
2005/12 文学部キャンパスでビラを配布した地下部室関係者が教員の要請で逮捕
Pamphleteer arrested for distributing leaflets opposing university policies
Abstract:
On Dec.20, 2005, a pamphleteer was arrested on the premises of Waseda University,
at the request of university authorities, for distributing leaflets that opposed the
university's policies regarding forced removal of student organizations from
campus buildings four years ago.
The alleged offense was trespass.
Given the post-war practices of Japanese universities in which law enforcement has been
restricted access to its premises out of concern for protection of academic freedom,
the Waseda incident may become a turning point regarding public access, freedom of speech and
political activism on Japanese university campuses.
(2005年12月30日掲載・2006年1月31日更新)
12月20日、早稲田大学の文学部(戸山)キャンパスで、集会参加を呼びかける
ビラを配布しようとしていた男性が、文学部の教員数名により拘束され、
警察に逮捕される事件が起きた。
報道等によれば、ビラを配布するため文学部キャンパス内の教室に
向かおうとしていた男性は、同学部の教務担当教員に引き止められ、
集まってきた同学部の教職員7、8名が立ち会うなか、同キャンパス
入り口にある警備員詰め所で牛込警察署の署員に引き渡されたという。
ビラは、2001年の7月から8月にかけて、同大学構内の各建物
(1号館、3号館、8号館など)の地下を中心に広がっていたサークル部室を
大学側が強行的に撤去し、関係者3名を構内立ち入り禁止処分としたことについて、
処分撤回を求める集会への参加を呼びかけるものだった。
大学側は2005年7月、あらためてこの処分の継続を確認する掲示を構内に出している。
今回の逮捕容疑は建造物侵入で、文学部教員の要請により警察が呼ばれ、
逮捕に至ったとされる。
28日の拘置理由開示裁判では、「証拠隠滅の恐れ」を理由に関係者の拘留が
続けられていることが明らかになった。(新聞報道のあった29日午前に釈放)
戦後新憲法が施行されてから、同大学で平時に警察が構内に立ち入って
表現行為を根拠とした逮捕を行った事例は初めて。
戦前の思想検閲が大学に及んだことへの反省から、新憲法下においては「大学の自治」の
一環として学内に警察関係者が立ち入ることを強く抑制する運用がなされており、
「東大ポポロ事件」では、私服警官が学生の集会に参加していたことが
思想信条の自由に反するとして争われている。
今回の事件は大学の直接の要請により警官が構内に立ち入り、
政治的抗議活動に基づく逮捕を行ったもので、表現の自由、思想・信条の
自由など憲法の根幹に関わる問題として論議を呼ぶことになりそうだ。
解説
この件について、大学広報室は、身分証を提示しない者による大学構内への
立ち入りが理由であり、警察への要請についても緊急性を要したものであると
弁護している。
ただ、ビラの配布が今回の事件の発端となっており、ビラの内容に
反感を持つ教員が、計画的に関係者を拘束し、関係者の処罰を意図して
警察に通報したと見られる経緯から、思想抑制を目的とした警察権力の
導入との批判は免れない。(関係者は何ら暴力行為等に及んでおらず、
他人の安全確保など緊急通報の要素は存在しなかった)
従来、警察と大学の間に一応は保たれてきた線が、名実ともに破られたことの
影響は計り知れない。教員の気に入らないビラを配布した者は逮捕されるという
前例になるほか、今後運用が拡大し、教員間あるいは教員・学生間の様々な対立に
警察の関与が持ち込まれる可能性を排除できない。
こうした介入が長期的に大学の自治に及ぼす悪影響を回避するため、
戦後は大学と警察双方において原則不可侵の運用がなされてきたほか、
早大では万が一の警察(機動隊等)立ち入りについては学部長会・理事会の
承認を得るという入念な意志決定過程が準備されてきた。
関係者によると、今回の事件は、大学の理事会や学生部も関知しないまま、
文学部教員が独断で警察を導入しており、大学内の手続についても論議を呼ぶと思われる。
論評・文学部教員の猛省を促す−開かれた空間にこそ大学の存在意義−
Commentary: Public Access and Free Inquiry is Crucial to University's Mission
解説・ビラの配布と言論の自由−根底を揺るがす文学部教員の行為−
Analysis: University's Action against Pamphleteers Threatens the Core of Free Speech
追加情報・早大教授が連名で文学部(学術院)長宛てに公開質問状
Professors issue an open-letter demanding explanation from university authorities
早稲田大学文学学術院長 土田健次郎 殿
12月20日に早稲田大学文学部構内で、地下部室撤去と学生会館移転問題に
関わるビラをまこうとした男性が逮捕されました。朝日新聞(12月29日朝刊)には、
「学校側がキャンパスの外に出るように求めたが従わなかったため身柄確保(私人による逮捕)をし、
警察に通報して引き渡した」と書かれています。しかし私たちには疑問が残ります。
第一に、自らの意見を主張するためのビラをまいているだけで、どうして「キャンパスの外に
出るように求め」られねばならないのでしょうか。逮捕の容疑となった「建造物侵入」が、
大学という公共空間において今回成り立つと判断された根拠は何だったのでしょうか。
第二に、どのような事情と経緯で警察官を構内に入れ、構内での逮捕を容認したのでしょうか。
またそのことを大学人としてどのように正当化するのでしょうか。
今回の事件は、大学構内における言論弾圧とみなされかねないだけに、私たちは
早稲田大学全体にかかわる重大な問題と受け止めています。
文学学術院長としてのご見解をお聞かせ下さい。
2005年12月31日
早稲田大学政治経済学術院教授 岡山茂
同 文学学術院助教授 藤本一勇
同 法学学術院教授 谷昌親
同 政治経済学術院教授 斎藤純一
同 政治経済学術院教授 岩田駿一
同 政治経済学術院教授 原章二
同 商学学術院教授 猪股正廣
1月13日追加
文学部が説明を告示、「不審者」「脅迫」「学外者」を強調
Department of Literature issues response to open-letter, criticizes 'outsiders'
論評:レッテルを貼り、結局は言論を規制
Commentary: Labelling is meant to exclude and silence dissent
学生・教職員の皆さんへ
2005年12月15日の午後9時頃に、オレンジ色のマフラーを着用した不審者が、
文学部の教員に対して脅迫を行ったことを知らせる掲示を、12月16日、文学部
正門に立て、皆さんに注意を喚起しました。この不審者は、12月20日に、再び
文学部構内に立ち入ってビラを配ろうとしたので、立ち退きを求めましたが、これに
応じなかったため、警察に通報しました。
なおこの件は、一部マスコミに報道されたほか、学内の教員から質問もありましたので、
以下、誤解のないように、一連の経緯について説明します。
1)2005年12月以降、早稲田大学構内への立ち入り禁止の仮処分(2001年
7月31日東京地方裁判所決定)を受けている者が文学部正門脇に立ち、それと
共同して文学部構内でビラを配布する者が出没した。そこで、立ち入り禁止者の
動向を注視していたところ、12月15日に、ビラを配布している者が、教員の一人
に対し、その家族の安全に関することで脅迫を行った。
2)この事件について、文学学術院執行部で協議した結果、脅迫に関しては
所轄警察署に通報し、文学部正門前の警備を要請した。当該教員のみならず、
その家族の安全をも脅かす言動であり、放置できないと判断したからである。
なおこの件は、12月20日の教授会において報告、了承されている。
3)12月20日の正午過ぎ、15日に脅迫を行った者が、文学部構内スロープ上に
立て看板を置き、ビラを配布し始めた。学生証の提示を求めたが応じないため、
構内からの立ち退きを求め、いったんは退去させた。しかし、再度構内に侵入し
活動を始めた。そこで、繰り返し立ち退きを求めたが、応じなかったために、
警察に通報した。
4)脅迫を行った者は、早稲田大学とは全く関係のない人物であることが判明した。
もとより大学において、ルールに則り意見を表明することは自由です。
しかし、上記のような不審者の行為に対しては、厳正に対処せざるをえません。
学生・教職員の皆さんには、上記の事情をご理解願います。
以上
2006年1月10日
早稲田大学 第一文学部
第二文学部
文学研究科
1月31日追加
今回の事件については、社会的に異例の反響があり、
具体的で切実なコメントが多数寄せられている。
下記のページのコメントは、一読の価値あり。
http://wasedadetaiho.web.fc2.com/i/message.html
また、2月4日(土)に今回の事件についてのシンポジウムが行われるとのこと。
午後6時
「大学改革と監視社会」
ー早稲田ビラ撒き逮捕の意味を考え、告発する討議集会ー
早稲田奉仕園会館(1号館地下1階)小ホール
http://www.hoshien.or.jp/map.html
パネルディスカッション
武井昭夫(評論家)
笹沼弘志(静岡大学教員、憲法)
入江公康(社会学者)
スガ秀実(近畿大学教員、文芸評論家)(司会)
他(現在交渉中)
発言
井土紀州(映画監督/脚本家)
木村建哉(成城大学文芸学部専任講師)
池田雄一(文芸評論家、早稲田大学非常勤講師) ほか
松沢呉一(ライター)
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(外部リンク)
早稲田大学の部室移転問題について(Redtailさん)