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物理教育のページの解題(by Watson)



 退職後、当初は私が過去に蓄積したオリジナルな教育実践内容を公開する予定で始めたホームページ作りですが、途中で”オリジナルの教材と云っても、まじめな教師なら普段から独自の教材を開発しているのは当然であり、それだけを発表するなら自己満足のページに終わってしまう。時間的余裕が出来た今は本当にやるべきこと、やり残したことが別にあるのではないか。”と自問し、方針を変更して、前々から気になっていたことを本格的に取り上げることにした。

「物理教育序論」のはじめに書いたように、元来西洋では、物理学は「自然哲学」(Natural Philosophy)と呼ばれ、自然の根本を深く探る学問であります。そのため基本的な概念になればなる程、一筋縄では行かない深い謎を含んでいるのです。やさしいと思われる教育の分野でも例外ではありません。生徒達に基礎概念を教えるわけですから、むしろ探り始めるとすぐ、基礎概念に潜む謎にぶつかってしまいます。教師は生徒達に気付かれないように、言葉の言い回しや論理を使って”無意識に”それを回避しています。(否、むしろ、その論理を使って教師自らを納得させていると云う方が正確かも知れません。...本当に物理は難しいのです。)
以下では、「物理教育」の各ページの内容の要約と、私が舌足らずのため曖昧となったところの意図を述べたいと思います。

 話題としては、まず力学分野で「力の概念」を取り上げています。

 

力はベクトルか


 「力はベクトルか?」では、最初に、いくつかの設問を与えて導入としました。果たして「ベクトルとしての力」しか学んでいない我々は、それらの問に答えられるでしょうか。応力テンソルとしての力の本性と、作用反作用の起源に気付いてもらうのが狙いです。
 この小文において、私が気づいて欲しかったことは、「ベクトルとしての力とは、物体(あるいは注目する部分)に対して、結果として最終的に、”どの向きにどんな大きさの加速運動を起こす効果をもつか”その能力を表現するための”抽象的・便宜的な量”にしかすぎない。」と云うことです。 すなわち、遠隔作用論的・幾何学的な「ニュートン力学」のために考え出された量と捉えるべきであり、それは力の本質でも、実体でもない。自然界に実在する力の正体は、あくまで応力テンソルではないか。・・・という問題提起です。

 

「慣性力について考える」 5部作

 
 つぎに、「慣性力」についての、5部作です。

慣性力について

 最初の「慣性力について」では、私が高校で通常行ってきた授業を再現しています。
 この話の前に教える「等速円運動」の授業では「向心力」しか登場しません。それでは、皆がよく知っている「遠心力」とは何なのかを説明するために行った「慣性力」についての授業です。
 慣性力は「加速度系(非慣性系)」でのみ現れる力であり、「遠心力」の正体は円運動する物体と共に加速度運動する観測者が感じるその「慣性力」であると。
...しかし、いつもその授業の最後に、こう付け加えていました。「諸君は本当にこの説明で納得しますか。何かおかしいと思いませんか。考えてみて下さい。」と。
 

慣性力は見かけの力ではない

 2番目の「慣性力は見かけの力ではない。」では、授業に於いては、話したくても話せなかったその内容を解説しています。慣性力とは、慣性系で議論すべき力であり、物体が加速および減速するとき常に生じる慣性抵抗(慣性抗力)である。 それは,加速度運動起こす原因となる力ではないが、決して「みかけの力」ではなく、実在する力であること、ニュートン自身もそのことを明確に認識していた事実を紹介しています。
 

慣性力についての対話(1)

 3番目の「慣性力についての対話(1)」では、プラトンやガリレオの対話編に倣ってワトソン先生とホームズ君の対話形式を採用しました。当初、短い対話篇のつもりで始めましたが、あとから、あれもこれもと付け加えて行くうちに長くなり、論旨が掴みにくなったかも知れません。削ってもよいのですが、そのままにしています。
 慣性力と見かけの力の違い、遠心力は「見かけの力」ではなく現実の力であること、「加速度系」とは,、一般相対論の「トリック」のために考え出された仕掛けであって、一般の力と同様に、慣性力も観測者の座標系には依らない、センサーで計測可能な物理的実体であることを明らかにする。
 また一般相対性理論の「等価原理」が「慣性力」の議論に混乱をもたらしている。一般相対性理論では、重力の正体は「慣性力」であるとしながら、その慣性力を「ニュートンの運動方程式」に帰着させるのみで、場の局所的なメカニズムで、その力の発生機構を説明してはいない。電磁場理論と比較して、場の理論としては片手落ちな理論であることに気づいて欲しい。
 「慣性力」は、あくまで、物体が外力を受けて加速度運動する際の物体からの応答として発生する力「慣性抵抗」であるが、 それについての誤解の根源は、ニュートンとその後継者達が力学を作るに当たって、中世の「インペートゥス説」と決別するために、「慣性力」が理論に登場しないよう、注意深くそれを排除して『ニュートン力学』を作ったことに起因する。 これが現代でも、「慣性力が存在すると、外力とつりあい、加速できない。」と考える物理学徒が多い理由である。 加えて、20世紀に入り、Ein stein が、その『ニュートン力学』では慣性力が隠されていることを”好都合”に、「慣性系」では「慣性力」は現れず、「加速度系」でのみ「慣性力」が発生し、それが「重力」であるとする「重力理論」を作った。 このことが、さらに混乱に拍車をかけることになる。
 最後は「ダランベール原理」の解説である。 それでは如何にして、「ニュートン力学」に代わる「慣性力」を取り入れた「新たな力学」を構築すればよいのだろうか? しかし、その必要はない。すでにその「力学」は存在し、それが「解析力学」である。
 解析力学では、ニュートン力学と異なり、慣性力が前面に登場する。そこでは、力学系の自由度に注目して、その各自由度毎に「慣性力」と「外力」とがバランスして運動が起こると云う「ダランベールの原理」が採用されている。 またその「力学」においては、「力」ではなく、「エネルギー」の観点から、「仮想仕事の原理」を用いた、(時間積分を行った形の)「最小作用の原理」が主役を演じている。 ただ、抽象化が進んで、閉じた理想的力学系に特化した理論となっており、そのため、具体的イメージが掴みにくくなっている。
  

  慣性力についての対話(2)

 第4番目の「慣性力についての対話(2)」では上記対話の続きとして、「みかけの力」の代表として扱われることが多い「コリオリの力」を取り上げて考察する。
 はじめに、それが本当に「みかけの力」と云えるのか検討する。気象現象に現れるコリオリ力の殆どは「ダランベールの慣性力」と見なせることを示す。
 次に、その公式「コリオリの力=2mωv」の導出を行う。この公式を単に式変形ではなく、直観的にも納得できるように説明することは意外と難しい。「慣性力」として、図的直観的説明を行ったのち、ベクトルを使った導出法を述べて、先の直観的説明を補います。
 また、一般の自由運動する物体では常に「みかけのコリオリの力」と「みかけの遠心力」とが不可分に表れることを示す。
 「遠心力」についての議論も述べているので、「加速度系」や「みかけの力」の正体は如何に”マユツバ”なものか、分かるだろう。
 最後にフーコーの振り子の振動面の回転について、なぜ緯度のファクターにsinδが現れるのか、接平面の「接続の幾何学」を使って解説する。
 

NEW!   慣性力とエネルギー保存則 (慣性力対話 3)


 エネルギー保存則において、「慣性力」が如何に重要な役割を演じているかを、明らかにする小論です。
「慣性力」の隠し味を加えると、通常の力学的エネルギー保存則の解説が、どのように変わり、論理的にすっきりするか味わっていただきたい。
 「仕事の正負」の意味を明確にし、保存力の定義を物理的なものに改めると、慣性力は一種の「保存力」とみなすことができる。 その対応する保存エネルギーが「運動エネルギー」である。

 容易に読めると思われるので、通常の「エネルギー保存則」の解説と比較して読んで頂きたい。
 エネルギー分野において「慣性力」は無視できない重要な働きをする存在であることが理解できるだろう。

 なお、この小論の結論は 
 「慣性力」が「見かけの力」であるか否かは、”力学”を「ニュートン的観点」で見るか、「エネルギー的観点」で見るかの相違である。 作用・反作用の2力の内、「ニュートン的観点」では、「見かけの力」として無視されていた力が「エネルギー的観点」では、主役に変わり、逆にもう一方の「ニュートン的観点」では主役と見なされていた力の方が脇役に追いやられると云う力の評価の逆転が起こる。
 
それ故、「慣性力」が表舞台に登場するのは「エネルギー的観点」で力学を捉えたときであって、「加速度系」への変換とは無縁である。
(詳しくは本文をお読み下さい。)
  
  是非、物理教育に携わる方や「慣性力」に疑問や関心をお持ちの方は、この小論・「慣性力とエネルギー保存則」 をお読み頂きたいと思います。 
 「仕事とエネルギーの関係」や、「エネルギー保存則の力学的基礎」の統一的理解を通して、今までの、腫れ物に触るような「慣性力」の扱いを改める契機になると考えます。

  物理診断テストと運動についての常識概念


 以上が「慣性力5部作」の紹介ですが、実はこれら「慣性力」について考えるきっかけを私に与えたのが、D.Hestenesの論文、”Common Sence Concepts about Motion"だった。それは現在もかしましく続く”生徒の誤概念”についての教育系の論文の走りであったと思う。
 いずれの論文も、その”誤概念”を生徒から取り除くのは非常に困難であると述べている。しかし、その原因の一端は力についての”インペートゥス”概念、つまり”慣性力”概念を生徒達は強固に保持し続けていることにあり、私の上の「慣性力5部作」を読めば、それは、決して”誤った概念”とは言えない。 逆に教えている教師自身が、現実から遊離した学問体系で教育を受け、それに捕らわれているに過ぎないことが分かるだろう。
 この論文(PDF)では、我が国の教師にはあまり知られていない、ニュートン以前の力学(特にインペートゥス説)が紹介されている。これを読めば、如何なる歴史的背景のもと、ニュートンが「慣性力」を徹底的に排除した力学理論を作らざるを得なかった理由が理解できるだろう。”生徒の誤概念”論者の一読を望みます。
 このHestenesの論文と診断テスト問題の(私による)和訳、および私の実践報告は「物理診断テストと”運動についての常識概念”」にある。

M.Planckの「理論電気磁気学」を読む


 一般相対性原理が、力学に(革命的と言うより)破壊的影響をもたらしたのと同様に、特殊相対論の誕生によって、19世紀に成立した電磁気学においても、「エーテル説」が否定されることになる。しかしそれだけに止まらず、電磁気学の精華である近接作用論にまで、疑いの目が向けられ、遠隔作用論と折衷した解釈が主流となってしまった。云うなれば、近接作用論は名のみ残り、魂が抜かれた状態と言えよう。この「近接作用論」の名誉回復の第1弾として、最もふさわしいと考えて私が選んだのが、このM.Planckの「理論電気磁気学」である。プランクは、過去の「エーテル説」をさけ、誰も文句の出ない「場のエネルギー」を主役に、近接作用論を展開して「マクスエルの方程式」を導いてみせる。さすがは碩学プランクである。これを読めば、電磁気現象は、場の力学現象として捉えることが可能てあり、その力学的な波動として、電磁波の存在も理解できるだろう。
 本書の日本語翻訳者「寺澤寛一」氏の弟子である「今井功」氏が、晩年に「電磁気学を考える」と言う近接作用論に立脚した書物を出版されたのも、肯ける話である。


Excelで偏微分方程式を解く


 これも、自分でも気に入っているオリジナルな作品である。コンピュータ・シミュレーションは、いわゆるCGのように、コンピュータで人工的に現実に似せた画像を作り、現象を視覚的に分かり易く表示するものと考える向きもある。しかし、単に既に分かっている現象を視覚的に表示するだけでは、コンピュータ・アニメーションと大差ない。現実の複雑な条件のため、数式解が得られない未知の現象こそ、コンピュータの出番であり、真骨頂であろう。 取り扱うのは、気柱(笛)の共鳴で、障壁がない開口端でなぜ音波が反射するのか、なぜそれが自由端型の反射になるのか等々、説明に窮するところが多い。そこで、元に立ち返り、波動方程式から、実際にどのような現象が起こっているのか調べてみた。過去に、8ビットパソコンの時代にC言語で試みたことがあるが、メモリー不足と、境界条件の設定の煩雑さ、結果のグラフィック表示の難しさ等で、嫌気をさしてあきらめた経緯がある。しかし32ビット時代になり、メモリ制限はほぼ解消されているので、再度挑戦することにした。使うのはExcelで、その理由は、場所ごと異なる境界条件を境界のセルに直接式を入れることで視覚的に作業しやすいこと、そして最大の利点は、Excelのグラフ機能を使えば、結果を3Dで即座にグラフィカルに表示可能なことである。
 お読み頂いたら、差分法での2階偏微分方程式(波動方程式)のExcelによる近似解法の勉強になるでしょう。 (透過型境界条件、過去、現在、未来およびコピー用の4枚のシートの利用等、捜しても、どの本にも載っていないので、たぶん私のoriginalな方法だろうと思います。)
 パルス波が反射を繰り返す内に、定常波(定在波)に変わっていく様子や、どのタイミングで、気柱から外部に音波が放出されるのか、等がよく分かります。
 

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・慣性力について(慣性力序説)

・慣性力はみかけの力ではない。(慣性力続編)更新

・慣性力対話(1)みかけの力とは、ダランベールの原理

・慣性力対話(2)コリオリの力はみかけの力か


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慣性力とエネルギー保存則 (慣性力対話3)



・力はベクトルか?(力の正体をさぐる。)

・開口端で音波はどのように反射しているのか。



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