に協力する趣旨の銀行からもらう書類が必要なのと同じです。

そこで、Bによる売却の前提として、買戻特約の抹消についてAの確約と登記への協力を取り付けておくべきです。BC間の決済に際しては、Aも立ち会うか、少なくとも買戻特約登記の抹消に必要な書類の原本を決済場所にて準備しておく必要があります。

司法書士による登記申請としては、
(1)買戻特約の抹消登記(事前抹消もできます)
(2)売主Bから買主Cへの所有権移転登記
を連件で同時に申請することとなります。

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