05.3.12
ブログを更新しました(下記)。細い管では粘性が効き、太い管では管口からの放射が効きます。前者だけの場合、開口端補正は波長の8分の
1、後者だけの場合、レビンとシュヴィンガーの理論値(開口端補正は、細い管の極限で半径×0.61)になると予想できます。実際の状況はその中間です。
05.1.23
先日ご紹介した、2次元の座標の開口付近での様子をgnuplotで描いてみました。
ごちゃごちゃするので、管壁のごく近くの線は省略してあります。

05.1.19
あけましておめでとうございます(ちょっと遅いですね)。
今日、ちょっと進展がありました。
2次元に落とした問題で、管内の解を管外へ「自然に延長する」問題を考えるうえで、見通しのよい座標が見つかりました。
昨年末の段階で、グリーンの定理とかを用いた抽象的な議論ならできていたのですが、粘性によるエネルギー散逸を計算するためには具体的な表式が必要なの
で、立ち往生していました。
突破口は、複素解析関数の等角写像としての性質を使うと、管内と管外の両方で使えるうまい座標を構成できることです。
この座標(以下で説明します)は「等角写像とその応用」(今井功、岩波書店)の77ページにあります。
直観的に言うと、一方の管壁をある一定の電位に、他方の管壁(2次元なので2つの管壁はつながっていない)を別の一定の電位に保ったとすると、一方から他
方へと電場が生じ、等電位線が描けます。その電位を1つの座標にし、それに直交する方向(電場の方向)に(=コーシー・リーマンの関係式を満
たすように)もう一つの座標をとる、ということです。これらの座標は平面上の調和関数で、合わせて複素解析的な関数で表すことができます。
2次元(xy平面)で考えます。2つの無限に薄い管壁は、xy平面でx軸の負の方向に向かって伸びる2本の半直線(y=±a、x<0)で表されるとしま
す。これらに挟まれた領域が管内、その他の部分が管外を表します。
いま、複素数z=x+yiとψ=u+viの間の写像
z = ψ + a/π (exp[(π/a) ψ] +1)
を考えると、uv平面のu軸に沿った幅2aの帯状の領域(ー∞<u<∞、−a<v<a)が、xy平面の管外と管外を合わせた領域全体へ写像されます。
uv平面上の帯の、左の方が管内、右の方が管外に対応しています。
内部および外部の管壁は、直線v=±aのそれぞれ左半分と右半分です。
次の課題は、解の、帯の左の方での漸近形がわかっているとき、それを右の方へと延長することです。
04.12.23
ここしばらく、管内の空気の定常的な振動状態を1つ指定して、それを管外へ「自然に」延長する方法について考えていました。
直観的には、管口付近の音の場とそのgrad(勾配)を指定すれば、自然な延長が決まりそうなのですが、その数学的表現を見つけるのが一苦労でした。静電
場の境界値問題と違って、放射される波の場では、無限遠での解の振る舞いがわからないと、空間の任意の点での場がわからない。その無限遠での振る舞いが、
管口付近の場で決まっているかどうか。決まっているなら、どのような表式で両者が関係しているか、を見出す必要がありました。キーワードは、ヘルムホルツ
方程式、グリーンの定理、ゾンマーフェルトの放射条件。
さきほどやっと状況が理解できて、計算方法がわかりました。2週間もかかってしまった。いつものことながら、結論はあっけない。単に平面波とのたたみ込み
積分を計算すれば両者の関係がわかるのだけれど、まあ、鞍点法とか、いろいろな道具を復習できたのでよしとします。
ふつうの管での計算は大変そうですが、無限に広い壁に垂直にあいた円管(=管口から管に垂直に無限に広い平面状のつばが広がっている状況)ならなんとか計
算できそうです。粘性の影響と、開口の効果によるモードの励起の両方を考慮した理論値にあと少しでたどりつけるかな。
塾で先生などをしていると、受験が近いこの時期、いろいろなことがあって落ち着いて物理の問題を考えるのが難しいです。時々、フルタイムで研究ができれば
もっとはかどるだろうか、などと思ったりもしますが、でも結局、現在の環境の中で目の前の問題を1つずつ解決していくしかないですよね。
<ブログでの解説> 現在、第10回まで進行中。
- 第1回 はじめに
開口端補正に興味をもったきっかけと、従来の「内径×0.6」などの理論値が不自然に思える理由を説明しています。
- 第2回 気柱共鳴と
開口端補正の長さ
共鳴状態の気柱の中でおきていることを考察し、開口端補正がどのような条件で決まっているのかを考えます。
- 第3回 空気の粘性
の役割
これまでの考察から重要であることがわかった空気の粘性について考えます。
- 第4回 減衰しにく
い定常波の形
エネルギーの損失を最小にするような、管内の定常波の形を求め、単純化した例(管の断面が長方形で、一辺が無限に長い場合)で開口端補正の長さ
を表す公式を導きます。とくに、管が波長に較べて狭い場合には、開口端補正の長さが波長のほぼ8分の1になることを示します。
- 第5回 指数減衰
モード(1)
開口端補正を考える上で重要な、管口付近に局在する定常波(指数減衰モード)が生じるわけを、高校物理でおなじみの全反射の現象との類似を使っ
て、直観的に説明します
- 第6回 指数減衰
モード(2)
管口付近の定常波(指数減衰モード)の形と、管の幅(太さ)と
の関係を、定量的に考えます。
- 第
7回 開口端補正の長さ
開口端
補正の長さは管の太さ(幅)によってどう変わるのか。それを示す公式を、単純化した例(一辺が無限に長い長方形の断面を持つ管)について導きます。円筒形
の管の場合の公式にも触れます。
- 第
8回 円筒形の管の開口端補正の長さ
円筒形の管の場合の開口端補正を表す公式(暫
定)を導きます。
- 第9回 粘性の影響
を無視した場合の理論値その1
粘性の影響を無視するとき、開口端補正の長さが半径の約0.61倍になるというレ
ビンとシュヴィンガーの結果を、少し単純化したモデルで導きます(半径の0.5倍になります)。
- 第10回 粘性が
効く管の太さ
波長に較べて管が太いときには粘性の影響は無視できます(したがって、レビンと
シュヴィンガーの理論値でよい)が、細い管では粘性が無視できません。どのくらい細い管で、粘性が効いてくるのかを考察します。可聴音なら、境目の半径は
数ミリから数センチになります。
- 今後の予定
- 粘性によるエネルギー散逸と開口の効果の両方を考慮し
た開口端補正の理論値を導くこと
- 管の断面の形状と開口端補正の長さ
- 粘性項を含む流体力学の運動方程式の線形近似
- 粘性以外の効果(熱伝導、開口からの音の放射)の開口端補正への影響
- 補足(計算の詳細:コーシーの行列式など)